例えば遠くのものについて、近くにないとそのものの存在はあやふやだ。遠くにリンゴが置いてあったとしたら、そのリンゴはリンゴのようなものであって、実際にリンゴだと思っていてもリンゴではないかもしれない。近くに行って匂いをかいでみなければわからないかもしれない。その距離においてはリンゴだと確定するためには情報が足りない。この作品ではそのような、モノと網膜の距離についてを考えたひとつの試行である。モチーフとしての便器は、日常最も毎日関わるもののひとつであろう、本作はその便器のサイズを変更することで網膜とものとの距離を強制的に変えたものである。
異質なものと認識して初めて、本質が見えてくることがある。