高脂血症:高脂血症とは血液中のコレステロールや中性脂肪が標準以上に増加した状態を言います。コレステロールや中性脂肪などの脂質は、文字通り脂(あぶら)です。
水と油の関係でお分かりのように、脂質は、水、すなわち水分を多く含んだ血液に溶けにくいため、たんぱく質を仲立ちとして血液となじみやすいリポタンパクという形で血液中に溶解しています。
このリポタンパクの一つが悪玉コレステロールと言われるLDLコレステロールであり、善玉コレステロールと言われるHDLコレステロールです。
日常診療では、リポタンパク中すべてのコレステロールや中性脂肪をまとめて測定し、さらにLDLコレステロールやHDLコレステロールなどのリポタンパクも個別に測定し、それらを治療の指標にします。
では、なぜコレステロールなどの脂質とリポタンパクがそれほど重要なのでしょうか。それは多くの疫学的研究から総コレステロールやLDLコレステロールが高いと動脈硬化が進行し、心筋梗塞や狭心症などの心臓病の発症率が極めて高くなることが証明されているからです。
また、コレステロール低下療法が心臓病の予防・進展防止になることも明らかにされています。
表2に日本動脈硬化学会の高脂血症の診断基準を示します。
患者カテゴリー |
脂質管理目標値(mg/dL) |
|
冠動脈疾患 |
他の主要冠危険因子 |
TC |
LDL-C |
HDL-C |
TG |
A |
なし |
0 |
<240 |
<160 |
≧40 |
<150 |
B1 |
1 |
<220 |
<140 |
B2 |
2 |
B3 |
3 |
<200 |
<120 |
B4 |
4以上 |
C |
あり |
|
<180 |
<100 |
TC:総コレステロール、LDL-C:LDLコレステロール,
HDL-C:HDLコレステロール、TG:中性脂肪 |
表2 日本動脈硬化学会の高脂血症の診断基準 |
高血圧、糖尿病などの動脈硬化危険因子や心臓病などの合併症がない場合、総コレステロール(TC)は240未満、LDLコレステロール(LDL-C)は160未満、HDLコレステロール(HDL-C)は40以上、中性脂肪(TG)は150未満が正常と考えてよいでしょう。
皆さんはいかがでしょう、この値の中に入っていますか。
表3は日本脈管学会誌に発表した私の論文の一部です。
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Baseline |
12-week follow-up |
P |
TC (mg/dl) |
277±33 |
221±31 |
<0.01 |
TG (mg/dl) |
216±188 |
201±156 |
<0.01 |
HDL-C (mg/dl) |
43±13 |
49±16 |
<0.01 |
LDL-C (mg/dl) |
182±66 |
132±53 |
<0.01 |
表3 Follow up evaluation of plasma lipid and lipoprotein levels |
現在わが国における高脂血症薬の40%を占めるプラバスタチンの効果を示したものです。3ヶ月間薬を服用することにより総コレステロールも悪玉であるLDLコレステロールも正常化しています。確かに薬はよく効きます。
では高脂血症になったら薬を飲むしかないのでしょうか。そうではありません。
それではどんな方法があるのでしょう。
そこで、次に運動療法、すなわちライフスタイルの修正により高脂血症が改善した例を示します。これも自験例で恐縮ですが、Therapeutic
Researchに発表した論文の一部を紹介します(表4)。
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運動療法群(n=25) |
対照群(n=27) |
1週間後 |
13週後 |
P |
1週間後 |
13週間後 |
P |
総コレステロール (mg/dl) |
243±81 |
219±78 |
<0.05 |
238±79 |
245±76 |
NS |
中性脂肪 (mg/dl) |
195±89 |
179±86 |
<0.05 |
194±76 |
198±83 |
NS |
HDLコレステロール (mg/dl) |
39±7.8 |
42±6.9 |
<0.05 |
38±8.2 |
39±7.6 |
NS |
LDLコレステロール (mg/dl) |
165±60 |
141±52 |
<0.05 |
161±65 |
166±59 |
NS |
表4 PTCA1週間後と13週後の脂質 |
対象となったのは心臓病をわずらった人たちです。3ヶ月間運動療法を行なってもらうと運動療法をしなかった人たちに比較し、みごとに総コレステロールやLDLコレステロールが低下しています。
ここでは紙面の関係で示せませんが、運動療法を行なった人たちは、運動療法をしなかった人たちに比べ狭心症の手術であるPTCA(冠動脈形成術)後の冠動脈の再狭窄が軽くなるという形で、動脈硬化進展防止効果がありました。つまり、運動療法により脂質やリポタンパクが改善した人たちでは動脈硬化の進行がなかったのです。
ではその運動療法とはどんなものかと言えば、呼気ガス分析装置という機械を用い、嫌気性代謝閾値(AT)というものを測定し、その嫌気性代謝閾値のレベルで運動をするのです。わかりやすく言えば、運動時の最大心拍数のおよそ70〜80%(運動時の最大心拍数が150/分であれば105〜120/分程度)の運動です。
運動の種類は早足歩行、ジョッギング、自転車などで、1回に30〜60分間、週に5〜6/回行ないます。簡単に言えば、脈拍をとりながら持久的な運動を定期的に行なうわけです。それによって脂質やリポタンパクが低下し心臓病を予防できるのです。
さあ、運動することの重要性を感じていただけたでしょうか。
高脂血症に対するヒロクリニックの治療方針 |
なんといっても怖いのは高脂血症が狭心症や心筋梗塞の最大の危険因子であることです。もう一度、日本動脈硬化学会の診断基準を見て下さい。そしてご自分の数値と比べてください。
当院では狭心症や心筋梗塞の早期発見のための最新医療機器を備えております。
コレステロールの高い方で胸部症状のある方や心電図異常を指摘された方、家族に心臓病がありご自分もコレステロールの高い方などは、遠慮なく当院を受診してください。
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