それぞれの思い



六角を降した比嘉中。
いよいよベスト8を決める試合に臨んだ。

比嘉中のマネージャーである私も、監督の傍で試合を見守ってる。
今対戦してるのは、凛ちゃんと甲斐君。
相手は青学の天才と呼ばれる不二君と、パワーテニスをする川村さん。

彼らや凛ちゃんと知念君、私や甲斐君に木手君にとっても
三年生としては最後の大会。
特に比嘉中の皆は、ウチの監督の非道とも言えるスパルタに耐えてきた。

それは全てこの全国大会に出る為。
第一試合の田仁志君は、相手の1年ルーキーに敗れている。
でもまだ、彼らは負けたとは思ってない。

全ては勝ちに行く為に、沖縄の力を見せ付ける為。

なのに・・・凛ちゃん達も敗れ去った。
酷いよ、皆こんなに頑張ってるのに。

あんな無茶苦茶な練習にも耐えてきたのに。
どうして?皆の喜ぶ顔が見たいよ。

皆の努力は、私が一番よく知ってる。
彼らの技をもっと多くの人に見せて、沖縄の実力をしらしめたいのに。
どうしてこんなにも、現実は彼らに酷い仕打ちを与えるのか。


木手君からの期待を一身に受け、コートへ向かって行った甲斐君。
前半までは、相手の菊丸君にリードを赦した。

けれど、彼の得意技『海賊の角笛バイキングホーン』で同点に追いついた。
そのまま勝てそうだと思ったけど、全国の壁は厚かった。

「ゲームセット!ウォンバイ菊丸!7-6!!」

審判の声が、無情にもコートへ響き
現実は厳しくて、情け容赦なく突きつけられた。

甲斐君の試合は終わった。
何だか余りにも辛くて、自然に涙が滲んで視界が滲む。
コート上の甲斐君の背中が、とても悔しさを漂わせていて

悔しいその気持ちが私にも伝わって、余計心が痛んだ。

コートから此方へ戻って来た甲斐君と、ふと目が合う。
そんな私と目が合った甲斐君は、淡く笑うと私の頭に手を乗せて

「泣くのは早いさぁ・・・最後まで、ちゃんと見てやれ」

甲斐君の方が、何倍も辛いのに悔しいのに彼は笑ってた。
自分の力を全て出し切った、という爽快感を漂わせて。


◇◇◇


あれから不知火君と新垣君、キャプテンの木手君も敗れ比嘉中は二回戦で戦線から消える事となった。
他の部員達も、皆泣きながら帰り支度を整えている。
今日はすぐに帰らず、成田空港付近のホテルに泊まる事となっていた。

早乙女監督は、若干不機嫌でバスへ乗り込んでいる。
準備の出来た者から、バスへ乗り込んでいた。
そんな中、私はある人の姿を探す。

どうしても、今、話したかったから。

公園へ行く 会場を探す