金色は鮮やかで



私は凛ちゃんを捜した。
試合中、早乙女監督と木手君の指示を無視した凛ちゃん。
でもその姿は、とてもカッコ良かった。

凛ちゃんは自分の意思で、正々堂々彼らと戦った。
そして堂々と戦い抜いて勝ちを青学へ。

でも私は凛ちゃんが楽しそうに戦って、力を出し切って満足出来たのならいいと思う。
ラフプレイなしで戦った姿は、立派だよ。

凛ちゃんは、会場出口の公園にいた。
さらさらしたあの金髪は、何処に居ても分かる。

明らかに気づくように音をたてて走り、ベンチに座る背中に飛びつく。

「凛ちゃん!」
「のわぁっ!?」

ガシッと抱きつくと、勢いが殺せずに凛の体が前に傾く。
奇怪な声を発して、倒れ掛かるのを踏み止まった。
押し付けた髪の毛から、太陽の匂いがする。

ぽかぽかで、温かくてホッとしてしまう。
しばらくそうしてると、凛ちゃんが話し始めた。
声が背中を伝い、耳を当てた私に届く。

「つーかその『凛ちゃん』ってのはぬうがよ」
「可愛いから?」
「何で疑問系さぁー!女みたいだから止めろって」
「えぇー・・試合、良かった?」
「話をいきなり変えんばよ、まあ・・・本気の試合は楽しかったさぁー」

背中に抱きついたままの私を、振り払う事無くそのまま話す。
広い背中はとても安心する。
楽しかったと言った凛ちゃんの顔は、見なくても分かる。

きっと本当に楽しくて、笑顔で言ってる。
お互い真剣で、持てる力全てを出し切った試合。

「うん・・・あんし楽しそうだった」

そうなだけに、声が震えた。
最後の夏、最初で最後の全国大会。

真剣な試合で、皆それだけの為に頑張って来たのに。
もっとテニスをさせてあげたかった。
もっと楽しそうにテニスする姿を見ていたかった。

でも大会は終わった。
もう沖縄に帰らなくちゃならない。
後は卒業式までの数ヶ月。

高校は同じでも、中学生としての時間は終わってしまう。

背中が温かい、それはわんにが抱きついてるから。
その小さな体が愛しい。

の声が震えている、泣いてるのかもしれない。
同時に試合に負けた悔しさが蘇り、体を動かしてを抱き締めた。
そうしないと、涙を見られそうだった。

「凛ちゃん?」
「わん・・高校行ってもテニスばする、そしたらやー・・・またマネージャーになってくれるか?」

涙を誤魔化す為に、口にした言葉。
それは思いかげない言葉だった。

ギュッと抱き締められ、言われた言葉。
それは素直に嬉しくて私は夢中で頷いた。

「当たり前だよ!」
「うわっふらぁバカちら上げんな!」
「え?きゃっ!?ちょっと凛ちゃん!」

怒った凛ちゃんに、頭を胸元に抱き寄せられ視界を塞がれてしまった。
でも見えちゃった、凛ちゃんの見せた涙が。

でもきっとその涙は、凛ちゃんを更に強くしてくれるよ。
その隣りには、いつも私がいるって事・・忘れないでね。