ま、眩しい人達ですよー
古代中国の宮中を歩いてるような夢を見ていた。
心地よい風が頬を撫でて・・・
流れる風を追いかけるように視線を漂わせれば視界に飛び込む金色。
視線を上げると映るのは、スラリと伸びる長身と綺麗な横顔。
それからぼんやりと思う。
ああ、彼は確か・・テニスの王子様のキャラクターだ。
こんなに近くを歩いてる・・・?
紙面上では常に目が合った状態だったけども
あ
今こっちを見た?
金色の髪をした綺麗な男の子が何か言ってる。
ちゃんと口が動いてるなんて凄いなあ・・・・・・・・?
『――――があるばーよ』
え?漫画の世界からのメッセージ??
ぼんやりと見惚れて彼の唇を読んでみた。
と同時に凄い勢いで腕が引っ張られた。
「うまや崖やっさーっつーぬ!」
「――っわあ!?」
やけにクリアな怒鳴り声と共に、急に現実が戻って来る。
白く霞んで見えた光景が光を取り戻し、腕を掴む感触もリアルになった。
ああー・・つまり私、歩きながら白昼夢見てた訳ね(
宮中を歩いてる夢じゃなくて、実際に歩いてたのよ。
しかも天上はあるけど横はその天上と下を支える柱があるだけで隙間がある造り。
つまりはその隙間から真っ逆さまに落ちる所だった訳ですわ。
注意してくれたのも腕を掴んで引き戻してくれたのも金髪の彼、平古場凛。
甲斐君もちゃんと凛君の後ろから腕を伸ばしてくれていた。
恥ずかしいな自分・・・歩きながら夢見るなよ←
「ボォーッとしてんなよ、ぱたいんかいのみぐさぁ〜いぬか??」
「ぱたい・・・・?」
「つまり死にたいのかって事」
「まさかっ、あ、助けてくれて有り難う!」
「別にいいさー・・・」
琉球の方言に慣れないに、通訳みたいな感じで裕次郎が答えた。
道理で真剣な声だった訳だ・・・と納得。
直ぐに腕を掴んでくれた凛へお礼を言った。
ニッコリ笑って礼を言ったから視線を外して、呟くように言う凛。
不機嫌なのかな?と思っただが、実は照れていただけだったする・・・・
それが分かった裕次郎、一人ニヤニヤと凛を見れば
すぐさま何食わぬ顔の凛に後ろから蹴りを喰らう羽目になった。
凛から見たの印象『ノリが良くて少し危なっかしい野郎』と言う程度だった・・現時点では。
からかうような裕次郎の視線を避け、さっさと歩く事にした。
すぐ手際よくを助けられたのは、凛自身も周りを見て歩いていた事と
同じように景色を見ているの様子が視界に入ったから。
外を見てる目は濁っていて、心此処に在らず、と言う感じだった上に
足取りが何よりも危なっかしかったせい。
どうしたのだろう?と見ていたら柱の隙間に男にしては小柄なの細い体が・・・―――
だから夢中での腕を引き寄せていた。
ただそれだけだ。
無意識に動いた体が勝手にを助けただけ。
たーだって助けると思うぜー?
「麒麟の童子様、此方で少し待っていて下さい」
「は・・はあ、分かりました」
暫く歩く事数十分、女神(娘娘)の声で顔を上げた面々。
目の前には絢爛華麗な装飾のされた入り口がある。
日本の家屋みたいに扉や襖はない。
通された中も豪華な造り・・・・
案内してた女神は既に立ち去り、達は前に進むしかない。
取り敢えず立ちっ放しなのも疲れる。
はチラッと凛、裕次郎を見てから衝立の向こう側へ。
しかし備え付けられた椅子に座る事が出来なかった。
だって、完全にこれ夢だろと思った瞬間だったんだよ!
其処にいたのは煌びやかな集団。
これには後から続いてきた凛達も一瞬言葉を失くしたくらい。
「何だお前等もか、比嘉中」
「けど見知らぬ男も一緒やで?跡部」
「うん、そうみたいだね。もしかして比嘉の子かい?」
「それはおまんに直接聞けば分かる事じゃろ」
「いったーやー・・ぬーんち此処に!?」
「わー・・・・壮観・・・・・」
「やーは感心してる場合かよ」
此処まで来ると夢としか言いようがなくなる。
完全に漫画として描かれてるはずの彼等が目の前で喋ってるなんてさ。
あの俺様何様跡部様もいるし、氷帝の天才忍足もいる・・六角のサエさんに立海の詐欺師・・・・
何ですかこの絵ずら←
豪華すぎる・・・・・・!!!
もうこれ夢でもいいわ。
完全に脳内のスイッチが切り替わった。
凛が突っ込みを入れてるのはスルーして室内を見渡してみる。
中国式の調度品が溢れる中、広さは17畳くらいありそうで・・・・
扉はないけど入り口っぽいのが案内されて入ってきた奴以外に四つ。
そのうちの1つは二枚ある襖が四枚横に並べられたくらいの幅があった。
て言うか、喪月神・・・まさか跡部様達まで連れて来てたとは・・(読者として様付けで呼ぶ癖が染み付いている)
うーん・・折角人数も揃ってるんだし、私の持ってる知識って言うか情報?
交換した方がいいかも?それに彼等は私の事知らないから自己紹介くらいしとかないとね。
「あ、の、えっと・・・俺、 っていいます!皆さんと同い年です」
勢いのまま自己紹介を始めたを凛と甲斐はギョッとした顔で眺め
向かい合ってる跡部達はへ視線を向けた。
が、ふとの言葉が引っ掛かった跡部。
怪訝そうに視線を鋭くし、へ質問を投げた。
「アーン?何故俺達と同い年だと言えるんだ?初対面だぜ?」
(し、しまったぁああ)
「跡部の言う通りやな、変に落ち着いてるのも気になるわ」
「お前さん、何か知ってるんじゃなか?」
ぬおおおーーーっ
いきなり不審がられてしまったよ!!!
んー・・・生アーン?とか聞けた・・チョーレアですねハイ。
誤魔化すのとか苦手だし、もう喋ってしまおうか。
その方が説明するのに手っ取り早い気がする・・・・
漫画のまま皆カッコイイよなあしかし(何かズレてる)
変に肝が据わったは、立ってる凛達にも座るように頼み
全員から見える位置の椅子に腰掛けてから説明する事にした。
自分は此処とも、皆がいる所とも違う
全く異なった世界から連れて来られた人間で、その世界では皆の事が漫画として描かれている事。
信じてくれなくてもいい、嘘偽りない信実だけを話した。
ふざけんなとか罵倒されるのを覚悟しただったが
発せられた第一声は、予想とは全然違う物だった。
「ふん・・・けどまあ、嘘を言ってる目じゃねぇみたいだな」
「そうだね、正直驚いたけれど・・全く違う世界から来たって話はすんなり出て来る設定じゃないだろうし」
「そうさのぅ・・・・漫画として描かれとる実感はないが、それなら俺達の事を知っているのは納得出来る」
「なんつーか、そうなるとあの喪月神って奴は確かに『神』を名乗るだけの力があるって事になるな」
「つまり自分らもやってたんか?『OROCHI』・・・」
「え!?まさか、皆さんもやってたんですか!!?」
意外にも納得してくれた面々。
一人喪月神の『神』としての力についても納得した様子の跡部。
その事はこの場の誰もが納得せざるを得なくなった。
忍足の発した問いが、その力をまざまざと見せつけ、裏付ける事になる。
みなまで言い終わらないうちには忍足を含めた全員に問い返すと
それぞれ顔を見合わせつつコクリと頷いたのだ。
どんだけの規模ですか喪月神さん←
うつつ、異世界、次元、あらゆる構造を無視した規模だ。
思わずクラリとしてしまう。
「平気かよ、やー」
「あ、ああ。何か凄い事になってきたなぁ・・と」
「だなー・・・流石にわったーも驚いたさー」
またも気付いたのは凛と裕次郎。
同じタイミングで此処に来たからか、奇妙な連帯感みたいなものが生まれている。
綺麗な顔の凛に間近で聞かれるのはどうにも慣れずにドキドキしてしまったよ。
でも今私は男装してるんだから、赤くなったりしないようにしないと!
それから跡部の提案で、各々の状況を発言し合う事になった。
「共通点はやはり『ゲーム』『月蝕』『10月』『魏シナリオ』って所か」
「にしても不思議だね、世界は違うのに同じゲームがあるなんてさ」
「それも喪月神の布石だったんだろ・・人選の為のな」
「よく出来たシナリオぜよ」
「軽い神隠しみたいですね・・・・」
言ってて千歳さんの技だなコレ、とか一人思ってみる。
出し合った状況下の回答は、やっぱり怖いくらいの一致ばかりだった。
住む次元も地域も違う人間が複数いっぺんに此処へ連れて来られている。
元の世界でニュースにでもなってたら嫌だなあ。
もしかしたら、自分達以外にも何人か連れて来られてるんだろうか??
気になって発言してみると、自分達の他には後3人来てるらしい。
それは俺様何様跡部様が説明してくれた。
『丁度九人とは―――・・・・』
不意に天帝が漏らした言葉が脳内にリフレインした。
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