何の冗談ですか?


神様の言葉を借りるなら、下界に行っていた喪月神が帰還。
しかも一人ではなかった。

目の前に金色が現われたと思ったら、次は銀色が視界に入る。
勿論いきなり現われた為、が見つめる中、二色の色を持つ者達が目の前に立った。
の目の前に二色の色が立つのと同時に、喪月神が口を開いた。

「待たせたね、紹介しよう。彼らはとして君臨する君の脇侍となる――」

「初めまして、さま。私は北斗星君と申す者、貴殿の統括する『死』を補佐します。」

目線を合わせ、銀髪の美しい青年が恭しく頭を垂れた。

北斗星君とは北斗七星を神格化したものと言われている。
一般的には醜い老人の姿で書かれるらしいが、今目の前にいる北斗星君はとんでもなく美男子だ。

「俺からも挨拶させて貰うよ、初めまして殿。俺は南斗星君、あっちの怖い北斗星君の弟になるかな。宜しくね」
「南斗よ、その態度はさまに不敬であるぞ?」
「兄上が堅苦しいだけだと思うけど?」
「はいはい二人とも、兄弟喧嘩は見苦しいよ。私も時間が限られているんだ」
「仕方ない、頼まれてやるとしよう。そろそろ戻れ、蝕の夜も明ける。」
「次会う時は明るい日の下で会いたいものだね。、気負らず貴女らしく進むんだ いいね?」
「・・・・・はい。」

目の前に並ぶ銀と金の兄弟、天帝が存在する空間に来れるという事は
彼らもそれ相応の身分があるという事かな、某漫画に出て来た朱雀星君とかとは別なのだろうか。
などと思案するの横から、時間が限られていると嘆息する喪月神へ若干上から目線な返しをしたのは厳格そうな北斗星君だ。

北斗星君の言葉に目くじら立てる事もなく穏やかな笑みでを見つめた喪月神。
何とも儚げな神さまだなー・・なんて事をは感じつつ視線を合わせ、頷きながら承諾。

「安心しなさい、彼らは時に尊大だが瑤姫と同じ魂を持ちである君に逆らう事は出来ないからね」

立ち去ろうとしていた喪月神がコソリと私に耳打ちした。
やっぱ天帝の妹よりは立場が下なのだろうか?

そう言えば・・南斗星君?誰かに似てるような?それに補佐するのが何なのかは言ってなかったね
でも私が『生と死』を統括する立場になる訳だから、生の方っぽい気がする。
あくまでもカンだから、喪月神に聞こうとしたがリミットが近い様子でに告げて優しく微笑むと、全てを天帝に任せ姿を消した。

流石神様、瞬時に男装する羽目になった事を理解してしまったみたい。
忙しない去り方だったし、詳しい説明も何も丸投げだったけども
一応私を此処に連れて来た人で、向こうでの私とこっちに来たばかりの状況のどちらも知る人物だっただけに

頼れる人が誰一人としていないこの世界に取り残されたような状況から
妙に寂しいような心細さみたいなものを感じてしまった。

「そろそろ案内させるぞ、この世界での地上へ」

分からないことだらけだし戦いって奴に行かなきゃならないという現実。
不安しかないこの状況と、某漫画のキャラに似た南斗星君・・思案に暮れる間を縫って天帝の声が掛かった。
いっぱいいっぱいで軽く存在忘れてたかも←

多重世界が現実に存在してたとは・・まさか自分がそこに身を置いてるなんてね・・・・
何だかよく分からない事態になってますね・・・めんどくさい・・
しかし行くしか選選択肢は皆無な訳でして、達は女神に案内されるままこの場を去った。

「・・・私の妹姫の魂を持つ異界の娘、か・・創り手は何を考えてるんじゃろうな」

7人の女神とその場に残った天帝は、1つ言葉を漏らした。
達らを視界の端に映したまま。


+++++++++++


麒麟と呼ばれる神子と、その補佐を見送った天帝は椅子に凭れて思案。
自分が置かれた状況に理解が追い付いていない様子だった人の子。
全ての全貌を知らないだろう者に、世界の創り手は少し難題を与えたかもしれんのう

言うなれば死と隣り合わせの世界だ。
あの者の親しんだゲームとしての世界とは違う。

此処はもう、1つの世界として創られているのだから。
それに創り手は紡ぐ事、創り上げる事を生業としているから今も全く異なった世界を紡ごうとしている。
ああも多々創られては・・管理する彼等も苦労してる事だろう。

あちらの司も苦労してるかもしれんが、今の司には立派な尊がいるからね
特に心配する必要もなかろうさ。

「天帝、司殿が参られました」

肘置きに腕を乗せ、手の甲に顎を乗せつつ寛いでいる耳に来客を知らせる声。
しかもつい今しがた自身が苦労を思って同情していた本人。

自然と浮かんだ笑みをそのままに、天帝は『異界』の司を招き入れた。
白いシャツに黒いベストと、黒いズボンを身につけ
上衣の着物を肩から羽織ったスタイルの美丈夫。

創られた存在に共通する整った顔立ち。
一ミリも変化しないその表情で、男は形式的な挨拶をし
天帝に赦されるまで頭を下げた姿勢を保つ。

取り敢えず顔を上げさせていつも通りの問い掛けを投げた。

「こんにちは喪月、其方は異常なしかい?」
「修繕の異常はない。ただ・・・最近少し夜行の動きが活発になっている。」
「誰の差し金か、或いは夜行自身の意思か・・確認する必要がありそうだな」
「・・・後言うなら、アンタから奴に俺を監視するのを止めさせろ。」
「おやおや、それは無理な話だな。それに、夜行の動きが活発になっているなら尚の事だろう・・」
「・・・・めんどくせぇ・・・・・・」
「分かっているのだろう?それら全ては創り手の意向だ。」
「ちっ・・アンタが其処まで言うならもう少し監視されててやるよ」
「まあせいぜい巫覡の尊殿と己の『世界』を管理するように」
「・・へいへい、じゃあな。」

めんどくさそうに言い捨てて立ち上がる喪月。
彼は彼の『世界』で創られし『世界』を修繕管理している男だ。

最近は人間のような表情を見せるようになりつつある。
それもこれも、あの巫覡の尊のお陰なのだろう。

人形と同等に創られし者だった時から比べたら、いい変化である。
ああそうそう・・此処は多々存在する『世界』が唯一重なる空間でもあるんだよ。
各々に別々の『世界』にいる者達が、唯一此処では、合い間見える事が出来る所。

まあ全ての者が来られると言う訳ではない。
創り手が、特別力を与えた者のみが空間を渡って辿り着けるのだ。

多重世界を統括してるのは他でもない天帝。
創り手である神が、統括する役割を天帝に与えたから。
全てを繋ぎ管理する代わりに、天帝はこの場から外(下界)へは出られない。

全てを自由に管理出来るが、たった一つの自由を赦されない存在。
ある意味自由ではない存在である事に変わりはないな。
力と地位を手に入れても、自分が望めば自由に未来を変えられる小さき存在の人間である方が

もしかすれば、自由なのかもしれないね。

「らしくない事を考えてしまったな、後でにでも話し相手になって貰うとするか。」

他者の命を奪うと言う力を、きちんと理解し、避けようとする少女を
どうやら天帝である男は気に入ったようであった。
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