VD夢小説 梅の花



遥かなる時空の中で、は生きている。
現実の京都ではない所での生活。
平和の約束されていない、江戸時代手前の鎌倉時代。
多分だけどね?私 歴史ってあまり得意じゃないから。
どうして来てしまったのか、それは私にあるらしい。
が連れて来られた世界の京には、伝説があって
京が危機に陥った時、龍の宝玉に導かれ
異世界より、龍神の神子が現れる・・・。
どうやら、その神子が私みたいなのよ。
まあ・・・不幸中の幸いは、一人じゃなかった事。
幼馴染の将臣君と、弟の譲君も一緒にその時いたから
譲君とは直ぐ会えた、将臣君とも熊野で会えたから。

龍神の神子として、私は源氏へ迎え入れられた。
歴史に詳しい譲君はとても驚いていたっけ。
あの五条大橋での戦いで有名な、弁慶と義経と行動出来て
自分達も歴史の一部みたいになってる事に。
今熊野にいるけど、此処に来るまでだって色々あった。
宇治橋で白龍と朔に出会って、それから弁慶さんと義経さんと会って
京へ架け橋となる木曾との戦い。
それから京に入って、次々と八葉と出会い三草山での初陣。
そして、この熊野。
此処へは熊野の水軍の力を借りる為に来た。
それと・・私は皆の行く末を、結末を知ってる。
この後起こる事も、何処への選択を迫られるのかも。
その結末が、あまりにも辛すぎて私はまた熊野をやり直している。
京屋敷で平家に追い詰められ、火を放たれた後
皆はきっと命を落とした・・私も死んでたはずなんだけど
この世界に呼んだ白龍が、力の源である逆鱗を使って
私だけを元の世界に返した。
そこから、私の運命を変える戦いが始まった。

死ぬまでの間、行動を共にした熊野出身のヒノエ君。
その彼の運命を変えたくて、此処へ来た。
もう春の京で仲間にしたから、此処で仲間になる事はない。
だから一緒に熊野を回れる。
実は、私は彼に惹かれてるのよ。
強引で真意が分からない不思議な所があるけど。
それに今日は2月14日!乙女なら誰でも知ってる日!
ちゃんとしたチョコは無理かもしれないけど、絶対あげたい!
「神子?」
布団の上に座って、ガッツポーズをしてる私に
あどけない声が、遠慮気味に掛けられる。
「白龍?どうしたの?」
「うん、神子を呼びに来た 譲が朝御飯だって。」
何時からいたか分からないけど、視線の先には襖の奥に
ポツンと立ってる小さい白龍。
神様だから、人の姿をしてるけどとても人間離れした空気を持ってる。
どうやら、何時までたっても起きて来ない私を
譲君に頼まれて、呼びに来てくれたらしい。
「ごめんね、わざわざ来てくれて よし行こうか。」
「うん!」
立ち上がって白龍の手を握れば、嬉しそうに笑って白龍は答える。
まだ子供だから、一つ一つの仕草がとっても可愛いvv
台所に着くと、支度を終えた譲君の姿。
「やっと来たわね、はい 此処がの席よ。」
立ち止まってると眼下から笑いを含んだ朔の声。
そういえば、朔も女の子だし誘ってみようかな。
と思うと、白龍の手を離しイソイソと朔の隣に腰掛ける。
示した場所とは違う所、自分の傍に来た私を不思議そうに見て
「どうしたの?」
「朔、・・朔はチョコレート作りに興味ない?」
単刀直入にそう聞いた。
朔は聞き慣れない言葉に、首を傾げて問う。
「それは、外国の食べ物ね?はそれを作りたいの?」
外国・・・そっか、だよね。
「うん、私の国ではこの月になるとチョコを作るんだ。」
「どんな事をするの?私も知りたいわ。」
と笑顔で聞いてくる朔を見ていて、胸が痛む。
朔にはこの白龍にそっくりな、黒龍という恋人がいた。
彼がこの世にいてくれれば、朔も・・・・
それに気づくと、さっきまでの華やかな気持ちが薄れていった。
私って実は無神経だったのかも。
「ごめん朔・・あのね、バレンタインデーって言って
女の子達が大好きな人に想いを込めたチョコをあげるんだ。
私無神経だった、黒龍の事があるのに」
「ああ・・・いいのよ、言わないようにしてても
どうしても思い出してしまうものだし。」
気にしないで・と笑う朔の姿が、凄く辛そうに見えた。
ああ、やっぱり言ってはいけない事だったんだなって。
「さぁ、ご飯が冷めるわ 食べてからでもいいかしら。」
「うん」
私がフッた話題なのに、朔に気を使わせてしまった。

朔との会話はそれきりになって、私は一人外に出た。
材料の事とか、本当は譲君に聞きたかったんだけど
男の子に聞いても、譲君鋭いから分かっちゃうだろうし
作れるんですか?とか言われそう・・・。
ともかく、チョコレートとボールと泡だて器とか欲しい。
この京にあったら苦労しないって。
「何処に行くんですか?」
頭の中であれこれ考えてたら、またまた背後から呼び止められる。
考えてた事を忘れないように頭にメモってから、振り向く。
「弁慶さん・・あの、ちょっと町に。」
「買出しですか?そうだとしても、貴女は神子なんですから
誰か一人でも八葉を連れてって下さいね?」
とか言いながら、こっちに来る。
うん?ついて来てくれるのかな。
「何の買出しに行くんですか?僕で良ければお供しますよ?」
「有り難うございます、あの外国から来るお菓子を
売ってる店って知ってますか?」
と言ったら弁慶さんは、ちょっと考えるそぶりを見せ
ポンッと掌を打ち、何か閃いたのか問いには答えてくれた。
「それなら、水軍の方々が詳しいですから 連れてってあげますよ。」
す・・水軍!?マズイって、そこ行ったらヒノエ君いるかもしれないよ〜
かと言って断る事も出来ない。
だって、材料は欲しいもん。
「じゃあ・・宜しくお願いします。」
「はい、それじゃあ行きましょうか。」
弁慶さんはニッコリ微笑んで、熊野の町へと歩き始めた。
案内されながら、ヒノエ君と鉢合わせない事を祈りながら。

しかし・・・私の願いは届かないものなのです。
弁慶さんと一緒に、水軍の人達を尋ね歩いて
一通り聞いてみるんだけど、悔しい事に皆ヒノエ君の名を出す。
俺達何かより、頭領の方が詳しいっすよ・・みたいな。
「まあ、ヒノエはあれでも水軍の頭領ですからね。」
なんて、弁慶さんも納得しちゃってる。
まいったなぁ〜本当の目的を言う訳にも行かないし。
「神子様は何をお探しで?」
すっごくまいった顔をしてたら、正面にいた水軍の人が声を掛けて来た。
「そんな高価な物じゃないのよ?チョコレートとスポンジがあればって」
「チョコレートなら、昨日届いたばかりだしすぽんじとは?・・・」
「あ〜えっと、そうそう何ならカステラでもいいわ。」
「カステーラですな?おいちょっと見て来い。」
おそろおそろ聞いてみれば、意外に気のいい返事が返ってきた。
しかも、此処にあるみたいな反応・これは手応えありか??
私に聞いてきた人とは、別の人が屋敷へと走る。
勝手に持って来ていいのかなぁ・・仮にも頭領はヒノエ君。
ま、いいか・・この際。
「チョコレートとカステーラ・・何を作るのか大体は分かりましたね。」
静かに待っていると、こんなドッキリ発言を弁慶さんがした。
チラッと見てみれば顔には何時もの笑顔が作られてる。
弁慶さんも鋭いから、分かっちゃったかな。
でも、それをどうするかまでは分からないはずよ。
私が弁慶さんに、笑顔を向け返したタイミングで
屋敷へ消えた水軍の人が、両手に何か持って戻ってきた。

後半へ 続く