2幕 2-1話
◇
「示してみろ、お前の覚悟と価値を」
挑発にも似たその言葉はの負けん気を見事に刺激。
縁側の板の上に広げられた地図と睨めっこを開始。
途中補足と称して孫軽の説明も入った。
袁紹陣営の空気感や、武将達の基礎情報などなど。
先ず見た白馬・延津という土地。
布陣予想図的に書き込まれた簡易な陣容・・
その周りに注目すると、官渡は黄河から南東へ流れる官渡水を望み
濮水、陰溝水やその支流が複雑に交差する天険の地だと読み取れた。
袁紹軍は当然、曉を背に陣を構えるだろう。
一報の曹操という人物は、孫軽情報によると南郡より少し南下した許都から北進してくる。
この地形から読み取れるのは双方共に、複雑に交差する支流を避け、或いは天然の要塞になるよう布陣すると予測。
「袁紹軍の軍師は?」
「確か田豊ってやつだな、奴は最近方針を電撃戦から慎重な構えの持久戦略に変えたって噂だ」
「急な変更なのでしょうか?」
「いや、前年に行った我々や公孫讃殿との戦の時は短期決戦、所謂電撃戦を主張してたはずだ」
「急な主張の変え方に陣営内では、持久戦略を主張する田豊・沮授vs電撃戦派の郭図・審配に二分してるとか」
の問いに、探ってきた本人が軍師を教える。
更に付け足すように先を続けたのはを試そうとしているはずの張燕。
ともあれ、袁紹軍の陣営は内に憂いを抱え始めているという事になる。
電撃戦か、それとも都に近い事を活かした持久長期戦を摂るのか否か・・
どちらに転ぶか分からないが、仮に電撃戦を袁紹が採用した場合の陣容を話してみた。
「仮に電撃戦で攻めるなら、奥深くまで斬り込むに必須になる白馬は早く落としたいはず」
ならば勇猛な猛将を切り札に使うのが確実だろう。
袁紹軍には猛将にあたる武将が二人存在する、1人は顔良 もう1人は文醜。
名前のみしか噂話で聞こえて来ないから顔は知らない。
当然猛将だけでは曹操軍を破れない事くらい承知しているはず。
だから、囲いの武将を顔良や文醜から引き離す為の策を練る必要がある。
「先ずは春を待ち、白馬を奪いに来る猛将のどちらかを狙い急襲」
「春を待ち急襲?白馬の地は複数の支流に囲まれた天然の要塞だぞ?どう急襲する気なんだ」
「それですよ」
「?」
「こんな面倒な地の、支流に囲まれた場所なんかで奇襲など出来る訳がない。その油断を利用するんです」
囲いの武将を引き離すには、何か極めて戦場においては異質なもので注意を引くのです。
もう一人の猛将においても同様に、想像ですが・・猛将と称される人はある程度自身の武に自信を持っている。
この程度の数なら負けはしない、そのような自負を利用し誘き出して各個撃破・・・
急襲する際は目立たぬよう黄河の支流を越え、白馬の袁紹軍を急襲するのです。
電撃戦派と持久戦派と意見が二分しているなら付け入る隙も生まれやすい。
そこを利用すれば袁紹は判断を鈍り、他の武将に指示を出すはず・・指示を出すとすれば
「才ある軍師が曹操軍にいたら、迷わず猛将たちを捌いている隙に他の人達が混乱する袁紹軍を叩くはず・・
その隙に、張燕殿達が 天然の要塞に囲まれた烏巣を焼き払うなりして袁紹軍を飢えの危機に貶めれば袁紹軍の優位は傾く。
恐らく判断を間違うとすればこの時しかない、兵糧庫を守る武将を救援するのか・・或いは曹操軍へ斬り込むのか」
まああくまでも仮定だ。
幾ら綿密に練っても、上手く体現出来なければ意味もない。
「何故烏巣なんだ?」
「あくまで予測ですが、この図を見る限り兵糧庫として食糧を運び込ませるなら この烏巣が最適かと・・」
「判断を間違う確証はあるのか?」
「なければ此方で作ればいいだけの事・・」
「・・・どうする気だ?」
「烏巣を襲うにも、気づかれてしまえば元の木阿弥です・・・確実に奇襲を成功させるなら主張が二分しているのを利用しましょう」
聞き手の二人と視線を合わせ、冷静に且つ大胆には軍略を巡らせる。
恐らく戦況が不利へと傾けば内部で意見が分かれる袁紹軍は更に揉める筈だ。
冷静に物事を判断して意見する武将を敢えて孤立させ、不条理さを煽ってやれば必ず動く。
上手く孤立した武将の心を攻め、曹操軍へ内通する者にするのだ。
敵に下る際の重要な情報を、下る代わりに持ち込むと予想。
味方だった者にとっての弱点、突かれたくない盲点と言えば迷わず兵糧庫の存在を売る。
敢えてその瞬間を待ってから動くのでも遅くはないだろう。
兵糧庫の盲点を確実に知り得た上で動けば、成功率も上がるから。
「内通者の後を付け、敢えて曹操軍に兵糧庫の存在を知らせれば兵糧庫だけでなく其処へ荷を運ぶ輸送部隊の位置も分かる」
「しかし決定打になる策ではないな」
お前を連れて行くに値する決定打がない、と張燕は肩を竦める。
「確かにこのままいけば、内通者や内輪もめが始まるかどうかは運に任せるしかありません」
「・・・、お前まさか」
「この策で行くなら、波立たぬ水面を予め乱すきっかけを投じる必要がある」
策を提案しても、何だかんだで却下されるのは予想していた。
なら否定されてもこの策しかないと思わざるを得ないものを提案すればいいと
否定されるのを承知の上では複数の策と、方法を説いたのだ。
白馬の策も、兵糧庫の策も・・必ずきっかけを作る人物が必要になる物に。
白馬で注意を引くのも甄姫の傍仕えとして潜り込む役割も全て、張燕らでは不可能なものにした。
張燕達は大体の面子の顔が、袁紹軍に割れている。
これでは注意を引く事も甄姫の傍仕えとしても入り込めない。
つまり、必然的に面が割れていない者を用意しなくてはならないのだ。
「どちらにしても、私なら袁紹軍に面が割れていない・・これ以上の適任者はいないでしょう?」
そりゃそうだけどよ・・と何とも情けない顔で孫軽が頬を掻く。
まさかこう来るとは、とさしもの張燕もすぐに言葉が出ない。
反論の余地を予め封じた、16の娘が考えたとは思えない程の隙のない策だ。
仮に黒山賊の末端から顔の知れてない者を出したとしても、身振りや目つきから罪人だと知れてしまうかもしれない。
何より罪人や盗人の集まった黒山賊の奴等に相手の出方を見て上手く注意を引いたり
袁紹軍の内輪もめを悟られずに煽るだのの繊細な動きは期待するだけ無駄だ。
それに比べ、であれば怪しまれずに注意を引けるだろう。
自ら策を提案するだけの素養もあるし、場の流れを読むのも上手い。
音に聞く『女子の中の王者』と称された才媛・・・。
自らが袁紹軍へ潜り込む事で覚悟を示し、この策は自分にしか出来ないと認めさせる価値も示した。
ここまで見事に課題をクリアされたのでは此方も認めざるを得ない。
「分かった、、お前の策を採用しよう」
「おいおい張燕本気か??」
「有難うございます張燕殿!」
張燕は承諾したが、の兄代わりをして来た孫軽のみが納得の行かない声を上げる。
孫軽の事だから心の底から心配してるのだと分かるが、は時に頑固だ。
一度覚悟を決め、やるとなったらテコでも動かない。
自分の言った言葉に責任を持ち、それを果たそうとする節がある。
つくづく雀斑さえなけりゃなあと孫軽に無理はするな?と言い聞かせられているを眺めた。
策が決まったとなれば、準備が必要になる。
が春を待つと言ったのは、白馬の地を奇襲する為黄河を渡る際 川に入るからだろうと察した。
だがが甄姫の傍仕えとして入り込む案が濃厚になった今、気にする必要もない。
賊軍ではあるが、体力に自信のある奴等ばかりだ。
だが、もう一つの白馬案にが待ったを出す。
当然これには怪訝そうな顔を張燕も孫軽も向けた。
「待って下さい、より確実に内部へ入り込む為に白馬の方も私に」
「二兎を追う者は一兎も得ず、何か考えでもあるのか?」
「恩を返したいという言葉だけでは袁紹も怪しむと思う、仮に父母の死が私の予想した通りだとしたら尚の事」
どういうことだ?と目線で語る張燕に、は懸念を語った。
此処に来る前、従兄の表と現れた伝令兵について意見を交わした際
見逃せない不自然さに気づいてしまった事、そこから導き出した仮説が仮説の域を脱しそうな事も。
張燕と公孫讃が攻め入ったあの日の前日、夕方に訪ねて来た伝令兵から伝令書を受け取り
火急の要件と称して呼び出された父母、攻めてくる可能性を知って呼び出したのだとしたら?
袁家にとって何かの理由が生じ、家が邪魔になった可能性・・
仮定は仮定のままにしておきたかったが、父母の訃報を知ったその日に従兄の父に届いた伝令書の内容が全く異なったばかりか
知らせは戦後に届き、伝令兵も中身を確認するまで待機していたという違いもあった。
だから、考えずには居られなかったのだと。
自分の脳裏に浮かんでしまった仮説が、仮設ではなくなりそうで・・・
この事からは自ら入り込む事で、その真意も突き止められるのではと思った。
「真意を確かめる為に自らの命を贄にする気か」
「私が父母の死の理由を知った上で仕官したのか、或いは知らずに来たのかを探ろうと袁紹軍は盲目になる・・」
「結果お前の仮説通りではなかったら?」
「その時はそのまま傍仕えとしての任を全うします、甄夫人や袁煕様にお世話になったのは事実ですから」
「・・・そうか」
ならもう何も言わん、と言って上座から立ち上がる張燕。
その気配に少し俯いたも顔を上げる。
視界に映った張燕の顔は、怒るでもなければ呆れた物でもなく 妙に嬉しそうに見えた。
口元が綻んでる訳でもないんだが、空気が柔らかい。
この様子を付き合いの長い孫軽は珍しいものでも見るかのように張燕を眺めていた。
何年も一緒に行動していた孫軽には分かった、あれは、珍しいものを見つけワクワクしている顔だと。
あの張燕が強面で却下しても、はそれを予測して策を提示し
且つ提案した本人にしか無しえない策にした上で、きちんと己の価値と覚悟を示して見せたのだ。
これ程見事に言い負かされた事自体、張燕は初めての体験だったはず・・
しかもそれをやってのけたのが16歳の小娘で、奉公人と来たもんだ・・・面白いと感じるなと言う方が無理だろう。
「孫軽、皆を集めての策を伝えとけ」
はいはい、そう来ましたかー。
と予想通りの指示に孫軽は内心で噴き出す。
「張燕、お前はどうすんだ?」
「俺か?勿論袁紹の所へが潜り込む為の用意だ」
「あー、なるほど?」
恐らくが動きやすいよう草を放つつもりなんだろう。
何だかんだ厳しい事を言っても、結局のとこはを案じてるのだ。
全く素直じゃないねえ。
頭領って立場は中々にめんどくさそうだ。
自分の感情も表に出せねぇんだから。
その分賑やかしに孫軽が徹してる訳なんだが・・
静が張燕なら、孫軽は動。
誰よりも張燕の考えを理解し、張燕が作戦を成功させやすいように動く。
それが出来るのも付き合いの長さ、だろう。
にいってらっしゃいと見送られながら自分の役目を全うすべく
屋敷の裏に建てられた仲間達の寝起きする家へと孫軽は向かった。
張燕も孫軽を見送った後、参謀の白繞(はくらお)を呼びつけ今後の作戦に必要な物を用意するよう言付ける。
必要な物とは白馬の策が成功したのち傍仕えとして入り込む為の服だ。
それからもう1つ重要になるものを用意させると張燕は決めていた。
挑発にも似たその言葉はの負けん気を見事に刺激。
縁側の板の上に広げられた地図と睨めっこを開始。
途中補足と称して孫軽の説明も入った。
袁紹陣営の空気感や、武将達の基礎情報などなど。
先ず見た白馬・延津という土地。
布陣予想図的に書き込まれた簡易な陣容・・
その周りに注目すると、官渡は黄河から南東へ流れる官渡水を望み
濮水、陰溝水やその支流が複雑に交差する天険の地だと読み取れた。
袁紹軍は当然、曉を背に陣を構えるだろう。
一報の曹操という人物は、孫軽情報によると南郡より少し南下した許都から北進してくる。
この地形から読み取れるのは双方共に、複雑に交差する支流を避け、或いは天然の要塞になるよう布陣すると予測。
「袁紹軍の軍師は?」
「確か田豊ってやつだな、奴は最近方針を電撃戦から慎重な構えの持久戦略に変えたって噂だ」
「急な変更なのでしょうか?」
「いや、前年に行った我々や公孫讃殿との戦の時は短期決戦、所謂電撃戦を主張してたはずだ」
「急な主張の変え方に陣営内では、持久戦略を主張する田豊・沮授vs電撃戦派の郭図・審配に二分してるとか」
の問いに、探ってきた本人が軍師を教える。
更に付け足すように先を続けたのはを試そうとしているはずの張燕。
ともあれ、袁紹軍の陣営は内に憂いを抱え始めているという事になる。
電撃戦か、それとも都に近い事を活かした持久長期戦を摂るのか否か・・
どちらに転ぶか分からないが、仮に電撃戦を袁紹が採用した場合の陣容を話してみた。
「仮に電撃戦で攻めるなら、奥深くまで斬り込むに必須になる白馬は早く落としたいはず」
ならば勇猛な猛将を切り札に使うのが確実だろう。
袁紹軍には猛将にあたる武将が二人存在する、1人は顔良 もう1人は文醜。
名前のみしか噂話で聞こえて来ないから顔は知らない。
当然猛将だけでは曹操軍を破れない事くらい承知しているはず。
だから、囲いの武将を顔良や文醜から引き離す為の策を練る必要がある。
「先ずは春を待ち、白馬を奪いに来る猛将のどちらかを狙い急襲」
「春を待ち急襲?白馬の地は複数の支流に囲まれた天然の要塞だぞ?どう急襲する気なんだ」
「それですよ」
「?」
「こんな面倒な地の、支流に囲まれた場所なんかで奇襲など出来る訳がない。その油断を利用するんです」
囲いの武将を引き離すには、何か極めて戦場においては異質なもので注意を引くのです。
もう一人の猛将においても同様に、想像ですが・・猛将と称される人はある程度自身の武に自信を持っている。
この程度の数なら負けはしない、そのような自負を利用し誘き出して各個撃破・・・
急襲する際は目立たぬよう黄河の支流を越え、白馬の袁紹軍を急襲するのです。
電撃戦派と持久戦派と意見が二分しているなら付け入る隙も生まれやすい。
そこを利用すれば袁紹は判断を鈍り、他の武将に指示を出すはず・・指示を出すとすれば
「才ある軍師が曹操軍にいたら、迷わず猛将たちを捌いている隙に他の人達が混乱する袁紹軍を叩くはず・・
その隙に、張燕殿達が 天然の要塞に囲まれた烏巣を焼き払うなりして袁紹軍を飢えの危機に貶めれば袁紹軍の優位は傾く。
恐らく判断を間違うとすればこの時しかない、兵糧庫を守る武将を救援するのか・・或いは曹操軍へ斬り込むのか」
まああくまでも仮定だ。
幾ら綿密に練っても、上手く体現出来なければ意味もない。
「何故烏巣なんだ?」
「あくまで予測ですが、この図を見る限り兵糧庫として食糧を運び込ませるなら この烏巣が最適かと・・」
「判断を間違う確証はあるのか?」
「なければ此方で作ればいいだけの事・・」
「・・・どうする気だ?」
「烏巣を襲うにも、気づかれてしまえば元の木阿弥です・・・確実に奇襲を成功させるなら主張が二分しているのを利用しましょう」
聞き手の二人と視線を合わせ、冷静に且つ大胆には軍略を巡らせる。
恐らく戦況が不利へと傾けば内部で意見が分かれる袁紹軍は更に揉める筈だ。
冷静に物事を判断して意見する武将を敢えて孤立させ、不条理さを煽ってやれば必ず動く。
上手く孤立した武将の心を攻め、曹操軍へ内通する者にするのだ。
敵に下る際の重要な情報を、下る代わりに持ち込むと予想。
味方だった者にとっての弱点、突かれたくない盲点と言えば迷わず兵糧庫の存在を売る。
敢えてその瞬間を待ってから動くのでも遅くはないだろう。
兵糧庫の盲点を確実に知り得た上で動けば、成功率も上がるから。
「内通者の後を付け、敢えて曹操軍に兵糧庫の存在を知らせれば兵糧庫だけでなく其処へ荷を運ぶ輸送部隊の位置も分かる」
「しかし決定打になる策ではないな」
お前を連れて行くに値する決定打がない、と張燕は肩を竦める。
「確かにこのままいけば、内通者や内輪もめが始まるかどうかは運に任せるしかありません」
「・・・、お前まさか」
「この策で行くなら、波立たぬ水面を予め乱すきっかけを投じる必要がある」
策を提案しても、何だかんだで却下されるのは予想していた。
なら否定されてもこの策しかないと思わざるを得ないものを提案すればいいと
否定されるのを承知の上では複数の策と、方法を説いたのだ。
白馬の策も、兵糧庫の策も・・必ずきっかけを作る人物が必要になる物に。
白馬で注意を引くのも甄姫の傍仕えとして潜り込む役割も全て、張燕らでは不可能なものにした。
張燕達は大体の面子の顔が、袁紹軍に割れている。
これでは注意を引く事も甄姫の傍仕えとしても入り込めない。
つまり、必然的に面が割れていない者を用意しなくてはならないのだ。
「どちらにしても、私なら袁紹軍に面が割れていない・・これ以上の適任者はいないでしょう?」
そりゃそうだけどよ・・と何とも情けない顔で孫軽が頬を掻く。
まさかこう来るとは、とさしもの張燕もすぐに言葉が出ない。
反論の余地を予め封じた、16の娘が考えたとは思えない程の隙のない策だ。
仮に黒山賊の末端から顔の知れてない者を出したとしても、身振りや目つきから罪人だと知れてしまうかもしれない。
何より罪人や盗人の集まった黒山賊の奴等に相手の出方を見て上手く注意を引いたり
袁紹軍の内輪もめを悟られずに煽るだのの繊細な動きは期待するだけ無駄だ。
それに比べ、であれば怪しまれずに注意を引けるだろう。
自ら策を提案するだけの素養もあるし、場の流れを読むのも上手い。
音に聞く『女子の中の王者』と称された才媛・・・。
自らが袁紹軍へ潜り込む事で覚悟を示し、この策は自分にしか出来ないと認めさせる価値も示した。
ここまで見事に課題をクリアされたのでは此方も認めざるを得ない。
「分かった、、お前の策を採用しよう」
「おいおい張燕本気か??」
「有難うございます張燕殿!」
張燕は承諾したが、の兄代わりをして来た孫軽のみが納得の行かない声を上げる。
孫軽の事だから心の底から心配してるのだと分かるが、は時に頑固だ。
一度覚悟を決め、やるとなったらテコでも動かない。
自分の言った言葉に責任を持ち、それを果たそうとする節がある。
つくづく雀斑さえなけりゃなあと孫軽に無理はするな?と言い聞かせられているを眺めた。
策が決まったとなれば、準備が必要になる。
が春を待つと言ったのは、白馬の地を奇襲する為黄河を渡る際 川に入るからだろうと察した。
だがが甄姫の傍仕えとして入り込む案が濃厚になった今、気にする必要もない。
賊軍ではあるが、体力に自信のある奴等ばかりだ。
だが、もう一つの白馬案にが待ったを出す。
当然これには怪訝そうな顔を張燕も孫軽も向けた。
「待って下さい、より確実に内部へ入り込む為に白馬の方も私に」
「二兎を追う者は一兎も得ず、何か考えでもあるのか?」
「恩を返したいという言葉だけでは袁紹も怪しむと思う、仮に父母の死が私の予想した通りだとしたら尚の事」
どういうことだ?と目線で語る張燕に、は懸念を語った。
此処に来る前、従兄の表と現れた伝令兵について意見を交わした際
見逃せない不自然さに気づいてしまった事、そこから導き出した仮説が仮説の域を脱しそうな事も。
張燕と公孫讃が攻め入ったあの日の前日、夕方に訪ねて来た伝令兵から伝令書を受け取り
火急の要件と称して呼び出された父母、攻めてくる可能性を知って呼び出したのだとしたら?
袁家にとって何かの理由が生じ、家が邪魔になった可能性・・
仮定は仮定のままにしておきたかったが、父母の訃報を知ったその日に従兄の父に届いた伝令書の内容が全く異なったばかりか
知らせは戦後に届き、伝令兵も中身を確認するまで待機していたという違いもあった。
だから、考えずには居られなかったのだと。
自分の脳裏に浮かんでしまった仮説が、仮設ではなくなりそうで・・・
この事からは自ら入り込む事で、その真意も突き止められるのではと思った。
「真意を確かめる為に自らの命を贄にする気か」
「私が父母の死の理由を知った上で仕官したのか、或いは知らずに来たのかを探ろうと袁紹軍は盲目になる・・」
「結果お前の仮説通りではなかったら?」
「その時はそのまま傍仕えとしての任を全うします、甄夫人や袁煕様にお世話になったのは事実ですから」
「・・・そうか」
ならもう何も言わん、と言って上座から立ち上がる張燕。
その気配に少し俯いたも顔を上げる。
視界に映った張燕の顔は、怒るでもなければ呆れた物でもなく 妙に嬉しそうに見えた。
口元が綻んでる訳でもないんだが、空気が柔らかい。
この様子を付き合いの長い孫軽は珍しいものでも見るかのように張燕を眺めていた。
何年も一緒に行動していた孫軽には分かった、あれは、珍しいものを見つけワクワクしている顔だと。
あの張燕が強面で却下しても、はそれを予測して策を提示し
且つ提案した本人にしか無しえない策にした上で、きちんと己の価値と覚悟を示して見せたのだ。
これ程見事に言い負かされた事自体、張燕は初めての体験だったはず・・
しかもそれをやってのけたのが16歳の小娘で、奉公人と来たもんだ・・・面白いと感じるなと言う方が無理だろう。
「孫軽、皆を集めての策を伝えとけ」
はいはい、そう来ましたかー。
と予想通りの指示に孫軽は内心で噴き出す。
「張燕、お前はどうすんだ?」
「俺か?勿論袁紹の所へが潜り込む為の用意だ」
「あー、なるほど?」
恐らくが動きやすいよう草を放つつもりなんだろう。
何だかんだ厳しい事を言っても、結局のとこはを案じてるのだ。
全く素直じゃないねえ。
頭領って立場は中々にめんどくさそうだ。
自分の感情も表に出せねぇんだから。
その分賑やかしに孫軽が徹してる訳なんだが・・
静が張燕なら、孫軽は動。
誰よりも張燕の考えを理解し、張燕が作戦を成功させやすいように動く。
それが出来るのも付き合いの長さ、だろう。
にいってらっしゃいと見送られながら自分の役目を全うすべく
屋敷の裏に建てられた仲間達の寝起きする家へと孫軽は向かった。
張燕も孫軽を見送った後、参謀の白繞(はくらお)を呼びつけ今後の作戦に必要な物を用意するよう言付ける。
必要な物とは白馬の策が成功したのち傍仕えとして入り込む為の服だ。
それからもう1つ重要になるものを用意させると張燕は決めていた。
魏帝の徒花
2019/2/28 up
策を話す書き方が下手くそですみません(・∀・)ハハハ
如何に凄い事を言ってのけてるのか、ていうのを書き手が読み手の皆さんに感じて貰えるように書かなければだというのに!
次の次くらいで曹丕と出逢うように進めたいですねえ・・・これ曹丕夢ですからぁ
張燕さんには4人ほど部下っぽい人がいますが、wikiではリンクが無く不明なので名前だけ出し、その部下の人と成りは捏造します。
最後に名前だけ出した白繞さんも捏造です、そして読み方が音読みで「はくにょう」訓読みだと「はくじょう」なんですが
にょうとじょうかあ・・・響きがヤダ!と判断した結果、中国語読みを採用しました(笑)ハクジョウ・・って白状みたいだし・・・
登場させたからにはそれなりに作中で動かせるようにしたいっすね(`・ω・´)がんばります!
如何に凄い事を言ってのけてるのか、ていうのを書き手が読み手の皆さんに感じて貰えるように書かなければだというのに!
次の次くらいで曹丕と出逢うように進めたいですねえ・・・これ曹丕夢ですからぁ
張燕さんには4人ほど部下っぽい人がいますが、wikiではリンクが無く不明なので名前だけ出し、その部下の人と成りは捏造します。
最後に名前だけ出した白繞さんも捏造です、そして読み方が音読みで「はくにょう」訓読みだと「はくじょう」なんですが
にょうとじょうかあ・・・響きがヤダ!と判断した結果、中国語読みを採用しました(笑)ハクジョウ・・って白状みたいだし・・・
登場させたからにはそれなりに作中で動かせるようにしたいっすね(`・ω・´)がんばります!
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