覚悟していた恐れ




喪月神によって連れて来られた達。
天を治める天帝からこれからすべき事や
連れて来られた理由を説明された。

まんまゲームの世界設定のままの状況に凛達は戸惑いを見せる。
しかも付け加えられた設定がある事も知った。

状況設定はゲームのまま、邪仙と妖仙によって創られた世界で
居合わせたは『麒麟の童子』とか言う役割を持ち
同じ世界から連れて来られた凛達9人は、を守る役割があるらしい。

童子と竜生九子

どちらも聞き慣れない響きの言葉だ。
己の本心に忠実な忍足が、小声で愚痴ったのを凛は聞きとめている。
状況は分かったが、何で男を守らなアカンのや、と。

少なからずそう思ってる奴もいるかもしれないが
凛にはどうでもいい事だった。

天帝は説明を終えると先ず彼らにこう言った。
動き出す前に服を着替えて装備を選びなさい、と。
・・・・装備??と聞き手の10人は天帝を見上げた。

「君達の趣味や特技に合う武器や装備を揃えてある、その中から好きな物を選びなさい。」

本格的に戦に身を投じる事になるのを暗示している言葉だった。
と言う訳で、達はゾロゾロと娘娘の案内で其処へ向かっている。

後ろから感じる彼らの視線を背に、は娘娘の後ろを歩いた。
天帝は、ハッキリとは言わなかったが察しのいい彼らにも分かってしまっただろう・・・
此処が無双OROCHIの世界なのだと言う事が。

既に喪月神によって彼らももこの世界と関わりが出来てしまった。
恐らくこの世界に生きる存在として組み込まれたと言う事であり

こうなってしまった今、もう逃げ出す事は出来ない。
喪月神の代わりには『生と死』を管理し、遠呂智に永劫の死を与えなくてはならないのだ。

どちらの存在でもある麒麟の力、それを狙う輩と言えば間違いなく妲己達の事だろう。
再臨の方で言う卑弥呼のような位置になるのだろうか?
けど実際の所、卑弥呼の立ち位置がどんなのだったのか分かっていない。

ゲームの中でも詳しく語られてなかったような気もする・・・・
着替えて支度が出来たらいよいよ始まるんだ・・
ゲームと同じであり、決して同じではない現実が。


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娘娘の案内で通されたのは、20畳はありそうな広さの一室。
個室が10室その20畳の室内に用意されており、着替えは1つの部屋の中で済ませられる仕組みだ。

武器も服も一面に用意されている。
ざっと見て幾つかの職ごとに分けられていた。

戦国風になら、歩兵、槍兵、忍、雑賀衆・・・・
三国風も同じアジアなので武器は似たような物が見受けられる。
刀に槍に、鉄砲、鉄扇、双錘、九節鞭、羽扇、峨嵋刺、弓、などなど多数の武器。

室内へ足を踏み入れた面々は、先ずその広さと規模に目を丸くした。
と言っても一人だけ表情を変えない男が一人。

「ふん、このくらいの広さの部屋なんざ俺の家にも10部屋以上はあるぜ」

俺様何様跡部様である。
感嘆する面々をそう一蹴し、さっさと室内へ入って行った。
まあそうでしょうね、何たって彼の家は豪邸だもの。

跡部の態度にも驚く事なく続いて室内へ足を踏み入れた。
これだけ種類があると簡単には決まらなさそうね・・・・・・

あらゆる武器や防具を眺めるの横では、甲斐が嬉々とした表情で武器を選んでいる。
やはり男の子だからなのだろうか、とても楽しそうな顔だ・・・。
色々な武器を手にとってどれにしようか決め兼ねてるのかなと思ったが、どうやら違うようである。

「わんはこれにするさー」
「え、もう決めたの??」
「ああ、これ使うの得意なんだよ」
「へぇ・・・・えと、トンファーだっけ」
「ぬうがやー、知ってたんか」

高々と宣言した甲斐の手には、長い棒に持ち手の付いた武器が握られていた。
無双をした事ある人なら記憶にあるはずだけど、三国のキャラ、孫策が得意としてる武器です。
身軽で沖縄武術も嗜む沖縄の甲斐君には相応しい武器よね、うん。

彼らなら普通にヌンチャクでも似合いそう・・・・・
黒の胴着とか着て、ヌンチャク振り回して欲しいわ(THE 妄想)

うろ覚えだけどトンファーの扱いが得意な甲斐君らしい選択ね。
となると平古場君はどんな武器を選ぶんだろう、無性に気になった。

甲斐はが武器の名を言い当てた事に驚いたが
すぐさまの世界では自分達が漫画になってる事を思い出して納得。
恐らく自分の事を漫画で読んで覚えてたんだろう、と。
となると何処まで知られてるのかが急に気になった。

甲斐がそんな風に考えてる横で、も支度を選んでいる。
武器はこの神剣を使うから別として、身を守る防具を決めなくてはならない。
怪我したり下手すれば殺されて命を落とす可能性のある戦場だ、遠足気分でいる訳には行かない。

でも無双のキャラって、結構身軽な服装だったような・・・・?
女性キャラなんて誰も鎧とか付けてなかったよね??
あ、でも戦国の方のキャラは鎧付けてたね。

ふうむ・・・ちょとまて、私 今男装してるんだった。
胸当てだけの鎧でいいかーとか思ってる場合じゃないわね。
うーーーん・・・・決まらない(

皆はどんなの選んでるんだろう、そう思って眺めていた鎧から視線を上げる。
の斜め前には、俺様何様跡部様が装備を厳しい目で眺めていた。

彼は乗馬とか得意だったよね?
騎馬兵系にするのかな・・いや、それはなさそうだわ。
容姿に自信持ってるし、もっと華やかそうなのを選びそう(

「アーン?何さっきから見てやがる」

あ、気づかれてしまった。
流石洞察力が鋭い跡部様ですね・・・

「跡部さんは、どんなのを選ぶのかなーと」
「ふん、そんな事、貴様に話すまでも――」
「どの武器が自身の能力を発揮させやすく、どの防具がどれだけ自身の魅力を引き出せるのか・・が基準ですか?」
「―――・・・ほう?」
「へー自分中々やるやん」

気づかれてしまったので誤魔化す事なく問いをぶつけてみた
思った事を正直に、勿論跡部本人は一瞬目を丸くさせた。
内心を悟られないうちに沈黙は短めにし、跡部は二言だけ無理矢理返す。

一堂に介してからまだ数十分しか時間を共にしていない。
まあ『漫画』からの知識もあるとは思う、が、それを別にしたとしても
初めましての状態で此処まで己の性格や拘りを言い当てられるとは・・・

ふん・・ただの異世界人って訳でもなさそうじゃねぇか

感心した跡部、不敵な笑みを返した辺りで
其処へ横から関西弁が被さった。

確認するまでもない、関西弁で喋る男は一人しかいねぇ・・・・
ああでも・・仁王も喋るかもしれねぇが・・・この声のトーンはあの男に間違いない。

「何だ忍足・・・支度は決まったのか?」
「何やとは何やねん、珍しく跡部が鋭い事言われてんの見て来てみただけや」
「つまり、まだ何も決まってねぇって事か」

横を見れば案の定、声を被せて来たのは氷帝の天才。
すっと通った鼻筋に、切れ長な瞳。これは女の子が放っておけない顔だろう。

彼と跡部の人気の高さはも漫画を通して知っている。
その彼らが今こんなに近い距離で喋って動いて、呼吸してるなんてね・・
しかも私とちゃんと言葉をかわしてるし、紙に描かれた絵でも何でもなく『生きてる』。

その事実がまだ信じられないな〜・・・・
でも間違いなくこれは現実であり、夢でも何でもない。
もうそれを認めて、私も喪月神から授けられた力を受け止め役割を全うしなきゃね。

ちゃり・・・・

ふと指に触れた鉄。
瞬間 心臓が跳ねた。

神剣・・だけど、私の世界ではこれは命を奪う道具。
剣を翳して守るべきものを守る、そんな時代は当に過ぎた。
けれど此処は、この世界では・・・戦わなければ奪われる物がある。

私はそれをやらなくちゃならない。
元々がゲームの世界だとしても、そうでないとしても。
敵であっても・・・・命を、絶たなくてはならない。

怖い・・・物凄く怖い。
でも、でも・・それをやるのは私だけじゃない・・・んだよね?

私を守る、なんて立場になってしまった彼らにも
命を絶つ・・と言う事をさせてしまうんだ・・・・

「・・・・ごめんね・・皆・・・」
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