守ろう憲法第9条

 群馬自治体一般は、日本国憲法を守り活用することを望みます。第2次世界大戦は5000 万人にも及ぶ尊い命を奪いました。その反省の中で世界の良心が結実したのが不戦の誓い日本 国憲法第9条です。戦争は、人間のすべての営みを破壊し、人間の心を蹂躙し、愛や慈悲を押 しのけ憎悪と悲哀を招来します。
 今、日本国憲法は9条を中心に試練にさらされています。生存権や言論の自由など基本的人 権も危機に直面しています。私たちは、平和のうちに生活する権利を持っています。誰にもそ の権利を犯されたくありません。ですから、私たちは他国の人が平和のうちに暮らす権利を尊 重します。日本を戦争をする国にしてはならないと考えます。
 井上ひさし(作家)さん、加藤周一(評論家)さんら9人が「9条の会アピール」(別掲) を2004年6月10日に出しました。それは、あっという間に日本全国を覆い、共感と支持 が次々と寄せられています。私たちもこのアピールに賛同します。そして、日本国憲法を学び その真の値打ちを理解し、それを守り、活用するために奮闘します。

 日本国憲法は、いま、大きな試練にさらされています。
 ヒロシマ・ナガサキの原爆にいたる残虐な兵器によって、5000万を越える人命を奪った第二次世界大戦。 この戦争から、世界の市民は、国際紛争の解決のためであっても、武力を使うことを選択肢にすべきではない という教訓を導きだしました。
 侵略戦争をしつづけることで、この戦争に多大な責任を負った日本は、戦争放棄と戦力を持たないことを規定 した9条を含む憲法を制定し、こうした世界の市民の意思を実現しようと決心しました。
 しかるに憲法制定から半世紀以上を経たいま、九条を中心に日本国憲法を「改正」しようとする動きが、かつ てない規模と強さで台頭しています。その意図は、日本を、アメリカに従って「戦争をする国」に変えるとこ ろにあります。そのために、集団的自衛権の容認、自衛隊の海外派兵と武力の行使など、憲法上の拘束を実際 上破ってきています。また、非核3原則や武器輸出の禁止などの重要施策を無きものにしようとしています。
 そして、子どもたちを「戦争をする国」を担う者にするために、教育基本法をも変えようとしています。これ は、日本国憲法が実現しようとしてきた、武力によらない紛争解決をめざす国の在り方を根本的に転換し、軍 事優先の国家へ向かう道を歩むものです。私たちは、この転換を許すことはできません。
アメリカのイラク攻撃と占領の泥沼状態は、紛争の武力による解決が、いかに非現実的であるかを、日々明ら かにしています。なにより武力の行使は、その国と地域の民衆の生活と幸福を奪うことでしかありませ ん。1990年代以降の地域紛争への大国による軍事介入も、紛争の有効な解決にはつながりませんでした。 だからこそ、東南アジアやヨーロッパ等では、紛争を、外交と話し合いによって解決するための、地域的枠組 みを作る努力が強められています。
20世紀の教訓をふまえ、21世紀の進路が問われているいま、あらためて憲法9条を外交の基本にすえるこ との大切さがはっきりしてきています。相手国が歓迎しない自衛隊の派兵を「国際貢献」などと言うのは、思 い上がりでしかありません。
 憲法9条に基づき、アジアをはじめとする諸国民との友好と協力関係を発展させ、アメリカとの軍事同盟だけ を優先する外交を転換し、世界の歴史の流れに、自主性を発揮して現実的にかかわっていくことが求められて います。憲法9条をもつこの国だからこそ、相手国の立場を尊重した、平和的外交と、経済、文化、科学技術 などの面からの協力ができるのです。
 私たちは、平和を求める世界の市民と手をつなぐために、あらためて憲法9条を激動する世界に輝かせたいと 考えます。そのためには、この国の主権者である国民一人ひとりが、9条を持つ日本国憲法を、自分のものと して選び直し、日々行使していくことが必要です。それは、国の未来の在り方に対する、主権者の責任です。 日本と世界の平和な未来のために、日本国憲法を守るという一点で手をつなぎ、「改憲」のくわだてを阻むた め、一人ひとりができる、あらゆる努力を、いますぐ始めることを訴えます。

       2004年6月10日
         井上 ひさし(作家)
         梅原 猛(哲学者)
         大江 健三郎(作家)
         奥平 康弘(憲法研究者)
         小田 実(作家)
         加藤 周一(評論家)
         澤地 久枝(作家)
         鶴見 俊輔(哲学者)
         三木 睦子(国連婦人会)