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気丈に振舞ってたと思うが、本当は不安な筈
地下に続く階段を駆け下りるうち、人影が見えた。

💛「阿部!」

見えた背が馴染みある阿部だと気付くと
その背に声を掛けた照。

呼ばれて気付いた阿部が駆けて来るのを照は受け止めた
少し慌てた様子である。

💚「照!」
💛「やっぱ中に入れない感じ?」
👤「・・・・・・」
💚「うん、扉は開くんだけど棚がね・・・」
💛「・・・悔やむのは後でも出来る、お前もなんか考えて意見出そ?」
💚「そうだね、腹は立つけど後にしよう」

倉庫を振り向きながら状況を話す阿部は
照の少し後ろに、俯いた青年を見つけ
表情と態度から彼が首謀者と察した。

が、今は彼を責めるより仲間を救う事を優先
照は青年の肩を叩くと倉庫の方へ向かった。

途中照に気付いた翔太と佐久間が近寄る。
扉からは1歩程度しか中に入れず
入口の幅も無い為、何人かで起こすのは困難

💙「照どうする?」
💛「は、中?声は聞いた?」
💗「最初俺と翔太が来た時は・・・」
💙「誰かいませんかって叫んでた」
💗「後、叫びながら何か叩いててさ」
💙「俺らその音があったから迷わず行けたよ ただ外からだとが見えなくてさ」

中に居るの様子も分からず、
助け出し方をどうしたらいいのか考えあぐねていたと。

🤍「岩本君、ちゃん弱ってるかも・・・」

佐久間と翔太の話を聞きながら倉庫を眺めた
その照と目が合ったラウールが駆け寄ると
今や反応が無いの事をそう推察した。

可能性は高い、それか・・・消耗しないよう
体力を温存すべく叫ぶのをやめたのかも。

💜「なるほどな、その可能性はあるわ」
🧡「万が一を考えて事務所の人ら呼ぶ?」
❤「・・・いや、もう少し方法を探してからにしよう」
🖤「なんでですか」
🤍「ちゃん中で倒れてるかもしれないんだよ?」
❤「心配なのは俺も同じだよ、けど、こんな風に騒がれてもは喜ばない。」

照の推察に同意を示した深澤を始め
それでも誰か呼ぶべきでは?と訴える康二。
正しい判断だとは思うが、宮舘は待ったを掛けた。

当然納得出来ないラウールと目黒が宮舘に意見をぶつける。
それを聞いていた佐久間も、小さく笑んで息を吐くように呟いた。
長い付き合いから、佐久間は宮舘が何を言わんとしてるのか
何となく察せてしまった。

💗「・・・かもしんないね」
💛「多分、アイツは騒ぎをデカくはしたくない筈・・・よし もうちょい考えるか」

末っ子組は納得行かない顔をしている中
照も佐久間や宮舘に同意し、頷いた。

多分舘さんはを嵌めた青年の事を考え
ならこうするんじゃないかと読んだのだろう・・・
騒ぎが大きくなれば青年の立場が悪くなる。

つい数分前自分が青年に掛けたのと同じ事を宮舘が考えていた事に対し
何やら思考が似てるなあ、と口許が緩む照。
それから手分けして照達は倉庫の左右も覗う

👤「あの・・・確か倉庫の中に窓が1つだけあったと思います、向かって左側」

9人の必死さとに向けた信頼を間近で見ていた青年、静かに考え込み記憶を辿る。
その成果内部を少し思い出し、近くの翔太へ近寄ってそれを報告した。
振り向いた翔太から鋭い雰囲気が消え

💙「お前ナイス!・・・照、ちょっと聞いて」
💛「ああ?なに翔太」
💙「照お前ガラ悪いな」
💛「いいから何だよ(笑)」
💙「彼が思い出してくれたんだよ」

すぐ走ると左の部屋の中を覗こうとしてる照を呼び止め、
ちょっとだけガラの悪い照に青年が思い出した事を伝えた。

翔太から話を聞いた照の目付きが変わる。
ホントか?と目線だけで青年に問う。

👤「間違いないです、俺隣の部屋の鍵借りて来ます!」
💛「オッケ頼んだ!」
❤「照、何か手伝える事ある?」
💙「俺も、何か出来る事あるかな」
💚「勿論俺だって何かやりたい」

問われた青年は力強く頷き、踵を返した。
それを見送ってから8人が照の周りに集まる

中々に団結し始めてるじゃん俺ら。
と集まったメンバーを見つつ思う照。
取り敢えず青年が戻るまでの間に役割を分担

隣の部屋に入るのは照と宮舘に目黒。
残りは倉庫の入口に待機、上手く倉庫に入れたらを最優先で助け出し
そのメンバーと外に居るメンバーが中から棚を起こすしかない。
あれやこれや話し合ってると、走って来る足音が聞こえ、青年の姿が戻って来た。

👤「鍵、借りて来ました・・・!」
💛「おっし、ありがとなちょっと休んどけ」
❤「ふっかは俺らが入ったら医務室に行ける?多分消耗してるはずだから」
💜「オケ、任しとけ」
💚「そしたらラウールは俺とカフェテリア」
🤍「カフェテリア?あ、水貰うんだね?」
🖤「岩本君、いつでも行けますよ俺」
💗「康二は俺と一緒に外から棚起こすぞ」
🧡「はす!」

一斉に青年に集まるや、次々に労を労った。
照は青年の頭を撫でた後すぐさま隣の部屋へ

宮舘は後に続きながら深澤に医務室へ行くよう依頼した
彼是は倉庫に3時間弱居る、食事も食べてないし5月とはいえ蒸し暑い中
倉庫に閉じ込められ普通で居られる筈もない

頼まれた深澤もそれを察し、1人1階へ。
阿部はラウールを連れ出して1階に在るカフェテリアに水分確保に走って行った。

気合い十分な目黒は照に続いて行き、言葉通り扉が開くのを待っている。
曲がった事が大嫌いな目黒は、まだ怒りが顔に出ていた。
多分怒りは9人全員の心にあるだろう・・・

目黒より歳が上なメンバーは上手く隠したり
消化したにすぎないだけで、怒りは消えてなかった。

💙「俺なにしよう!?」
❤「翔太は外からちゃんに声掛けて」
💙「らじゃ!」

テキパキと役割を決めたメンバーを見遣り
1人だけあぶれて焦る翔太に対し

隣の部屋に入る寸前宮舘が翔太に頼んだ。
外から声を掛けるのも重要な役割だ。
を励ますべく、翔太が口を開いた頃・・・

💙「~!」
🐇「・・・ふあ?誰か呼んだ!?」

またも仮眠していた、大物だな。

若干聞いた声に目を覚ましたら
陽は少し傾き、大嫌いな黄昏時が近かった。

やはりこのまま夜に・・・と早合点。
一気に心細くなり顔も不安顔になるその時
不意に右側に気配を感じ、窓を見上げた。

💙「!大丈夫なのか返事しろコラ!」
🐇「この声、翔太くん・・・?大丈夫だよバカ~」

窓には誰も居ないが、今度こそクリアに聞こえたメンバー
渡辺翔太の声に"コラとはなによ(笑)"と思いながら声を張り上げる。

言い返しながらは、ヘトヘトに疲れきってた体に力が漲るのを感じた。
そのやり取りを隣の部屋で聞いた照達も思わず笑い合った、は相変わらずだなと。
これを受けた佐久間が中へ叫ぶ。

💗「今照達が向かってるから安心しな~!」
🐇「さっくんも来てくれたんだね!了解っ」
💗「俺や翔太だけじゃないよ(*‘∀‘)」
🖤「('ω')俺も居るんですけど?」
🧡「ちゃん俺もおるからな~!」
🐇「うん、うん・・・!ありがとう、皆・・・」

中に届けられる皆の声に、心が震えた。
私の事、忘れたりしてなかったんだね・・・!
皆はちゃんと迎えに来てくれた。
それがひたすらに嬉しくて言葉が詰まる。

取り敢えず無事なのが分かった6人と青年。
隣の部屋に入った3人は、青年の話した窓を見つけ 長机を運ぶと窓の下に設置。

💛「目黒、中見えるか?」

床から窓までは190はありそうで、長机を置いてみたが多分宮舘では高さが足りず
照にも数センチ足りない事から
この中で1番背の高い目黒へ照は託した。

🖤「やってみます」
💛「任した」
❤「机はちゃんと押さえてるよ」

意図を察し、頷いてから長机に上る目黒。
その長机を両脇から照と宮舘が押さえる。

足元は気にせず目黒は背伸びをし
先ずは此処と隣を隔てる窓の鍵を外す。

カラカラと横ずらしに窓を開けて行き
薄暗い倉庫の中を食い入るように見渡した。
暗さに目が慣れて来た頃、ぼんやりと浮かび上がる白銀。

🖤「!岩本君 舘さん、居た!」
💛「マジか、の様子は?」
🖤「・・・座り込んでる?」(目黒
💛「もっかい呼んでみて」(岩本
🖤「はい、おい!こっち」(目黒

目の端に白銀を見た瞬間興奮する目黒。
下で支える2人に向かって報告した。

姿は確認出来ても顔が見えないのは不安。
照に追加で頼まれた目黒が再度呼ぶと
漸く眼下のが窓と目黒を見上げた。

🐇「・・・!?蓮?」
🖤「やっとこっち見たなお前」
🐇「てか、窓開いたんだ?さすが蓮!」
💛「('ω')いや俺らも手伝ったし」
❤「ははは(笑)」

正面に意識を向けていた為、気付くのが遅れた
実は泣かないよう涙を隠してから窓を見たので遅れただけだったりする。

そうは知らない目黒蓮。
取り敢えず照と位置を代わり、先行を譲る。

隣の部屋から照が声を張り、そっち行くからと言われた
痛む足で立ち上がると足場を作る為崩れたマットを2つ折りにした

ズキンズキンと痛む足首をなるべく庇い
どうにか窓の下にマットを敷く事に成功。

💛「んっ、しょ・・・っと」
🐇「おお~・・・照だ・・・」
💛「なんだよそのリアクションは(笑)」
🐇「凄い久しぶりに見た気がしてつい(笑)」
💛「強がっちゃってまあ」
🐇「べ、別に強がっては」
💛「ハイハイ」

窓からにゅっと現れた照を見た瞬間
またも感極まりそうになったので何とか誤魔化すが
照には見抜かれたのか苦笑された。

その間も隣の部屋の高めの窓からは宮舘が現れ
残る目黒は、照と宮舘がマットに立ち
倉庫側から来る目黒を引っ張り上げて無事3人が倉庫内に入る事に成功した。

❤「さん、遅くなってごめんね」
🐇「いえ・・・寧ろ騒がせてしまって・・・」
💛「誰もそんな風に思ってないよ」
🖤「うん、兎に角良かったわ・・・」
🐇「ありがとう、皆・・・!」

3人を前にしたら益々感極まりそうな
心に湧く感情を必死に抑え、感謝を伝えた。
先ずは倉庫から出なくてはならない。

中々に蒸し暑く、の肌はしっとり汗ばみ
色白な顔も少し赤らんでいた。

🤍「倉庫には入れた?水貰って来たよ!」
💛「、取り敢えず水貰お」
🐇「うん・・・ありがとう」
❤「大丈夫?座ってようか
🖤「座れるか?」
🐇「座れるけどタンマ」
💛「どした?」

静かな倉庫に届いたラウールの声を聞き付け
水だけでも窓から投げ込ませようと考えた照
何となく足元が心許ないを促し

床に座らせようとしたが、何故かマテと言われる3人。
それとなんか顔色が悪い。
そんな中窓側から声を掛けられた。

🤍「水渡すよ~?」
💛「目黒悪い、受け取れる?」

声でラウールなのは分かる。
すぐ窓に近い位置に居た目黒へ頼み
窓越しに目黒はラウールから水を受け取った

渡されたのはペットボトルの水。
受け取った水を手に戻って来る目黒はすぐの横に回り、水を持たせる。
その目黒へは笑ってから言う。

🐇「あのね、座ったら多分・・・立てそうに無いんだわ」
🖤「え?」
💛「ちょっと脱げ」
🐇「( 'ω')ファッ!?」
❤「照、言い方😶」
💛「兎に角脱げ」

へにゃっと笑った笑みに力は無く、不信感を得た目黒に代わり
何か感じた照がずいっと距離を詰めて来た。

何とも誤解を招く言い方だが極めて真顔。
戸惑うには構わず腕を引き、膝裏を抱えるようにして横抱きにすると
マットの上に腰掛けさせ、右側の靴と靴下を脱がせた。

(脱げって靴と靴下か・・・マジ焦った)by目黒

1人目黒だけが内心でホッとしていたのは言うまでもない。
の靴と靴下を脱がし、足を診た照は わしゃわしゃとの頭を撫でながら立ち
棚に向かいながら診た結果を口にする。

💛「捻挫だな、兎に角棚起こそう」
❤「ふっかを医務室に向かわせて良かった」
💛「さすが舘さんナイス機転」
🖤「ホントさすがっす」
🐇「ご、ごめんなさい・・・」
💛「謝んなって」

照の診た後、宮舘と目黒もの足首を確認
確かに右足首が紫色に腫れ上がっていた。
これではまともに歩くのも難しいだろう・・・

捻挫の理由はさて置き、宮舘と目黒も立ち上がり
倒れたまま道を塞いでる棚の前に立った

💛「よし、佐久間と康二も外から頼むわ」
💗「合点承知之助!」
🧡「照にぃ了解!」

照の合図で待機していた佐久間と康二が応を返し、中と外で目配せし合った。
捻挫してなければ手伝えたのに、と思いつつ
ラウールから預かった水で喉を潤せた

皆が駆け付けてから1時間ちょいが経過。
やっと棚は取り除かれ、倉庫から出れた。

軽度の熱中症になりかかっていた
照が軽々と背中に背負い、倉庫から脱出。
は出た先に居た青年とまみえた。

恨み辛みを言われる覚悟で向き合った青年。
しかしはそんな事ではなく、ニッコリ笑うと気丈な振る舞いでこう述べた。

🐇「今回は手打ちにしましょ」
👤「手打ち・・・?」

聞き慣れない表現に青年だけでなく9人も
不思議そうに顔を見合せた。

そんな9人の前で照に背負われた
相対する青年のやり取りは続く。

🐇「おあいこって事!でも2度目は無いからね、君に言った言葉は私なりの覚悟だよ」
👤「分かった、俺らも卑怯な事して悪かったよ
これからは切磋琢磨して行く仲間として宜しくして貰えると嬉しい・・・」

(さん何者?笑)by阿部

手打ちの意味を理解したのは阿部のみ。
確執を取り払い、和解するという意味もある

更には江戸時代、武士が町人を斬る際に
自らが手を下す意味合いで手打ちにする、と
表現した中々20歳の若者からは出ない表現だ

まあが歴史や言葉を良く学んで来た証明にもなるね
と阿部が感心したタイミングで
良い感じ和解した場が一瞬だけ凍り付いた。

🐇「¨女が入ったら『Man』じゃなくね?¨
  なんて二度と言わせないようになるから覚悟しといてね」
⛄「――は?」
👤「ひぇ、ごめんなさーーい!(脱兎)」

思わぬ爆弾発言にギョッとした青年。
一斉にSnow Manから鋭い目を向けられ
深く頭を下げた後、青年は走り去った。

あまりの素早さに止める間すら無かった(笑)
走り去った青年からに視線を戻した阿部

💚「ちょ・・・さんそんな事言われたの?許して良かったのかな彼」
🐇「ささやかな仕返しもしたからいいよ」
🖤「お前寛大じゃん」
🐇「でしょ?・・・あ、皆・・・その改めてありがとう探しに来てくれて」

気丈に笑っていたが、急に背負われたまま
は皆に向かって謝罪する。
迷惑かけまいと取った行動が、結果裏目に・・・

これでは練習も出来ないしLIVEに支障が出る可能性を
は心配し、申し訳ないと謝る。

だが、ならそう言うだろうと予想していた面々は
予想を裏切らないに破顔。

💙「そんなの当たり前でしょ」
🧡「翔太君、それ正解」
💛「お前はもうSnow Manの一員で仲間なんだから当たり前だろ」
❤「寧ろ早く来れなくてごめんね」
🤍「ちゃんは唯一の女の子で僕らのお姫様だもん、助けに来るのは当然だよ」

普段は厳しい翔太から筆頭に声を掛けた。
あくまでも強がるに、無理しなくていいと言う照やメンバー。

そこに医務室に行っていた深澤が戻って来た
の姿を見つけるや、パッと目を輝かせ
背負われたに優しい声で言った。

💜「無事で良かった、よく頑張ったな」
🐇「・・・ふっかさん・・・・・・」
💚「ふっかが泣かした~」
💜「えぇっ!?俺のせい?ごめんな泣くな~;」

あまりにも優しい声で言われた私の涙腺は
呆気なく崩壊、吃驚するくらい自然に泣けた

仲間になったばかりの私に皆は優しく
今までの努力も認めてくれた。
皆と居るこの場所を守る為なら今まで以上に頑張れそうだよ。

改めてそう感じたら何やら眠気が。
照の広い背中はとても安心する。
周りには皆が居て、これは安心するしかない。

は無意識に落ちないよう照の首に腕を回し
体重を預けるとスヤスヤ寝ていた。

🤍「あれ、ちゃん寝ちゃってる!」
💗「気を張ってたんだろね~寝顔可愛い」
💛「おい佐久間やめろ起こすな」
❤「そうだね、早く医務室連れて行こう」
💙「佐久間だっせぇ」
💗「可愛いって言っただけじゃん~;w;」
🧡「照にぃ役得やん羨ましいわあ」
🖤「岩本君疲れたら俺いつでも代わりますから」
💛「安心しろ目黒、今日お前の出番は無い」
💜「味をしめたな?」
💚「ふふふ・・・照は油断ならないね」

スヤスヤ寝てしまったを皆が見つめ
医務室までの道程をまるで護衛するみたいに移動する様は
暫く事務所内の語り草となった。

これ以降、表立ったイジメは無くなる。
の努力と実力が認められた日となった。


Fin.