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❤「ねぇふっか」
💜「はあい?舘さんどうかした?」
レッスン室では宮舘が深澤を呼んでいた。
何故声を深澤に掛けたのかというと
この場に戻らぬ人物が居る事に気付いたから
その人物は、ほんの数十分前まで照や康二と楽しそうに言葉を交わしていた。
そこにJr3人がを呼びに現れ、4人がここを出て行ってから更に数十分経過。
呼びに来たJr3人は既に戻っている。
が、だけがまだ戻って居ない・・・
❤「さんだけ遅くない?」
💜「あー・・・確かに遅いな」
❤「そろそろ練習再開させないとでしょ?」
💜「だな、ちょっと聞いてみるべ」
それを深澤に話すとすぐ動いてくれた。
先ずと話していた照と康二を呼び寄せる
💜「がまだ戻ってない、何か知らん?」
2人が来るや、聞きたい事だけ口にする深澤
対する照と康二は互いに顔を見合せてから
💛「Jrの子達に呼び出された事くらいしか」
💜「康二も?」
🧡「おん、に何かあったん?」
❤「分からない、でもまだ戻らないんだ」
💜「呼びに来たJrの子に聞いてみるか」
呼んだ2人からは有益な情報を得られず
仕方なく深澤はを呼びに来た3人組を呼びに、レッスン室内を移動。
JrはJrだけで固まってレッスンを受けていた
そこに照を連れて歩いて行き、呼び出して貰う為照にJrの顔を確認させた。
💛「あれだ、あの3人」
💜「あーちょっとそこな3人こっち来て」
👥「は、はい」
👤「はい」
意外と顔を覚えていた照が3人を発見。
Jr達のリーダーにちょっとごめんね、と断り
見つけた3人を呼び出させてもらった。
深澤に呼ばれた瞬間、3人の顔が強ばったのを照は見逃さなかった。
やがて緊張した面持ちの3人が歩いて来る。
その顔からして何か知ってるのは察せた。
💜「君達うちのメンバー呼びに来たんだって?」
👤「はい、ちょっと手伝いを頼みに・・・」
💛「なるほど?でもだけ戻らないのは何でか知ってる?」
👥「えっ・・・それは・・・」
👤「多分時間が掛かってるのかも・・・」
早速質問を開始したが、煮え切らない3人。
手伝いが何だったかは知らないが
3人とも同行したなら全員で協力する物ではないのか?
こう問い返されると更に怯えるJr。
ただ1人質問に答えたのは3人のうち1人の青年だ
恐らく彼が3人の中で歳上なんだろう
💜「時間が掛かってるなら何で手伝わなかったの?」
👥「レッスンに・・・遅れるかなって・・・」
💛「理由があるなら誰も咎めないだろ」
👥「ごめんなさい・・・」
💛「謝る相手は俺らじゃないよな?」
👥「・・・実は――」
決して尋問してる訳では無いんだが
何となく迫力めいた物を感じたのだろう少年2人の方は眉宇を下げ泣きそうだ。
黙ってるだけで迫力がある照に諭されると
素直にごめんなさいを口にした。
流れで事情を話そうとした少年2人だったがそれを遮るような声が挟まれた。
👤「いきなり呼び出して尋問みたいな真似して
後輩を脅すのが先輩のやる事なんですか?」
💛「なんだって?」
声を挟んだのは黙っていた青年。
思わず怪訝そうに見た照をキツく見返す。
その目には明らかな敵意があった。
同時刻、地下倉庫のはというと軽く一眠りしていた(ぇ)
瞑想したら閃くかなって思ってさ
だが生憎と閃いたのは台を探す事だけ。
倉庫の中にはパイプ椅子が二脚置かれていた
これを、残ったマット1枚の上に乗せその上に登って窓を開けるしかないのだ。
マットは厚みがあるので4つ折りの状態のままにして置けば中々の高さになるはず。
まあちょっと足元が怪しいけど女は度胸!
🐇「脱出して皆の所に、戻る・・・為よっ」
剣呑なバランスのマットオンザ椅子。
慎重にマットに上り、置いた椅子に足を乗せ
気合いで両足を乗せた瞬間、やはり傾いた。
高さを出す為に4つ折りにしたのが災いし
椅子と私を乗せたマットがぐにゃりと凹んだ
🐇「ぬわっ!」
女子らしからぬ声と共に椅子から転げ落ち
今度こそ倉庫の床に叩き付けられた。
痛みと情けなさで悔しくなり唇を噛み締めた
今何時だろう・・・皆、どうしてるかな。
誰も私の不在に気付かなかったら?
早抜けしたのかなって思われてたら?
事務所もさすがに閉めるよね・・・・・・
いやだ、このまま独りはいやだ。
どうしたら気づいてもらえる?
派手に今も転落したけど誰か来る気配も無い
落ち着け私、考えるんだ。
泣いてる暇なんてない、泣いたらダメ
女は泣けばいいと思ってる、て言われちゃう
どうにかして窓を開けなきゃ!
🐇「――痛っ!」
浮かんだ涙を手の甲で拭い
ガバッと立ち上がり、窓側へ足を踏み出した
が、強い痛みが足首から駆け上がり
歩き出せずにその場に座り込んでしまった。
靴下を捲り、原因はすぐ分かった。
どうやらさっきの転落で足首を捻ったらしい
つくづく自分の迂闊さに呆れた。
唯一助かるには、行動あるのみだったのに・・・
感覚からして昼は過ぎてる気はする。
腹の虫が賑やかだしね!(ヤケ)
夕方までに気付いて貰えるだろうか。
何となく夕暮れの黄昏時は苦手だ・・・
その時間帯に室内に居ると何か落ち着かない
だからシェアハウスに居る時も
その時間帯はリビングとか広い部屋で過ごした
理由は分からないけど多分怖いのかな・・・
だから一刻も早く気付いて貰わねば。
痛む足ではもうマットと椅子には上れない。
かくなる上は・・・叫ぶしかないな?
私は捻った足を引き摺りながら倒れた棚の前に行き、
床に散らばったハサミを握り、そのハサミで金属の棚を思い切り叩き
音を鳴らしながら誰かいませんか!と叫んだ
+++
レッスン室はレッスン室で空気はピリピリ。
先輩にあたるSnow Man、深澤と照に対し
あからさまな敵意を剥き出しにした後輩。
思わぬ発言に眉を上げた照。
どんな根拠なのか、脅してると言われたのだ
確かに構図は後輩を叱る先輩、に見えるが
何故それを脅してると言われなくてはならないのか自然と2人の顔付きも厳しくなる。
剣呑な雰囲気を感じたと思しき宮舘が此方に目黒と共に歩いて来る。
❤「ふっか、ちょっと場所変えよう?」
🖤「他のJrの子達が不安になってます」
💜「それもそうだな・・・ちょっと移動しよう」
💛「お前だけ来て、場所変えよう」
👤「・・・・・・」
まだ不満がありそうな青年だけを伴う面々。
この場は佐久間に委ね、深澤達はレッスン室を出て歩き同じ階の会議室に入った。
今は会議が無いので札が空き室になっている
中に入ると青年を窓側に座らせ
自分達は相向かうように正面へ座り再開。
💛「で、お前の言い分はある訳?」
💜「さっきの言葉だけ聞くともう大体分かっちゃうよ?を君達が――」
改めて話を聴き始めた矢先、青年は深澤の言葉を遮る勢いで声を荒上げた。
別に言い分なんて無い!と叫んだ後
苛立った口調で青年は言葉を連ねた。
👤「アイツ、鳴り物入りでスカウトされた割に物覚え悪いし目も悪いし
女ってだけで注目浴びてぽっと出のくせにSnow Manに選ばれたら
急に自信失くして逃げたんじゃないすか!?
そのくせ偉そうに"8人を嘲笑うのは許せない"とか言ってさ、バカだよアイツ・・・」
憎々しげに言い捨てる青年だったが
最後の方は視線を落とし、俯いていた。
は自分自身がイジメを受けていた事を皆に伏せ
誰にも弱音を吐かずに戦っていた。
やがて項垂れた青年が弱々しくを嵌めた事を認めた。
地下の倉庫に閉じ込めた際
助けてやる条件を出した青年に対し静かな眼差しでは
簡単に言葉では負けたと言っても心まで屈服した訳じゃないと言ったらしい。
まだ20歳の女の子がそんな毅然と振る舞えるだろうかと照達は思わず笑ってしまう。
否、笑う以外の反応が分からなかった。
取り敢えず青年が口にした倉庫に向かうべく
宮舘に倉庫の鍵を取ってくるよう頼む深澤。
その際に、俯いていた青年がこう話す。
倉庫を出る際に棚を倒してしまったから
普通に鍵を開けても意味は無い、と。
🖤「真っ向から勝負出来ねぇくせに悪知恵だけは働くんすね」
思わず出た目黒のストレートな発言。
ストレートすぎて深澤や宮舘はクスっとなる
歯に衣着せぬ目黒らしいな、と。
青年もあまりにストレートな物言いに
トドメを刺されたのか、再び項垂れた。
👤「なんでは逃げないんだろう・・・」
女子初のジャニーズで話題になり
ただでさえ目立つのに嫉妬や妬みを浴び
誰かに頼りもせず練習に没頭。
ただ目の前の課題に全力て取り組んでいた
道を邪魔されても逃げずに立ち向かう姿は
いつしか周りを惹き付け、味方を増やした。
青年は、そんなが眩しかったのだろう。
その傍ら宮舘は佐久間に電話し、先に倉庫を見に行くよう頼んでいる。
深澤や照も席を立ち、青年を促すよう言った
💛「本当に逃げたいやつがこんなメモ作るかよ」
と照が預かってたのメモを出して見せる
チラッとメモを見た青年の目が驚きに開いた。
誰を責めるでもなく自分に出来る範囲で努力し不自由をカバーすべくメモを取り、
なりの覚え方で振付けを覚え込み、更に魅せ方も考え音を表現して来た。
諦めず食らいつく姿を見て来たからこそ
周りは彼女を認め、敬い、受け入れた。
彼女も周りを敬い、倣い、受け入れた。
💛「は信念と気持ちで踏ん張ってるから簡単に逃げたりしねぇよ。
はなりにこの世界で生きる道を選んだし覚悟して入所したんだ。
女の子の自分が生き残る為には何したら良いのかを自分で考えて食らいついてる。
そんなの努力を笑う権利と邪魔する権利は俺らにもお前らにも無いよ。」
と照は青年の心に語り掛けた。
語り掛けた上で青年に協力を仰ぐのである。
そんな照達を見て、泣き笑いのような笑みを浮かべてから青年は呟いた。
👤「地下の倉庫です・・・」
💛「ありがとな」
👤「完敗です、先輩もも強いや」
俺には勝てそうにないっす、と呟く青年に
何か諦めのようなものを見た照。
宮舘に先行させた佐久間らと合流するよう目配せ、
深澤と目黒もそれに続き、会議室には照と青年だけが残った。
💛「は強いかもしんない、でも、にも弱い部分はあるよ。
それは俺らにもお前にもある、だから人間って支え合うんだろ?
今のが強く見えるのは、今のが独りじゃないからじゃね?」
残された空間に発せられた照の声。
それはが発した声と同じく静かなもの。
つい自然と青年は顔を上げ、照を見ていた。
ゆっくり合わさった視線、目が合った照は青年に向かってくしゃりと笑む。
💛「お前だって独りじゃないだろ?あの2人のJr、多分お前の事心配してる。
だからあの時俺に話そうとしてたんじゃない?
騒ぎが大きくなればなるほど、お前の立場が危うくなる。
折角知り合えた仲間だから、助けようとしたんじゃないか?あの2人なりにさ」
とだけ話し、会議室の入口に目をやる。
青年も倣うように見れば、そこには少年2人が心配そうに此方を伺っていた。
👤「お前ら・・・」
👥「俺達、ちゃんと佐久間君達に謝ってきたよ、そしたら
¨いいから迎えに行ってやれ、今すっげぇアイツ後悔してるだろうから¨
って言ってた。」
自分がを罠に嵌めたのに
同じメンバーの佐久間らは寛大ででっかい心で自分らの行いを赦した。
なら、今度は自分が誠意を見せる番だ。
今このタイミングを逃したら一生後悔する。
そう感じた青年はバッと顔を上げ頭を下げた
👤「・・・岩本君、本当にすいませんでした」
👥「ごめんなさい!」
💛「もういいよ、先に戻ってな」
👥「はいっ」
👤「俺手伝います!」
視線が合った少年2人が駆け付け、レッスン室でのやり取りを青年に伝えると
曇っていた青年の目は、完全に晴れた。
照はそれを見てもう大丈夫だなと判断。
会議室から出て3人を促したら、思わぬ発言を青年が発し 数秒目を合した。
💛「んー・・・じゃあ案内頼むわ」
👤「はい!」
💛「2人はレッスン室戻ってて」
👥「あ、はいっ」
レッスン室に戻る2人に手を上げ、照は青年と2人地下の倉庫へと走った。
時間は16時少し前、陽は延びたからまだ明るい・・・しかしは地下倉庫だ。
照は光源はあるのかが気になっていた。