Unforgettable 5
竜也との前に現れた、赤西って人。
かなりの美形だったなぁ・・・
何やら話があったみたいだけど。
『途中経過を聞きに来たんだよ』
そう赤西君は言ってた。
途中経過って何?聞いてみたけどはぐらかされた。
怪しい・・・
チラッと時計を見れば、仕事開始時間5分前。
一体いつまで話し込んでんの??
遅刻とかは今まで一度たりともしてない竜也。
時間が迫れば、自分から話を切り上げてでも来そうなのに。
それさえも出来ないくらい、重要な話なの?
ムーン・・と口を尖らせて時計と睨めっこ。
やがて、そんなに気づいたが
朝掃除で使った雑巾を手に、こっちにやって来た。
「あれ?上田君は?」
「まだだけど・・って、何であたしに聞くの?」
別に〜?とか言っただけど、その顔・・笑ってるから。
だってそうでしょ?竜也がいるかいなかなんて
あたしに聞く必要なんかないじゃん?
それでも相変わらずニヤニヤして、人の顔見てるから
友達ッポイ人が朝から来て、話してから来るみたいよと教えといた。
そうでもしないと、このまま其処に居座られそうだったから。
ブーッというブザーと同時くらいに、竜也は入って来た。
息堰ってビニールの簾を潜って来た姿。
上司である落合さんの方を向いて一礼し、あたしの隣に来る。
来るまでの間、竜也はただ一点だけを見てた。
何てゆうかね・・・期待させるのが上手いの。
今まで見てて分かったんだけど、竜也はねあたしととか
上司とか以外の人とは、仲よさそうに話したりしてないのよ。
上司は仕事をする上で関わりがあるから、仕方なさそうだし。
けれど、あたしととは違う・・ちゃんと目を見て話してくれる。
それ以外のおばさんとか、誰かが話しかけると
目線も合わさずに会話して、浮かべる笑顔も嘘ッポイ。
そんな風に使い分けられると・・勘違いしちゃうよ?
特別なんだ・・って。
竜也はどんな子が好きなの?
好きなタイプは?好きな音楽は?
知りたい・・・竜也の事が。
「1人で行かせてごめんね」
「別にいいよ、竜也には竜也の用があるんだから」
言葉と裏腹に、考えてる事は全く別の事。
隣に竜也がいるって意識すると、仕事も殆ど手につかなかった。
その日の夕方。
いつもはに合わせて残業をしている竜也だが
この日ばかりは、5時半までに仕事を切り上げると
5時半の5分前に鳴るブザーと共に、の方へと来た。
「ごめん、今日は先に帰る。」
隣に来て言ったこの一言。
ちょっと意外だったから、パッと顔を見る。
麗しい顔を曇らせ、しょんぼりしてる姿が妙に可愛い。
別に一緒に帰るのが当然なカップルじゃないんだし
いつも一緒ってのも、よくよく思えば恥ずかしい事だったのかな?
は仕事の手を休めると、ニコッと笑って答えた。
「いいよ、謝る事じゃないんだから。」
「有り難う、本当はずっと帰りも一緒にいたかったんだけどね。」
そう・・って、今サラッと凄い事言わなかった?
意識しないようにしてたのに、今の一言でバッチリ意識してしまった。
顔が熱くなるのを止められない。
素直に顔に出したを、ニコニコと見つめると
「もあんまり遅くまで根を詰めんなよ、じゃあまた明日。」
立ち去り方は、あくまで優雅に・・・
その姿に見惚れたのは、だけではなかった。
工場を出てきた竜也。
本心から言って、本当はまだ帰りたくなかった。
仕事がしたいからじゃない、と同じ空間にいたかった。
全く・・・最初こそ、芸能人って大変だなぁ。
こんな金にもならない仕事までしてって思ってたのに。
今じゃ、この工場に行くのが楽しみで
に会えるのが、無性に嬉しくて仕方がないなんて。
「うーえーだ!」
名残惜しくて、何度目かの振り返りをした時
前方から、のほほんとした声に呼ばれた。
それが誰の声か分かるから、溜息混じりに竜也は振り返った。
「よっ!お疲れ♪迎えに来たぜ」
「――またオマエかよ、暇なんだな。」
「ちげーよ、俺が来たいから来たの!アレ?上田1人?」
「へいへい・・・1人だよ、だから何?」
目立たないように停めてあった車。
その窓が開いていて、其処から手を振ってる者。
朝、も会った人物。
竜也の言葉に、ぷぅっと頬を膨らませた仁。
其処に在るのが竜也1人だと気づくと、キョロキョロしながら問う。
竜也には、仁が誰の事を聞いてるのかが分かったので ワザと聞き返してやる。
「だから、朝オマエと一緒にいた女の子。」
・・・やっぱりの事か、まさか興味持ったとか?
心に浮かんだ疑問、確かめずにはいられなくて
車のドアを閉めてから仁に言った。
「は駄目だよ?俺が気に入った子なんだから。」
「マジ?」
「マジ」
先を言う前に、先手を打たれた仁は取り敢えず聞き返した。
問いかけに真顔で頷いた竜也。
どうやらコレは、本気の本気らしい。
何処かへ向かって出発した車内で
仁はビックニュースだ!と声にならない叫びをあげていた。
そしてそのビックニュースは、目的地へ着くなり楽屋中を駆け巡った。
「ふーん・・この上田を本気にさせた子かぁ〜」
「見たい?わりぃけど、俺はもう見たモン♪」
「上田は興味あるないの白黒は、ハッキリしてるもんね。」
「だよな!興味ねぇ奴とかは、目も合わさねぇし」
「口も利かない!そんな上田がやっとねぇ〜」
椅子と椅子とを向き合わせ、盛り上がる面々。
何か知らんが、仁はと一足早く会った事を自慢してる。
話をされてる本人は、至って冷静に彼等を眺めていた。
事実は事実、今更反論して否定しても
それは奴等を楽しませる効果しか与えない。
この事は、長い付き合いの中で学習した。
「それはそうと、皆はどうなん?そっちの方は。」
喋らせといてもいいが、そろそろ耐え兼ねた竜也は
話題を変えるべく、例の途中経過の事を面々に尋ねる。
あーだこーだと盛り上がっていた面々。
すぐさま反応した田口が、竜也へニコニコして言った。
「俺も順調だよ♪いい人ばっかで楽しい!」
「順風満帆っぽくていいなぁ、田口。」
「中丸は?そうじゃないのかよ」
汚れのない無邪気な笑顔で答えた田口に、哀愁漂う顔で言った中丸。
その中丸へ、隣に座ってた亀梨が問いかける。
亀梨が問いかけたのと同時に、全員の視線が中丸に向けられる。
一斉攻撃のように揃った面々へ、押され気味に答えた中丸。
彼が言うには、働く事の厳しさを学んだとか?
力仕事が多くて大変らしい。
「オマエひょろいかんな」
「亀にだけは言われたくない」
体作りをしてきてるだけに、そう言われるとムッと来る。
しかも、メンバー中一番細い亀梨にだけは
中丸もそれを言われたくはなかっただけに。
何だと〜?と口論の始まりそうなのを、田口と聖が抑え
互いの報告は無事に終わり、まあ他のメンバーも
順調だと言う事は分かった。
俺達が今何をしてるのかは、まだ秘密・・。
の事を、もっと知りたい。
けれどこの願いは、を困らせる物で
に中々消えない記憶を作らせるきっかけになってしまうなんて・・