Unforgettable 3
冴えない男ばかりの会社に、上田君が来てから一週間経った。
流石に仕事も覚えて来て・・ってゆうか、覚えが早い。
男友達も出来て、竜也の笑顔も増えてた。
可愛いなぁ・・一個下だけど、可愛さ炸裂よ。
何処にいても、見つけ出しちゃう。
何てゆうか、声とか姿で見つけられる。
それだけ探してるって事か?
流されるな、勘違いで終わりたくないモン。
あんな至近距離での会話はマズかった。
意識しろって言ってるようなモンじゃん!
罠にハマって行ってるような気がする。
『隠さなくていいのに、俺は可愛いと思うけど?』
初日にこんな事を、竜也は言ってきた。
分かって言ったのか、それとも慣れてるから?
確かに慣れてそうだよね〜女の子の扱いに。
「」
ボケーッと竜也について、考えて歩いてたら後ろから呼ばれた。
誰だろうと振り返ると、お弁当を持ったの姿が。
そういやぁ、もうお昼になったんだっけ。
一服も終えたらしく、少し煙草の香りがした。
食前と食後に、は煙草を吸うのが習慣になってる。
あたし?あたしは吸わないよ。
「ごめん、ボケーッとしてた。」
「うん、知ってる。何、上田君の事でも考えてたの?」
「何言ってんの!考えてなんかいないよ。」
「そう?でも顔が赤い気が・・・」
「!!」
「はいはい」
全く!楽しそうな顔で聞くなってもう。
でもね の指摘、バッチリ当たってた。
考えたり想ったり、それくらいしかいつも出来ない。
今回だって、きっと友達止まりで終わってしまうだろう。
だって、あたしはちっとも魅力的じゃない。
誰かに好かれるなんて持っての他、一度くらいしかないし。
結局その人の想いに応えられなかった。
だってその時あたしは、自分の恋愛で手一杯だったから。
の背中を眺めながら、そんな事をぼんやり考える。
はぁ・・もうしたくないのに、恋愛モードになりかかってるし。
「」
人間って愚かだな〜とか思ってると、再び後ろから呼び止められた。
呼び止めたのは誰かなんて、あたしにはとっくに分かった。
ずっと聞き入ってた声だ、忘れる訳がない。
あたしの前を歩いてたも、振り返って顔の筋肉を緩めた。
つまり、ニヤニヤしてあたしの隣に来たって事。
「一緒にお弁当食べない?」
声を掛けて近くに来た竜也、お弁当を片手に聞いて来る。
突然のこの言葉に、勿論あたしはドッキリした。
一緒にお弁当??何であたしに?
困惑している、その様子を竜也はニコニコして見つめた。
ズバリ、反応を楽しんでます。
困ったように、目を逸らす顔。
なんか見てると和むんだよな・・
この会社に入って、最初に言葉を交わした先輩。
名前は さん、まあ呼び捨てを許可して貰ったけどね。
可愛いんだよ?って、隠そうとしてるみたいだけど顔に出てるし。
最初は笑わない人って思ったんだけど、それは違って
人見知りなだけみたい、それに笑った顔がすっごく可愛いんだ。
もっと笑えばいいのにって思う。
「もいい?あたしの親友なの。」
「勿論、あ、俺は上田竜也って言います。」
「あたしはの親友で、勅使川原。宜しくね。」
「こちらこそ」
親友だと言って、が俺に紹介した勅使川原さん。
彼女も中々可愛いかな。
まあ俺の興味は、勅使川原さんよりもだけどね。
なんて竜也が思ってるとは知らない2人。
軽く握手し合ってから、3人は2階の食堂へ向かう。
食堂に着くと、一気に視線を集める。
竜也といると何処に行っても目立つなぁ。
見ずにいられないもんな、美人だし。
彼女いるんでしょ?
とか聞きたいけど、聞けない。
怖いからかもしれない、現実を突きつけられるのが。
夢を見ていたいんだ・・・あたしに優しくしてくれる竜也の。
完全に参ってんじゃん!あたし。
「?座らないの?」
「あぁ・・その前にお茶買ってくる」
「それじゃあ俺も行こうかな」
席に付く前にと思って行こうとすると
すぐさま竜也も立ち上がって、の隣に来た。
素早い行動に、はドキドキさせられっぱなし。
どうゆうつもりなんだろう、自分の事気にしてくれてるのかな。
とか、否応なしに考えそうになる。
惑わされる。
貴方の行動に。
このまま恋愛モードになっていいのか?
一方通行の想いは、沢山体験してきた。
誰かと付き合ったりしてみたいけど、同時に不安が付きまとう。
竜也はどうゆうつもりで、あたしに接してるんだろう。
なんでそんな、甘い言葉を掛けるの?
気になったらそれまでだけど、十分堕ちてる。
・・・恋ニ、意識ノ全テガ 貴方ニ傾イテル・・・
この仕事場には、今の竜也みたいに接して来たヤツがいて
高校の後輩だから、社員旅行の時は話したけど
あたしにとってはそれまでだった。
なのに、あっちはその気があったのか
色々近くに寄ってきたり、誘ってきた。
その前に苦い経験があったから、用心深くなってたあたし。
曖昧でハッキリしないのが大嫌いなもんでして
しかもソイツ、女がいるくせに。
勝手に人の事気安く呼んでるのが分かって、直接言ったらすごすご離れてった。
バッカじゃないの?そんな軽い気持ちなら
思わせぶりな言葉とか掛けたり、傍に来たりしなきゃいいんだよ。
そんな寂しい女に見えるのか?
もっと言っとけば良かった。
色々思い出すうち、苛々して来た。
そんなの後ろに黙ってついて来る竜也。
自販機に辿り着くと、言葉を交わすまでもなくが先に買い
竜也が次に飲み物を買った。
待ってて、なんて言われてないのに待ってた。
それを嬉しく感じた竜也。
ムスッとした顔をしてる事に気づき、取り敢えず会話を切り出した。
「お茶好きなの?」
「あ、うん。サッパリしてていいじゃん?」
「あ〜なるほど、確かに後味がサッパリしてるのはいいよね。」
「でしょ?でも偶に、ジュースとか飲みたくなるんだよ。」
「俺も俺も、炭酸系とかさ。」
そうそう!ってな具合に、妙に話が合った。
苛々してた気持ちも、何気ないこの会話で急速に解れる。
竜也って、リラックスさせるのが上手いなぁ。
感心しつつ、話しながらのいる席に戻る。
戻ってからは、も交えて笑いの絶えないお昼を過ごした。
食後の一服をしに行った。
タバコを吸わないは、竜也も吸わない事にマジで驚いた。
パッと見、吸ってそうだけど・・本人曰く健康ブームだからとか。
なんか面白い。
座ってる姿も様になってるし、時々組んだ手の上に顎を乗せたり
指を動かしたり、物をいじってみたりととにかく可愛い!!
ずっと見ていたいくらい・・日の光を受けた竜也は綺麗だった。
天使みたい・・・そんな言葉が彼には似合う。
艶やかな黒髪、風に靡く髪の毛・・王子様だ!!
ぼんやりと竜也を眺めてたら、クスッと口許が緩むのを見た。
何だろうと思って、竜也を見たら
とっても可愛く笑って言った。
「俺になんか付いてる?」
「う、ううん!ごめんジッと見ちゃって。」
見てる事を口にされたら、顔が一気に熱くなった。
うわー!見てる事がバレちゃったよ!!
何その楽しそうで綺麗な笑顔!!
そっそうだ、何か話した方がいいよね?
このままだと沈黙にしかならなさそうだし。
あたしはみたいに、話し上手じゃないから。
一方竜也は、自分の言葉でパッと顔色を変え
少し頬を赤らめるを眺め、心が温かくなるのを感じていた。
ついつい構いたくなる、反応が素直なんだね。
本人は気づいてないってゆうか、隠そうとしてる感じ。
俺は何故だか、隠そうとする理由を知りたくなった。
どうしてだろう、なんか知りたいって思った。
「いいよ、に見つめられるなら悪くない。」
「歯が浮くような台詞、よく簡単に言えるねぇ」
「軽蔑した?」
そんな事はないけど、と俺から視線を外した。
照れてる感じだけど・・別の色を見た気がした。
疑ってるような、伺ってるような感じの色。
俺は本心で言ったんだけど、はそれを真実として受け止めてない感じ。
用心深いって言うの?そんな風に見えた。
気になる・・・
押し黙ったあたしを見てた竜也。
すっごい緊張したけど、しばらくして竜也も視線を逸らした。
素直に信じたいよ?竜也の言葉とか、それ以外の人の言葉も。
でもさ、あたしはそれで過去嫌な思いをしまくったから
怖いんだ、素直になる事が。
自分の素を見せるのが。
あたしの心に芽生えた気持ち。
目を逸らそうとしても、根付いた気持ちは無視出来ない。
あたしは・・・竜也を好きになってしまった。
恋なんてしたくないって、思ってたのに。