Unforgettable 2



  22歳。
今まで付き合った経験ゼロ、キスもした事ない。
しかも自分の事すらよく分かってない奴。

それでもまあ、取り敢えず憧れはある。
死ぬ前に一度くらい、そういった事はしてみたい。
してみたいんだけど・・・出逢いがない。

今いる会社に入って、1年は経った。
友達も親友もいる。

恋愛は何回も体験したけど、どれも友達止まり。
勘違いと素直になれないのとで、チャンスは逃しまくりさ。
でもそんな日々も、昨日までだった。

「今日新しく人 入るみたいだよ!」
「マジ?どんな人だろうねぇ〜」

会社に来るなり、自分の机にいたに言いに来た
まだ男か女か分からないのに、そわそわしてしまう。
男ならカッコイイ人がいいなぁ〜とか
女なら仲良くなり易い子がいいなぁ・・・などと言い合う。

まあそれは誰しもが持つ興味。
外見は平然としてても、内心はも楽しみにしていた。

そして時間は8時25分。
開始5分前のブザーが社内に響いた。
待つ事数分、噂の新人さんが上司に連れられて入って来る。

その瞬間、あたしは時が止まったかのように思えた。

ビニールの簾を潜り、現れたその容姿。
見る者を惹きつけるオーラを放ち、輝いて見えた。
スラッと長い手足に、黒髪だけどシャギーの入った長髪。

と同じ方の耳に、揺れるピアスを付けてて
結構お洒落な子だった。

見た感じ・・・年下ッポイ。
てゆうか、女の子みたいに綺麗・・・・
何あのクリッとした目!サラサラの髪に柔らかそうな唇。
うわー笑顔が可愛いんだけど!!

「じゃあ、自己紹介してくれる?」

上司に促され、美人な彼はコクリと頷くと
これまた柔らかく綺麗な声で、彼は自己紹介した。

「初めまして、上田竜也といいます。
ココでの仕事は初めてなので、迷惑を掛けるかもしれませんが
早く覚えて 戦力の一員になりたいと思っています。」

ハキハキと挨拶した上田君。
ペコリと頭を下げる仕草に、何故かドキッと心臓が跳ねた。
マズイ・・もしかして、気になり始めた?
駄目だぞあたし!もう恋愛なんて懲り懲りなんだから。

は慌てて呼吸を整え、なるべく普通に接する事を決めた。
でもねぇ・・カッコよすぎだって。
一般人なの?本当にって思っちゃう程、オーラを放ってる。

「上田君は・・・松●を手伝って貰おうか。」
「はい」

落合さん(上司の名前)・・今何つった?
松●つったら、あたしが担当してるヤツじゃん。
いきなりかよ!!ひーっ!こっち来るよー!!
近くに来ると益々カッコイイし。

の近くに、落合さんに連れられて来た上田君。
遠くから見てもカッコイイのに、近くで見たら更にカッコイイよかった。
もう上司なんて目に入りません。

「上田君にはYE●E01●90●Bを手伝って貰うから」
「でも一台しかないですよ?」
「あーそうだった、じゃあYE●J0●20●5にしよう。」
「今日は800ですからね・・・何処でやってもらうんです?」
「一宮さん休みだから・・隣りでいっか。」

目の前で交わされる会話を、上田君はジッと聞いてる。
まあ品番なんか分からないだろうし、聞いてるだけだろうけど。
緊張するなぁ・・人見知りするし、こんなカッコイイと余計緊張。

作業着が上田君に負けてるよ。
ダサい作業着なのに、オーラ出てるし。

「宜しくお願いします」

掛けられた美声に、ハッと我に返った
どうやら意識が異次元に飛んでたらしい。

何やら近くで聞こえるんで、思わず後ろに下がりそうになった。
だって眩しい・・美形過ぎて、自分が醜く見えます。
それはともかく、緊張がバレないように努め
は隣の席に上田君を案内し、検査の仕方を教える。

「名前・・・何て言うんですか?」
「あたし? っていうの、上田君は幾つ?」

至近距離から聞こえる声、ヤバイ・・溶けそう。
心地いい声だなぁ・・きっと彼女いるだろうなぁ・・・
あたし何考えてんだろ・・・。

いるに決まってんじゃん、こんなにカッコイイんだもん。
周りがほっとかないよ。

「俺は今年の来月で22歳になるんです。」
「ホント?あたし、来月まで22歳だよ。」
「今月は俺達同い年なんですね」
「面白いね!ならもう敬語止めていいよ?」

誕生月が同じ月だと分かり、素直に嬉しくなった
タメ口で構わないと笑顔で上田君に言った。

言われた上田君は、吃驚した顔をしたけど
じゃあそうする、と笑顔で言ってきた。
その笑顔・・・反則なくらい可愛いなぁ・・

可愛いけど、カッコイイ。
纏う雰囲気が柔らかくて、優しい気持ちになる。

「教わる人がさんで良かった。」

え?それってどうゆう意味??
歳が近いから良かったって事??
そうだよね?そうに決まってるよ。

深い意味はない、変な期待しちゃ駄目だ。
過去の繰り返しなんかしたくないもん。

「そう?有り難う、それよりやり方は覚えた?」

すんごい無理矢理流しちゃった。
だってそうでもしないと、動揺して勘違いしそうだったから。
ちょっと素っ気なかったかな。

でも上田君は、普通に受け応えしてくれた。
優しいんだろうね、今まで好きになった人達も優しかった。

でも最終的には、その優しさが重くなる。
ってゆうか、痛い。
その気がないなら、ほっといてくれよって感じ。

「うん分かった、また聞くかもしれないけどいい?」
「いいよ?一応先輩だし。」
「一応なの?」
「そ、だってこっち来てまだ四ヶ月しか経ってないし。」
「そうなの?でも俺にとっては先輩だから、宜しくね。」

ねぇ?どうしてそんなにカッコイイの。
なんでそんなに優しいの。
誰にでもそうなんでしょ?

ドキドキさせる言葉だって、言い慣れてるんでしょ?
その笑顔だって、女の子を騙す罠なんだ。

って、言い聞かせてるのに気になってる。
自分の場所に戻ったのに、気づくと目が上田君を見てた。
横向きの顔、長い睫毛、細い指、温かみのある声。

「ねぇさん」
「・・・なに?」

なんて考えてたら、本人に横から呼ばれる。
ボケーッとしてただけに、余計に心臓が跳ねた。
心地いい声だなぁ〜名前呼ばれるとドキドキするよ。

セーブしたいのに、心はどんどん傾いていく。
また傷つくだけだって分かってるのに。
なけがわしくなるよ。

を隣に呼んだ上田君、分からないトコでもあるのかと思った。
だから普通に、何処が分からないの?と言いかけたら

なんと、上田君は更にあたしに近づいて
皆いるのにも関わらず、耳元で囁いた。

「名前で呼んでいい?」
「名前で?」
「いや?」
「(その顔ヤバイから止めて)・・別に構わないけど?」

耳が溶ける〜!!by 青木さやか
ホントマジで溶けそう!何この甘い声!!
わざわざ耳元で言わなくてもいいだろうにー!

なんて思いつつも、の頬は赤く染まる。
顔に出さないようにしてたのに恥ずかしい!!
上田君・・いや、竜也から離れようとすると
それを自然な動きで止められた。

「隠さなくていいのに、俺は可愛いと思うけど?」
「!!!!」

これまたストレートだなぁ・・ってゆうか
隠さなくていいのにって?
また恋愛に溺れないようにセーブしてるのがバレたとか?
でも流石にそれは聞けない!墓穴掘りたくないし。

何も言葉を発せなくて、ただ顔を真っ赤にした
隠そうとしてても素直に表に出てしまう感情。
そんな姿が可愛らしく見えて、上田は笑みを浮かべた。

もっと知りたい、そう上田に思わせた。