追跡?
「何だよ、その顔。」
手首を掴まれたまま、下から低く問われる。
不意打ちって感じで心臓がドクン、と波打つ。
カァッ・・・と顔に熱が集中。
やっやめてくれ〜〜この状況マズイから!!
オマエ等5人しか俺が女だってしらねぇんだぞ!?
ヤンクミも現れて、クラスの騒ぎも収まる。
しかし、上手い具合にヤンクミのボケっぷりで
俺と竜から皆の意識が逸れている。
そんな具合いらねぇっ!!
誰でもいいから、この状況何とかしてくれ!
ドカッ!
「〜♪今来たの?・・ってアレ!?」
「いっ・・!!」
何とかしてくれ、とは思ったが・・
誰もタックルしてくれ、何て言ってねぇ!!
何も知らないタケ、無邪気に俺に抱きついて来た。
その抱きつきの勢いが凄く、痛む全身に響いたのだ。
朝ベッドから起きれない位痛む体は
勿論その勢いを支えられる訳もなく、凄い痛みだけを伝え
俺はその場に座り込みそうになった。
手首を掴んでいた竜が、引き寄せて防ぐより早く
両肩をグッと掴まれ、後ろから支えられた。
支えられた方も、支えようとした竜も驚いて後ろを見る。
「何やってんの、。」
「別に何にもやってねぇーよ、いててっ・・・」
後ろからを支えたのは、いつの間に此処に来たのか隼人で
呆れ果てた目で、倒れかかった自分を見下ろしてる。
うわ・・朝から色気プンプン。
自分を支えてる隼人の手が、力強い。
触れられてる部分が、凄く暖かい。
こんなに近くにいられると、無償に恥ずかしいし照れる。
隼人は、を支えながら 後ろにいた竜と目が合う。
竜は無言で、何も言わなかったが
自分が支えようとしたのを、隼人に取られた事を
不満に思ってる事は明らかだった。
俺達って、すっかりライバルじゃねぇ?
互いにを意識し始めて、数週間くらいしか経ってない。
人の気持ちってのは、不思議なモンだ。
支えてたを開放し、原因を作ったタケを見やる隼人。
そんなに強かったかな〜と慌てて、の背中を摩ったりしてる。
フツーに見てれば、可愛いやり取り。
小動物がじゃれ合ってる感じ。
でもなぁ、自分の気持ちに気づいてから見ると・・(イラッ)
隼人と竜の視線が注がれる先、に後ろから抱き着いて
楽しそうに喋ってる様子。
ムカッ・・俺が簡単に出来ねぇ事をしてやがる by隼人
羨ましい奴・・・ by 竜
「オマエ等、そんなにチョコレートが好きなのか?」
「はぁ!?」←クラス全員(竜と以外)
微妙な雰囲気になりかけた、隼人と竜の空気。
これまたナイスなタイミング。
円陣に机が組まれてる中央に、ヤンクミが入ってくる。
まるで分かってない(も分かってない)ヤンクミに対し
つっちーを始めとした連中が、ヤンクミに詰め寄り
チョコに対する熱い思いと、決意を語り始めた。
最終的には、ヤンクミの話になり
恋の勝負だなんだ、かんだで討論まで始まる。
恋の相手の1人2人・・とか熱弁を振るい、遠い何処かを見てる。
平和だ実に平和だ。
最後は全員で絶対勝つぞーとか叫ばされた。
の隣で、竜がバカかって呟いてた。
その顔がすっごく呆れてて、またの笑いを誘った。
そしてそして放課後。
と会える事になってるから、一目散に帰ろうとした。
しかーし、顔の湿布に気づいた竜から止められる。
「さっきは聞けなかったけど、その湿布どうした?」
「そんなに知りたいのか?・・・隼人までいるし。」
「竜だけじゃなくて、俺だって知りてぇもん。」
「・・・」
チラッと竜を振り向けば、いつの間にか近くに隼人を見つけた。
めんどくさそうに竜に答えた、同時に視界に入り込んだ姿に気づく。
ちゃっかり隼人は、竜の隣に立ってを見てる。
言ってもいいけど、恥ずかしい。
だってさ、俺がアイツ等と喧嘩した原因は侮辱されたから。
元を返せば、真希ちゃんが危なかったからだけど
アイツ等が隼人達の事を、あんな風に言わなければ喧嘩してなかったモン。
「あのさ、俺用事あるから帰りてぇんだけど。」
「駄目、帰らせねぇから。」
「は?」
隼人の横を通り抜けようとすれば、片手が前に出て来て道を塞ぐ。
出て来た腕を一瞥してから、隼人を見上げる。
うがーーー何で邪魔すんの!!
俺は早くに会いに行きてぇのに!!
は苛立ちから、その場で地団駄を踏む。
しかし、隼人達がを止めてる間に
軽やかな身のこなしで、タケが走り抜けて行った。
「オイ!タケ?」
「わりぃ!俺もちょっと用事があるんだ〜♪」
「ズル・・ッ!俺だって帰りてぇのに!!」
タケに叫んだが、振り向く事なく彼は走って行ってしまった。
抜け駆けが早いとゆうか、ちゃっかりしてるとゆうか。
って訳で、直ぐ終わるからとかで
一緒に行く羽目となった。
行き先は勿論、行きなれたゲーセン。
此処しか行くトコねぇのかよ。
歩きながらそんなぼやきを吐く。
ブラブラ道沿いを歩く5人。
歩きながらの話題は、突然消えたタケについて。
今まで、絶対と言っていい程 自分等と行動してたタケ。
そのタケが、初めて別行動を取った。
何か訳があっての事なのか、変な事じゃなけりゃいいけど。
内心、少し心配気味で歩く。
ちょっと体が痛むを気遣い、皆のペースもゆっくり。
言葉にしない優しさが、の心に浸みた。
「なあ、アレってタケじゃねぇ?」
「マジ?何処何処!?」
「アソコアソコ、何か怪しい動きだなぁ・・」
「誰か付けてんの?追跡??」
「ワクワクして聞くな」
ふと沈黙が続いた時、先頭を歩く隼人が気づいた。
隼人が示した先を、興味深々な浩介が跳ねながら覗く。
背の高いつっちーが、見えない様子の浩介に上から教えた。
皆を避けて、横から覗き見たがやけに楽しそうに聞くと
真っ先に後ろから、竜がに突っ込みを入れる。
にしても、確かに追跡してるッポイし怪しい。
全体的な動きが怪しいって。
こんなタケを見るのは、初めてだな。
時間を気にしながら、はタケを見つめる。
どうやら、誰かを追いかけてるみたいだ。
「よっ、何やってんだ?オマエ等」
皆で木陰に潜み、タケの様子を見守っていると
の後ろの、竜の後ろから明るい声が聞こえた。
ハッと振り向くと、お下げ姿のヤンクミ。
手には一冊の本を持ってる。
突然の登場に、全員で驚き一斉に口許に指を当ててシィーッと言う。
そんな中、隼人だけがヤンクミに怒鳴り返す。
すると、隼人の他 俺達は隼人にもシィーッとやってやる。
「バカ でっけぇ声出すんじゃねぇーよ!」
「「「「シィーッ!!!!」」」」
2人に念を押してから、再びタケに視線を戻す。
隼人達の視線の先に、ヤンクミもタケの姿を見つけた。
ニコニコした顔で、1人の女の子をやり過ごし
再び少し離れて、後ろをついて行く。
大人しく見ていたつっちーが、可愛いじゃんと女の子の審査。
浩介か隼人のどちらかが、タケ〜と羨ましそうな声音で言う。
竜は黙って様子を見守り、も相手の子をよく見た。
うん?ちょっと待てよ、アレって真希ちゃんじゃねぇか?
だとすると、タケが恋してる子って真希ちゃん?
「武田の奴、桃女の女の子なんか追いかけて何やってんだ?」
不思議そうに呟いたヤンクミに答えたのは
妙に清々しい顔をした竜。
言葉少なく、ただ「恋だよ 恋」とだけ言った。
よりによって真希ちゃんかよ・・・
大丈夫かなぁ、タケ。
だって俺は真希ちゃんの好みを知ってるし
しかも 同じトコでバイトしてて、一緒に帰ったりもしてる。
変な勘違いされなきゃいいんだけど・・
ならそうなる前に帰ればいいんだよな!用事もあるし。
閃いた!とか思ったのは甘く、自分も行かされる事となった。
だって・・・隼人と竜が迫って来るからさ、お色気は止めろ。