ある日の午後の生徒会室。

「血が足りない」

「あぁ?」
「だからそのままの意味だ」
「ならこれでも飲むか?試供品だけどな」

呟きに反応した不知火に苛立ちながら言葉を返し
ソファーに凭れた視界に映った薬。

それは赤い色をしていて、小さな粒の薬だ。
まるで血の色。

「これは何だ」
「見たまんまだよ、あのあぶねぇ保険医が開発した変若水の試作品」

スパーーーーン!!!!!!!!!!!!!

瞬間薬を投げ捨てる風間。
唖然とした顔の不知火に烈火の如く怒鳴る。

「あのイカレた変人の作った薬なんぞこの俺に飲ます気だったのか貴様!!
んな物を飲むくらいなら我が妻となる雪村の血を飲む方がマシだ!」
「だって血が足りねぇんだろ?それ飲むだけで血の代わりになるとか言ってたぜ?」

「俺はナイトク●スか馬鹿者」

「・・・・・・・ヴァン●イア騎士かお前←」
「少女趣味?」
「いやテメェだろそれ」

テーブルを挟んで不知火と言い争う所へ
生徒会室の扉が開き、何かを抱えた天霧が現れた。

睨みあっている二人を見て
また喧嘩ですか的な目を向ける。
コトっと大理石のテーブルに置かれた箱・・・・・

言い合いもそっちのけで中身が気になる二人。
その視線に気づいた天霧は小さく笑みを浮かべてから口を開く。

「これが気になりますか?」
「当然だ、して中身は何だ」
「これは先程南雲殿に頂いた物ですよ風間様へだそうです」
「南雲って女鬼の兄だって奴だよな?」

不知火が近づきながらそんな事を言う。
近づいてみた不知火の視界に映った箱は、木で出来た木箱だ。
しかも一枚のメモ書きが・・・・

風間に似合う色だと思うよ、赤くて美味しいから千鶴から貰ったんだ。お前にやるよ』?」

怪訝そうにメモを読み上げる。
赤くて美味い?

木箱を不知火は開け、中に入れられていた容器を取り出す。
一足先に見た不知火・・一瞬目を見開く。
そして意味深な言葉を告げた。

「風間、どうやら南雲は貴様の要望を叶えてくれたみたいだぜ?」

意味深な不知火の言葉に思わず詰め寄る。
肩を掴み、視線を合わせた状態で

「どう言う事だそれは」
「だから言葉通りだよ、見てみろ。」
「何だと貴様・・・・!?」

卑しい笑みを浮かべた不知火は、手にした容器を風間の前に掲げる。
その容器を見た瞬間、背筋が粟立った。

なみなみと入った液体の色は赤。
其処の方に赤い塊・・
まさかあの男・・・・・・

脳裏に過ぎる不吉な考え。
少し視界が揺れた。
ソファーの背凭れに掴まるようにして立つ横に天霧、ではなく不知火。

「おいおい平気かよ風間、流石のお前も血の気が引いたか?」
「ふざけるな、南雲は何処だ。問いただす・・・・」
「それは後でもいいんじゃねぇ?お前足元フラフラだぞ?」
「不知火の言うとおりです、少し休まれたほうがいいのでは?」
「忌々しい・・背後の体調が俺にまで響く」

不知火に聞かれるまま答え、壁にもたれる。
血の気がなく腹部に痛みを覚えた様
苛々した言動・・・・・

不知火の頭上に電球マークが光り輝いた。

「つかそれってつまりアレだろ?天霧今夜は赤飯―――」
「ギロッ」
「―――はいらねぇからその(いつ何処から出したかわからねぇ)刀しまえ」

舌打ちしてからチィンと鞘に刀を納めた風間を見ながら
あぶねぇ男だな(お前もな)と思う不知火。

無駄にピリピリした室内。
誰もが風間がどう動くのかを伺っている折
騒ぎの現況が悠々と現れた。

「やあ風間、僕があげた手土産は気に入った?」
「うわー・・KY」
「何それ失礼だなぁ」
「つかあんなの送りつけてよく顔が出せたなお前」
「あんなの?見た事ないとか?」
「貴様・・・・我が妻となる女の血を抜いて俺に送り付けるとは・・」

風紀委員の腕章を直しながら会話していた南雲。
苛立ちをそのまま向けると、何故かキョトンとした顔になり

そしてそれから盛大に噴き出した。

勿論訳が分からずに達は目が点になる。
少しずつ腹が立ち、苛々した口調で風間は問うてみた。

「何がおかしいんだ貴様・・・・」
「おかしいさ、おかしいよ・・ふ・・はははっ」
「なんだなんだァ?気が触れたのかよ」

お腹を抱えて笑う様に呆れ返った不知火が問えば
逆に自分達がおかしい、と言わんばかりに笑われた。

目尻に浮かんだ涙を指で拭いながら
おかしくて堪らないとばかりに奴は言うのだ。

「いいから飲んでみなよ」
「何だと?」
「いいから飲んでみてよ、そうすれば分かるからさ」
「我が妻の血を飲めだと?」

再度聞き返せば更に南雲はおかしそうに笑う。
笑われっぱなしも腹立たしく思い、仕方なく容器を開けて
なみなみと入った赤い液体と固形物

これは何だ?と聞く勇気は全くない・・・・
取り敢えず液体だけを手近なグラス(しかないのかよ)に注いでみた。

「マジ血色じゃねぇかよ」
「だから飲めば分かるって言ってるだろう?」
「風間様、気分が悪くなりましたらすぐ言って下さい」
「・・・・・・・(ゴクリ)」

―――沈黙

意を決して飲んだ液体。
んん?・・これは・・・・・・・

一口飲んだまま固まった風間。
やっぱりあの女の血だったのか?と思い始める不知火。
取り敢えずどうだったのかと聞いてみた。

「おい風間、どうだったんだよ」
「血じゃないだろ?」
「・・・確かに血ではないが・・・・・」
「本当に知らないんだ?意外と騙し易いんだな〜風間」
「貴様くびり殺すぞ・・」
「それはただのトマト、汁と一緒に実も漬けといたんだよ」

「・・・・・・・・とま」
「・・!?風間がぶっ倒れた!」
「すぐに寝室に運ぶんだ不知火」
「ったく世話の焼ける会長さんだぜ」

今日の珍騒動。
中身はただのトマトでしたとさ。

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これを書いた当時 背後がお赤飯になり、血が足りねぇとぼやきながら仕事してる時に閃いたらしい。
これはSSLでイケる!!と思ったとか。
下らぬ・・・・・・・