不覚でした・・・・
頑張ると言ったのに・・約束したのに・・・
これではまた怒られてしまいます・・
私は・・・あの人の笑顔が見てみたいのに・・
ちゃんと出来たら認めて貰える・・・笑って下さるはずだから・・・・
虹色の旋律 十一章
意識がフワフワしてます・・・
いきなりで体が付いて来なかったのかしら・・情けないですね・・・
此処で参ってしまったら継信さんに顔向けが・・・・
私があちらに行った時に、笑われてしまいます・・
なのに・・・体の力が抜けてしまいました。
赤西さんに、あのような顔をしたままでいて欲しくないんです・・・・
本当は表現する事も、歌う事もとても愉しいはずなのに。
きっと、赤西さんは歌う事が好きだと思うんです。
でも好きな事を好きと言えない。
何か・・・・押さえ込もうとしているように見えて・・辛そうでした。
そしてふとひんやりとした感触が額に・・・・
そのお陰で意識が回復して来た。
そう言えば・・少し前も誰かが水を飲ませてくれたような・・・
うっすらと目を開けると、目に飛び込んで来たのはキラキラした美青年。
( ゚Д゚)な、何か抱えられてます!!?
「あ!気がついた?」
「ーーっ!お前心配したんだぞコラーーッ」
「ひぇっ!ごっごめんなさいっ!!」
「急に起きると立ち眩むぞ?」
「わっとととと・・・」
上半身を片腕で支えて下さっていたのは、先程面通しした山下さん。
私の体を挟んで膝を付いていたのは上田さんだ。
その手にはペットボトルが持たれている。
まさか上田さんが?
だとしたらお礼を言わなくちゃ・・・・
「あのっ、すみませんでした。練習のしすぎで皆さんにご面倒を・・」
「謝らなくていいよ、必死だったんでしょ?俺達に追いつこうとしてさ」
「赤西達に認めて貰えるように頑張っただけ、だろうけど俺がせっつき過ぎたかな」
「いえ・・・そんな事は・・」
くしゃり、と髪を撫で回す上田さんにかなり焦りました。
今は手元に短刀がなくてホッとしています。
だってあったら絶対昨日と同じ事しようとしたでしょうし・・・・
「どうしてお二人は親切にして下さるんですか?」
「んー・・・・だってさ、それぞれが目指すものがあってこの世界に入って来たんだし。それをどうこう言うつもりはないよ」
「まあ赤西の気持ちも分からなくはないけど、途中加入ってどれだけ勇気が要るのか分からなくはないから」
「・・・あ・・・・りがとうございます・・」
「ほら、今日はこの辺にしてレッスン見に行かない?俺ら通しで練習するから」
「実際見た方が感じ、掴めるでしょ?」
「はいっ」
あまりにも親切にしてくれる二人に思わず聞かずにはいられなかった。
質問に答えてくれる表情は優しくて、本当に心から言ってくれてるのだと分かる。
レッスンの見学にも誘われ、ワクワクして来たは笑顔で頷く。
向けられた笑顔の邪気のなさに、少し二人の心が熱を持った。
まあそれには気づかないようにして、このレッスン室を出る。
二人の案内で向かうレッスン室は3階にあるらしいです。
其処に向かうにはまたあの箱に乗って行く。
今度は落下感に襲われる。
これが下ってる証なんだわ、慣れなくちゃ。
でもこの箱は何て名前なのかしら・・・光るボタンが移動するのが通過してる階なのね。
面白いと言うか便利ですね・・そう言えば・・・あちらはどうなってるのかしら・・・・・
あの地震が過去の事だというなら、未来であるこの時代に記録として残ってないのかしら。
気になる・・でもどうやってその記録を探したらいいんだろう。
お二方に聞けば教えてくれるかしら・・・・
「上田さん」
「何?具合悪い?」
「いやあそうではなくて、ちょっと調べたい事があるんです・・何か調べ物が出来る所ってあります?」
「あー・・・それなら―――」
「だったら市立図書館でも行けば?ネット検索で記事とか探せるらしいよ」
「あ。」
「あれ赤西いつ来たの?」
「もうレッスン室目の前だから」
「ホントだ、確かに市立図書館なら詳しく調べるには向いてるかな」
「有り難うございます!見学が終わったら行きたいのですが構いませんか?」
近くにいた上田に問うと、快く方法を教えようと足を止めた・・・が
その問いに答えたのはドアを開けて出て来た赤西。
目の敵にしているはずの赤西がスラスラと答えた様に、上田は何かを悟る。
だがスラスラと答える様子に全く違和感を感じないは
赤西が知りたい事を教えてくれただけで嬉しく感じていて気付かない。
「でもは――」
「別にいんじゃね?まだ正式発表してねぇし、バレねぇだろ。」
「いや、そうだけど・・・」
「そうですね!場所を教えて下されば自分で行って来ます!」
「ふーん・・なら簡単に教えとく」
「有り難うございます赤西さん!」
あーあ・・・あんなに嬉しそうに笑っちゃってまあ・・
やたらと心配だった上田と山下だったが、地理は知ってるものと思い見送る事にした。
これで私のいるあの場所の事が知れるかもしれません。
父や母、そして学友達の安否まで分かるのかは定かではないですけど
でも!調べる方法があると分かっただけでも前進です!
嬉々とした笑顔で赤西へ屈託なく礼を言い、レッスン室へと入って行った。
その背を見送った三人。親切心で教えた訳ではなかった赤西はかなり面食らった顔で見送る。
ただ姿を見るだけでイラつくから遠ざけたかっただけだったんだが・・・
ああも素直に礼を言われると毒気を抜かれるっつーか何ていうか?
って!アイツなんかの事で何で俺が言い訳しなきゃなんねーんだよクソッ
「わー・・・・何か今、すげー赤西の感情が手に取るように分かっちゃったよヤマピー」
「それ俺もだわたっちゃん。」
「も凄いよね、ある意味、赤西があそこまで振り回されてるの初めて見たよ俺」
「俺も俺も!!ちょっと新鮮だったわ」
ガチャッ
「てめぇらうっせーーよ!早く中入れバカ!!」
「ぷっ!あれ絶対図星だね」
「だねだね、面白くなりそうだわ」
感情のままに動く赤西、しかもかなり振り回す側だった奴が
チクチクっとした言葉でをいじめようとしたんだろうけど、逆に振り回される側になってる様は面白かった(
あんま弄るとこっちも火種を貰いかねないから大人しく中に入る。
其処ではもう流れの確認が行われていた。
確認をしながら、今一つ何か案はないかと募っている。
それぞれに振りを確認しながら話し合ってるみたいだが、案らしい物は挙がっていない。
話し合いの様子から見学していた、偶々持ったままだった構成プロットの書かれた紙を取り出す。
目をつけたのは題名・・・・読み方は分からないけど気になる。
なので近くにいた亀梨へと問うてみた。
「亀梨さん、これは何と読むんですか?」
「ん?ああこれ?これは『サマリーオブジャニーズワールド』」
「それはどんな意味で・・?」
「『Johnnysの世界の概要』みたいな意味かな。過去の歴史から現在までを簡単にまとめてみました、って言うと分かり易い?」
「成る程・・・・つまりは集大成ですね?となると様々な世界の歴史を見せるのも面白そうじゃないですか?」
「世界の?歴史・・・・・あー・・その歴史もこっちに引っ掛けてる訳か!ナイス発想」
「亀梨さんのお陰で閃きました、此方こそ有り難うございます」
「・・・・・」
「亀梨さん?」
通し稽古で話を聞いてたら、が傍に来て俺の服の袖を摘むようにして引っ張った。
聞かれたのはタイトルの和訳。
仁なら英語が得意だけど俺は苦手な方だったりする。
でもタイトルの意味を理解してないで公演は出来ないからそれだけは知ってた。
聞いたままを教えると、一瞬考えてからはピンポイントで一番伝えたいメッセージとして籠めた意味を言い当てる。
それから閃いたのか一つの案を提案してきた。
ジャニーズの歴史を見せるなら、こっちのタイトルのワールドに引っ掛けて
他の世界の歴史も見せたら面白くなるんじゃないか、と。
ジャニーズの過去の歴史を見て行く、その旅の道中に他の世界の歴史を組み込む。
時間旅行みたいな感じにしたいって感じか。
同じ事をイメージしてみたら面白そうだと思えた亀梨。
でもその案が出たのは俺のお陰だと笑う謙虚な奴。
やっぱり重なると。
「さっきヤマピーから聞いたけど、また赤西に突っ掛かられたんだって?」
「あ、いえ・・あれは意見交換です!」
「意見交換?だってすっげー口論してたって聞いたけど・・・」
「私はただ、赤西さんに愉しいと思って欲しいだけです」
「愉しい?」
「はい。生意気かもしれませんが、踊りや歌はそれぞれに籠められた意味や思いがあると思うんです。」
「・・・」
「それを表現し、見て下さる方達に伝えるのが私達のやるべき事で・・それが出来る仕事だから」
「うん」
「ただ見せればいいだけじゃなく、私達自身が気持ちを籠めてやらなければ見る側にそれは伝わらない・・・私はそう意見しただけです。」
相手をよく見ているからこそ出てくる言葉。
その柔軟さを俺は前も目の当たりにした・・・・
真っ直ぐな思いで話す姿を見て亀梨は一つ確信した。
「私、歌う事と所作の一つ一つに表現を籠める事が愉しいと感じました。赤西さんも皆さんも歌が好きだと思うんです・・だから・・・」
「・・・・うん」
「辛そうな・・歌が好きだと言う気持ちを、赤西さんに押し殺して欲しくない。」
凛とした表情でそう言い切ったに、俺の胸が微かに熱を持った。
確信した今なら、正しい熱なんだろうなと自嘲しておく。