始
『今度は傍で――――・・・を守るから』
眩しく笑った金色。
優しく見つめる紫暗
黒と白。
立ち去る背中。
薄れる記憶の中の思い出を夢に見る。
幼い頃、と言っても14くらいの時のはず。
私の前に現れた三人の人影は、全く知らない人達だった。
顔とか思い出そうとしてもモヤがかかって思い出せない
それでも私は、何故か懐かしさを覚えていた。
他にも色々会話したような気がするのに、思い出せるのは冒頭の言葉のみ
しかも誰に対して言ったのかが分からない。
あの眩しいまでの金は優しい眼差しで私を見ていた・・・・・
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・・・・・・
・・・・
・・
ぼんやりと意識が覚醒する。
視界に映る見慣れた天井。
そして自分の部屋だと認識
此処は東封の町にある宿屋の自室。
つまりは住み込みで働いてる。
客間程広くないけど、十分一人では快適な広さの部屋だ。
家はあるよ?あるけども・・・帰ってない。
と言うか私を出迎えてくれる人は其処にはいないから。
色々な出来事があって、今は私は生まれた町の宿屋で働けているのよ。
まあ今はそれだけでいい。
目覚めるとすぐにベッドから起き上がり
いつもの仕事着の動き易い服に着替える。
枕の下から取り出した大事な物は、失くさないように胸元へしまい込む。
長く伸びた髪は水色、その髪をまとめつつ頭に布を巻く。
鏡を見る目は空を映したような青だ。
我ながら変わった容姿だと思う・・・・嫌いじゃないけどね。
「、いる?」
粗方着替え終えた所に、扉越しに声が掛けられる。
その声には聞き覚えがあり、同じこの宿で働く仲間だと分かり扉を開ける。
開けた先には歳も近く、姉のように接してくれている菊令の姿。
用向きでもあるのかと目を見ると、ニッコリ微笑んで彼女は言った。
「悪いけど隣の町まで買い出しに行って来てくれる?」
「うんいいわよ?」
「買う物はメモしておいたから」
「分かった、有り難う。」
申し訳なさそうにそう言う菊令。
この東封と言う町、宿屋や酒場は何軒かあるのだが
商売に欠かせない食品や日用品の店が一軒しかなく
今回買い出しに行く物は、その一軒だけの店では事足りない数のようだ。
住み込みで働かせてもらっているのもあり、は快く引き受けた。
菊令に町の場所と方角を聞き、足早に東封の町を出る。
町に馴染んでいたを、町人も気を付けてねと見送ってくれた。
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森の中の道を走る鋼鉄の乗り物。
其処に乗り合う四人の影。
やがて交わる運命の糸・・・・
彼等も誰も知らない。
己等がこの先出会うであろう運命を。
遙か昔から繋がった運命の糸。
―いつかまた此処で―
遙か昔に自分達が互いの無事を祈り合い、交わした願い。
それは違う形で今へと繋がった。
「なぁ三蔵ー腹減った!」
緑に溢れた森の中で響いた空腹を訴える声。
その声の主は金の瞳で前の席に座る青年を見つめる。
しかし三蔵と呼ばれた青年は、当の本人ではなくハンドルを握る隣の青年へ言った。
腹が減ったと、金眼の少年以外の誰かが言うならば事態も変わったかもしれないが
この少年が騒ぐのは今に始まった事ではない。
長い付き合いである彼等は、いつもの事だと考えてまともに取り合う事はしないのだ。
「八戒・・次の町までどのくらいなんだ」
「まだ森の最初の方ですよ、この森は複雑でしてね・・順調に行けばお昼頃には出られますよ」
温和な笑顔で問いに答えた八戒と言う碧眼の青年は、ルームミラー越しに
きゅるきゅるとお腹の虫を合唱させている金眼の少年を見やる。
お昼頃に出られて飯にあり付けるなら、丁度いいじゃないか・・・と通常の人間なら思うだろうが
この金眼の少年、もとい 孫悟空にとっては死活問題になる。
予想通り八戒の言葉に否を唱えた悟空は、不兵不満を口にした。
「えーーっ!?そんなにかかるの!?ヤだよぉー!三蔵どっかで休憩しようぜ!!」
と叫ぶが早く、三蔵の寄り掛かるシートをガクガクと揺さぶり・・・・
勿論イライラが溜まって来ているこの三蔵と言う青年。
怒りをやり過ごすように閉じられていた瞳が見開かれ
紫暗の瞳に殺気が色濃く滲めば、ビュッと何かを振り被り
気合い(怒気)一喝、それを悟空の頭へ振り下ろした。
スパァアアン!!!
森の中に乾いた音が響き渡る。
うるせぇバカ猿!!と恨み毎もセットだ。
これもまたいつもの事。
それを眺めながら、紅髪紅眼の青年は今日も平和だねぇと胸中で思ったりしている。
因みに悟空の頭を叩いたのは、三蔵愛用のハリセンだ。
関西とか芸人とかが突っ込み使ったりしてるアレ(今はもう古い
しかもこのハリセン、未だに何処からどう出て来て何処にしまわれてるのかは謎。
「あの〜2人とも落ち着いて、それと悟空。
別に森を抜けなくてもこの道を少し行った処に一つの町がありますから
其処で昼食を食べましょう」
その町とは、別の道でその同じ町に向かうの目指す町の事であった。
現在無事町に着いたは、買い物を済ませメモと照らし合わせて確認をしている。
買い忘れた物はないか・・・とかを。
歩きながら確認するの腕に下げられた買い物籠には、女が一人で持つには結構な量の品物が入れられている。
肉・魚・野菜・果物・・・・と此処まで確認した時、買い忘れていた物に気づいた。
お酒だ、普段飲まないから忘れてたわ(それは問題じゃない
内心突っ込みを入れつつ、町の一番奥に構えた酒屋へと足を向けた。
酒屋へ向かいながら、更に重くなるであろう買い物籠の事を思って溜息をついた
まさにその時――
ドーーーン!!!!
突然の轟音が響いたと思えば、今まさにが向かおうとしていた酒屋が吹っ飛んでいた。
人々の悲鳴に混ざって、奇声が町に響き渡る。
不気味な笑い声や奇声と共に現れた者。
それはまさしくあの妖怪の集団であった。