助けて・・・
つったく!隼人の奴、ちゃっかりホッペチューしやがった。
ま・・まあ、嫌じゃなかったけど・・・・
でもまあ・・ちゃんと待っててくれるみたいだし
目先の事に集中出来そうだ。
とは言っても、つっちーが気になるに変わりはない。
自宅謹慎かぁ・・俺もそうなってたはずなのに。
だからって、落ち込んでる場合じゃない。
俺が出来る事を見つけて、自分なりにつっちーを助けるんだ。
よし!と密かに気合いを入れ、も皆と合流する事にした。
それには、つっちーと話さないと。
いや・・それよりも、宮崎さんか・・・
俺が全てを話したとしても、ヤンクミとコイツ等以外は
この話を信じてはくれないだろう。
流儀のある華道家の者だったとしても、今の俺は
隼人達と行動を共にしてる。
信憑性は薄れるから、聞き流すに決まってる。
そうなれば、もう一人の証人 宮崎さんに話してもらうしかない。
彼女だってきっと、つっちーの事を悪くは思ってないはず。
あんな一方的な石川の話で、満足なんか出来ない。
一緒にいた宮崎さん自身が一番分かってる。
ぼんやりと、でも頭の中では真剣に考えを巡らせ
次のゲーム機へ移動する隼人達を追いかけた。
方向からすると、パンチングゲーム?
ストレスでも溜まってんのか?←違うと思う
何となくついて行った先に、ゲーム機が見えて来た・・ん!?
あのノッポな身長!肌の黒さ・・あれは!
「つっちー!」
「何やってんだよ、こんな所で。」
「どうせ、もうすぐ退学だし。」
「まだ決まった訳じゃねぇだろ」
「ヤケになんなって。」
見知った姿を見つけ、駆け出したを先頭に
浩介がつっちーに話しかけ、その後に隼人と竜が続く。
俺達の言葉に答えたつっちーは、自暴自棄になってるように見えた。
「ヤンクミ、すっげぇ心配してるぞ。」
「俺達だって、つっちーの事心配してんだからな」
「んなわけねぇだろ、センコーなんて皆同じなんだよ。」
タケがどんなに言葉を掛けても、俺が心配してるって言っても
つっちーは信じようとせず、浩介の脇を通り
立ち去ろうとした。
は どうしてもそのまま行かせたくなくて腕を掴んだ。
「つっちー!オマエこのままでいいのか!?」
「いいんだよ!これで!」
その日から何度も問いかけてた言葉を、再度つっちーに言う。
引っ張られた感覚に、立ち止まって俺を見たつっちーは
やはり頑なに一度決めた事は曲げず、突っぱねた言葉を返した。
その真っ直ぐさが、俺にとっては辛い・・・
こうと決めた事を後から変える事が、情けないとは俺も思う。
けどさ!・・・だからって、いつまでもこのままじゃ何も変わらないじゃん!
何でだよ、どうして力にならせてくれねぇんだよ!
「・・・ごめん」
土屋は、の顔を見た途端 手を振り解けなくなった。
それから視線を落とし、しばらく口を閉ざすと
の手を握り、ゆっくり指を解いてから
短く謝ってから つっちーはゲーセンを出て行った。
追いかけかけた浩介とタケ。
隼人と竜も、何とも言えない顔を出口へ向けた。
追うのを諦めたタケと浩介、後ろを向いた途端・・・
「!?」
「つっちーの奴!」
「おい?浩介?何処行くんだよ!」
「・・・こうゆう事」
突然吃驚した顔で、を指差すタケ。
同じく驚いた浩介は、目の色を変え駆け出す。
そんな2人の反応に、隼人は驚き浩介を呼ぶ。
一方竜は、気になってタケの隣りに行き 事態を理解した。
つっちーが突然、驚いた顔をし少し態度が変わったのは
唇を噛み締めたが、ぽろぽろと涙を零していたから。
声を殺して、黙って泣く姿は胸が痛む。
竜はフッと息を吐き、そっとに近づくと
頭を引き寄せて、背中を優しく叩いた。
「竜・・てめぇ、ちゃっかり何してんだよ。」
「今度は竜が抜け駆けかよ!」
抱き寄せられて目を丸くしてるに気づき
浩介を連れ戻した隼人が、ムッとして言えば
連れ戻されて、その様子を見つけた浩介も抗議する。
タケはと言うと、文句を言わない代わりに
後ろから俺に抱き着いてた。
一番の抜け駆けはタケじゃねぇ?
「それにしてもつっちーの奴、を泣かすなんて。」
「後でゲーセン代 奢らせるか」
「つっちー、誰か庇ってんのかなぁ」
「・・・・」
「・・・あいつ、あの子の事庇ってんのか?」
「多分な」
それはいいけど、早く離せよ(怒)
を抱き寄せた竜へ3人は集まり、それぞれぼやく。
タケの誰か庇ってんのかなぁ、の言葉に
ゲーセンで一緒だった中学生の事を言った隼人。
同意した竜だが、ちゃっかりまだを離してない。
それに苛々した隼人、それにしたっては身動きすらしない。
昨日の学校じゃ、わざとらしい位 竜を避けてたのに。
隼人が自分を見つめて、考え事をしてる時
俺は別の事を考えてた。
もうこの際、タケが抱きつこうが気になってない。
一々照れて反応する方が、コイツ等は楽しむんだ。
ここは我慢してやり過ごすのが一番。
つっちーを待って話をしようとしても、きっと駄目だ。
やっぱり、宮崎さんに会いに行こう。
何かしないと、俺の気が済まない。
さっきは隼人に、今は竜とタケに・・・
抱きしめられる 身を任せられる安心感。
俺は、感謝の意味を込めて 竜を抱きしめ返し
竜の学ランから顔を上げ、短く礼を言う。
「もう平気か?」
「うん、俺も自分の出来る範囲で つっちーを助ける。」
「あんま突っ走んなよ?オマエ、すぐ無茶するし。」
心配して聞く竜、俺も自然に接しられた。
竜からの告白、忘れた訳じゃない。
俺は、どちらかに応える事で この関係が壊れるのを恐れた。
でも今は、そうしなくても一人の仲間を失いかけてる。
目先の事すら解決出来ないようじゃ駄目だ。
もっと・・・自分に自身がついたら、答えを出す。
そう決めた、だからもう迷わない。
今は、つっちーを助けたい。
隼人もタケも浩介も、つっちーも俺を心配してくれてる。
守ろうと決めてくれてる。
だったら俺も、皆を守りたい。
「皆、俺 ちょっと行かなきゃなんねぇトコがある。」
「一人で行こうとか思ってる?」
「え?まあ、そうだけど・・今度は無茶しないからさ」
スッと顔を上げて、皆を見渡しながら言えば
隼人みたいに、目を細めたタケが俺に問いかけ
皆の反応を気にしながら、ボソボソッと答えたら
俺を見る隼人達の目が呆れた物になる。
「オマエさ、今何時だと思ってんの?」
「それに、あの子が今何処にいんのか分かってんのか?」
皆の反応に、言葉をなくした俺。
そこに隼人と竜の駄目出しが入った。
そりゃ・・分からないけど、この時間なら塾にいそうじゃん。
ムッとむくれて黙り込む。
しばらく皆は、黙り込んだを見つめる。
必死に何かを考えてる顔、ムキになってるようで可愛らしい。
とっても微笑ましくなってしまった。
それは全員思ったらしく、目は優しくを映してる。
穏やかな沈黙は数分続き 隼人の一声で終わった。
「よし、全員で行こうぜ。」
「え゛!?」
「ナイスアイディア、隼人。」
「仕方ねぇな、何処だよ塾。」
こうゆう時は頭らしく、決断力の良さを発揮する隼人。
仰々しく声を上げれば、ニッと笑って同意する浩介。
タケもそれいいじゃん!とか言って、俺の手を握ってはしゃぐ。
可愛いなぁタケ、オマエ本当に男に見えねぇ〜。
見た先のタケのお尻に、尻尾が見えた気がした。
一見乗り気に見えない竜。
でもちゃんと行き先を聞く所は、行くつもりなんだろう。
塾の場所?えっと・・・何処だったっけ?
俺も行かされてたトコだった気もすんだけどさ。
「多分、大通り・・・」
「『多分』!?オマエさ、一人だったらどうする気だったんだよ。」
「取り敢えず、全部回る。」
曖昧に答えた、かなり驚いたらしい隼人が聞くと
思った通りの返事が返ってきた。
やっぱ一人で行かせなくて良かったな。
手当たり次第回ってたら、夜が明けてるって。
その前にまたヤバイ事とかになってたかも。
そんな事を思ったのは、隼人だけではない。
竜もホッと、息を吐いてた。
タケと浩介も、が無茶する前に気づけて良かったと思い合った。
それから達は、夜の街へと出て行く。
唯一 つっちーを助けられる少女の元へ。