確かな想い



マックで軽い夕飯を済ませた俺達。
その後は、宮崎さんに行ってみたい所を聞き
俺達には馴染み深い、ゲーセンに来た。

「ゲーセンなんかに来たかったのか?」
「一度 来てみたかったんです。」
「「え!?ゲーセンも初めてなのか??」」
「・・・・ハイ」

あまりにも吃驚発言だったから、綺麗に俺とつっちーの声がハモる。
女子中学生だって今時、ゲーセンくらい行ったりする世の中。
正しく籠の鳥状態だな。

俯き加減に肯定した宮崎さん。
まあとにかく、俺達はクレーンゲームへと向かった。

一方、同じくこのゲーセンに来いてた隼人と竜。
キューで珠を狙う隼人、口の端に舌を宛がい目を細める。
その姿は とても色っぽい。
同行している竜は、台の端っこに腰掛けて見てる。

白と赤い玉をキューで弾き、隼人は視界に入った影に顔を上げ
驚きが強く、思わず打つのを止め上半身を起こし
サイドに座る竜へ言った。

「あれつっちーとじゃね?」
「・・あの子昼間 今日学校見学来てなかった?」

そう、後から合流した俺と
石川ってゆうセンコーに啖呵を切った
立ち去ろうって時に、を先輩と呼んで呼び止めた子。
そんな子と、あいつらは何で一緒にいるんだ?

気になったら最後、隼人と竜はゲームを中断し三人を追う。
隼人達が気づいたとは知らない俺とつっちー。
早速クレーンゲームの得意なつっちーが、ゲームに挑戦。

狙いはアンパンマン。
アンパンマンのバスに乗ったアンパンマンのヌイグルミ。

つっちーが一人で取ろうとしてたら、変な光景だけど
これを宮崎さんの為に取ってやろうとしてるなら
見ているこっちもほのぼのしてしまう。
つっちーは、隼人みたいにケンカっぱやいけど 優しい。

不良っぽくないなぁ〜だからいいんだけどさ。

クレーンを操るつっちー、その様子をワクワクして見守る俺達。
宮崎さんは俺の腕を掴み 様子を見守ってる。
まったく・・可愛いなぁ、宮崎さんって。

「かーわーいーいー」(ヤンクミ風)
「オマエが言うと、変態っぽいから止めろよ。」

コチラ外野、クレーンゲームで遊ぶ様子を見ながら
思わず隼人が呟いた言葉。
隼人に言わせれば、つっちーの様子を見ているの方が可愛い。

ふざけてるのか、隼人の言い方に突っ込みを入れた竜。
突っ込んだ顔が思い切り嫌そうな顔をしてる。

「てゆうか、何やってんだ?アイツ等。」
「・・・さあ」

冷たい突っ込みを、隼人は取り敢えず受け流し
宮崎さんを交えた三人で、仲睦ましくしている二人を指摘。
切り替えの早い隼人を、チラッと一瞥してから竜も首を傾げた。

ゲームをし慣れてるつっちー、見事にアンパンマンを取り
見守ってた宮崎さんに、それを手渡す。
初めてこうして物を貰った嬉しさからか、あまり笑わなかった彼女の口許に 可愛らしい笑顔が作られた。

「オマエちゃんと笑えんじゃん」
「・・・・・」
「隠す事ねぇって、女の子は笑った方がいいよ?」

つっちーは、長い体を曲げて宮崎さんに目を合わせ
実に爽やかな笑顔を見せた。
その後を引き継いで、本当にそう思った俺も同意。
女の子は・・って、俺も女だっつーの。

まあいいか、きっと・・男でいるのは卒業まで。

「ちょっと俺 飲み物買ってくるよ。」
「じゃあ私も・・・」
「宮崎さんは、つっちーといな 結構安心出来るからさ。」
「何だよその『結構』って。」
「そのまんまの意味だよ、じゃあちょっと行ってくる。」

完璧な男じゃない俺と行くよりも、黒銀で名も知れてて
きっと俺よりも強いつっちーといた方が安全。
隼人に似てるけど、隼人程ケンカっぱやくはないつっちー。
俺は軽く二人に手を振ってから、自動販売機へと向かった。

今の時刻は、夜の八時半。
そんな時間でも、若者の絶える事はなく賑やかな店内。
人が沢山いて安心だけど、完全に気は抜けない。

多少なりと、武術の心得が出来ても不安は不安。
変な男等に絡まれたらどうしよう、とは思う。

「ねぇ彼女、今一人?」
「!?」

警戒して歩いていた俺の腕を、強く引き寄せた男。
しかもコイツ、俺の事女って分かってんの!?
もしかして、過去の俺を知ってる奴??
こんな時に出くわすなんて、ツイてねぇな〜

俺の腕を掴んでる男は、気安く俺の肩を抱く。
・・・何か、ヤバイ?
逃げた方が良かったりして?

「離せって!」

雰囲気的にヤバげだと思ったは、男の手を肩から払い
猛ダッシュして逃げようとした。

「待てよ!落ち着けって、俺だよ隼人!」
「え?隼人?・・うわっ」
「わっあぶねっ」

駆け出した俺を、男が腕を掴んで止めた。
しかも、その止めた声は聞き覚えのある声。
え??隼人?ナンパな言葉を掛けて来たのが隼人で
それに驚いたせいか、足が絡まった。

足が絡まって倒れそうになったを、隼人も慌てて腕を伸ばした。
前方へと倒れ込むの体が、自分の腕の中に倒れ込む瞬間。
それよりも先に、別の誰かの腕が隼人の視界に映り・・

「何やってんの・・・平気か?」
「う・・うん、サンキュー」

前に出された腕に掴まる形で、受け止められた
寸前で受け止め役を取られた隼人。
タイミングよく現れた竜を、妬ましそうに見上げた。
ムッとしてるのが分かってるのか、チラッと隼人を見下ろし
意味深な笑みを浮かべる竜。・・煽ってる煽ってる。

バチバチと視線を合わせる二人。
竜の胸しか見えてない俺には、その様子は分からない。
俺の脚は、交差するように絡まってしまってる。

竜はそんな俺の体を、片手だけで軽々と支えてた。
どんなに細くても 男なんだなぁ・・と感心。

「オマエ、何でつっちーといるんだよ」
「あ〜それは、偶然なんだよ。」
「あの子といる事もか?」

体勢を直してもらってから、隼人に問いかけられ
ちょっと言葉を濁してからそれに答えた。

そしたらすかさず竜が、話の確信を突いてくる。
う・・・と呻くようにして黙った
この様子で、隼人と竜はあの子とは偶然じゃないと気づく。
とにかくは嘘が苦手。

誤魔化そうにも、思ってる事が顔に出てしまってるから。
そんな素直さが どうしようもないくらい、隼人は愛しいと思っている。
素直さだけじゃなくて、性格やら全てをひっくるめて。

「宮崎!」

二人の視線、向けられる瞳。
あ゛〜〜そんなに見つめんな!!って言いたい。
同時に二人からの告白とかまで思い出したりしちまった。
竜とは密着したまんま、顔を背ければ近くに在る隼人の整った顔。

他の人から見れば、美青年に囲まれて羨ましがられるだろうが
俺にとっては 生き地獄・・・。
流石に困った俺、どうすべきか考え始めた時 響いた声。

ゲーセン一帯に響き渡った声は、学校で聞いた声だ。
今までさんざ聞いて、うんざりしていた奴の顔。

「石川か!?こんな所まで来るなんて、しつけー奴!」
「オマエは出ていかねぇ方がよくねぇか?」
「何でだよ!俺だってさっきまで二人といたんだ、関係なくねぇ!」

思わぬロスだ、此処まで探しにくるなんて。
多分 宮崎さんの母親が、アイツに電話でもしたんだろう。

(思い通りのレールを歩かせてる)娘が塾に行ってない、と。

子供を自分達親の玩具だと思ってるような大人。
そんな奴ばかりじゃないって知ったけど
まだそんな考えの大人を見ると、苛々するんだよ!

飛び出そうとした俺を、また隼人が止める。
止めた自分に、予想の範囲な反論をする

半端ねぇくらい、仲間を大事にする
仲間の為になら自分の身を省みない奴だから、ほっとけない。
目が離せないから・・・傍にいて欲しいのに。
けど 自由になったを、俺の欲望で束縛したくねぇし・・。

俺、竜みてぇに冷静じゃねぇし 為になる事言えねぇけど
を想う気持ちは、誰にも負けねぇんだからな。

「分かった、けど 自分から余計な事まで背負うなよ?」
「え・・?」
「俺も隼人に同感、最初に釘刺しとかねぇとまた無茶するだろ?」

ギクッ・・て感じ?俺の行動パターン読まれまくりじゃん。
でも、だから安心して突っ走れるんだよな・・俺。
二人の存在ってゆうか、理解して見守ってくれる存在って
かけがえのないモノだ。

そう思える奴等に会えて、俺は幸せかも。
この想い、にも話したい。
俺には 失いたくない仲間が、いるんだよ・・って。

そうと決まれば、早くつっちー達のトコにいかねぇと!
つっちーだけを責めさせたりなんか、絶対させねぇかんな!

隼人達に元気よく笑い、はさっきまでいた方へ走った。
そのの姿を、二人は温かい笑顔で見送った。
大切な仲間であり、大切な存在に変わったを。