スキンシップ苦手 Aの場合



ジャニーズJr内に結成されたSnow Manに所属して数ヵ月経過したある日。
アイドル誌に掲載される写真を撮る事になり、
スタジオに向かう為に移動車に乗り込んだ。
Snow Manは10人いるので中々大きめのバスを貸し切る。

席順は乗り込んだ順、運転席側の前から奥に舘さまと阿部ちゃん。
同じ列のドア側にふっか、運転席側の奥から照と康二、同列ドア側にさっくん。
最後尾運転席側奥、しょっぴーラウールと補助席に私で同列ドア側に目黒が一人。

現場に着くまでの間は彼らにとって自由時間みたいなもの。
静かに乗ってるという光景を見る機会は少ない。

突然クイズ大会が始まったり
その時流行っている遊びを皆で始めたりと兎に角賑やか。
Snow Man加入は私がラストだったのもあって
既に9人での空気や雰囲気が完成されてるところからの加入

戸惑いもあったし女性が在籍する初のジャニーズグループ
って事で世間からの注目度も高い。
今まで女性は属していてもグループとして表に出た事例はなく、
気後れした私に皆は言ってくれた。

¨これで完成形じゃない、これから進化して行くにはお前の力も必要なんだ
 どんどん新しいSnow Man見せて行こうぜ¨
¨Snow Manをパワーアップさせる為に加入してくれてありがとう¨

この言葉達に大きく支えられたのは間違いない。
中傷も多くあったしバッシングも凄かった
何より辛かったのは私のせいで皆までも叩かれた事だ。

デビューだけを目指して頑張って来た彼らの事まで
傷つけられた事だけが辛くて悔しかった。

今ではそんな事も嘘のように鎮まり、少しずつ世間に認められてきている。
今回の雑誌掲載は更にSnow Manを知って貰う為に臨む仕事だ。
私は補助席から左右と前二列に座るメンバー1人1人をじっくり眺めた。

斜め後ろの康二にせがまれた阿部ちゃんがクイズ問題を検索し、
舘さまがその様子を見守っている。
照も隣に座る康二を呆れたように見ているがその目は優しい。

通路側のふっかとさっくんも
クイズ出題を待っているのかざわざわしていた。
最後尾席のなべラウは違う話をしているのかキャッキャ中(笑)

ドア側最後尾の目黒は、少しだけ1人外を見たりしているが
決して会話に混ざらない訳ではなく、
時折なべラウの会話に相槌を入れたりしていた。

私はというと、基本俯瞰して皆を眺めている方が多い。
賑やかで家族みたいな雰囲気の皆と、
同じ時間を共に出来るだけで楽しいのだ。

皆も始めは会話に誘ってくれたりしたが
徐々に私の気持ち?を察知し、
構う時は構うけど基本どうするのかを委ねてくれる。

こういう気遣いが自然に出来てしまう彼らは 本当に凄いとしか言えない。

1人だけがそうなんじゃなく、
1人1人が自然と心得ているのか出来てしまう。

だから今回の移動中も賑やかな彼らを
ニコニコしながら眺めていた。

そうするつもりがなくても彼らの楽しそうな様子を見ているだけで
私も楽しくなって笑顔になる。

🖤「また笑ってるの?おもしれー」

早速気づいた声が左から聞こえた。
声と同時に左のほっぺをツンツン突かれる。

🐇「だって皆見てるだけで楽しくなっちゃうんだもん」

楽しくてその素直な気持ちのまま言い返す。
私のほっぺをツンツンしていた目黒も言葉を受け、まあ確かにと笑った。

目黒蓮ていう名前からしてイケメン味溢れるこの男、
彼も私と同じ後から加入した組。

年齢は私の2個上の23歳、因みに私は21歳です。
歳も近くお互いモデルも兼ねているからか話も合うね。
基本このグループの皆は背が高い(さっくん以外は)

リーダーの岩本照は182㎝でアスリート並の鍛え方で筋肉も凄い。
まとめ役の深澤辰哉は175㎝ ラウールは185㎝もある。

阿部ちゃんは178㎝と中々の長身、舘さまは174㎝
しょっぴーは172㎝、康二は175.5㎝で目黒はラウに次いで高い184㎝だ。
モデルを務める私の身長はしょっぴーより-1.5㎝の170.5㎝ですな。

女の子で170.5あるのは高い方でしょ!
とか何とか話しつつ他の皆を眺めた時、康二と照が偶々視界に入った。

ワイワイ盛り上がる中、クイズが始まったらしく
正解した康二が隣の照と肩を組もうとしたが、
やめろよ~と言って避ける照。

今まで見てきた感じからして、スキンシップの好きな関西人の康二と
関東出身メンバーには明らかな違いがある。

ハイタッチや肩を組む等はまあ全員したりはよく見る。
YouTubeで開始の挨拶をする際にも、 誰かしらが隣同士でふざけ合ったり等もある。

が、普段もそうって訳ではない、関東出身メンバー内には
一定の距離感がちゃんと存在している。

オンとオフってやつね、でも関西は基本他人との距離が近く
常に接触?してるしパーソナルスペースも緩い。

関東出身側でスキンシップ好きそうなのと聞かれたら
さっくんとラウールしか思い浮かばん。
まあ、関東は結構他人との距離あるからねー・・・そんな私も関東生まれ。
いや別にわちゃわちゃが営業用って言ってる訳ではないよ?

基本皆、人間が好きなんだろうなとは思ってる。
後はあれかな、Snow Manが大好きなんだろうなーって思う。
ただ照とふっかに関しては過去スキンシップは苦手だと言ってたね。

皆を眺めてるうちに車は撮影現場のスタジオに到着。
今回の撮影は2人ずつに分かれて撮る事になっている。

組み合わせは、照×蓮、ふっか×康二、阿部ちゃん×私、ゆり組。
それから、さっくん×ラウール。
テーマは『仲良し』てなるとスキンシップを要求されそうだなあ・・
何だかんだでスキンシップやれそうな組ばかりなのよね。

メイクと衣装を着て準備万端のペアが、
それぞれの撮影スペースに分かれて開始していく。
ふかこじは張り切る康二に文句言いつつも付き合ってるリアコのふっか。
照と目黒の組み合わせも中々見ないから、私自身も楽しみにしてる。

ゆり組はさすがって感じで、2人の持つ幼馴染の空気感がめっちゃ出てた。
さくラウの撮影を見学しつつ私は阿部ちゃんの到着を待っている。
撮影が一段落したペアは、先に控室に戻って行く感じ。

🖤「お前これからだっけ」
🐇「蓮撮影お疲れ!うん、さっくん達の次だからラストだね」

声をかけて来たのは目黒と照の2人。
意外にも合う部分があったのか、楽し気に撮影していた。
どちらかというと、少し緊張してるように見えた目黒を
照がリードしてあげたっぽい

流石リーダーだよね。
基本寡黙な照、今も私と話す蓮の横にはいるが
口数は少なくニコニコして眺めてるだけ。

でも私は知ってる、照が一番皆の事を見てるって事。
その上で伝わりやすいアドバイスをしてくれる。

💛「阿部とだっけ?」
🐇「はい」
🖤「岩本くんからのアドバイスすか??」

今日も早速アドバイスをくれるようだ。
何故か横の目黒までがワクワクした目を向け、
私と同じに言葉を待っている。

ワクワクとキラキラの目で言葉を待っている私らを見て
優しく笑うと、私の肩に手を乗せて照は言った。

💛「あいつはお前に合わせて動けるやつだから好きに動いとけば大丈夫」
🐇「・・・はい!」
🖤「確かに阿部ちゃんと撮るのって安心感ありますよね、相手に合わせてくれんの」
💛「そそ、阿部は相手の動きとかポーズとかを見て、
  それに適した動きを汲めるから安心して任せられんのよ」
🖤「ですよね、俺阿部ちゃんと撮ったり組むの安心するんで好きっす」
🐇「珍しく蓮が励ましてくれたかと思ったら
  阿部担にマウント取ってるだけだった!」

と言ったら目黒の腕が伸び、脇をくすぐられる。
一応これから撮影だから髪の毛をわしゃわしゃするのは避けてくれたんだろう(多分
2人なりの励ましに背中を押してもらい、照からは頭をポンポンされた。

控室に戻るめめいわを見送っているところに漸く阿部ちゃんが到着。
軽く7.5㎝はある身長差、同じ170㎝台だけど
細身な阿部ちゃんのせいか高く感じる。

スタジオでハグしたり寝転んだりして撮っている微笑ましいさくラウを視界に収め
そっちを見たままだが何となく気になったので阿部ちゃんへ聞いてみる事にした。

🐇「あの、阿部ちゃんはスキンシップって苦手?」

直球で聞いたらえ?ていう顔が私の方を見た。
素の表情っぽく思えてかわいいなあとか思ってしまった。

見た感じスキンシップは苦手じゃなさそうではあるが念の為ね。
今回の撮影テーマが『仲良し』
となれば間違いなくスキンシップは必須になりそうだし・・

メンバー同士だけど性別は違うしさ
勝手なイメージだがインテリな阿部ちゃんが
女の子とツーショットって想像に難い。

これを受けた阿部ちゃん、チラッとさくラウを見た後
掠めるように戻した視線で私を捉え、口許に指を添えると答えてくれた。

💚「嫌じゃないよ?皆とワイワイするの好きだし」

嫌いじゃない=好きでもない
みたいなニュアンスに受け取れる返事・・・
謎多きAB型・・・でもその謎さもまた阿部ちゃんの魅力だと思う。

その言葉通り基本阿部ちゃんは皆とスキンシップしてるね。
照とは同い年なのもあって微笑ましい絡みをしてるし・・
照と付き合ってる彼女感が凄いある(笑)
そこがまたファンの子達にウケて、YouTubeでもコメント欄で触れられてた。

ふっかとは同期、スキンシップは少ないけどその分絆は強い。
偶に肩を組んだりしてるのは見た事がある。

さっくんとは言わずもがな、且つてのシンメだったのもあって仲が良い。
2人のテンポが良い掛け合いは中々好評だ。
しょっぴーと阿部ちゃん・・・スキンシップ度はかなり少ないが、
いじり合いはしてるよね(笑)

舘さまとも会話でのスキンシップはしてるかなあ。
基本舘さまがメンバーとのスキンシップ頻度が少ないから別次元だな・・
目黒とは見てて恥ずかしいくらいにあるね!?あ、でも曲中だけか(笑)
それでも肩組んだり等してたりするからそれなりにあるのかな。

康二・・・2人も会話でのスキンシップはあるかな。
距離の近い康二のスキンシップをまともに受け止めてるのはふっかと偶に目黒くらいだ。
私から見ると阿部ちゃんは過度なスキンシップを好まないイメージがある。

ラウールと阿部ちゃんってのも肩を組むか、肩に手を置くくらいしか見た事ない。
でもそれらはメンバー同士で男同士だから出来た事かもしれないじゃん?

しかしこれは仕事だ、撮る事になったら・・・えーと
聞いてる時にスタッフとカメラマンさんからスタンバイするよう声が掛けられた。

はーいと答え、2人してさくラウとハイタッチしながら入れ替わる。
宜しくお願いします、とカメラマンさんに挨拶。
セットには書斎みたいな空間が造られている。

📷「今回のテーマは『仲良し』先ずは自分達なりの仲良しを表現してみて」

とセットに入るなりカメラマンさんからの注文が飛んで来た。

🐇「肩組むとかは・・・平気?」
💚「大丈夫だよ?あれ、緊張してる?
🐇「少しだけ・・」
💚「ふふ、試しに動いてみて俺も合わせるよ」
🐇「では・・一応モデルもさせて貰ってるのでやってみるね」
💚「うん」

写真に会話は残らないので阿部ちゃんに聞いたり
確認しながらポーズをキメていく。
ぎこちなくだが腕を組んでみたり、
両腕を背中合わせになるように組んで撮って貰った。

ある程度撮影が進んだ頃、カメラマンさんが私に向けて
ちょっとまだ固いねえと言った。

無駄に考えすぎてぎこちなさがレンズを通して
見えてしまったのだろう・・・
プロのモデルとしても活動してるのに何やら恥ずかしさで俯きがちになる。

そんな様子に気づいた阿部ちゃん、励ますように私の背中をポンポン。
優しい励まし方に吃驚したが、照にされたアドバイスを思い出す。

思うままに動けば阿部ちゃんが汲み取って適したポーズをしてくれる。
まさに信頼してるからこそ照はそうアドバイスしたんだろう。
私もメンバーの1人だ、彼らを信頼してる気持ちを表せばいいのよ。

🐇「本棚の前に私立つから・・
  一緒に選んでるみたいな感じでやってみていい?」

照からのアドバイスに力を貰い、思い切って聞いてみたら
顔だけ向けて勿論、と笑ってくれた。
その思ったより柔らかい笑顔に迂闊にもキュンとさせられてしまう。

しかし表には出さず、提案した通り本棚の前に立ち
選んでる風にポーズをとる。

すると阿部ちゃんは真横に立ち、談笑してるふうに
一冊抜き取った本を私の左肩に少し乗せた。
それからは緊張も薄れ、本を数冊抱えながら
セットの机に仲良く運ぶ感じで撮ったり

向かい合いながら本を手に談笑する、とか
阿部ちゃん先生風に私が机に座って左横に
本を手にした阿部ちゃんが立つとか色々撮れた。

📷「2人ともいいね!ラスト1枚は、もっとくっついてみようか」
🐇「くっつくんですか・・!?」
💚「はーい」

楽しく撮影してるとノッて来たカメラマンさんから
とんでも注文をぶっ込まれる。
吃驚したのは私だけで、意外にもノリよく阿部ちゃんは返事した。

ここまでは楽しく撮れたが、もっとくっつくとなると・・どんな!?て思う。
私は女性初のジャニーズ、謂わば¨ファンに最も近いメンバー¨の代表でもある。
ファンに代わり、スノ担が1番望んでそうな距離感で撮るのも役目・・・!

これはモデルとしてのキャリアを見せる時・・
ファン達がどんな近さで彼らと写真を撮りたいかを体現せねば!

🐇「とはいえアイドル誌だし・・
  窓辺に背中合わせに立って少し互いに寄り掛かるとかどう?」
💚「イイね、それ試そうか」
🐇「やってみよう、私右側に立って背中向けるので阿部ちゃんは反対側に・・」

小道具の本を一冊持って、背中合わせになったら
寄り掛かりながら読んでる風に
と私は阿部ちゃんに提案しようとしていた。

しかし、想定とは違う動きを阿部ちゃんはやりよったのである。
互いに一冊の本を手に寄り掛かるまでは想定していたのだが
ちょっとカメラマンさんとマネージャーが色めき立ったのですよ。

うん?と思い、顔を後ろへ向けてビビッた。
なんと阿部ちゃんは背中合わせじゃなく、前を向いて立ってたのですよ皆さん。
つまり、私は阿部ちゃんの胸元に寄り掛かってた訳ですわ はい。

そりゃ勿論吃驚したし心臓が一気に跳ねた。

ドキドキがエライ事になったので体を起こして
離れようとしたが肩を掴まれ元に戻される。

これを私以外のカメラマンさんとスタッフ、
マネージャー全員もドキドキしながら見守った。

💚「、撮って貰うまで離れちゃダメだよ」

と耳元で囁かれ、カァッと顔が熱くなる。
阿部ちゃんはそんな私の様子をニコニコしながら見つめ
後ろから腕を伸ばし、持っていた本を
私に見せてる風にポーズを決めた。

左手は肩に乗せされたまま、背中は阿部ちゃんに密着。
これは本を読んでる場合じゃなくなるやんけ!!!

ポーズが決まったと判断したカメラマンさんが
絶賛しながらシャッターを切っている。
身長差は7.5あるが阿部ちゃんの口許に私の頭が来るので
寄り掛かりすぎないようにしなきゃと体に力を籠める。

そんな私の努力を嘲笑うみたいに小さく阿部ちゃんは笑い
少しだけ顔を傾け、私の右の耳元付近でサラッとこう言った。

💚「好きな子には自分から触れたいよね、
  他の男に触られたりする前に」

言葉を言いながら意味深に右手に持っていた本で
自分達の顔付近を隠す。
意味深な言葉は他の人には聞こえてなかったが、

スタッフさん達がどよめく。
が、訝しむ間もなく阿部ちゃんは
本を下げてふわりと後ろからバックハグした。

現場のスタッフさんら曰く、最高に良い写真が撮れたよ!
との事だったが、その日1日私は
ずっと騒がしい心臓の音に悩まされる事となった。