少しだけ、少しだけ憎ませて下さい。
この平和な時代を・・・・
私の愛した人達の命で救われたこの時代を

そうでもしないと、耐えられなくなっていました。
心の安定が保てなくなってたんです。



虹色の旋律 十九章



あれからスパゲッティと野菜サラダ。
ピクルスの漬けた物をテーブルで囲んで食べた。
にとってはどれも初めて見る物ばかりだったが美味しそうに平らげた。

問題は寝る部屋なのだが、空き部屋は2階にしか残っておらず
懸命に遠慮したの意思は通らずにその空き部屋、つまりは赤西の隣の部屋に決まった。

何の荷物も持っていない為、体1つでその部屋に住む事になった。
四月一日から着て来ていた袴を返して貰い、白で統一された部屋では過ごす事となる。
8畳はあるくらいの広さの部屋で、テレビや冷蔵庫に洗濯機まで配置されていた。

「至れり尽くせりですね・・・・」

大きくて幅のある寝具・・室内用の電話機もあった。
どうやらお風呂とキッチンだけは共同らしい。

取り敢えず此処で生活しながら帰る方法を探さなくちゃ。
でもこうして個室がある所で一安心しました・・・・
そうしなければ寛げませんでしたし、着替えも間々ならなかったですものね。

ホッと息を吐きながらジャージを脱ぎ、黒いシャツのボタンを慣れない手つきで外していく。
中から見えてくるのは朝巻いたサラシだ。
これを堂々と外すには個室じゃないと無理ですバレます(

何処から外せるかを置いてある姿見で確認しようとそのまま移動。
後ろから見たり横から見たり・・・・とやっとそれを見つけたが外そうとした時

「ねー、お風呂空いたから入るー・・・・・?」
「へ?・・・わ!!きゃ!!!?」
「――!」

丁度顔を出したのは田口。
突然ドアが開いて、顔を出した田口に驚き足元に脱いだ服に足を取られた。

後ろに傾く体を立て直せないまま転倒。
ドターーン!と響く音。
駆け出した田口だったが、支える手が届かずには大の字に倒れた。

うわー痛そう・・・俺がいきなり開けたから驚かせちゃったんだ;;
傍に駆け寄り起きるのを手伝おうと伸ばした手が止まる。

胸部に巻かれた白い包帯・・
一方でも田口の視線に気付いて慌てたが、閃いた。

そして他の部屋から2階へ駆け上がる足音達が近づき
慌てて来たんだろう、息を切らせた他メンバー達が部屋に入って来る。
駆けつけた面々は皆の胸に巻かれた包帯に釘付けに。

今すげー音したけど・・・」(聖
「あ、それ俺のせいなんだ;;」(淳
「は?どういう事だよそれ」(赤
「風呂空いたから呼びに来たんだけど驚かせちゃったみたいでさ」(淳
「そうなんです、ちょっと驚いてしまっただけですから」
「・・なあ・・・その・・・・」(和
「これはですね・・昔怪我をした時にそれを縫った痕があるんです」
「・・・・それで・・・包帯を?」(上
「はい、見苦しいし見て気持ちのいい傷じゃないから隠してるんです。」
「ならそれマネージャーに言っとけよ、俺らの衣装もだけど肌を露出させる事多いんだからな」(赤
「・・・はい。すみませんでした。田口さんも驚かせてすみません」

上手く隠せました!!!
皆さんには申し訳ないですけど、こうしておけばお風呂に入ろうぜ的な誘いもされませんし
肌を露出するような場合も融通が利くかもしれません!

お風呂の件は有り難く入らせてもらう事にして、駆けつけて下さった皆さんにお礼も言った。
申し訳なさそうに謝る田口さんには、異常はないからと安心させるのも忘れずに。

でも包帯って勘違いしてもらって良かったわ。
サラシだって気付かれたら誤魔化せなかったですもんね・・・・
赤西さんも言ってたように四月一日さんに話しておくべきかもしれない。

「あ、中丸さん」
「おう、何だ?
「メール?とはどうやったらいいんでしたっけ」
「ああそれはね、この封筒マーク押して四番押してみ」
「封筒マーク・・・あ、これですね。おお〜何か画面が変わりました!」
「新規メールを作る時はそうやると早いよ、方向キーで四番目開くより直接C押した方が早いから」
「中丸さん凄いです!!」
「そしたら宛先押してメールしたい相手を選んで、題名入れて本文に内容書いたら送信押すだけだよ」
「成る程!丁寧に有り難うございましたっ」
「じゃ、風呂入っとけよ〜」

部屋を出る最後尾にいた中丸を呼び、メールのやり方を聞く。
すると足を止めた中丸は、分かり易いように丁寧に教える。

教えて貰ったは早速四月一日にメールを送る事にした。
たった今閃いた露出出来ない理由とやらを提案する為だ。

返事は直ぐに返って来て、大賛成して貰えました。
手術痕だと説明すれば脱がされる心配もないと太鼓判。
漸く一安心したは、早速風呂へと・・・・・

ちょっと待って下さい?
やばいです・・女物の下着とか持ってません!
今着てる下着の代えとかないと不衛生になってしまいます。

うーむ・・・殿方の四月一日さんには頼めませんし(当たり前だ
やはり自分で買いに行くしかないですけど、お金がありません・・・

あの時は荷物を持っていたのに此方へ来た時には体1つだけでした。
まあお金があったとしても、1円札(現在では1万円)とか絶対使えないでしょうし・・・・

時刻は0時を回ろうとしている。
今から出かけても店なんて開いてない。
仕方ないわ・・今夜はもう一度着るしかないですね・・・

脱衣所で決意、は漸く服を脱いで畳み
サラシも巻き取って服の上に乗せた。


++++++++++++


が風呂から出ると、既に0時は過ぎていた。
髪の毛も洗って体も温まったホクホクの状態で満足そうに脱衣所を出ると
丁度2階から降りて来た赤西を見つけた。

「あ、赤西さ―――ぶふっ」
「それ寝る時着ろ、今で言う寝巻きだから」
「ふぁい、ふいまふぇん」
「まあ俺らの足手まといになんねぇように努力しろよー」
「っぷは!はいっ有り難うございます!」
「わぁーったから部屋戻れ」

挨拶しようとした私の顔に何かが命中。
顔面で受け止めたまま赤西さんの声を聞いた。

どうやら私の顔面に飛び込んで来たのは寝巻き用の服みたいです。
それだけ渡しに来て下さったらしく、すぐに踵を返して階段を上って行った。

顔から剥がれた寝巻きが、出した両手の上にばふっと落ちる。
その寝巻きは洋風でしたが落ち着いた紺色の生地に白い線が織り込まれた物。
これが今の時代の寝巻きなんですねぇ・・・・うん?

そう言えば赤西さん・・さっき・・・・
『今で言う寝巻きだから』と仰いましたよね?
私がこの服を寝巻きだと分かるように?

やはりお優しい殿方ですね赤西さんは
(いや其処は違う反応だろっ)

何はともあれ寝巻きを貰ったは、何ら疑いもなくその服を手に2階へ。
着慣れない寝巻きだったが、これも聞くに聞けないので試行錯誤しつつ身に着けた。
そして長かった1日、この時代に来て二回目の夜が終わりを迎えた。

より先に戻った赤西、戻った先には亀梨が待っていた。
自室に戻り、ドアを閉めた赤西を振り向き

「どう?」
「いや・・・普通に有り難うございますーとか言って喜んでた」
「ふーん・・・まあはちょっと天然入ってるからなー」
「ってか大分だろ、いや、かなりだろ。つーか何を確認したかった訳?」
「別に〜・・って言うかマジ仁分からない系?」
「さあな」
「まあ・・男モンのパジャマを受け取った時点で別人かもな」
「・・・・・・・・・ああ」

問われた言葉は探りの確認。
赤西は見たまんまそのままを答えた。
直球で聞いた訳ではない故、分からなかった可能性もある・・が

今で言う寝巻き、と言ったらピンと来る奴はピンと来る。
の顔色からして(顔にパジャマあたってたから見えねぇけど)察してないのは明白。

カメの質問で奴が何を確認しようとしてたのかは分かった。
予感してる事は同じなんだろ。
しかし赤西は亀梨の問いに三文字のあやふやな返答だけを返す。

自分も予感してる、と言う事は悟られたくなかった。
俺は・・があのサラシを包帯って言うならそれを信じる。
男として、には俺を認めさせるような力を発揮して欲しいから。