世界で一番



イケメン6人組
そのうちの3人と、あたしは知り合いだ。

詳しく説明すると・・仁があたしのお兄ちゃんで
亀ちゃんとは歳も同じな、幼馴染。
それでたっつーは、横浜にお兄ちゃんと出かけた時知り合いになった。

で・・だから何なのかと言うと。
ウチの兄は、ジャニーズJrってのに入ってて
しかも、結構有名になってきてるグループの一員なの。
それだけじゃなく、幼馴染の亀ちゃんと知り合ったたっつーもだ。

皆の頭文字を取って、グループ名になってるみたい。
KAT-TUNってゆうの。

結成当時は、勿論些細ないざこざとか
メンバー同士のぶつかり合いもしょっちゅうだった。
特にウチのお兄ちゃん、負けず嫌いだし譲らないから余計。

その度に幼馴染の、亀ちゃんがまとめてくれて
切磋琢磨して彼らは成長して行った。

今では、デビュー前にも関わらず
今年初めのコンサートDVDの売り上げが20万部を超えたりと
乗りに乗ってるお兄ちゃん達。
大きな目標に向かって、頑張る背中は逞しかった。

今年の3月にあったコンサート。
アレもファンの人達の力で、追加コンサートとか
全国コンサートも決まって行き、そしてこの夏。

再追加コンサートが決定した。
それを聞いた時の、お兄ちゃん達の顔。
とっても輝いていて、あたしも嬉しかったのを覚えてる。

あたしの家には、よくメンバーとかお兄ちゃんの友達が尋ねてくる。
それはやっぱコンサートとかの前だとかが多い。

そして今日も、玄関のインターホンが鳴るのだ。
曲作りの仕上げに入ってるお兄ちゃん。
昼間の家に、親とか礼保お兄ちゃんはいない。
仕方なく、あたしが玄関へ向かった。

「はーい」

2・3回鳴らされたインターホン。
慌ててドアを押し開ければ、そこには・・・・

「あれ仁は?」
「あれ仁は?じゃなくて、他には何もない訳?」
「だって、ずっと近所に住んでて付き合いも長いじゃん。」
「問題はそこじゃないでしょ!」

目深くジャージ素材の帽子を被った、幼馴染の姿。
しかも開口一番に出た言葉は、挨拶じゃなくてお兄ちゃんの名前。
何かムカつく、付き合い長くったって普通挨拶くらいするでしょ?

亀ちゃんはムッとするあたしの隣をすり抜け
勝手に二階へと上がって行ってしまった。
何あの態度!お父さんとかお母さんとかに対するのと違う(怒)
礼保お兄ちゃんとだって、仲良く話してるのにさ。

やっぱ女の子に生まれなきゃよかった。
男の子に生まれてれば、こんな壁を感じる事もなかったと思う。
それに・・・皆と同じジャニーズにもなれただろうし。

傍にいたい。
皆と同じ話とかして、盛り上がりたい。

寂しいな・・

1人玄関に残されたあたし。
しばらくして、飲み物くらい運んでやるかと思い
キッチンへ向かおうとした時、別の声がした。

「あれ?俺には気づいてくんないの?ちゃん。」

弾みのある声、これはもしや?
パッと玄関の方を向くと、いつ入ったのか
ニコニコとあたしへ微笑んでるたっつーを見つけた。

黒髪にしてから、結構ファンが増えたんじゃないかと
あたしは睨んでます。
ってゆうか、あたしも黒髪にする前の海賊版から
たっつーカッコイイなぁと思い始めました。

そんな事、本人目の前に言えやしない。

「あぁ〜えっと、ごめんなさい・・」
「まあいいよ、とにかく上がってもいい?」

亀ちゃんと違って、物腰柔らかく紳士なたっつー。
あっちから聞けなかった言葉も聞けた。
こっちに了解を取ってから、玄関から上がる。
大人やわ・・

取り敢えず、たっつーにお兄ちゃんの部屋を教え
自分はキッチンへ向かった。

「手伝おうか?」
「いいよ、話し合いに来たんだからそっち優先して。」
「そう?じゃあ俺行くね、飲み物はお茶がいいな。」

しっかりリクエストしてから、彼は二階へ消えた。
ってゆうか・・外見に似合わない物を好むのね。

そうゆう意外な面を見れるのも、知り合いとしての特権かな。
カツンファンから見れば、凄い贅沢な特権なんだろうね。
色々大変だったよ、グループ結成当時とかは。

家を知ってる子とか押しかけたり、ファンレター頼まれたり
ちょっと絡まれたり・・・それは言ってないけど。
今だって、偶にある。
この環境を妬んだ人達からの嫌がらせ。

ファンを大事にする彼等には、そんな事言えない。
あたしが違う立場なら、絶対羨んだし。

この後大きなイベントを控えた彼等に
余計な心配をかけたくなかった。

その頃、少し遅れて竜也も仁の部屋へ着いた。
まあ適度なノックをしてから入る。
ドアを開ければ、既に2人は真剣に意見交換をしてるトコだ。

「上田 何してたの?」
「遅かったじゃん」

自分が入って来た事に気づいた仁と亀。
顔だけこっちに向けて、そう言い放つ。
全く・・・どっちも鈍いな。

ちゃんが抱えてる不安とか、気づいてないし。
赤西だって兄貴なんだから、少しくらい気づけよ。
あ〜まあ無理だな、赤西って自己中だから。
亀はどうだろう、カンがよさそうに見えるけど・・・

「突っ立ってないで座れよ」
「はいはい」
「態度デカッ、まあいいけど・・は?」

自分達を見て小さく竜也が溜息を吐いた事など気づかない2人。
普段と変わらない態度で、仁は竜也に座布団を勧める。

竜也の姿しかない事に気づいた和也が、竜也に問えば
後から来るよ、と言葉短く彼は答えた。
ふーんと言ってから、入り口のドアを見やった和也。

そんなタイミングで、仁の部屋のドアが開かれ
お盆にコップを乗せたが現れる。

「はい、お兄ちゃんはオレンジで亀ちゃんはコーラ」
 食いモンとかなかったのかよ」
「上田はお茶?渋いねぇ〜」
「最近は健康ブームなんだよ」

お盆の上から、手渡しでお兄ちゃんと亀ちゃんに渡す。
たっつーの分のお茶は、あたしも好きな玄米茶。
持とうとしたら止められて、彼は自分で持って行った。

それに吃驚して見送ってると、亀ちゃんに突っ込まれてるのを眺めた。
さり気ない優しさってゆうのかな、扱いが上手いというか・・・
ナルシー?いや・・フェミニストか。
嬉しいけどね、女の子として扱って貰えるのはさ。

お兄ちゃんとか亀ちゃんは、あたしを妹とか幼馴染としか見てない。
それが寂しい時もあるけど・・当然と言えば当然。

ファンの子からすれば、羨ましいだろうけど
あたしにとっては、近いようでとっても遠い人達だ。
近くにいて、フツーに会話とか出来るのに
見えない壁が立ち塞がってて、あたしは其処から先に入れない。

?どした?」
「ん?ううん、何でもないよ・・じゃあごゆっくり〜」

笑顔で言葉を交わす3人を、呆然と眺めて物思いに耽ってた。
そんな妹に気づいた仁が、気遣うような優しい声で聞いて来たから
慌てて笑顔に切り替えて、手を振りながらドアを開けた。

すると、何故か下から伸びた手に腕を掴まれて
出て行くのを止められる。

「待てよ、オマエなんかあった?」
「別に?」
「・・・ならいいけど、まあちょっと付き合えよ。」
「は?何に?」

鋭い事を言ったかと思えば、驚かすような事を言う亀ちゃん。
握られたその力の強さに、あたしはドキッとさせられた。
普通に接して来たけど、男らしくなったんだなぁ。

昔は凄く細くて、野球バカだったけど
今じゃメンバーを上手くまとめる力を持ってるし
最近色気が・・ヤバイって思う時が偶にある。
まさか、幼馴染にそれを感じるとは。

勿論、あたしのお兄ちゃんも色気ムンムンだ。
番組とか見てると、それを強く感じる。

「チェックして欲しいんだけど」
「だから何を?」
「俺達がそれぞれ書いたソロの詩だよ。」
、俺達の詩とかいつもチェックしてくれてたじゃん?」
「まあ・・・そうだけど」

縋るような目で見つめる3人。
お兄ちゃんはともかく、恥ずかしい!!
そりゃ確かに読んで、意見は出してたけどさ。

最近はそれもいいのかなーと。
チェックを頼んで来るのは、この3人だけ。
緊張するんだよ?皆の詩。
最近はチェックの必要がないくらい、上達してきたし。

あたしって、それだけの為にいられたんだから
その必要がなくなったら、あたしの居場所って?

あたしが此処にいられる意味がなくなっちゃう。