街中にある巨大なツリー。
その前で、俺は来るか分からない人を待ってる。
ダウンジャケットは着てるけど、結構寒い。
噴水前の巨大モニターの前。
隅の方に座って、サングラスとマフラーで顔をあまり出さないようにし
その人を待つ俺の上から、白くて儚い物がはらりと舞い落ちて来た。
見上げて片手を差し出した先には、舞い落ちてくる雪。
儚い感じが、ずっと好きでいる子と重なる。
久し振りに会えた幼馴染は、とても可愛くなっていた。
驚いて目を見開く様とかが相変わらず可愛くて、想いは確かなものに変わった。
どうしても今日伝えたい事があって呼び出した彼女には
彼氏がいて、それでも伝えたくて強引に誘った。
行けるか分からないって言ってた。
そう言われても俺はこうして待ってたりする。
結構迷惑かも?でもどうしても伝えたい。
ちょっと気になる事もあるし。
そう思い、もう一度空を見上げた時。
白いコートを着た人物が視界に映った。
天使みたいだって、そう思った。
駆け付けたも噴水の淵に座る見知った姿に気付く。
やっぱり待ってたんだ、雪とか降って来たのに・・・・・
自然と頭に来た。
ズンズンと和也君の前に行くと、前振りなく言った。
和也君が驚くのも目に入らない勢いで。
「バカ!風邪引いたらどうすんの!!」
「え?」
「アンタ仮にも一般人じゃないのよ?自分1人の身体じゃないじゃない!」
「、ちょっ・・声が大きいって」
「ただの幼馴染の事なんか、呼び出してる場合じゃないでしょ・・・・」
「・・・・?」
慌てた和也君が、立ち上がってあたしの腕を掴む。
一般人じゃないと自分で言った途端、現実を思い出して勝手に声が小さくなった。
急に押し黙ったに気付いて和也君が顔を覗き込むように顔を近づける。
それだけには素早く気付いて、自分からあからさまに身を引いた。
和也君も気付いたのか小さく謝る。
何か物凄く嫌な雰囲気になってしまった。
「用事・・・って?」
「ああ、これ見て欲しくてさ」
気を取り直して間を持たせようと昼間言ってた用件について問う。
すると和也君はポケットから1つの箱を取り出した。
見て欲しい、と言ってからそれをあたしの手に乗せる。
なんだろうと和也君を見ると、開けていいよと示された。
好きな子の為に買った物の感想でも聞きたいのかな、と少し落ち込んだ気持ちになりつつ箱を開けた。
「これ・・・・・」
「いいなと思って買ってみたんだ、どう?」
「雪の結晶のネックレス、だね。いいと思うよ?可愛いし季節的にも合うし」
「やっぱそう思う?だよな、買ってよかった。」
「好きな子・・・喜ぶといいね」
「・・・・・もう確認出来たから満足」
「――――――――は?」
箱から現れた雪の結晶。
デザインもシンプルで、シルバーに輝くそれはとても綺麗で
これを和也君から貰うであろう好きな子が喜ぶ顔が目に浮かびそうだった。
感想を問われて、思った事を素直に口にする。
答えたあたしの感想に、柔らかく笑って嬉しそうに買って良かったと彼は言った。
だから、応援しなきゃって思って言った言葉。
和也君は少し黙ると、あたしの目を見つめて静かに答えた。
思いもよらない言葉に、間抜けな声が出る。
「何言ってるのよ、好きな子にあげるんでしょ?ちゃんと見たしもう帰るから」
「あげるよ?それに、喜んで貰えるのも確認した。」
「だからもう帰ってもいいでしょ・・・・」
「いい加減鈍いな・・」
「鈍くないし・・・・・鈍いのはそっちじゃない」
サッと目を逸らして歩き出すあたしに、掛け続けられる言葉。
何か噛み合わないと気付く。
さっきからもう反応は確認したし見たし、確信したとか何とか
和也君の好きな子って、あたしと好みが同じとでも言うのだろうか?
苛々してきて思わずぼやく。和也君が不思議そうにこっちを見た気がして咄嗟に駈け出す。
其処にまた、声が届いた。
「!」
「――!?」
道行く人も振り返ったりするくらい大きな声。
その声で名前を呼ばれ、ビクッとなって足が止まった。
あたしと和也君に視線がちらほら向けられる。
バレでしまうかもしれないのに、和也君は言葉を発するのを止めない。
振り向くべきか迷うと、とんでもない言葉が夜の街に響いた。
「――好きだよ!」
周りにいた人からの悲鳴が上がる。
公衆の面前で放たれた言葉に対して、思わず叫んでしまったのだろう。
あたしに言われてるのに、嫌に冷静だった。
自然と成り行きを見守る人達の視線が刺さる。
聞き間違いと逃げる思考を、他の人達の反応が引きとめた。
何より、それを・・その言葉を認めてもいいのか夢ではないのかとばかり考え
振り向いてその人の姿を視界に映す。
野次馬を背後に集めたその人、和也君は其処にいた。
不安そうにあたしの答えを待ってる。
その姿がとてつもなく愛しくて、気付けばこう言っていた。
「聞き間違えじゃないよね・・?・・・・もう一回、もう一回言って!」
「・・・・へ?」
「顔見て、もう一回言って!」
「・・・・・亀梨和也は、が大好きです」
「―――――――あたしも好き!!」
周りの野次馬から、一層大きな悲鳴が上がった。
バカ、和也君・・・・名乗っちゃうなんて
心配はしてても、嬉しくてそれさえも気にならなくなった。
2人して笑顔になって、触れたくて足が自然と歩き出す。
もうその歩みを、止める気にはならなかった。
縮まる距離、自然と両手を開いて躊躇う事なく抱き締めあった。
腕の中の温もりが愛しい。
ずっと望んでたから、世界の全てを敵にしても手に入れたかった人。
「これからは俺が守るから、世界の全てを敵に回しても・・を守るよ」
「あたしも守るよ、和也君」
「サンキュ」
聖なる夜に、何よりも誰よりも大好きな人と想いが通じ合えた。
これ以上に望む事なんて、何もないと思えた。