サプライズ2
純粋に兄達と買い物に行ける、と喜んでいた
そんな2人を乗せ、照は車を発進させる。
が言った店は知ってるのでナビは付けない。
「で、何買うのか決めた?」(翔太
「はい、無難にフライパンとお玉にしました」
「お玉?」(翔太
「あれだろ、味噌汁とかに使う奴」(岩本
「あ〜!なるほどね」(翔太
「企画用に使って頂けたらなと」
うんうん、良いんじゃない?
と運転しながら頷く照と後部座席の翔太。
因みには助手席に乗ってます。
正直買う物が決まってるなら翔太の出番は無い・・・
が、単純に買い物について行きたかっただけだったりする
照はそれを感じで妙な間を作ったのである。
まあそれは兎も角、目的のIKEAが見えて来た
駐車場に着くと、なるべく密集した所を探し
紛れるように停めた。
宛ら木を隠すなら森の中、である。
顔バレしないよう目立たない場所に停めるより、
却って一般の車が多い場所のが目立たなかったりするのだ。
「じゃあ行くか」(岩本
「はいっ」
「はーい」(翔太
車を降り、照の言葉を合図に店舗へと歩き出す。
買う物は決まってるから迷いもない。
が危惧した顔バレだが、今の所問題ない
堂々と振舞ってるからか心配なさそうだ。
店内に入るとそこは凄い空間だった。
めっちゃ広いし見渡す限り家具、家具、家具
初めて見る家具量販店には大興奮だ。
「ふぁああ!すっごい広い!!」
「いやお前が1番目立ってるから(笑)」(岩本
思わず出た声は中々に大きく
軽く視線を集めてしまった。
そんなに苦笑する照と翔太。
幸いバレはしなかったが若干呆れ顔だ。
ハッと気づき、も素直に謝る。
危うく自らがバラす所だった、と。
「気持ちは分かるけど気を付けてな?」(翔太
「はい・・・2人ともごめんなさい」
「良いよ、早いとこ買おう」(岩本
「そうします;;」
「何階?」(翔太
「5かな」(岩本
すぐ謝ったにもきちんと釘を刺す翔太。
照はの肩を抱き寄せて言葉を掛けた。
優しい声音がの気持ちを浮上させる。
しっかり叱ってくる兄達には感謝だ。
ちょっと嬉しくてハメを外しそうになっちゃったね。
気持ちを鎮め、案内板で目的の階を確認。
先に見てくれた照が階数を教えてくれた。
「こういう店来るの初?」(岩本
「あ・・・うん」
「それだからはしゃいだ?」(翔太
「はい・・・ごめんなさい」
「別に怒っちゃいないよ?」(翔太
「うん、俺も翔太も怒ってない」(岩本
「ただ顔バレしちゃった時にくん守りきれるか分からないからさ」(翔太
エレベーターのボタンを押し、待つ間
不意に始まる会話は数分前の出来事について
再確認されたのは初めてなのかという事。
これに関しては嘘偽りのない事しか言えない
兄達と暮らすようになって初めて来た。
初めて入る店、初めて入るレストラン。
初めて見た広い店内や建物。
目にするだけでワクワクしてしまった。
我ながら子供っぽい・・・って子供だったわ
だが迷惑を掛けたのは事実、改めて謝ると
意外な言葉を2人の兄から言われた。
「そ・・・それは俺だって守ります」
「気持ちだけ貰っとく」(翔太
「だな、お前はちょっとは俺らに守られてて欲しいなぁ」(岩本
「そうそれな、俺らは兄ちゃんなんだからもうちょっとカッコつけさせろ(笑)」(翔太
格闘技が帯持ちな、Snow Manに加入後
彼らの用心棒かと思うくらい矢面に立ち
過激なファンやその他の危機から兄達を守り
また、守って来た。
それを知ってるからこその発言。
嬉しくもあり、頼もしくもあるが
同時に心配にもなっていた。
が危機な目に遭っても守れないばかりか
逆に怪我を負わせてしまう事も多々あって
それを常に悔しく思っていた6人。
「少しの危機なら俺らで守れるし」(岩本
「俺はまあ口にするの恥ずかしいから言わんけど、照と同じに考えてるよ」(翔太
チン、と到着の音が鳴りエレベーターが来た
扉が開き中に乗り込む3人。
ただひたすらに2人の言葉が嬉しくて身に染みた、これも初めて言われた言葉だ。
頑張らなくて良いって言われてるみたいで
こみ上げる感情をグッと堪える。
口を開いたら泣いてしまいそうだった。
ありがとう、の代わりに5階に着いたエレベーターから降り
歩き出しながら照と翔太の腕に思い切って自分の腕を絡ませた。
「ん?」(岩本
「?!」(翔太
「調理器具はこっちですねっ」
「はいよ」(岩本
「目立たない?ねぇこれ恥ずかしい!」(翔太
「翔太うるさい(笑)」(岩本
照は差程驚かなかったが、翔太は良い反応。
まあ多少は目立つかもしれないが
仲のいい男友達同士なのかな?くらいには見られるかもしれない。
ただ今度は翔太のリアクションで注目を集めそうだった(笑)
一応無事に調理器具コーナーに着く。
たくさんの調理器具が並び、展示されている
鍋やフライパンにしろ、種類も豊富だ。
「どえらい数ですね」
先ず口から出た素直な感想。
そう言いたくなる程、多種多様だった。
2人の兄達も"だな"とだけ返す。
企画のキッチンがどんなのを用意されるのか分からない。
IHなのかガスコンロタイプなのかが。
「一応両方に使えるタイプにしましょう」
「それが良さそうだな」(岩本
「だな、間違いなさそう」(翔太
「摩擦に強くて・・・持ち易い・・・これに!」
「おお・・・良いじゃん!」(岩本
「これもしかして舘様Color?」(翔太
「さすが良く気付きましたね」
いや、さすがに全員分かると思う・・・(いわなべ
選び出したのは赤いフライパン。
誰しも分かる、宮舘のメンカラだ。
だがが得意満面なので黙っておいた
次に同じくメンカラのお玉を選び
が代表で会計を済ませに行った。
その間照と翔太は袋詰めのスペースで待つ。
会計の列に並ぶを眺めてるうち
ふと照は気になる事を口にした。
「そういやって買い物初めてだよな」(岩本
「・・・うん、そう言ってたな」(翔太
「初めてって事はさ、レジ並ぶのも初?」(岩本
「・・・・・・多分?」(翔太
「・・・・・・・・・ちょっと行ってくる」(岩本
「あいよ」(翔太
たかが買い物の会計とは言え、気になった。
仕方なく翔太に言い、の方へ向かう照。
近付いてみたら既に会計中だった。
バーコードを読み取りながら店員が尋ねる。
「ポイントカードはありますか?」
ポイントカード・・・?
やはりは初めて聞く言葉にキョトン中
有る無いを返せばいいんだが、返せずにいた
「初めて来たんで持ってないです」(岩本
「照兄・・・!」
「お作りしますか?」
「また来た時で」(岩本
「かしこまりました、お会計1325円になります〜」
「、会計」(岩本
「はいっ;」
どう答えたら!と焦ったら、後ろから声がして代わりに応対してくれた。
ぱっと振り向いたらいつの間に来たのか照兄
慣れた様子でやり取りする様に見惚れる。
そんな照と目が合い、ドキッとしたに対し
金額を提示した店員に代金を払うよう照は促した
はドキッとしてしまった事をちょっとだけ恥ずかしく感じながら支払いを済ませた。
「照兄ありがとう」
「別に、大した事じゃねぇよ」
「何で分かったんです?」
「そんなの簡単、初めてって言ってたから会計も初なんじゃないかって」
そしたら予想通りだったな(笑)
と笑う照兄、少しくすぐったい気持ちになる
私も色々気付ける人間になりたいな、
そう思わせてくれる照兄が少し眩しく見えた
会計を済ましたカゴを袋詰めスペースに運ぶ
すると待っていた翔太も近付いてきた。
「やっぱ困ってたみたいだな〜」(翔太
「そう思ったなら翔太が行ってやれよ(笑)」(岩本
「こういうのは照が行く方が良いかなって思ったから行ってもらっちゃった」(翔太
「何だそれ(笑)」(岩本
2人で楽しげにやり取りしている。
的には2人が自分以上に私を理解してくれてる事のが嬉しかった。
フライパンに傷が付かないよう新聞紙で包み
お玉も新聞紙に包んで袋詰めする。
ふと見たらフライパンの柄に赤いリボンが・・・
「ん?もしかしてそれ」(岩本
「はい、貰いました」
「へぇ〜涼太愛されてんなぁ」(翔太
「愛・・・いや、まあハイ・・・」
「何か照れてんだが(笑)」(岩本
そうでは無いが否定し難い表現をされ
カッと顔が赤くなるを見て照もニヤつく
兄弟として頼りにしているし
また大好きな兄の1人でもあるから・・・
間違ってはいないけど何か恥ずかしいな
「俺兄さん皆大好きですからね」
「おっ、言ってくれんじゃん」(岩本
「お前ストレートすぎて恥ずかしいわ!」(翔太
「翔太が照れてる〜」(岩本
「うっさいわ、はよ帰るぞ!」(翔太
今度は翔太が照れてしまい、拗ねる。
そんな翔太をからかいながら追い掛ける照。
クスクス笑いながら私も2人を追い掛けた。
2人にはエレベーター前で追い付く。
と言うか、2人が待っててくれた。
「あの、後1箇所だけ寄って欲しい所が」
「後1箇所?まだ時間あるし良いよ、何処?」(岩本
追い付いたを一瞬和らいだ表情で迎え
近くに来たからお願いされる照。
エレベーターを呼んだ翔太も歩み寄り、それを見てから行き先を明かす。
「ケーキ屋さんに行きたいです」
「あ〜誕生日ケーキな、おっけ」(岩本
「よく気が付くな、マジ流石だわ」(翔太
気付いたを手放しで褒めてくれる兄2人
照れ顔のの頭を照は撫でてやる。
常日頃から甘やかしてる訳では無い。
寧ろコイツは今まで甘えて来たり頼ったり
そういう末っ子らしい部分が皆無だった。
大学院で起きた虐めや事件も
バレなかったら頼る事すらしなかっただろう
2つの事件を経て、漸く本当の意味で頼るようになって来た。
甘え方が分からない、とシェアハウスに来たばかりの頃は口にしていたっけな・・・
まだ16で、親の庇護下のもと大切に育てられるはずだと言うのに。
自分達も養子に出された身だが
それでも多少なりと実父母の愛情は受けて来た、俺が望めば会う事も出来る。
でもは違う・・・実父母はこの世に居ない。
自分達がその代わりになれるだろうか。
なってれば良いなとは思う。
今まで誰にも頼らず甘えられず生きて来た、
頑張って来た分、甘やかしてやりたい
そう照や他のメンバーは思っていた。
「途中にあるケーキ屋で良い?」(岩本
「照兄に任せます!」
「ケーキは涼太、基本何でも食うかも」(翔太
「アバウトだなぁ、まあ良いけど(笑)」(岩本
「照兄お勧めのとかでも良いですね」
「甘党な照に任すか〜!」(翔太
「マジ?じゃあ張り切って選ぶわ」(岩本
エレベーターに乗り込みながらワイワイ話す
この瞬間も何もかもが楽しく
また愛おしい時間でもあり、終始は笑顔だった。
エレベーターから降りた3人は自然と肩を組み、照の車へと軽い足取りで向かい
荷物を乗せ、ケーキ屋へと向かって行った。
5月22日 作成