サプライズ
時は2018年3月某日。
この日はレッスン場でリハが行われていた。
ジャニーズJr祭り2018 Snow Man単独LIVE
本番は数日後に迫っている。
リハの様子は1部だけカメラが入っていた。
当時は知らなかったが
後にYouTubeチャンネルで配信される用だ。
カメラが回された際、達は打ち合わせ中
初の試みかは分からないがLIVEの様子を
自撮りしながらダンスを披露する為の打ち合わせをしていた。
その休憩時間、深澤と照が目配せ。
周りを気にした後、話を始めた。
「舘さんは?」(ふっか
「確かロッカーに何か取りに行ってる」(翔太
「ロッカーならレッスン場からは離れてるな」(岩本
「だね、でもエレベーター使うだろうからあんま掛からずに戻って来そう」(阿部
「じゃあ軽く決めちゃおうぜ」(佐久間
「ですね!」
深澤の言葉を合図に集まるメンバー。
それぞれの表情はニコニコした笑顔。
メンバー、宮舘の不在を確認するや話し合いを開始した。
そう、きっかけはあの日の企画会議。
のやりたい事話をOA後に新たにしたのと同様に、同じく追加で決めた事があった。
それが今回打ち合わせしている自撮り。
と、密かに水面下で進めているもう1つの企画
「舘様誕生日サプライズ企画開始だな」(岩本
「だな!めっちゃワクワクするわ」(佐久間
「分かるけど涼太にバレたら終わりだぞ」(翔太
「それな(笑)」(ふっか
「プレゼントは何にします?」
「そうだねぇ、やっぱ舘様ならではのプレゼントにしたいよね」(阿部
「ですね、長く使って貰える物とか・・・」
「ん〜・・・調理器具とかは?」(岩本
宮舘が戻るまでの僅かな時間で決めねばならないと気持ちは焦る。
そんな中の"長く使って貰える物とか"と
阿部の"舘様ならではのプレゼントにしたいよね"を聞いた照が閃いた。
「調理器具か、良いんじゃない?」(ふっか
「うん、良いかも!」(阿部
「舘様の企画にも使えますね!」
「確かに!」(翔太
「それ良いね!さすが照」(佐久間
「褒めても何も出ねぇぞ(笑)」(岩本
これには全員が大賛成。
舘様ならではだし、長く使って貰える物だ。
満場一致で照の案で行く事に決定。
次はどの調理器具にするかを話し合う。
「よく使う器具ならフライパンとかお鍋かな」
「さすが料理担当!」(佐久間
「後は何だろ?」(ふっか
「ん〜・・・エプロン?」(岩本
「いや、それ調理器具じゃないから(笑)」(阿部
「( ゚∀゚)・∵ブハッ」(全員
「正論すぎてマジウケるww」(翔太
「うっせーな!なら皆は分かるんかよっww」(岩本
・・・・・・・・・。(全員
沈黙がこの場に流れる。
瞬間照は空見た事か!と何故かドヤ顔
要するにこの場で調理器具に詳しいのは唯1人
しか居ない事が判明した。
そろそろ宮舘が席を外してから10分が経つ・・
「取り敢えず買う物はに決めて貰っても良い?」(阿部
「俺ですか?」
「俺は賛成」(岩本
「俺も」(ふっか
「おっれも〜!」(佐久間
「大体俺ら料理しないからなぁ」(翔太
「だな(笑)」(ふっか
そこを胸張って言われてもなあ('ω')by
だが仕方ない。
見た感じ用途を理解して器具を選べるのは
どう見ても私しか居なさそうだった。
そろそろ宮舘が戻りそうだと感じた阿部。
サプライズ企画の話し合いはこの辺にしよう
との事になり、がプレゼントを決める事になった。
うーむ、フライパンと・・・何にしよう。
まな板セットって手もあるけど
ステージ上で渡す訳だから取り出しやすいのが良いよね?
宮舘は話し合いを切り上げた数分後に戻った
全員揃い、再び自撮りの打ち合わせを再開。
因みに本番迄12日を残している。
室内の前方に集まり、自撮りのiPhoneを持ち
佐久間が持つ自撮り棒にセット。
皆が準備してる中、1人話し合いの席に立ち
歩き出さずに考えていたら照に呼ばれた。
其方を見れば半身だけ向けた照兄と目が合う
「行くぞ?」
「あ、はい」
「何買うか悩んでた?」
「はい、その・・・ステージ上で渡すなら軽い方が良いかなって」
「あ〜・・・だな、舘さんが取り出し易いのが良いかも」
「ですよね、隠しておける物とか」
そのまま勢いで照に聞いてみる。
あまりに抽象的すぎて悩んでいると明かした
から話を聞いた照、確かになぁと相槌。
サプライズだからバレないのが前提だし
ステージ上に持参しなくてはならない。
持ち運ぶにしろ、軽めで目立たないサイズ・・・
その辺も込みで自分らはに丸投げした
「じゃあ買いに行く時俺も付き合うわ」
「良いんですか?」
「押し付けたようなモンだしさ」
「そんな事無いですよ」
「・・・ま、荷物持ちくらいはしてやる」
「ふふ〜ありがとう照兄!」
とまあ有り難い申し出を照がしてくれた。
誰かと買い物に行くとか初めてに近い。
生みの親とはあまり行った記憶が無いんだ・・・
今までの家族との思い出は無いに等しい。
瞬間記憶能力を以てしても、だ。
多分記憶の図書館から該当するそれをどうやったら取り出せるのか忘れたんだと思う。
いや、そもそも記憶自体があるのかすら不明
あの伯父や義母、従妹の事は思い出せるのだ
勿論養父母の事も、実弟の事も。
なのに肝心の実父母との事だけが曖昧で
亡くなる当日の朝の会話しか思い出せない。
いつか、実弟に聞いてみようかな・・・
私や実弟の両親との思い出を。
さて、振り返るのはここまでにしよう。
は気持ちを切り替え、照と共に歩き出し
先に打ち合わせに戻ったメンバーと合流。
既に自撮り用のカメラを自撮り棒にセットしていた。
「え、凄い・・・」
「これ持ってアクロバットはしない?」(岩本
「これ持ってはしない、けど何か置いてどっかに固定してアクロバット見せるところがあっても良いかな」(阿部
少し考え込んだ様子のを気にしつつ
先に打ち合わせに戻ったメンバーの方へ向かい、しゃがんでセットしている阿部に確認。
自撮りしながらアクロバットはしない?
とかナチュラルに聞いてるのが流石だ・・・
普通ならそんな質問は出て来ない
しかも当たり前のように話してるから凄いわ
合流した瞬間難度の高い会話にも感心。
兄達が職人集団と呼ばれる所以を垣間見た。
私も練習頑張らなきゃね!
「固定して・・・黒い方が良いんじゃない」(岩本
「そうだね、黒い方がガッチリしてそう」(阿部
「そうそう」(ふっか
「これこうやって置いてって事でしょ?」(岩本
「うん」(阿部
内心でガッツポーズをキメるの前では
阿部が照の問いに答え、提案を説明。
阿部の手から黒い方の自撮り棒を取り
持ち上げてから試しに照は床に置いてみる。
「で、それをだから、どっかに置く・・これを置く為の台を置いといて貰わなきゃならない」(阿部
「台なんでもいいんじゃない?」(岩本
「多分窪んでないとダメなんだよね」(ふっか
「いや、ここにさ、割り箸つけてさ、こうやって置けないの?そしたら下安定しない?」(岩本
台にも確かな安定感が欲しい阿部と深澤。
しかし照は柔軟な思考でまた提案した。
秘技、割り箸の術(。-`ω-)b
あ〜割り箸は思い付かなかったなぁ・・・
と聞きながら思う。
「あ、なるほど」(阿部
「それしたいね、なんかつけて」(翔太
「なるほどね!」(佐久間
閃いた照はウキウキした足取りで休憩スペースへ歩き出す、察したが先に動いた。
昼メシに使わなかった割り箸を袋から出し
歩いて来た照にその割り箸を差し出した。
おっ、という反応を見せた照。
さんきゅ、とに言った後割り箸を受け取り作業開始。
自撮り棒の曲げる部分の下に
が渡した割り箸を添え木みたいに宛てがい、マジックテープで固定した。
「照兄これ良い!」
「だろぉ?」
ヒラメキ力に感嘆の声を漏らす。
素直な賛辞に照も得意満面だ。
少年みたいな表情が可愛らしい
工作を完成させた少年のようにへ笑み
メンバーの方に戻る背をも追いかける。
「テッテレー」(岩本
「はやっ」(翔太
「早いよ(笑)」(阿部
「良いね〜!」(佐久間
「それ置くの?」(翔太
「これならサビから踊れる」(ふっか
即席で作った添え木の割り箸自撮り棒。
ニコニコしながら持って来た照へ驚く面々。
早速その自撮り棒を持ち、床に置いて見せる
「ほら、この安定感」(岩本
「バリ便利」(佐久間
「凄いね」(阿部
「割り箸のこの安定感」(岩本
「抜群の安定感!」
結果割り箸作戦が功を奏し、見事置く事に成功。
その後自撮り棒はメンバーが交代で撮りながら持つ事に決め
後は入念に位置を確認しながらダンス。
カメラにちゃんと映るかどうかをチェック
「てな感じで行きます」(ふっか
「このプランで行きましょう」(翔太
「は〜い」(5人
という訳で打ち合わせは終わり
この日はもう一度だけリハを通してから解散
後の仕事は滝沢歌舞伎の稽古のみ。
稽古は夕方から開始、それまでに買い物だ
荷物を纏め、帰り支度を整える面々。
稽古までは時間もある為、一旦シェアハウスに帰る流れだ。
しかし宮舘以外はプレゼントを買う話もしていたので
明確に移動車で帰るとは言っていない、勿論宮舘も知らない。
「俺はちょっと私服買いに行きたいんで」
さり気なく予定があると言い出した。
これをプレゼントの買い物だと察した照達。
「お、何買うんか決まったん?」(ふっか
「はい(*'▽')」
「1人で大丈夫?」(阿部
「ヘーキヘーキ俺がついてくから」(岩本
「なら安心だな」(翔太
「稽古までには戻るんだよ?」(舘さま
「はいっ」
敢えて深くは聞かず、見送る言葉を掛ける。
何も知らない宮舘も笑みを湛えながら
気遣う言葉をらにかけた。
サプライズの為とは言え、嘘をつくのは辛い
が、喜ばせたい気持ちが勝るメンバー。
も宮舘へ笑顔で答えた。
行っておいで、と答えての頭を撫でた宮舘は
その流れで照にも視線を向け
「を頼んだよ照」(舘さま
「ん」(岩本
「それじゃあ行ってきます!」
「おお、2人とも気ィ付けてな」(ふっか
「はいよ」(岩本
ニッコリと笑んだが妙な迫力を感じた照。
皆過保護だな・・・(笑)
まあ照もその内の1人だったりする。
それはさて置き、皆に見送られて出発。
他のメンバーは移動車へ向かい
照とは駐車場にある照の車へ向かった。
買うのは調理器具だから・・・IKEAかなぁ?
生憎と色んな店には詳しくない。
IKEAは大手だしCMも見る機会があって覚えていた。
照にもその店名を言ってみた。
「何処で買うか決めた?」
「はい、IKEAを見てみようかなと」
「あ〜家具とかの量販店だっけ」
「そこです、大丈夫ですかね・・・?」
ただこの時間帯だと一般の人が多い。
一緒に行ってくれる照に迷惑を掛けてしまうのでは?と気になった。
対する照はの言わんとした事を察し
ニッと笑うとの肩をポンと叩く。
「大丈夫、多分あんまバレない」
そうは言うが、兄達は芸能人だよ?
より本人達は意に介してないようだった
照兄は背も高いし絶対目立つと思うけどなあ
まあ照兄がそう言うならそうなんだろう
腑には落ちないが行くしかない。
今まで町に買い物に行く機会が無かったから
知ってる家具屋はそこぐらいしか知らないし取り敢えず照の車へ乗り込む。
シートベルトを装着し、いざ出発。
という時に車の窓ガラスが軽く叩かれた。
うん?と気付いて見れば、翔太の姿がある。
あれ?移動車に乗ったとばかり思ってた
照もと同じ疑問を抱き、窓を開ける。
「あれ翔太どした?」
「一応幼馴染としてついて行こうかなって思ったから来てみた」
「頼もしいです、ありがとう翔兄」
「ん、まあ乗れよ」
「サンキュー照」
開いた窓に近付いた翔太が言った理由に対し
は素直に礼を口にしたが
照は若干の間の後に後部座席を見て促した。
深い理由は無いが、幼馴染としてアドバイスしてやろうかなと思い、翔太は申し出た。
だがあからさまな間を感じ取り、おや?となった。
まあ取り敢えず後部座席のドアを開けて乗り込む。
は照の間には気付かなかった。