さくらんぼ
十五夜を過ぎた休日。
の部屋でくつろぐ者ありけり。
ソファーに横になって、雑誌を読んでいる。
彼は最近付き合い始めたの彼氏。
歳は同い年で、21になったばかり。
の部屋には、皿に乗せられたさくらんぼ。
隣の器に、へたがまとめて置いてある。
何気なく置いてあるへた。
それがどうしても、は気になった。
だって・・・結んであるんだもん。
食べ終わって結んだの?でもその意味って何?
私はそんな事しないし、仁も結んでる風はなかった。
じゃあいつ何処で誰が結んだのさ!
取り敢えずは、気づかれないように自分の彼氏を観察。
名前は赤西仁っていう、そこらのタレントよりもカッコイイ。
色気はムンムンだし、女の自分より綺麗だ。
出逢いはよしとして・・よくこんなカッコイイ彼氏が出来たよね。
なんて、自分で感心してみる。
そんな事を考えてたその時、雑誌を読みながら仁がさくらんぼに手を伸ばした。
1つ取って口に運ぶ動きを、はただジッと見つめる。
へたを掴む指も細くて長くて綺麗。
赤い実が、ゆっくりと口へと入る様はゾクッとしてしまった。
色っぽすぎだって!!
1人でワタワタしつつ、出てくるへたを待つ。
仁が気づかないのをいい事に、隈なく見てやる。
見てるのに気づかないのかな・・とも思ったが目が離せない。
実を食べた後、が盗み見てる前で
仁は手に残ったへたをも、口の中へ入れた。
これには見ていたも吃驚。
自分の彼氏は、さくらんぼのへたまで食べるのか・・
と軽い衝撃を受けてるに、楽しげな笑みを浮かべた仁が言った。
「そんなに俺の事見つめて、百面相しないでくだパイ。」
「だって、へたまで食べてるから・・」
「食べるわけないじゃん、俺はコレがしたかったの。」
隼人チックに言った仁に、は真剣に答えた。
真顔で言ったを見た仁は、うっすらと目を細めてから口を動かし
次の瞬間には、再び口の中からへたを取り出して見せた。
うん?・・・コレ、輪っかになってない?
仁が自慢気に口から出したへた。
それが見事な輪っかになってるのに気づき
ジッと皿に出されたのと、今出されたのを見比べる。
仁を振り向けば、ニコニコして私の言葉を待ってる。
子供みたいだなぁ・・可愛いけど。
ってゆうか・・聞いた話だけど、さくらんぼのへたで
こゆり?こよりだっけ?輪が作れる人って・・・
キスが上手いんだって・・・
思った瞬間、視線が仁の唇に吸い寄せられる。
ぷるんと艶やかな厚みのある唇。
物欲しげな半開きの唇は、反則なくらいセクシー。
「、今オマエ何考えた?」
「べっ!別に何も考えてないよ?」
の視線に気づいた仁が、妖しく微笑んだ。
投げかけられる問いに、ハッと視線を唇から戻すが
すぐに窓からの日差しが遮られ、前に出来る影。
吃驚して顔を上げると、其処には色っぽい顔をした仁。
何とも言えない視線でを覗き込んでる。
見惚れてるうちに、仁の手が頬に添えられた。
「気になるなら・・・試してみっか?」
え?と口を動かしたけど、その先は声に出なかった。
唇と唇の間をしっかり塞がれる。
間もなく仁の舌が入って来て、の舌に絡みつく。
逃れようとした体が後ろに下がるが、それをしっかり防がれる。
少し唇が離れたと思えば、角度を変えて再び絡みつき
私の頭は真っ白になり、何も考えられなくなった。
「んんっ・・・」
鼻に抜けるような吐息、狂わされる。
時折濡れたような音が聞こえ、体の奥が熱を持ったように熱くなった。
気がつけば、もキスに酔い
全く働かなくなった手足を、仁に絡み付ける。
キス・・・上手すぎ。
完全に蕩けそうになったの、体の力が抜けた。
その体を、手際よく仁が支え
ゆっくり唇を離した。
その際、と仁の間を銀色の糸が引く。
「どうだった?」
「・・・そんな事聞かないでよっ」
「アレ?照れてる?」
「〜〜〜〜〜!!」
真っ赤になってそっぽを向く。
恥ずかしがりやな姿が、また愛しさを増させる。
だからもう、本能のままに動く事にしちゃった俺。
小さくて細い背中に、後ろから抱き着いて
大切な人の温もりをいつでも感じれる嬉しさ
それを実感した。