想い想われ
🦋「はあ~やっと着いたシェアハウス」
そう声を張り上げたのは1人の女子。
彼女の名は 岩本 23歳。
苗字からも察するに岩本照の妹である。
彼女が何故シェアハウスに来たのか。
それは兄、照に頼まれた荷物を届けに来たから。
一応裏口から敷地に入り、玄関前へ。
生憎と鍵は預かっておらず、兄の携帯電話を鳴らす
呼出音を数回聴いて待つ事数分。
💛『もし~着いた?』
🦋「着いたよ」
呼出音が乱れた後、電話に出た兄の声。
デビューしてからの兄は多忙で、久しく会っていない。
姿は雑誌やテレビ、舞台で間接的には見てる
が、直接は相対していない。
でも電話から聴こえる声は元気そうだ。
🦋「急に頼むから吃驚したよしかも鍵無いのにさ」
💛『ごめんな、急に必要になったからさ』
🦋「まあ良いけど鍵開けて欲しい」
💛『待ってな、今頼んだからすぐ開くよ』
🦋「頼んだからって・・・何を」
面倒くさそうに言ってみるが実は嬉しい
久々に兄に会えるならと二つ返事で引き受けたのだ。
勿論それは兄には内緒です。
兎にも角にも中に入らねば話も出来ない。
中から玄関を開けて欲しいと頼んだら
それを誰かに頼んだからと口にした兄。
いや、お兄ちゃんが開けるんじゃないんかい
てなツッコミを内心で入れつつ待つと
中から近寄る足音が聞こえ、ガチャりと扉が開かれ中から誰かが現れた。
💜「ちゃん久しぶり、中どうぞ」
🦋「――あ!ふっかさん?」
現れたのは久しぶりに見る兄の友人。
よくJr時代から家に遊びに来ていた人だ。
あの頃はもう1人、お友達も来てたと思う・・・
取り敢えず開けて貰ったので中に入る。
頼まれたのはDVDや雑誌とシルバニアファミリーの彼是。
暇潰しに必要なのかと聞いたら振付の参考にするんだとか。
6~7体の人形と庭付きのハウス。
持ち運び易さから庭付きハウスの庭なしver.
🦋「中入ったけど、お兄ちゃんどこよ」
💛『ごめん俺今日現場に居るんだわ』
💜「Tarzanの撮影なんだって」
🦋「あ~・・・そうなんだ」
抱える程ある荷物を、兄に会えるならと遥々埼玉から来たのにその兄は不在。
一気に気落ちして声が沈んだ。
それを察知した照が電話の向こう側から言う
💛『帰ったらいっぱい遊ぼう?アイツらも喜ぶ』
🦋「・・・お兄ちゃんは?」
💛『可愛い妹に会えるのに嬉しくない訳ないじゃん』
🦋「ふふ~仕方ないから待ってる!」
💛『ん、じゃあそれまでふっかと待っててな』
てなやり取りをし、兄との通話を終える。
通話が終わる頃合に深澤も口を開いた。
💜「そしたら運んじゃうか」
🦋「ですね!」
ふわふわした笑みでに言うと、先ず此方に近づき、スっと腕を延ばし
が抱えるようにして持っていた袋を片腕で抱えた。
🦋「あ、それ重いですよ?」
💜「だからだよ、重たいのは俺に任せてちゃんは別の荷物にしなさい」
🦋「ありがとうございます・・・」
ごく自然に動く深澤に面食らうと同時に
慣れない女の子扱いが、急激な照れを齎す。
上と下を弟兄弟に挟まれて育ったからか
本人も男勝りな性格になり、同性からモテる
異性の友達からも気兼ねなく接せられる相手
としか見て貰えず、女の子扱いとは縁遠かっただけに
深澤からされた女の子扱いは人生初。
結果が持ったのはシルバニアファミリーの人形7体と
庭抜きで持って来たハウスのみ。
🦋「ふっかさん大丈夫ですか?」
💜「大丈夫大丈夫、エレベーターあるから」
🦋「エレベーターあるんですか?!」
私の言った"大丈夫ですか?"は
行き方じゃなくふっかさんの腰を気にしたんだけども・・・(苦笑)
まあいっか(・∀・)
それよりシェアハウスの内部に脱帽。
吹き抜けのエントランスにカラフルなドア。
兎に角広いのは間違いない。
しかもエレベーター付きって・・・豪邸やん
驚きより唖然としてしまった。
先を歩く深澤は、左腕に袋を抱え右手にも荷物。
あれがエレベーターだよ、と示された先に
白壁に映える黒い扉が現れた。
ボタンは押し辛い筈だと先に動く
階数は3・・・まさかの3階建て?
押しに来たものの、2と3で悩んだ。
すると助け舟が真横から聞こえる
💜「大丈夫、2階押して」
🦋「は、はいっ」
優しい声音は急かす事なくに届いた。
妙にその響きが優しくてドキドキ・・・?
何でドキドキしてるんだろ私。
チン、と目の前で両開きの扉が開く。
先に深澤が乗り込み、開くを押しながら
💜「ちゃんどした?」
そう呼ぶ声がまたも優しい。
ハッと気付いてもエレベーターに乗り込んだ。
いけないいけない、雑念退散!(?)
前は今程深澤に対して思う事は無かった。
それが今になって変に考えてしまっている。
何だろ、わざとらしくないんだよね・・・
意図的に優しくしてるんじゃないって感じ?
ごく自然に出来てしまってるというか・・・
なんだろ・・・あれれ?ってなってるわ。
前を歩く深澤の背中を見つつぼんやり思案。
エレベーターを降りて直ぐ、兄の個室に着いた。
🦋「・・・ここですね?」
💜「そう、やっぱ色で気付いたかな?」
🦋「兄のメンカラですよね!」
💜「大正解、個室はメンバーの色にしてあるのよ」
確かに、間違う事は無いかもしれないが
色分けされてればいっそう分かりやすい。
ニコリと微笑んでからドアを開けるよう
深澤は視線でを促す。
促され、頷き 兄の個室のドアを押し開いた
内開きのドアを開けた先に室内の光景が。
白い壁と床に敷かれた黒いベルベットのラグ
壁際に置かれた小さなテーブルに並ぶ御朱印
後はお守りとかが並んでいた。
🦋「ピアノまであるんですね」
💜「ああそれね、元々この隣にあったんだ」
🦋「隣に置けなくなったとかですか?」
室内に入る際、深澤が入ってから袋を先ず下ろす。
それから続いて入るにドアがあたらないよう押さえてくれた。
会釈を返して中に入ったが・・・オシャレ!
実家もそうだけど、凄い整頓されてる。
あのテーブルと御朱印にお守りは実家から持参したんだろうな。
それより気になったのはグランドピアノだ。
兄、照は幼少期よりピアノとバレエを習い
も兄を追うようにピアノとバレエを習った。
プリマを目指し、留学も経験した。
本格的に学び、その夢は叶おうとしている。
実技団にも入る事が決まったのだ。
何れは海外で活躍したい、とまあ私の事は置いといて・・・
💜「実は新たに7人目が加わって
彼もシェアハウスに越して来て照の隣を使ってる」
なるほど、それでピアノを移動させたのね
新たな7人目か~・・・良い人だといいなぁ
それからは2人で運んだ荷物を置き
兄から頼まれた任務を完了した。
手伝ってくれた深澤に向け、先ず感謝を。
🦋「ふっかさんありがとうございました」
💜「全然いいよ、お礼なんていいから」
兄の個室から出つつ交わすやり取り。
手伝うよう兄から頼まれてたのだろうか?
だとしたら手間を掛けさせてしまったなぁ
🦋「手伝えとか兄に押し付けられたんですよね
お休み中にホントすみません😌」
何となく兄に頼まれたんだろうなと推測。
廊下に出たタイミングで聞いてみた。
そしたら軽快に笑う深澤はに違うよと言った。