熾り



外出から帰宅した照、鍵を開けて中へ入った。
すると誰かがリビングかキッチンに居るのか
何事か話す声が聞こえて来る。

💛「・・・と舘さん?」

耳を澄まして聞こえた声を聞き分けた結果
中に居るっぽいのはと宮舘だと分かる。

何か話してるんかな、という軽い感覚で靴を脱ぎ
リビングと廊下を隔てるガラス戸に近づいた
そこから聞こえて来たやり取り、一瞬固まる照。

🌕「あ・・・涼太兄さん、もっと欲しいです・・」
「ふふ・・・良いよ、ほらよく見せて?」

――は?

聞こえたのは何とも言えないやり取り。
え?中でなにやってんの?

めくるめく何かを想像してしまい混乱する
まさか、舘さんとが?えっ、マジで?
兎に角このまま立ち聞きするのは良くないな?

メンバー同士の恋愛とか禁止じゃないけど・・・
いやそもそも男同士はもっとヤバいから!

謎に焦る照、誰もいないのに言い訳をしていた
よし、と意気込みガラス戸に手を掛ける。
中からはまだ2人のやり取りが聞こえている。

「もう少し柔らかくしようか」
🌕「ん・・・と、こうですか?」
「もっとよく見せて?」
🌕「これで見えます?ちょっと恥ずかしい」

もう無理(・∀・)

さすがに限界になった照は思い切りガラス戸を
内側に押し上げて疑惑の室内へ突入した。

💛「、舘さん――」

ガチャっと慌ただしく中へ入り
先ずリビングを見る、が誰もいない。
まさかキッチンで?と何やら青褪める照。

視線を彷徨わせていると、宮舘が照に気付いた
かなり慌てて入って来た様子から
何かあったのかと気になり、声を掛けた。

「照?・・・何かあったの?」
💛「何かってお前ら・・・――?」

やけに冷静な宮舘の声に腹が立った照。
開き直りかよ!と頭に来てそっちを見て
一気に頭が冷静になった。

勢いに任せて入ったキッチン。
そこでは予想した通り宮舘とが居た。

が、照が予想したような事態が起きてたのではなく室内は良い香りに満ち
2人はエプロン姿で照を見つめていた。

💛「は?・・・あれ?何してんの?」
🌕「見ての通りですよ?」
「うん、見ての通りだね」

取り敢えず頭が回らないが質問はしてみる
そしたら2人揃ってキョトンと顔を見合わせ

照をが手招きし、これですよと笑う。
怖々見に行ってみたら更に力が抜けた。

💛「はあ――?マジか・・・」

招かれて覗き込んだの手元・・・
そこには銀のボウルと、良い香りを漂わす白い物体。

💛「え?これ何?」

思わず真顔でに訊ねてしまう。
そしたらキョトンとした後にふわっと笑った
末っ子可愛いなオイ('ω')

🌕「これは種です」
💛「たね・・・?」
「今カップケーキを作ろうとしててね、くんが混ぜて捏ねたそれが種になるんだよ」
💛「益々分からん(笑)」
🌕「まあ要するに生地ですね」

これを型に流し込んでオーブンで焼けば
カップケーキが完成しますよ、と

💛「はあ~・・・お菓子作ってんならそれっぽく話せよ・・・」
🌕「・・・・・・ごめんなさい?」
「ふふふ・・・何を想像したのかは敢えて聞かないよ」

脱力し、片手で目許を隠し深い息を吐く照
はキョトンと首を傾げるが
何かを悟った宮舘はニコリと微笑む。

その眼差しで宮舘に自分の考えた事を見破られたと悟り
視線を外して誤魔化す。

💛「と、取り敢えず邪魔したわ」

居た堪れなくなった照は2人に背を向け
キッチンから離れる・・・が、腕に重さを感じた
足を止めて振り向くとと目が合う。

🌕「折角だから照兄も一緒に作ろう?」
💛「・・・良いのか?舘さんと作ってたんじゃ」
「俺は構わないよ、くんがそうしたいなら反対はしないよ」

ホントは反対なんだな・・・?

💛「じゃあ、遠慮なく手伝うわ」
🌕「やったあ!照兄もエプロンしようね」

取ってくる!と張り切る
照の腕から手を離し、嬉しそうに駆け出す。
その背に宮舘が"走ると転ぶよ"と声を掛けた。

はーい、と返って来る声。
返事だけは良いな、と照の口許に笑みが浮かぶ

1Fにある衣装部屋に向かったを待つ間
チラッと宮舘を見やるが、彼はボウルを持ち
が戻るまで生地を捏ね始めた。

うーん、普段と何ら変わらないな・・・

常に冷静沈着な宮舘は涼しい顔のままだ。
取り敢えず自分も頼まれたからには手伝うか・・

気を取り直し、流しで手を洗っていると
生地を捏ねながら宮舘が囁くように言った。

「俺とくんが一線を越えたと思った?」

という鋭い一言。
目線だけ合わし、宮舘の目を見つめ返す。
凝視してみたが真意は見えない。

💛「・・・少しだけ」
「だと思ったよ、入って来た時の照の目 俺を殺せそうだったから(笑)」
💛「悪い・・・けどあのやり取りだけ聞いたら誰しも勘違いするぞ?」

素直に答える他なく、肯定すれば宮舘は笑った
そんな怖い目付きをした覚えはないが
宮舘が言うならそうだったのかも?

でも聞いたのが自分じゃなくても勘違いした筈だと言ってみる。
そのくらいちょっと意味深な会話だった。

軽い冗談ぽく言ってみたが
返されたその返答に照はまた宮舘を凝視。

「そうかな、それは・・・照がくんを気にかけてるからじゃない?」

これこそどういう意味なんだ?と。

くんの事、何とも思ってなければあのやり取りを聞いても普通に入って来るよ」
💛「・・・・・・っ・・・そうかもだけど・・・」
🌕「お待たせしました!」
「そんなに待ってないから大丈夫だよ」

ズバリな事を言われてしまい
ぐうの音も出なくなって押し黙る照。

んな訳ないだろ、と笑い飛ばす事が出来なかった。

そんな所にパタパタと走って戻る
ニコニコと嬉しそうにこっちに駆け寄って来た

🌕「はいどうぞ、照兄のエプロンね」

そう言って俺にエプロンを手渡す。
妙に胸が騒ぎ、まともにを見れなかった。

🌕「照兄?どうかした?」
💛「いや、何でもないから気にすんな」
「ふふ・・・それじゃあ型に流し込もうか」
🌕「はーい!」

急に跳ねる心臓に戸惑った。
舘さんが変な事言うから意識しちゃっただろ!
なんて言い訳を内心でやる照。

無邪気にカップケーキ作りを楽しむ
少し恨めしげに眺めてから照はエプロンを着た

宮舘に指摘された感情に名前が付くのは
そう時間もかからないかもしれない。
を見ながら照はそんな事を感じていた。


【熾り】Fin