お風呂ハプニング



夜も深けた頃、は個室を抜け出した。
時刻は深夜0時過ぎ、シェアハウスも静かだ

何故そんな時間に部屋を出たのか。
それは、お風呂に入る為です( 'ω')スン
体型は幼児体型だけど一応女の子だからね

ホントはもっと早く入れる筈だったんだ。
その筈だったのに予定が狂った。
ソロ雑誌の撮影が押してしまい、帰宅が22時を回っていたのである。

こうなると流石に他の兄達が使用中だった
2階の風呂場はと照と佐久間が使い
1階を阿部、ふっか、舘様、翔太が使っている

今日は照と佐久間が2階を使用。
1階の方は阿部ちゃんが使っただけだった。

美容オタの翔太は珍しく2階の風呂でシャワーだけにしたらしく
舘様もシャワーで終わらせていた。
だからまあ、1階の方に入る気になった

折角のお湯はりが勿体ないからね。
とお風呂セットを抱え、静かに1階の風呂場へ

いつも賑やかなハウス内は静まり
がスリッパで歩く微かな音しかしない。
水音とかが漏れるかもな~・・・まあ仕方ないか

来てしまったし、風呂は入りたい。
2階と配置が逆なだけの洗面所に到着。
遅い時間だが風呂は至福の時間だ。
夜も深けてたのもあり、はすぐ鍵を掛けるのを怠っていた。

🌕「今日はオフだからゆっくり入ろう」

とか独り言を言う余裕すらある。
着ている服を脱ぎ、下半身はズボンのまま
上だけサラシのみの状態で洗面台の鏡を見る

偶に截拳道の型をチェックしたり
軽く練習というかトレーニングをしたりと
照とランニング等してるからか筋肉がついてきた。

益々女らしさはなりを潜めて行く。
でもその方が都合は良いよねきっと。

そう自分に言い聞かせ、右腕の肘
内側辺りに真新しい打ち身を見つけた。
こんな位置をぶつけたのかな私。

我ながら器用だなぁ、と青アザになった箇所を指でなぞる。
痛くはないからすぐ治るだろう。

そんな事を考えてからは穿いているズボンに手をかけ
下に下げようとしたまさにその時此方に近付く足音が聞こえた。

ヤバい鍵掛けてない!

と気付いたが既に遅く、伸ばした先のドアノブは指を掠めただけで遠のき
代わりにフッと背の高い影が現れ、は前屈みのままその影へ衝突した。

🌕「っ・・・!?」
💚「――わぁっ・・・?」

バフっと顔から突っ込むと上から聞こえた声
低いその声には聞き覚えがあった。
ハッとして顔だけ上げればそこには予想通り、背の高い阿部ちゃんが。

鉢合わせた阿部ちゃんに埋もれるように
正面から突っ込み、抱き着くみたいになっていた。

🌕「阿部先輩ごめんなさい!」
💚「って、?こんな時間にお風呂??」
🌕「仕事が押しちゃったので・・・」

あ~・・・なるほどね?

と鉢合わせた理由に納得する阿部だが
ふと今の状況に気付き、顔が熱くなった。

💚「ちょっと待って、服は?」
🌕「え?ああ、そのお風呂入るとこだったので・・・」

急に慌て始めた阿部に対し冷静な
阿部だけが自分のホントの性別を知ってる
ってのもあり、安心しきっていた。

そんな内心が手に取るように分かった阿部。
何だかそれは嬉しくないね?

信用してくれてるんだろうけど、男としては何だか複雑だ。
だからちょっと意地悪したくなった阿部。

抱き着いてるみたいに自分の腕の中に収まっているを見下ろし
手に届いたバスタオルを左手で掴み
ふわりと両手で広げ、の肩に羽織らせ

左手をの腰に添えるようにして優しく引き寄せてから
空いてる右手の人差し指をの唇にあてる

💚「信用してくれてるのは嬉しいけど油断はしないでね?」
🌕「油断・・・?」
💚「俺だって男、なんだよ?」
🌕「――っ・・・」

目の前で微笑む阿部の唇が妖しく弧を描く
その表情と唇をなぞる指を急に意識してしまった。

勝手に熱が顔に集まって行く。
真っ赤になるを満足そうに眺める阿部。

💚「余りに無防備だと・・・」

低い声が間近で笑い、動けなくなったへ体を傾けると
耳元に顔を寄せ、囁くように阿部は言った。

💚「本気で俺の事意識させたくなる」
🌕「――!!」
💚「こんな格好は俺の前だけにして欲しいな、は女の子なんだよ?」

耳元で囁くから息が、かかる。
無駄に騒がしくなる心臓の鼓動・・・

私の反応を楽しむみたいに解放してくれない
しかもずっと本名呼びだし凄く阿部先輩が意地悪モードだ・・・!
耳に息がかかるからゾクゾクしてしまう

何とか返事をしてみるが
まだ阿部と密着させられている。

🌕「はい・・・っ」
💚「気を付けないと襲われちゃうよ?」

が耐えに耐えかねるより先に
少しだけ耳元から身を引いた阿部。
ホッとしたのも束の間、目を見てから更に一言。

💚「・・・俺みたいなオオカミにね」

そう言い残すと、洗面台に置かれていた歯ブラシセットを取り
爽やかな笑みを残して阿部は立ち去った。

🌕「な・・・なに今の、ヤバ・・・・・・っ」

身体中の緊張が解け その場に座り込んでしまう
俺だって男だよ?と口にした瞬間
普段からは想像出来ない阿部の顔を見た。

そう、忘れてた訳じゃないが阿部は男・・・
声も低いし自分より力も強い。
肩幅だって私より広くてすっぽり収まってしまった。

まさかこんな風に意識させられるなんて
明日から阿部先輩の顔、まともに見れないかも。

が阿部を異性と認識させられた頃
自分を異性だと印象付けた阿部が
部屋に戻りながら真っ赤な顔をしていた事を誰も知らない。

💚「はぁ~・・・ドキドキした・・・」

無防備にあの格好で脱衣場で立ってるとかさ
俺の心臓壊す気なのかなって思ったよ。

あんな華奢で、簡単に腕の中に捉えられる
真下から見上げる様はかなり可愛かった。

来たのが俺じゃなかったらどうする気だったんだろ・・・
照とかだったら・・・どうしたんかな。
此処に住んでるのは男6人なんだよ?

って理解してくれれば良いけどね
まだ理解出来てなかったら・・・ヤバいな~

などと思いながら阿部は個室に戻る。
胸で燻る気持ちを自覚した瞬間の日となった


おわり