ぬばたまの夜



私達を待っていた父上、何を言うのかと思えば
至極当然な事を尋ねてきた。

世継ぎ、つまりややこ(赤ん坊)を望む声。
そうだよな・・その、結婚したんだし
当然子供の事とか気にするよな

それに・・・・・・俺も、現八との子供・・欲しいし・・・
漂わせた視線が現八とかち合う。

瞬間恥ずかしさが頂点に達し、顔が真っ赤になった。
だって、何かやらしいじゃないか
現八の事・・そんな風に見てたみたいで・・・

「ややこの事は、2人でもう少し話し合ってみます」
「そうか、何やら下世話な事を聞いてしまった。すまんな」
「いいえ気にしてません」
姫も気を悪くしたらすまぬ」
「い、いいえっ」

ではな、と言うと父上は広間を後にした。
ああは言ってるけど本心は望んでるんだろうな・・・・

けど子供を作るにはその・・ねぇ、うん。
つ・・つまり・・・床を共にするって事じゃん?
そっそんなの恥ずかしくて無理!!!

瞬間的に脳裏に情事の映像がもわもわーんと浮かぶ。
きゃああああああああ!!!!!
死ぬっ!!それだけで死んじゃう!!!

いや駄目だ!
死んだら現八や父上、仲間も妹も悲しませる。父上の為にもややこを!

雑念を払うように頭を振り、ガッツポーズをする。
そしてそれを眺めていた現八。
青くなったら赤くなり、何とも面白い奴じゃ。

面白い程にの考えている事が現八には分かった。
まあそれは、自分も同じ事を考えていたから、と言うのもある。
ややこ・・・か・・・・・・

そろそろ考えねばならんとは思っていた。
じゃがなあ・・・いや、ややこを望む気持ちはある。

あいつは記憶も感情も取り戻したし
そういう事は理解しているだろう・・・・・・・・・・

まぐわうと言う行為を、が受け止められるだろうか
華奢で細くて繊細で、ワシは己を抑えられる自信がない。
壊してしまわないだろうか。

大切で手放したくない、それ故に大切すぎて怖い・・のかもしれん。


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そしてその夜。
いつもより深みのある夜の闇。

現八より遅れて寝所へ戻った
蝋燭に薄っすらと照らし出された寝所に
胡坐をかいて待っていたのか、現八の姿が照らし出される。

ドキン、と胸が跳ねた。
昼間見るより一層色気の漂う現八。
何か緊張してきたぞ・・・・

、少し話があるんじゃ」

キターーーー!と心臓が再び跳ねる。
父上があんな話したからだろうなあ・・・・・

ドキドキしながら目の前に正座した。
チラッと盗み見た現八の表情は、とても真剣な物で此方も口数が減ってしまう。
そして数分の沈黙の後、現八はこう切り出した。

「ワシとの子供・・・・欲しいと思うか?」
「・・・・うん・・・」

問われたのはやっぱり子供の事。
初めての事だからかなり正直・・怖い。
けど怖いけど、現八の子供は欲しいから・・・

だから思い切って頷く。
すると現八は少し間を取ると、変わらず真剣な口調で先を続けた。

「じゃがお前にとっては全てが始めての事じゃ・・怖いと思ったり辛いかもしれんぞ?
それに、セーブ出来ないかもしれん・・・それでも望むか?・・正直言えばワシも怖い」
「え・・?」
を壊してしまいそうで怖いんじゃ」

現八も怖いって思ってたんだ・・・俺だけじゃなくて・・
そう思ったら自然と言葉にしていた

「いい、現八にだったら。私には現八だけだ、だから、壊れてもいい壊してもいい・・・・私を、現八だけの物にして欲しい」

最上級の殺し文句だと、現八は思った。
女のに此処まで言わせてしまうとは
それくらい、ワシの事を想ってくれているを酷く愛しいと思った。

優しくそれでいて強くを胸に抱き寄せ
口付けを落とし、手はゆっくりと着物を脱がせていく
自分の印を残すかのように肌に口付け、時に吸うとから甘い声が上がる。

手は絶え間なく愛撫を続け、の秘部へと辿って行く
部屋には濃密な空気が満ちて、互いの息遣いしか聞こえない。

体を開かれる痛みが私を包んだ。
熱い肌、名を呼ぶ掠れた声・・・・
中を満たす感覚に流されぬよう私は現八にしがみついた。

一方現八も、ぎゅっとしがみつくその様が可愛らしくて
荒い呼吸のままの唇に口付けると
己自身を深く中へ沈めた。

やがて繋がり合い、己自身がの中を満たすと
が泣いている事に気づいた。

「・・・痛いか?」
「ううん・・っ、違うの・・・現八が私の中を満たしてて・・1つになれて・・・幸せだなぁって・・・・」
「またお主は恥ずかしい事を・・・・」

『泣く事ってさ、悲しいとか寂しいとか嬉しいとかの他にも使う事があるんだよ』

現八にしがみつく私の脳裏に数日前毛野さんが言った言葉が浮かぶ。
きっと毛野さんが言ったのはこういう事だったのかもしれない。
自分にかかるその重さすら愛しいのだから・・

大好きな人がいて、結ばれて・・1つになれて・・・
私はこんなにも幸せだ。だから涙が止まらないんだ・・・・
優しい口付けをくれる現八と私は、どのくらい繋がっていただろう

十分に満たされた私は、安心と疲れで現八より先に眠ってしまった。