猫選抜



さて。どうしてようか。

目の前には休憩がてらテレビを見て寛ぐ仁君と和也。
そしてその傍らには四匹の猫。

取り敢えず調べるべき事は決まったんだけども
先ずは職場に適当でもいいから理由を言いに行かないとならない。
取りに行ける物は取りに行かなきゃだし。

此処で仕事をするとなるとパタンナーに必要な物とか必要だよね・・
いや、ちょっと閃いた。
視線の先には二人の青年と四匹の猫。猫君達じゃなくて、あっちの二人。

利用しない手はないわね。
あの体格と背丈、大体の男性服は彼等のサイズで作れそう。

だとしても行く必要はある。
仕方ない、二人に留守を任せようかな。

「あのさ皆」
「んー?」
「あ?」

少し後ろから声を掛けると、クッションを手に座っていた和也と
背もたれに寄りかかってテレビを見ていた仁君が此方を振り向く。

言葉は理解してるのか、四匹の猫達もこっちを向いた。
それだけの事なんだがとてつもなく可愛い。

ああ〜撫で回したい←

「お前感情がモロ顔に出てんだけど」
「えっ」
「感情のまま抱き締めてくれてもいいけど、アイツ等姿は猫でも中身男だからな?」
「そうだけど今は猫だし・・」
「(危機管理がなってねぇな)」
「まあいいや、で、手伝う事でも出来た?」

の感情を読んだような言葉が投げられる。
吃驚して視線を向けると、呆れ顔の和也がいて
それに続くように奴らは男だぞ?と指摘する仁君。

言われなくても分かってるんだけどさ
本来は男の子だって言い聞かせてから彼等を見ても
今はどう見ても猫にしか見えない。

それに私元々の姿を知らないので、想像するにも無理が・・・
どうも納得してなさそうなを見てから危機管理を心配する亀梨。

家族のように思ってくれてるのは嬉しいが
根本的には異性なんだと言う事を頭に置いてくれないと、亀梨としても気が気ではなかった。

「ううん、ちょっと事務所に仕事道具とか取りに行こうかなと思って」
「そっか。此処でするにしても足りない物もあるもんな」
「一人で平気なの?」
「こればっかりは連れて行けないし・・・・兄さんについて来てもらうから」
「・・・ならせめて猫一匹連れてって」
「どうして?」
「事務所に顔出せない理由に使うとか」
「なるほど・・・」

真剣な顔の和也には何となく逆らえず、納得させられた。
二人とも兄さんの名前を出したらムッとしたけど・・・苦手なのかしら。

は鈍い子です。
それは二人ともの反応で理解していたりする。

「誰を連れてったらいい?」
「そうだなあ・・・」
「田口は論外」
「ニャッ!?」

連れて行ける猫を選ぶ事にした面々。
それぞれに猫達を見渡して考え始めた。

さなかに即答した赤西に対し、名指しされた田口は何でだよっと叫び赤西の足元に行くと猫キックをお見舞いした。
だが名指しされた本人以外からの反論は不思議と上がらない。
つまり異論なし、と言う事になる。これには田口も落ち込んだ。

赤西の足元でシュン、と項垂れる三毛猫。
見かねた中丸が傍に行き、ポン、と背中を叩いて励ます。

猫がそれをやる光景って・・・・かなり和む・・・・・・
結局は仲がいいんだなあと微笑ましくは思った。

それはさておき、亀梨と赤西は話し合いながら誰を連れて行かせるかを話し合っている。
最年長組のどちらかを同行させるか、しっかりしてそうな聖を連れて行かせるか・・・・
ある種、究極の選択・・・

悩み抜いた末、二人が同行させたのは――


++++++++++


選ばれた猫をキャリーケースに入れては事務所へ出かけて行った。
猫にならない限り入れないであろうキャリーケースに
興味津々で入ったのは白い猫、そう、あの上田である。

「キラキラしてたな」
「ああ・・今までに見た事ないくらいにな」

意気揚々とケースに乗り込み、残りメンツへ一声鳴いてから外へ行ったかつてのリーダー。
判断は間違ってないはず。
否、間違ってないと思いたい・・・・・

「ああ見えても上田は結構細かい事に気づくだろ?」
「んー・・きっと。」
「・・・・・選んだのが間違いじゃなかったと思わせる返事しろよ・・」
「平気っしょ、上田なら。」
「何処から来るんだよその自信」
「カメが信じて選んだんだろ?俺だってアイツ信じてるもん」
「・・・・・・・恥ずかしい奴」
「ハハッ。上田はカメみたいに鋭い事言うし、色々気付く奴だから俺も行かせたんだし」
「だよな、したら俺らは調べ物しますか」
「だな」

二人を送り出した後の二人の会話。
何だかんだ言っても彼等はメンバーの事を信頼してる。
ずっと、ずーーーっとメンバーと一緒だった。

結成当時こそ色々あったが、家族と過ごすより一緒にいた時間の方が長い。
だからこの絆と信頼は完璧だ。

何かあっても上田がいれば平気だろう。
お守りにと亀梨はあのネックレスを上田に預けていた。
またアレが現れたとしても、きっと二人を守ってくれるはずだと。

前を歩く赤西の背中を眺めつつ、少しだけ・・コイツらと一緒でよかったと感じた。
一人だったら今よりもっと動揺してたと思う。
コイツらがいるから冷静にもなれた。頼もしい仲間がいれば乗り切れるような気がする。

「赤西」
「あ〜?」
「えーと、頼りにしてるぜ?」
「・・・・おう」

ついて来ていた中丸猫を抱っこしつつ赤西を呼び止めた。
くるんと跳ねる赤西の髪の毛。

猫っぽさを感じさせる様が可愛らしい(笑)
自由な男だけど、結構頼りにしてるのでそれを伝えてみた。

俺からそんな風に言われたのがかなり驚いたと見え
一瞬キョトンとした赤西だったが
はにかむような笑みを浮かべると、言葉短く応じる声。

そんな赤西に笑みを返し、二人と三匹はパソコン部屋へと戻って行った。