願わくば
遅かったら迎えに来る―
そう金髪の鬼「風間千景」は五稜郭を去った。
私が此処に残ったのには理由がある。
新選組の皆を弔う為。
何か月かはかかる覚悟もした。
皆が此処に生きていた証を・・・遺したかったのかもしれない。
新しい時代はすぐ其処まで迫っている。
桜の花が舞い散る中、私は最後の激戦地を目指した。
援護しようとして銃殺された土方さん。
先ずは彼の遺体を探す。
新政府軍がきちんと弔ってくれるかが心配だから。
お世話になった身として、丁重に弔いたいと思った。
破れてボロボロになった「誠」の旗を胸に抱き、未だ遺体の残る戦場を歩く。
血や肉片、新政府軍、旧幕府軍・・入り乱れて亡くなっている。
壮絶な景色に思わず口元を手で覆った。
それぞれに志があった、それぞれが夢を持ってた。
胸が熱くなって自然と頬を涙が伝う。
さ迷い歩く事数分、私は彼を見つけた。
部下達と折り重なるようにして・・ううん・・・皆が土方さんを守るように・・
彼らの顔は、とても清々しくて苦しみなんて感じさせない顔だった。
志を貫いて最後まで戦った満足感、それすら感じさせる顔。
「土方さん・・素敵な生き様でした―」
其処まで言って、先に言葉は続かなかった。
涙が込み上がって、喉を嗚咽が押し潰したから。
劣勢でも諦めず戦い抜いた土方さん。
その彼に最期まで付き従った隊士達。
「私は忘れません、この時代に皆さんが生きていた事を
志を持ち、最期まで戦い・・戦い抜いた事
私も、そんな皆さんと共に歩めた事も・・・・」
はらりと舞う花びらが亡骸に降り注ぐ。
安らかな顔は、とても私を安堵させた。
「夢を持って今を駆け抜け、他愛のない話に笑顔が溢れた日々
突然転がり込んだ私を面倒見てくれて、守ってくれた皆さん・・・
そんな皆さんに、私は最後まで何も返せなかった・・」
目の前の土方さんが涙で滲む。
最後まで役に立てず、恩を返せなかった事がずっと心に残っていた。
「だから私は忘れません・・見ていてください。
次の春が訪れる頃、例え皆さんを忘れる人達がいても私が覚えています。
皆さんが駆け抜けて来た動乱の時代、刻んだ軌跡・・・今度は私が己の軌跡を刻む処を」
どうか・・願わくば皆さんが、来世で幸せになれるよう―