結ばれる絆



声をした方にいたのは、昨日緒方らと乱闘を繰り広げていたイエローギャング。
此処で待ち伏せしていたと言う事は恐らく昨日の事で風間らに報復をしようとしているから。
にしても昨日は緒方達を殴る蹴るをして、今日は風間達にケンカを吹っ掛けようとしてる様を見るとやはり嫌悪感が湧く。
ただ単に誰でも良いから殴ってスカッとしたい、つまりケンカがしたいだけに見える。

つまりは一方的な物とかだったり、酷く理不尽な物にしかならなさそうな行為。
相手の気持ちとか諸々を無視した暴力というソレ、の体が無意識に震え始める。

「こいつには関係ねぇだろ、」
「関係なくはねぇだろ?昨日この女も一緒いるのは確認済みなんだよ」
「・・・っ」

震えるに視線を向けた事で気付いた風間は
距離を詰めて来た相手の頭にだけでも逃がせない物か譲歩してみるが失敗に終わる。

逃がせないとなると、自分達で手出しさせないようにする外ない。
昨日同じ場に居合わせればこうなる事は大体予想がつく物だ。
それを覚悟では自分達を待っていたのだろうか?

・・・・いや、寧ろ今まで関わり合いのない世界にいた故
不良とかの性質を知らなかっただけかもしれない。
どちらにせよもう関わってしまった以上は腹を括るしかなさそうだ。


―それには教え子から託された大事な客人なんだ―


ギャングらに何処かへ連れて行かれる風間の脳裏に
何故か緒方と二人でタイマンしてる場に現れた久美子の言葉が過ぎった。

あの場は聞き流していたが今更ながらに気になる。
客人って言う事は・・要はコイツが山口の家に同居してるって考えるのが妥当だよな?
しかも託されたって言い方も気になる・・・つまりはコイツ自身が頼んだんじゃなく
山口の教え子って奴がコイツを山口の家に同居させるよう頼んだって事だろ?

何の理由でわざわざ先公の家にそれを頼んだんだ?
他にも親戚とか親の兄弟とか じーちゃんばーちゃんに預けるのが普通だろ。
成るべくの傍を歩きながら一人風間は思案し続けた。

初めて会った時から何となくその名前が頭に引っ掛かり続けていた。
それと度々感じる既視感も同じくらい気になっている。
・・まあ兎に角今はこの場をどう切り抜けるかだな・・・・
青褪めた顔で横を歩くを盗み見し、頼りなさ気に自分の服を掴んでいる姿も視野におさめた。





「大変だ!廉達がヤバそうな奴等に連れて行かれた!」
「えっ??」(全員

その日の教室、其処へ登校して来た浜口らが慌てて駆け込んで来た。
浜口らの言葉に騒がしかったクラスが静まり、声を揃えて聞き返す。
後方でその言葉を聞いた緒方の顔色が少し変わった、その緒方の顔色を更に変える事を続けて浜口は口にする。

「それよりもっと大変なのは廉達と一緒にあの・・転入生の子も連れて行かれたんだよ!」
「――!?、あのバカ・・・!」
ちゃんが?!・・って大和!?」
「どうするまでもねぇな、行くしかねぇだろ」
「ああ」

視線鋭くなった緒方は歯噛みするように苦々しい顔になると
本城が制止するより先に教室を飛び出して行った。

まさかの名前が挙がった事で、残った本城や神谷にも迷う理由がなくなり
緒方を追う為、ガタガタと座っていた机を飛び降りて教室を走り出て行った。

昨日の出来事で懲りたと思っていた緒方。
よりによって何で今日廉達の方へ顔を出してしまったのか、関わる事を止めようとしないに対する苛立ちが沸いた。
あんなに怖がって震えてたくせに・・何で逃げねぇんだよ・・・

言葉にして約束を告げた昨日の今日起きた騒動だ。
約束したし心に決めたからには、それを守らねばならない。
廊下の真ん中で話しかけてくる教頭にぶつかりながら駆け抜け、先を急いだ。
彼ら3人が教室を走り去った数分後、入れ違いで教室に入って来た久美子。

生徒らが何やら深刻そうな顔で話し合う姿を見つけ
後方にあの6人の姿と、預かっているの姿がない事を不思議に思い
深刻そうな顔で話し合う生徒らへ近づいて問うてみた。

「あいつ等とはどうした?」
「それがさ、廉達とあの転入生がヤバそうな奴等に連れて行かれるの見たって話したら」
「何だって風間達とが??」
「ああ、それ聞いて大和達も飛びしてったんだよ」
「え?」
「マジやべぇよ」
「あいつ等はんぱねぇ事するらしい・・」
「・・・・そいつ等何処にいるんだ?」

返って来たのはまさかの話、恐らく風間らは昨日の報復の為に連れて行かれた。
けど直接関係のないまでもがどうして一緒に?
しかも何でまた風間達と一緒にいたんだ?

けど自分達を助けに入った為に連れて行かれた風間達を気にし
たった3人で向かって行くとは、緒方も中々男気がある奴じゃないか。
自然と笑みが浮び、それから表情を引き締めると
緒方らと同じように廊下の真ん中に立っている教頭を押し退けながら久美子も走り去った。

浜口から連れて行かれた場所を聞き出した緒方。
あの辺りに人気のない、或いは人が近寄らなさそうな場所・・・・

そういや、最近閉鎖された倉庫があったはず。
廉達はもう乱闘になっちまってるかもしれねぇけど あいつは平気だろうか・・・
分からねぇ女だよな・・あんなに俺らの事避けたりしてたのに、どうして関わろうとすんだろう。

何で避けたままでいいっつーのを関わる?
嫌なら背を向けてりゃいいだろうに・・・決して目を逸らそうともしなかった。
逃げたくないというアイツの決意が逸らそうとしない目から感じれた気がした。

一方の風間らと、緒方の睨んだ通りの倉庫址で暴行を受けていた。
立ち向かおうにも多勢に無勢であり、ほぼ一方的な暴力行為。

一人女であるは両手を両側から掴まれ、彼らの殴られる様を見せ付けられていた。
助けたくて暴れても拘束は解けず、そればかりか顎に指を添えられて無理矢理横を向かされる始末。
向けさせられた視線の先にあるのは卑しい笑みを浮べ、この状況を愉しんでる男の顔。

こんなにも理不尽な暴力行為だというのに疑問を持つばかりか愉しんでる男達。
誰一人として当たり前だと思ってる事が、にとっては何よりも腹立たしい事だった。

「高校生のガキにナメられたままじゃ、俺らのメンツが立たねぇんだよ」

止めてと叫ぼうにも声は上手く出ない。
今も目の前で彼らが殴られ傷つき、血を流してるというのに。
メンツがそんなにも大事なのだろうか・・やたらと腹が立つ・・・。

一人絶望感に打ちひしがれるだったが、其処へ駆けつける足音を聞いた。
制止を叫んだその声、最近よく聞く機会のある声の主。
顎は固定されたまま抗うように視線だけを光の差し込む入り口へと向け、息を飲んだ。

「何だお前ら、たった3人でこいつ等助けに来たのか?」
「バッカじゃねぇの?」
「そいつ等には関係ねぇだろ、手ェ出すんじゃねぇよ!」
「ふざけんな・・お前の仲間だろ?」
「別にそいつ等、仲間なんかじゃねぇから」

光を背にして立つ緒方達が現れたのである。
今までの彼らなら先ず此処に来たりはしなかっただろう。

それでも彼らは此処に来てくれた。
過去云々よりその事の方が数段嬉しい。

ギャングの頭と言葉のやり取りをしていた緒方の目が
倉庫内を見渡した際、ギャングら二人に拘束されているの姿も捉える。
若干それを視界に捉えた緒方の顔色が変わった。

話し合いの余地はなく決裂、結局は緒方達もギャングらと乱闘になってしまった。
こんな一方的なのはケンカなんかじゃない。
どうしたら?私に出来る事って何がある??
何も出来なくてただ泣くだけなんてのは嫌だ。

「・・て、やめてよ・・・もうやめて!」

彼らの姿が かつての自分や妹だと思うと声は自然に体の奥から溢れるように出た。
叫んだ声に殴られながらも緒方や風間達は目を奪われ、視線を向ける。

途切れ途切れでしか聞いた事のなかった彼女の声。
それはその容姿に相応しく、凛と響く強い声だった。
懸命に枷を外そうとしているに苛立った男の一人が頬を殴りつける。
乾いた音が倉庫に響き、これには風間や緒方も身を乗り出そうとするが他の男らに阻まれてしまった。

次第に緒方達は互いを庇い合う防戦一方に変わる。
敵視し合っていた緒方と風間も、互いに協力するような形でギャングらを相手にし始めていた。
ふと鉄の味を味覚として感じた、どうやら殴られたせいで口の中が切れたらしい。

もうかれこれ数十分は殴られたり蹴られたりしてるはず・・
万が一彼らに何かあったらどうしよう?そんなの嫌だ。
かと言って、私が出て行っても何の役にも立てない・・・
迷って考えてる間にも彼らはどんどん傷ついて倒れて行く。

私を拘束する男らの視線はあの時のように卑しいし、嫌悪感も増して来た。
自分が暴力を受けてる訳じゃないのに、そういう場にいるだけで辛くなってくる。
全身に受けたかつての痣達が疼くように痛む幻痛が襲う。

それでも 何かしなくては という気持ちがを動かす。
震える足を少しずつ上げ、先ずは自分を拘束してる右側の男の足の上に思い切り下ろしてやった。

「いてっ!」
「何だようるせ・・・った!!」

思い切り足の甲を踏まれた男は、痛みと驚きでを拘束していた手を離してしまった。
その瞬間を待っていた、今だとばかりに自由になった右腕を振り払い
反転する勢いで左側にいる男の足も踏み潰してやり、左腕も振り払うようにして二人の男達から逃れる事に成功。

次にしたのは、一番近くにいた神谷と倉木達を痛めつける男達を制止する事。
懸命に二人を離してと叫びながら男達の腕を引き剥がそうと間に入る。

の登場に驚く神谷と倉木。
当然ギャングらもそれに気付く、拘束したりはされないが
同じくらい奴等の行為を止める事は叶わなかった。

更に移動して市村と本城を殴る男らを止めに行くが、結果は同じ。
却って庇おうとしてくれた市村に余計な怪我を負わせる羽目になってしまう。
足手まといにすらなれない自分の存在に情けなさから自嘲の笑みが浮かびそうになる。
極度の緊張と暴力行為の只中にいる状況から、激しい頭痛と嘔吐感に襲われ視界が歪む中 緒方と風間らへ視線を移す。

ふらふら、と自然に足が動き、二人を暴行する男らへ歩み寄り
手下らを嗾けて自身は高みの見物をするギャングらの頭の傍へ吐き気を抑えて移動。
気だるそうに向けられた視線を合わせ、何とか言葉を紡いだ。

「お願いです、もうやめて下さい・・!これだけやったら、十分でしょう?これ以上殴ったら彼らが死んじゃう!」
「・・っ・・・、俺らはいいから離れてろ・・!」
「・・・ふーん?アンタみたいな女がねえ・・こいつ等のどっちかがアンタの男とかか?」
「・・彼らは・・・・私のクラスメイトです!」

言った瞬間ぐっと腕を掴まれ腰を引き寄せられた。
間近に迫る嫌悪してやまない男という生き物の顔と息遣い。
離れてろと痛みに耐えながら叫んだ風間の声に少しだけ視線を向けた隙に捕まった。

風間や緒方らに近づかれたり傍にいたりしても全然平気だったのに
この男に近寄られた瞬間、久し振りの吐き気に襲われた。

「アンタ面白いな・・・じゃあこの辺にしてやるよ」
「・・本当、ですか?」
――」
「アンタが俺の女になるって言うならな」
「な」

正直その突拍子もない条件に固まった。
こんな(若干おねえ系みたいな)男の女になんて死んでもお断りよ!
でもそうしたらこの理不尽な暴行をやめるって言ってるし・・・

「んな奴の事、信じんな!約束なんか守る訳ねぇだろ・・っぐ!」
「風間君!」

の悩みを吹き飛ばすような強い風間の声。
しかしそんな風間を黙らせる為、頭の男は加減もなく腹部に拳を沈めた。
思わず傍へ動きかけたを頭の男が引き戻し、嘲笑うようにジッとしてろと口にする。

成す術なくなった時、ついにこの場の運命を変える人物が現れた。





色々偽者ですが所々愉しんで書けました(ぇ
大分ヒロイン、活発に動いてますね(そうか?)常に思うのは文才が欲しい。
しかしね・・・女の子のままのヒロインって男装ヒロインより難しい( ゚д゚)クワッ
特に乱闘シーン!闘えない訳だから、かなり絡ませ方で迷うwww
それでも投票して下さった方々のリクエストに応えるべく、ない文才をフルに回転させて頑張ります!