目撃者



聞こえた声と見えた姿。
芸能人だってのに変装もしないで駆けつけてくれたのは
和也と仁君の二人。仁君はご丁寧にも台車を持って来てくれた。

チラッと視線を真梓羅へ向けると、案の定突然の芸能人の登場に目を丸くしている。
その姿を眺めながらは自分の前にいた上田を腕に抱えて立ち上がった。
走ってきたのか息を切らして傍に来た二人。

「わりぃ遅くなった」
「ニャーーーッ」(遅いわバカ西〜)
「おおっと、何だようえ・・・スカイ。熱烈歓迎か?」
「生亀梨・・・・・」
「二人とも呼びつけてごめんね」
「いいよ、一息ついてた所だったから」

息を切らして駆けつけてきてくれた姿に、心が安心したのを感じた。
それは猫の上田も同じだったらしく、傍に来た赤西の胸への腕の中から飛びつく。

つい本名で呼びそうになったのを無理矢理誤魔化して抱き留める。
友達同士みたいな感じで言葉を交わす様を驚いたまま眺めている真梓羅。
まあ当然の反応だろう。

ブラウン管越しにしか見ていない芸能人が
目の前でちゃんと呼吸し、自分達と同じ空気を吸っているのだ。
暫くするとハッと我に返り、へ率直な疑問を向けた。

「あ、あの先生?亀梨さんとかと知り合いなんですか?」
「(とかって何だよテメェ・・俺の名前は知らんのかコラ)」
「(赤西、顔に出てる顔に)」
「うん。前仕事で関わって友達になったのよ」
「凄いっすね!!」
「はははは・・・、って訳で彼らに手伝ってもらうから」
「って事はマンションも知ってるんですか?」
「ううん、まあマンション前までかな。エレベーターまで運べば後は何とかなるから」
「よっしゃ運ぶか」

怒涛の質問攻め。
当たり障りのないように返答を返す。

うん、一緒に暮らしてるのよ。なんて言ったら最後だわ・・・・
一向に質問が終わらなさそうな空気を切るように
声を割って入れた亀梨、それを聞くと抱えていた上田をに預け赤西も台車を組み立てる。

アイドルに抵抗がないのか、真梓羅はキラキラした目で二人を見たままだ。
もしや亀梨ファン?と抱えられた猫の上田は予想してみる。

何にしても好意的なら扱い易いかもしれないね←
上手く丸め込めるかもしれないし(

に抱えられたまま、そう睨む上田の黒い笑みは猫のままなので誰にも気付かれなかった。
四点くらいあった荷物を無事台車に乗せ終えた亀梨と赤西。
見届けてからは真梓羅へ向き直り、此処まで荷物を運んでくれた礼を言う。

「じゃあ真梓羅君、手伝ってくれて有り難う。」
「ハッ!あ、いいえ!」
「じゃ、俺達はこれで」
「はいっ」
「(コイツ最後までカメばっか見てたな)」
「ニャーン♪」(赤西がスルーされてるのって新鮮だな)

台車を押しながら歩き出し、デザイン事務所を後にした。
去り際に真梓羅は亀梨に握手を請い、戸惑いつつ手を出した亀梨は真梓羅と握手を交わし
反対に名前すら覚えられてない赤西は納得行かない顔で歩き出す。

の腕の中からやたら楽しげな上田が跳躍。
それをキャッチした亀梨に、肩の上に乗せてもらっての帰路。

ふと思う。
真梓羅とか言うあのスタッフは、誰が見ても分かった。
に想いを寄せているとか言うのが。

赤西も、上田も感じたんだと思う。
だからこそ上田は駆けつけた時、を守るように前に立ってた。
気付いてないのは当の本人だけ。

まあ・・・元凶の俺らが言う事じゃないけど、こうなって良かった面もあったって事だな。
仕事場に行かなくなるだけでも真梓羅と接する機会は減るし。

って、何でそんな事気にしてんだろな。俺。
肩に乗っけた上田の頭を撫でて気を紛らわせた。

「二人ともホント、ごめんね・・」
「謝んなよ。俺達が迷惑だなとか思ってると思う?」
「だって・・二人は特別な存在だし」
「え?」
「一般人じゃない、芸能人でしょ?って言い方だと何か、人を物みたいに区別してる気がして嫌だけども」
「・・・・・・」
「何処にでも居るって訳でもない、選び抜かれたその人自身が輝いてるから特別って意味ね」
「・・・・・・」

ガタゴトと台車を押す音が響く中の会話。
本当に申し訳ないと思っているのだろうの言葉に、二人+一匹は笑う。
自分達の方が遙かに迷惑を掛けているのに、本当・・この家主さんは謙虚だ。

笑って言葉を亀梨が返すと、は亀梨達を特別な存在と言った。
一瞬その『特別』と言う言葉にドキッとしてしまい
思わず赤西とハモってへ顔を向けた亀梨。

その二人の反応が、特別についての質問だと思ったは説明を始めた。
芸能人だとか一般人だとか言う言葉は使いたくない。そう口にした横顔を眩しそうに眺める二人。

変に特別視しない
芸能人、と言う括りではなく『個』として見てくれる表現で
思いがけない言葉だったのは間違いなくて、亀梨と赤西。そして上田もの言葉に聞き入っていた。

何かいいな、と感じた三人。
『アイドル』って言う自分を演じなくてもいいんだと言われた気がした。
気持ちが楽になったような、そんな清々しさを感じ・・・

「ちょっと、子ども扱い?」
「ちげーから」
「感謝してんの」
「え?寧ろ感謝してるのは私の方だけど・・・・・」
「いいから撫でられとけよ」
「取り敢えず戻ろうぜ、重いし。」

気付くと亀梨と赤西、二人して真ん中にいるの頭を撫でていた。
そんな赤西と目が合い、ちょっと互いに気まずくなる。

子ども扱いされたと思ったが二人を見やると
赤西が否定し、亀梨は感謝してるだけだと答えた。
二人から感謝される理由が分からず首を傾げる

それ以上追求(してるつもりはないと思うが)されるのは恥ずかしい為
撫でられとけ、とだけ答える亀梨。
赤西も台車を押しながら話を逸らした。

小学生の恋愛事情か?by上田

予想以上の初い反応の二人に、内心で黒い発言をする上田。
まあ微笑ましい事に変わりはないけどね。

亀梨の肩の上から、上から目線で傍観している上田のお言葉でした。
それからは昼飯の話と、調べ物の話に切り替わった。

昼飯は途中のコンビニで買う事になり
調べ物の件は今すぐ結論が出る訳ではないので保留。
流石にコンビニとなるとバレる危険性もあるから二人は待機させる。

食べたい物を聞いたは店内へ。
正面入り口ではなく、横(レジ側の壁)で待つ事にした。
すると不意に赤西のケータイが鳴った。

大体3日ぶりに鳴ったケータイにビクッとなる赤西と亀梨。
胸ポケットに入れておいたケータイを出し、画面を見ると其処に出ていた名前に思わず通話ボタンを押していた。

「裕太?」
[久し振りです、やっと繋がりましたよ〜]
「え?あ!そう言えば何か俺らの事で騒いだりしてねぇ?」
[いえ?何かあったんっすか?赤西さん達は長期ロケしてる事になってますけど]
「・・・・は?何だそれ―――」

相手はkissmyの玉森裕太で、事務所は自分達が居なくなった事について全く騒いでいないと言う。
ケータイから漏れた玉森の言葉、訝しげな顔をした赤西からケータイを奪うようにして電話に出ると

先ずは不自然にならないように話を合わせた。

「赤西ちょ、代わって。なあ玉森、俺達長期ロケでデザイナーさんの所に世話になってるんだけど」
[あ、そうなんすか?]
「内容のあるロケにしたいから長く掛かるけど、心配しないように言っといてくれる?」
[別にいいですけど・・・・・あの、亀梨さん]
「面倒な事頼んでごめんな、うん?」

我ながら上手い理由を思いついたなとか思った亀梨だったが
次に玉森の口から出た言葉に、亀梨は言葉を詰まらせる事になる。

[騒ぎになってないのは確かです、けど。]

不自然に言葉を詰まらせた玉森。
待つ側も玉森の緊張のような物が移って鼓動が不規則になった。

[偶々あの日、俺いたんです。あのファミリーレストランに]