もう1つの12ヶ月の戀



水無月に入り、毎日雨ばかりの日々。
久々に梅雨の晴れ間が現れた。
シェアハウスで暮らす日々も3ヶ月目になる

今日兄達は仕事で居ないメンバーも居るが
特に仕事がなく個室に待機中の兄もいる。
彼らの末っ子にあたるも個室で過ごしていた。

因みに、シェアハウスに暮らすのは7人。
加入組は各々の住処や実家暮らしだ。

異父兄弟なのは元々の6人とのみ。
なのでメンバー間での末っ子は変わらず
ただSnow Manとして見るとは元末っ子

全員が血の繋がりは無いが、Snow Manは皆家族のように仲が良い。
ファンからは家族という括りで見られる事が多く、また親しまれ支持されていた。

「久々の晴れ間か〜・・・」

思わず口から出る呟き。
幸い個室に居るから誰も聞いてない。

だが、タイミング良く?
個室のドアがノックされ廊下から声が掛かった。

くん居る?」

廊下から私を呼んだのはすぐ上の兄。
大学院のOBでもあり、唯一私が女の子だと知っている強い味方だ。

だから口調も砕け 安心して応え、促す。
応を確認してからガチャっとドアが押し開き
廊下側から阿部が顔を見せた。

「亮兄何か用事?」
「たまの晴れ間だし、俺と出掛けない?」
「亮兄と?」
「うん、くんが良ければで」
「勿論良いよ!出掛けたかったし」
「なら決まりだね」

用件は外への誘いだった。
確かに貴重な晴れ間だ、部屋に居るより外に出たいと感じ 二つ返事で快諾。

やっぱ亮兄と行くなら本屋とかかな?
それか図書館とかでも良いね。

快諾したら亮兄もニッコリ笑った。
兄達全員に共通するのは、笑うと可愛い。
男の人に可愛いって言ったら失礼かなとは思うが、可愛いが似合ってしまうのよね

椅子から立ち上がり、外出着を選ぶ為
ウォークインクローゼットに向かいながら私はドア付近に立つ亮兄に言う。

しかし爽やかな笑みの兄から
思わぬ提案が飛び出した。

「部屋着から着替えるから待ってて」
「それなんだけど、女の子なと出掛けたいから着替えを持ってって欲しいな」
「え、男装のままだと行けない所なの?」
「そういう訳じゃないけどは本来女の子でしょ?」
「まあ・・・そうだけど」

もうさ、3ヶ月も男の子として生活して来たから
逆に本来の性別のまま出掛けたいって言われると戸惑いが大きい(笑)

「時々は女の子として過ごそう?」
「・・・仕方ないなあ」

阿部がそこまで言うなら、とは折れた。

やった!と嬉しそうな反応を見せる阿部。
渋々ではあったがそんなに嬉しそうな反応を見せられたら否とは言えないじゃないか!

仕方なく着替えを持って行くよと約束し
男装としての外出着にも着替えをする事に。
下で待ってるよ、と言って阿部は部屋を出た

数分後、外出着に着替えを済ませ
貴重品と着替えを詰めたバッグを手に1階へ。

「亮兄お待たせ」
「着替えはちゃんと持った?」
「うん、持ったよ」
「よしそれじゃあ行こうか」
「どこに行くの?亮兄」

待っていた兄と合流し、玄関へ向かう。
先に靴を履いた阿部に行き先を聞いてみるが
着いてみてのお楽しみだよ、と言われた。

気になるには気になるが、阿部の事だが困る場所には連れて行かないだろう。

自身も阿部を信頼しているので深くは聞かず、素直に阿部に続いた。
因みに他のメンバーはどうしてるのか

深澤:個人の仕事中。
佐久間:個室でアニメ三昧。
翔太:SixTONESの樹と外出中。

宮舘:目黒と雑誌の取材中。
照:シェアハウス内でトレーニング中。

目黒:宮舘と雑誌の仕事。
康二:オフを満喫中。
ラウール:実家にて待機中。

という感じである。
阿部はを伴い、シェアハウスの車庫から自身が乗る車を玄関先まで移動させた。
(大分運転も慣れた頃にしてます)

「亮兄の車初めて乗る」
「だね、シートベルト忘れずに」
「はーい」

まあ何はともあれ、私達はシェアハウスを出発。
尚行き先はまだ分からないままだ。

シェアハウス前に居るファンの姿はまだ無い
だからこそ堂々と車で出発出来た。
私という末っ子の存在はまだ隠されてるから

シェアハウスを出て、阿部は車を走らす。
交通量の多い都内の道路を慣れた様子で走り
信号待ちをする傍ら助手席のへ言った。

「着替える時これ使ってね」

言葉と一緒に何かを持たされた。
手に乗せられたものを見ると

「って、コンタクトレンズ?」
「度は入ってないから安心して」
「なるほど、流石亮兄ね用意周到だわ」
「なんか表現に悪意があるね?(笑)」
「そんな事無いよ感心してるだけ」

渡されたのはカラーコンタクトだった。
色はブラウン、一般的な日本人の目の色かな
私は自分の目が好きだけど目立つからね?

近くで見ないと分からないかもだが
印象には強く残るアースアイ。
意図してなくてもトレードマークになる。
兄達を守る為にも身バレは避けたい

まあそんなこんなで着いたのは広い駐車場。
ホームセンターかな?と視線を巡らせたが
どこに来たのかをは察した。

「あれ、もしやこれは」
「うん水族館だね」

マジで?

あのデートとか行ったりする水族館?
大丈夫なのかな、亮兄はもう顔も知れてるし
私はまだ一般人だから問題ないけどさ

ていう心の声を読んだのか、隣で阿部が一言
結構バレないから大丈夫だよと笑った。

「人も多いから目立ちにくいしね」
「なるほど?」
「良いから着替えておいで」
「はーい」

という訳で阿部に促された
何処で着替えるのか、それは水族館脇の公衆トイレだ
メイクはナチュラルメイクのみだがまだ17歳、差程メイクは要らない

多少の目許メイクとチーク、リップのみ。
服装もボーイッシュなスタイルな女子風なので、女子トイレに入っても怪しまれない筈。

その間トイレの外でベンチに座って待つ阿部
際立って目立つ訳では無いが、それなりに目は惹く・・・
178cmのスラリとした長身に爽やかな見た目と正統派なイケメンだ。

通りがかりの女性や女の子達からの目を惹きまくっている阿部亮平。

無事着替えを済ませてトイレを出たら
丁度逆ナンされてる亮兄を発見した。
連絡先教えて下さい〜的な言葉が聞こえる。

トイレから出た瞬間、亮兄と目が合ったら
女の子達を避けつつ私を見ながら歩いて来る

「あ、やっと来た」
「お待たせ〜?」
「彼女かな、残念〜」
「ごめんねそれじゃあ」

残念そうに私や亮兄を見送る女の子2人。
どうやら彼女だと誤解されたようだ
まああんな風に私の方に来たらそう思っちゃうかな?

取り敢えず気を取り直し、水族館内部へ。
隣を歩きながらニコニコした亮兄が私を見る

着替えた女の子としての服装は全体的に明るめの色でまとめてある。
因みに亮兄のリクエストでスカートを穿いた

「・・・似合わない?」
「まさか、凄く可愛いよ」

何だかんだ亮兄もストレートに褒めるなあ
梅雨の晴れ間だが気温は過ごし易い。
黄色で薄手のタートルネックの上にジーバン素材のジャケットを羽織って来た。

髪は切ってしまったから、サイドに1つ纏めしたウイッグで済ました(雑
ポイントに紫の花飾りが付いている。

スカートは白で、薄いカーディガン素材の生地がスカートの上に付いていて風で揺れる。
足元は歩いても疲れにくい紫のスニーカーだ
靴下も黒のアクセントが付いた紫色。

かなり、でもないが久しぶりにオシャレした気がする・・・
大学院に行く時は女子として通ってはいるが、ついパンツスタイルにしがちで
メイクもナチュラルめで済ましてたからね。

今日くらいは楽しもう、折角の外出だ。
しかも水族館は初めて来たからワクワク。
両親が健在の頃は来た事無かったかな?

私が忘れてるだけで幼少期に来てたかもしれないが、覚えてる記憶だけが全てだ。
過去を懐かしみながら歩いていると、着信音が聞こえた。

「ごめん、マネージャーからだ」
「うん大丈夫だよ」

音の出処は阿部で、眉宇を顰めながら断り
壁際の休憩スペースに行ってから通話を開始

爽やかな笑みを浮かべて電話を受けた兄。
最初は普通に話していたが、途中から少し表情が曇り始めた。

もしや?という目を向けたと同時に通話終了
何だか凄く肩を落としているような・・・?
通話を終えて私の方に戻って来た亮兄。

「・・・どんな用件だったの?」
「はあ・・・・・・まさかの内容だったよ」

亮兄が話したのは、急な予定変更。
本来なら今日はオフだった亮兄に予定変更で
ピンでの仕事が舞い込んだとの事。

アイドルとしてなら喜ばしい依頼だが
今日はオフだからすっかりオフモードになっていたのもあり、亮兄のテンションは低い。
しかも水族館に来てまさにこれから眺める所だったのも落ち込む理由になっていた。

「そうでしたか・・・でもまた機会はあるよ、お仕事は今1番大事で優先しなきゃならない事でしょう?」

まあ残念な事に変わりはないが、今受けた仕事は亮兄にしか務まらないのだ。
がそう聞き分けよく返すと阿部は申し訳なさそうに微笑んだ。

「・・・分かった、そうだよね」
「その分次のオフにまた連れて来てね!」
「勿論、そのつもりだよ」
「ほら亮兄は早く仕事場に行かないと」
「いやそれがこの水族館内で撮るみたいでさ、しかもふっかと合流なんだ」
「え!そしたら私が立ち去らなきゃだね」

仕事場に送り出したに対し、阿部は向かおうとはせず
実は此処で撮るのだと明かした。

・・・って!それはマズイ
個人の仕事で居ないふっかさんが此処に居たのも驚きたが、亮兄までこの水族館で仕事・・・

示し合わせたのか?ってくらいに重なる偶然
なら私が此処に留まる方がヤバいじゃないか
服装は女子だし、アースアイはカラコンで隠しては居るが他はまるっと私だ!

という訳で、来たばかりだが私は亮兄と分かれて自分1人シェアハウスに帰る事になった。
俗に言う『とんぼがえり』ってヤツよ。

「本当にごめんね・・・」
「残念だけど仕方ないですよ」
「もしあれなら少し見て行きなよ水族館」
「でも亮兄とふっかさん居るよ?」
「撮影は2階のフードコートとかお土産コーナーにイルカのショーとかだから大丈夫」
「光源がある所の撮影なんだね?了解!」
「うん、帰りはどうしよう・・・タクシーとかで帰れそう?」

あ〜帰りをどうするか考えてなかった。
でも一応財布は持参したし、大丈夫よね。
そう思ったので亮兄の問いには頷いておいた

分かった、帰りは十分気を付けるんだよ?
心配性な兄は言い聞かせるように話すと
ふっかさんらが居る方面へ走って行った。

ポツーンとボッチになった
一気に寂しさを感じてしまった
取り敢えず、亮兄が挙げた場所を避けて・・・

フードコートには2人が撮影後に上手く行かないとヤバいな・・・、タイミングが難しそう。

一応気を張りながらは水族館を回った。
見た事ない珍しい魚や、生き物が自由に泳ぎ
見に来る人間を楽しませてくれる。

阿部と回りたかった気持ちはあるが
取り敢えず1人でじっくり見て回るのも楽しめた。