傷つける言葉。
そうと知ってても、止まれなかった。
自分達が拒絶されたみたいで胸が痛かったから・・

けどこれが、俺達の出会いだったんだよな。
いつか謝れる日が来るか?
全てを知ってからでも、遅くないなら――――



虹色の旋律 二章



『俺らだっていきなしで混乱してんの、それを穢れるだ触れないだー抜かして・・意味わかんねぇ』

はい・・・・その通りであります・・
本当に、ごめんなさいっ・・・・

だから。此処から立ち去りたいのよ・・・
でも出口が分かりません・・(
私だって・・・いきなりで混乱してるのよ?

だから取り乱してしまって・・・・・・あんな事に・・
情けなくて心細くて視界が滲んできたわ・・・
此処は殿方と等しく会話出来る所なのかしら・・?

今となっては考えても仕方のない事だけど・・・・
ウロウロと室内を歩き回りつつ感じた事。

話した限りでは、男尊女卑の風習は感じられなかった。
それにしても此処はどの辺なの?
一向に玄関が見当たらないわ・・・

こんな所にまだいたとなったら、先程の殿方にまたお叱りを・・・・・(ぶるっ)
すると不意に背後から声が掛けられた。

「あ、やっぱ迷ってた?」
「すっすみません!すぐに出て行きますっ!!けど迷ってしまってご迷惑かけるつもりはないので、その簡単に方向を―――」
「ぷっ!そんなに怯えなくていいよ、仁は部屋にいるから」
「・・・・・あ・・貴方は・・・・」
「俺は亀梨和也、さっき酷い事言っちゃったのが赤西仁。」

ビクッと肩を震わせて振り向くと、其処には怒鳴った人とは違う殿方が居ました。
切れ長の鋭い目をした綺麗な殿方・・・
ま、眩しいわ・・・・・。

思わずまくし立てるように言葉の羅列を並べ立てる。
そしたら寧ろ笑顔を向けてくれた。

この方は亀梨さん、と言う方のようです。
変わった姓をお持ちなんですねぇ・・としみじみ。

それと私に怒鳴った方は、赤西さんか・・・・
怖かったけど間違ってはいないわ。
怒らせてしまって当然の事を私がしてしまったのだもの。

「いいえ、私こそ酷い事を言ってしまいました。怒るのは当然です。」
「そう?」
「私ばかりが混乱して、お二人も混乱されていたのに・・本当にすみませんでした。」
「・・・・ちょっと驚いた。」
「・・え?」
「人ってあんま自分の非とか認めて謝れないじゃん?なのにアンタはちゃんとそれが出来てるから」
「でも・・・自分が悪いと感じたらきちんと認めて謝る物だと、父や母から・・・・」
「今時珍しいな、俺そういうのいいと思う。俺が呼んだのマネージャーなんだけど、ちゃんと説明してやるから安心して」

私の言葉を聞いて、理解してくれた。
女である私の意見なのに受け止めて、それから自身の意見も返してくれる。

今までこのような人には会った事がなかった。
その上こんな服装も違う私なんかの事まで気にかけて下さって
何て優しい人なんだろう・・・・

亀梨さんだけじゃない、私の事を怒って下さった赤西さんもまた同じ。

「優しい方なんでしょうね、きっと赤西さんも・・・貴方も。」
「・・・ごめんな、怒鳴ったりして。けど、仁も多分後悔してると思う。意味なく怒鳴ったりしない奴だから・・アイツ。」
「いいえ、怒鳴って貰えて良かったです。それでは、赤西さんにも有り難うと・・酷い言葉を言ってごめんなさい、そう伝えて下さい」

亀梨さんと話して二人の事が少し分かった気がしました。
これからどうなるかなんてちっとも分からないけど←

二人に出会えた事が、前向きな力を私にくれたようなそんな気持ち。
亀梨さん達の知ってる人なら、悪いようにはしないだろうと
根拠のない確信が心に沸き起こった。

その迎えの人は二人のまねーじゃー?と言う人らしい。
聞きなれない言葉だけれど、今の私には亀梨さんの言葉に従うと言うか
その言葉を頼る他ない・・・・・

そう言えば・・・少し気になる事があった。

「あの・・今は、大正何年ですか?」
「え?大正?」

が、亀梨さんのこの反応を見ては悟った。
悪い予感と言う物程当たる、とはよく言ったものね・・・・
予感はしていたわ・・でも聞かずにはいられなかった。

「大正・・・ではないようですね・・」
「うん・・・・そう、なんだよね」
「良ければ教えて下さいますか?此処の年号を」
「えーと・・今は平成16年、4月4日かな。」
「へい、せい・・・ですか。」
「そ、西暦だと2004年。えっとアンタは大正何年から?」
「私はと申しまして、私の時代では大正12年の9月1日でした。」

これってもしや・・・・・・タイムスリップならぬ逆トリップって奴?
よくそんな設定で話とかあったよな。

季節も月も違うけど、って子は実際此処にいる訳だし・・
影もあるし、存在感って言うか体温もある感じだから死んでる人って訳でもない。

もうそろそろマネも来るだろうけど、全部が全部説明する訳にもいかねぇな・・・・・
うーーーーん・・・困ったかも。
でも関わっちゃったし知らん顔も出来ない。

そういや仁の部屋で地震がどうたら言ってたなあ。
地震ならこっちでも数分前にあった事はあった。

さんは、その地震後か地震直後に現れたな・・・・
何か関係してそうじゃない?本当に関係してるかは分かんないけどさ。
大正時代にも大きい地震、あったんだな。

江戸の大火は知ってたけど大正はあんま覚えてないかも(
ちょっと気になったから調べてみようかなと亀梨は思っていた。

「とすると・・此処は遙か先の未来なんですね・・・この時代にも声楽はあるのでしょうか?」
「そうなるね、俺からしたらさんは完全に教科書の中の人ですよ・・声楽?あー・・・あるかも。専門の学校もあるし」
「教科書の中の?ふふ・・・確かにそうなるかもしれませんね。声楽の専門学校なんて・・とても素敵です・・・この時代の人に生まれてたら通ってみたかったです」
「音楽って言うか、歌が好きなの?さんは」
「はい。女学校でも専攻していたのですよ・・でも、先生にはよく怒られてました。」
「女学校・・・・今で言う女子高みたいな?ふーん?どうして怒られてたの?」
「じょしこう?あ、はい。その・・・目立ってしまうみたいで・・合唱の時はよく個性がありすぎる、と」

女学校とか言う所で歌を専攻してたんだって。
個性がありすぎて怒られるってのも、時代だからかなと思った。
今なら個性的な方が人目を惹くし、この業界だったら宣伝し易い長所になる。

折角だからその個性的な声が聞きたくなった。
ちょっと強引だけど、せがむ感じで俺はさんにお願いしてた。

興味本位だった事。
だがこれが後に大きく俺たちに関わってくるきっかけになったなんて
俺も仁も誰も思っていなかった。

だから俺は軽い気持ちでさんにリクエスト。
よくよく考えずに選曲したのは『GOLD』
ポケットに入ってたI Podから曲名を呼び出し、簡単な主旋律を口ずさみつつイヤホンを耳に入れてと指示。

「変な物じゃないから、聴いてみて」
「あ、はい・・・・・わっ!?凄い!この不思議な物から音楽が聴こえて来るんですね!」
「これも未来の産物、この歌俺達が歌ってるんだけど曲調は覚えやすいはずだから」
「日本語ではないんですね・・でも好きな曲調かもしれません・・・・」

最初は驚いてたさんだったけど、俺が先にイヤホンを耳に入れて見せたから真似して耳に入れてくれた。
今では珍しくもないI Podに子供のようにはしゃいで驚く姿は、少し幼く見えて可愛らしい。

・・・・・て、何だその感想は。
まあ一度聞いたくらいじゃ覚えないと思うけど、合わせて鼻歌にくらいなら出来るかもと思った。

フンフン、と曲に聞き入ってたさん。
少しずつ曲に慣れて来たのか、今にも音が音色になって彼女の口から溢れそう。
そして、その溢れた音に・・・俺は肌が粟立つのを感じた。

一度しか聴いてないはずなのに・・他人の歌を聴いて初めて鳥肌が立った瞬間だった。