目が覚めたら
夢である事を願った

非現実的な現状を、受け入れられなかった。

まさか 自分達がこんな目に遭うなど
予想なんて、してる訳がない。



第三章 未知との遭遇



土屋は突如背中に感じた冷たさに、目を開けた。
さっきまでは、教室にいただけあって
そのギャップに飛び起きずにはいられなかった。

起きてみて、更に驚く事になったけどさ。
俺に何をやれっての?悪戯??

背中に感じた冷たさからして、学校じゃないとは思ったけど
外かよ!しかも季節違くねぇ?
確か、俺達はそろそろ近づいた卒業に向けて
団結してきてたのにさ・・もう3月にはなってたはず。

「コレぜってぇ、春じゃねぇよ・・」

土屋の周りに広がる景色は、冬そのもの。
喋った時にも、自分の息が白くなった。
それもそのはず、起きて分かったけど周りは雪景色。

しかも何で川原なんだよ・・風邪引いちまうって。

顔を動かしてみれば、近い位置に倒れてる浩介を発見。
その奥には、同じく倒れてる隼人。
しかし、見つかったのは二人だけ
竜や・タケの姿はなかった。

まあ、浩介達と一緒だっただけでも不安はない。
流石にこのまま寝かしとくのは、マズイと気づき
土屋は二人を起こしにかかる。

「おい、浩介起きろよ」
「うーーん」

最初は一番近かった浩介から。
横向きになってる体の上になってる肩を揺らす。
すると、浩介は唸り声を上げたが
すぐには起きようとしない。

そこで軽い苛立ちを覚える。
蹴り飛ばしたいのを堪え、再度体を揺すってみた。
普通に起こしたい気持ちが伝わったのか、浩介が目を開けた。

「・・・つっちー、その格好・・仮装?」
「オマエも同じ格好してっから、まずは起きろ。」
「まだ眠いニャー」
「てめぇなぁ・・・」

人の格好を突っ込んだかと思えば
川原の雪の上で丸くなろうとする浩介。
苛々が蓄積されるつっちー。

「其処で寝たら凍死するぜ?」
「なあつっちー・・ソレ、突っ込んだ方がいい?乗ろっか?」
「どっちもすんな!いいから起きやがれ!」
「もう〜冷たいわねぇ、つっちーったら」
「ついでに其処の川で顔でも洗え」

ほーい・・って
言われた通り、立ち上がって水辺に来た浩介。
ふと我に返って、後ろの土屋に疑問をぶつける。

「ってか、何でこんなトコに川があるんだよ。」
「オマエ気づくのおそっ!」

振り向いて、マジに聞く浩介に
隼人の傍に向かおうとしてた土屋が、裏手突っ込みを入れる。
寝惚けんのもいい加減しろ、と内心ぼやく。
竜がいない今、俺がしっかりするしかねぇ・・と土屋は決意。

雪深い川原、今の格好をちゃんと見てはいないが
恐らく、川の水で顔を洗う浩介のように
大変着慣れない服を着ている事は確かだ。

雪の中を進み、浩介よりも長く眠りこけてる隼人へ近寄る。
うわぁ・・予想はしてたけど、隼人も同じ格好じゃん。
つーか・・・顔がいいだけあって、妙に違和感なく似合ってんな。
しばらく土屋は、起こすのも忘れてマジマジと隼人を見下ろした。

それからハッと気づき、浩介と同じように
体を揺らして、何度か名前を呼ぶ。
何度か荒々しく揺すっていると、綺麗な寝顔が歪み・・・

「何回も呼ばないでくだパイ!」

オマエ等がすぐ起きねぇからだろ!
この反応で、隼人は寝起きが悪いと一つ学んだ。

雪に塗れた髪を、指で掻いてから
隼人は正面にいるつっちーを見ると
其処からグッと端正な顔を近づけ、マジマジと見てから
突っ込み甲斐のあるコメントを口にした。

「何だよ、その格好・・・コスプレ?」
「仮装の次はコスプレかよ・・・言っとくけど俺だけじゃねぇからな?」
「は?・・・うわっ!マジだし!」

土屋を指し示して、バカにしたような顔をしてた隼人だが
冷ややかに土屋に指摘され、目が点になる。
それから、恐ろ恐ろ視線を下に下げ・・・
学ランじゃない物を目にして、隼人は吃驚した。

土屋の後ろから、浩介も現れまたその服装に目を見開く。
何だこの格好・・・時代劇の撮影??

つっちーの服は、武士が正装したような着物。
背の高い彼の背に、背丈程はある薙刀。
浩介は、僧兵ちっくな着物。
同じく背中に背負ってるは、角棒。

自分はと言うと、大きな襟のある上衣を羽織り
その袖は結構長く、中に着てる着物も二枚は着てた。
上衣は太腿の辺りまであり、下には袴。

上衣の内、袴のある腰元には変な武器。
説明しづらいってのは・・こうゆうのを言うんだろうな。

「それよかさ、竜達は此処にはいねぇみてぇなんよ。」
「マジかよ、俺達みてぇに一緒にいりゃいいけどな」
「だよな〜何かは具合悪そうだったしさ。」

苦しみだした、何かの声がするとは言ってたけど
まさか・・その声が聞こえた世界に来ちまったとか?
うわぁそれかなり洒落になんねぇ・・
ともかく、アイツが一人じゃなけりゃいいけど。

この時隼人は、何で男のをそこまで心配してる自分が
分からなかった。

「てかさ、ココ何処なん。」
「俺に聞くなっつーの」
「東京じゃあなさそうじゃねぇ?」

沈黙が流れた後、ふと浩介が隼人に尋ねる。
最後まで寝てた自分に聞くな、と冷たく言った隼人。
東京じゃあなさそうじゃねぇ?と口にしたつっちー。
言われてみればその通り、都会には絶対にない風景だ。

のどかな田舎の土地にでも来たかのよう。
最初は映画村かと思ってた。
こんなセットとか、着物くらいならありそうだし。

でもこの風景はセットだけじゃ無理。
広すぎですから〜!!

なんて突っ込みを入れてる場合じゃない。
このままココにいても、飢え死にするだけだ。
誰か人に会えないだろうか。
思ったら即行動に移す隼人。

自然に土屋と浩介も後を追う、何だかんだ言ってもやはり頭。
カリスマ性とゆうか・・従わせる何か?
ついて行かせる何かを、隼人は持っている。

川原の上には土手が見えた。
まずは其処へ向かってみる事にし、雪の積もった所を歩いてると・・

「おい、そこの奴等!」
「は?」
凄いデカイ声で、隼人達は呼び止められた。
振り向いた先には、2・3人の人影。

近づいて来る姿に、何回目か分からない驚きをさせられた。
完全なコスプレ!?つーか、鎧まで着てんのかよ!by隼人
どっかで撮影とかしてんの??byつっちー
変なトコ来ちまった!by浩介
それぞれの反応で、近づいて来る者達を見た。

「服装は我々と同じだが、見かけない顔だな?」
「まさか源氏の間者か?」

それとも、木曾の兵か?などと来るなり聞かれた。
全く聞き覚えのない問いかけに、3人の眉が寄る。
分かるように説明しろよ(怒)。

今この場に、竜とがいない事を悔やんだ。
あの2人なら、自分達よりも難しい事を知ってる。
何にも言い返せなくて、隼人達は気まずそうに黙るしかなかった。
詰め寄る男達の後ろに立つ、一人の青年。

冷静な目で、問いただされてる3人を観察。
確かに服装はこの場に相応しい、が見ない顔なのも確か。
それにしても・・・雰囲気がこの時代の奴等とは違うな。

青年の切れ長な目は、3人の足元へ・・・
履物を見た事で、芽生えた予感は的中した。

「オマエ達、ココが何処か分かるか?」

今まで黙ってた第三者からの問い。
詰め寄る男達の後ろにいる事からして、上の立場にいるんだろう。
ウルフカットの髪は青、左耳には紅いピアスと上の方に青い石。
隼人と似たような上衣の下には、鎧。

歳は自分達より、少し上な感じを受けた。
兵の男達とは違った問いかけ、ちょっと安堵を覚えた隼人達。

「いや・・さっきまでは、映画村かと思ってた。」
「あ〜あの映画村か、言われてみればそれっぽいよな。」
「え?知ってんの??」
「貴様等!口の利き方に気をつけろ!」

ポツリと指で下唇を触りながら呟いた隼人。
それに対して、この青年はなるほど納得して答えた。
似たような反応に、身を乗り出した浩介へ兵達が厳重注意。

年上だから敬語使えっての?と睨みを利かせる。
不機嫌そうな顔に、たじろぐ兵士の男。

青い髪をした青年は、その兵士へ構わねぇよと言うと
再び隼人達に向き直って、サラッとこんな事を言った。
これぞ正しく・・・未知との遭遇。

「此処はな、京の福原だ。」

え〜〜〜〜!?と驚いてはみたが、誰も聞き覚えのない名だった。
隼人達の行く末に、少しばかり暗雲が立ち込めた。