壬生狼



また1つの処断を終えた。

血まみれになりながら仕事をこなす。
毎日行われる変わり映えしない日々を送る毎日。

幕府から課された極秘の研究、変若水と言う名の薬は
人間を血に飢えた化け物へと変えた。
実験と言う名の下に薬を口にした隊士達は日に日に暴走し

日夜その者たち(失敗作)の処断に明け暮れている。
昨日も今日も、明日も・・・・繰り返される処断と言う名の殺戮。

そんな毎日に、変化は突然起こる。


今日は久しぶりの休日。
なのにだよ?誰にも邪魔されずにのんびり出来ると思ったのに
この状況・・・・どうしてくれるのさ

時間は夕刻。
休日のはずなのに、僕は京の町中を歩かされてる。

右側に左之さん、その隣に新八さんで・・左側には平助君。
むっさいなあ・・・折角非番なのに

「どうして僕まで付き合わされてるのさ」
「どうしてだとか言うのはどの口だ総司!」
「えー・・この口?」
「大体原因は総司だろぉ!土方さんの発句集盗み見てどやされて」
「そうだそうだ、俺達は巻き込まれたんだよ」

思わず口を吐いて出た不満に、すぐさま左右からツッコミが入る。
確かに追いかけまわされたけど、近藤さんのお皿割ったのは平助君でしょうに
刀を鞘ごと振り回して追いかけて来た土方さんから

絶妙なタイミングで避けてたのに、偶々来た部屋が近藤さんの部屋でさー
僕が避けた先にどうしてか新八さん達がいて
不運にもお皿を眺めてた平助君に鞘がヒットしちゃってさ、で、割れちゃった訳。

平助君にあてたのは土方さんなのに、どうしてか僕が新八さん達とお皿とか買いに行く羽目に。
けどこれが・・・全ての始まりだったんだ。


◇◇◇



「夜からお客様がいらっしゃいますからね」


馴染みの取り引き先に向かう私に、女将さんに言われた。
自分が取り引き先に向かわされる意味は分からないが
久しぶりに出られる外は新鮮で、嬉しいものだった。

取り引き先は漆器屋。
女郎屋とはいえ、食事は出る。

その食事で使っている漆器を買っている店が
今向かっている漆器屋なのである。

歩き難い外出用の着物。
何とか捌いて歩く先に、それは待ち受けていた。