May.act3
「なんで謝るんです?」
「俺から来といて仕事の電話ばかりだし」
「代表ですし仕方ないですよ」
「はぁ、何か電話に邪魔されてる気分」
急な変化球に弱く、つい低姿勢になる
電話に邪魔されてるとか言ってる岩本さん。
どういう意味なんだろうとなんだかマジマジと見てしまった。
溜息と共に洩らした岩本は、徐にiPhoneを取り出すと音量+と右側のボタンを同時押し。
「あ・・・、良いんですか電源・・・」
「ん、一緒に居る間はちゃんだけに集中したいから」
またトンデモ発言してるよ・・・?
「・・・はあ、ありがとうございます?」
「何で最後に"?"付けるの(笑)」
「ごめんなさい正直者なんです私」
「返しが面白いって言われない?」
「言われませんね」
「まあ俺だけの発見にしとこ」
ホントになんなの??岩本さん?
さっきまで真面目な顔してたのに今は人の反応見て凄い笑ってるし・・・
切り替えが早いのか緩急の差があるのか
私には全く分からん!
流されまいと思ってるのにペースを乱される
その事を不快に感じるから私はまだ正常。
と自分に中にボーダーラインを設けた時
「ほら着いたよ」
そんな声に現実へ引き戻された。
横を見れば優しく見ている岩本さん。
それから外へ目を向けて見えたのは
見た感じショッピングモール?
「ここですか?」
「そ、この中にあるフードコート」
「・・・なんか意外ですね」
「高級な店とか想像した?(笑)」
想像しましたと答えればまたも笑われる
そんな面白い事言ってないんだけどな?
いや、バカにされてるのかも?
まあ別に良いや、今日限りだし。
何て考えながらシートベルトを外した。
一足先に降りた岩本さんがまた回り込み
助手席のドアを開けに来るのは察知した。
別にそういう事をされたい訳じゃないから
岩本さんがドアを開ける前に自分で開けた。
タッチの差でドアを開け損ねた岩本は目を見張る。
「・・・ちゃんてなんか」
「可愛くないとかは言われますよ」
何かを言いかけた岩本に対し素早く切り返す。
あまり弄られる事に慣れてないから回避したかった。
だが岩本にはそれすら面白く感じ
やっぱ新鮮で良いなと内心で感じていた。
言ったら間違いなく否定するし、意外そうな疑惑の目で自分を見るだろう。
その反応がまた初めてで興味を掻き立てた。
こう動いたらどんな反応をするんだろう、と
「なんでもない、そいじゃ行こうか」
「言いかけて止めるとか気になりますね」
「じゃあ俺が自分から言いたくなるように誘惑してみる?」
歩き出した岩本さんが何を言おうとしたのか
純粋に気になったから言ってみたのに
楽しげに足を止め、目を細める岩本さん。
もうさ、危険な香りしかしないよね。
「・・・火遊びに興味無いので」
危険シグナルを感じ、ふいっと目を逸らす。
そしたらまた岩本さんに笑われた。
もう好きに笑うがいい。
「なんか良いねちゃんは」
「何がです?」
「一緒に居て気が楽」
「・・・私相手に営業ですか?」
ははっ、と岩本は笑い目を細め
自然な流れでの頭を撫でた。
その撫で方があまりにも自然で優しくて
少しだけ、その横顔を見つめてしまった。
その後岩本さんに案内されたフードコート
そこは甘味が評判のお店で、プリンとか
お団子やら抹茶アイスやらが並んでいた。
え?
「分かってるから笑うな」
「ごめんなさい、だって岩本さんと甘味」
「合わないって言いたいんだろ?」
意外すぎて笑ってしまった。
タピオカは付き合いで来たと思ってただけに
こうして甘味処に案内した事が甘味好きだと証明してるみたいで何か微笑ましい(笑)
絶対言ってあげないけどね(・∀・)
「好きな物を否定して笑う権利は誰にもないですし、岩本さんお勧めのお店に連れてきて頂いただけでも光栄ですよ」
岩本さんお勧めの甘味はどれですか??
と話を変える。
一瞬面食らった後、岩本はお勧めを示した。
示されたのはプリンとクレープ。
正直甘味は得意じゃなかったはプリンを選ぶ。
「今日付き合ってくれたお礼とiPhoneのお礼ね」
そう説明し、会計を済ましに行く岩本さん
無邪気なその笑みが記憶に強く刻まれた。
May.終わり