マシュマロ
誰もいない放課後の教室。
俺はそんな中、と一緒に隼人達を待っていた。
放課後は、いつもおなじみのメンバーで遊ぶのが定番。
隼人達は偶々ヤンクミに用事を頼まれていない。
俺にとってこの上ないくらいラッキー。
その理由は恥ずかしいから言えないけど。
俺は今ね、の前の席に後ろ向きで座ってる。
の顔が良く見える位置にね。
横顔がさ、とっても綺麗なんだ。
見てるだけでも、幸せになれちゃう。
今は俺だけだし 邪魔者は誰もいない。
教室で2人っきりだと、すっごく緊張するなぁ〜
って元は女の子だから、細い肩とか・・柔らかそうな唇とか・・・
ヤバイヤバイ!駄目だって俺!
椅子の背もたれにお腹をくっつけた状態で、一人焦るタケ。
正面を向いてるはずのも、ブンブン首を振るタケに気づき
小さく笑ってから、とんでもない発言を
ただでさえ動揺してるタケに言った。
「一人で何赤くなってんだ?」
「べっ・・・別に?何でもないって。」
「まさか、変な事考えてたのか?」
ドッキーン!
的を射たの問いに、勝手に心臓が跳ねる。
落ち着けタケ!は女の子だけど、早まるな〜!
一人葛藤する俺に、更にはとんでもない発言。
この言葉で、すっごく焦る事になる。
どんなって?男としてとか、油断し過ぎとか色々。
「てゆうかさ、隼人って何であんなに手が早いの?」
「は?・・・え?まさか何かされたの!?」
あまりにもサラッと言うもんだから、言われた俺の方が焦った。
ガタッと椅子から立って、を見下ろすように問えば
唖然とした顔をされ、数分後には笑われた。
話の飲み込めてない俺は、疑問符を頭の上に乗せる。
首を傾げて、不思議そうに自分を見る俺に
は明るく笑いながら、違う違うと俺に向け手を振って
実に楽しそうに言った。
「手が早いってのは、喧嘩の事だよ。」
「はぁ?・・・良かった、そっちか。」
「・・・そっちかって、何考えたんだよ。」
「え?隼人って、喧嘩の手も早いけど女の子にも早いからさ。」
何だか余裕そうな、の反応。
まるっきり弟に接するような態度に、ムッとなる。
ここは男らしいトコも見せなきゃ!
涙なんか流して笑う姿を見てるうちに、密かに決意。
俺は椅子に座り直ると、真っ直ぐを見て言った。
「もし隼人がに何かしそうになっても、俺が守るから。」
大きな目で、真っ直ぐに見て言った俺。
の些細な変化さえも、見逃さないように。
でもさ、こんな弟みたいな立場も嫌じゃないんだよな〜
から色々話してくれたりするし、スキンシップも平気で出来る。
てゆうか、よくよく考えれば『平気で出来る』ってのがマズイ。
その時点で、男として見られてないじゃん!
よし!今しかないよな。
再度を見ると、反応は満更失敗って訳でもなさそう。
なんか決定打になる言葉を言うぞ!
「ホントに気をつけてね?は隙とか油断が多いからさ。」
「マジ?俺ってそう見える?」
「見える!今だってそうだよ?教室には俺達だけ・・」
「そうだな〜でも、タケはそんな事しないよな。」
「〜〜っ!」
のこの言葉が、俺の中で弾けてタガを外した。
そのままで見られてるのは、我慢出来なかったから。
机に両手を着き、前屈みになりながら言葉を発した。
「俺だって男だよ?もっと意識してよ・・・」
「タケ?」
気持ちも頭も、全てがこんがらがった。
自分が何に対して、こんなに苛々してるのか
に何を言ってるのかも、分からないけど
一つだけ分かるのは、に意識してもらいたいって感情だけ。
その先の行為は、自分でも笑っちゃう程 隼人に似てたかも。
前屈みの姿勢をキープして、自分の方を見たに顔を近づけ
本能の命じるままに、の半開きの唇に
自分の唇をゆっくりと、けれど軽く 重ねた。
開いてた窓から、春先の風が入ってくる。
さわさわとした温かい風が、自分との髪を靡かせた。
時間が止まったかのような、ゆっくりと流れる時。
唇を重ねてた時間は短いけど、行動で示すには十分だった。
自分から顔を離し、目を開ければ目の前には
の凄く驚いた顔。
きっと予想外だったのかもね。
そうだったら、俺としてはしてやったり♪
好きな子と2人きりで、なんてシチュエーション。
そんな状況にいたら、触れたくなっちゃうんだ。
キスしたのだって、したかったから。
でもそれで、が傷ついたとしたら謝るかな・・
好きって気持ちと、弟扱いに我慢出来なかったんだ。
「ね?気をつけてね、俺達は男なんだからさ。」
いつだって、君に触れたいと願ってる。
その柔らかい髪に、指を絡めて・・・・
マシュマロみたいな柔らかい君の唇。
指で触れて、ナゾッて・・自分の唇で塞ぎたくなる。
そんな事をしたら、は怒る?
でもね、コレも俺なんだよ?
を好きだから、だからそう思っちゃうんだ。
「油断してると、奪われちゃうよ?俺がさせないけどね♪」
そう言って、俺の唇を奪った小悪魔は可愛く笑った。
奪われたのに、どうしてかショックじゃないのは
彼の可愛いさのせいだろうか?
許せてしまいそうな自分が、そこにはいた。
いつまでも、弟みたいって訳には行かないかな・・・。
隼人達を呼びに出たタケ、その顔はとても満足そうだ。
反面、残されたは 知らずうちに頬が赤く染まっていた。
この日を境に、タケを一人の男の子として意識するようになる。