守るべきもの4
💛「――お前、本気で言ってる?」
数分の間の後、一番に我を取り戻したのは照。
この場の全員が思った事をストレートにへ問うた。
しかし性質が悪い事に厳しめな聞かれ方をされたがへこたれていないのだ。
目が本気(マジ)なんだけど?
一抹の不安を覚えた兄5人+加入組。
心配そうな顔の兄と、お前何言ってんの組からの視線を受け
は提案した理由を大まかに説明した。
🌕「大丈夫、無策で言った訳じゃないからさ」
💛「そうは言っても相手はストーカー女子だろ?」
💙「だよな、それこそに危害加えるんじゃね?」
♥「凄く危ない役目だよ?ちゃんと分かってる?」
🌕「うん、大丈夫だから俺の事信じて欲しい」
🧡「そうは言うても心配やなあ・・照にぃどう思う?」
💛「んー・・・他に打開案が無いしの提案に乗るしかねぇけどホントに大丈夫なんだな?」
信じて欲しい、の言葉に目黒に対して懐疑的になっていた自分の事を言われた気がした深澤。
でもそう感じてしまう理由も自分の中で噛み砕けた。
俺が感じた懐疑的意見も阿部ちゃんが肯定してくれたからひねずに済んだなー・・
など感じながら康二と照のやり取りを眺める。
照の懸念も分かるし舘さんの心配する気持ちも分かるからこそ
言い出した本人の覚悟を信じるしかない。
となれば最年長、長男として言うべき事は1つだ。
💜「俺らが手伝える事は?」
💛「おいふっか、良いのかよ」
を信じるからこそ出た言葉だった。
心配性な照が噛みついて来るのを視線でいなす。
俺がそう言う事に対しも驚いた目で此方を見ていた。
多分つい数分前のケンカ腰なやり取りをしたはずの俺が賛同した事に驚いたんだと思う。
取り敢えず仲直りする一番の近道はを信じる事だと思った訳よ。
他の兄弟と加入組も、最年長の深澤が賛同した事により
反対意見はあまり出なかった。
まさか深澤がと仲直りしたいが為に賛同したとは露ほどにも思っていないだろう。
唯一人事情を知る阿部だけは後ろの方で笑いをこらえていた。
方向性が決まってからはとことん話し合いを詰めて行く。
先ずはどうストーカー女子を誘き出すか。
🖤「その役目は俺がやります、皆に迷惑かけたからにはやらせて下さい」
この議題に一番手で名乗り出たのは被害者側の目黒。
まあターゲットが目黒だからそれが一番手っ取り早い。
しかしなあ・・・目黒だけを危険な目に曝すのは本意ではない。
何やかんや責めてしまうところもあったが、それはそれこれはこれである。
何より重要なのは目黒ももう俺達兄弟と同等で、
康二もラウールも同じ、守るべき存在なのだ。
🌕「蓮くんは1人じゃなくて俺と一緒に誘き出そう?」
🖤「お前・・」
🌕「もう相手の子は俺の事も覚えて狙って来ると思うんだ」
それに、一緒じゃないと守れない。
そう強い意思の宿る眼差しで目黒の意見に賛同したのは末っ子。
またも反論は許さない的な強い目をしていた。
一緒じゃないと守れない、て言葉も気になる傍ら
佐久間よりも小柄で小さなが、
どんな方法で目黒を守るのかが不透明過ぎて今一頼りなく見える。
しかし本人は自信満々で迷いが無い。
それにもう自分達は彼()の案に乗ったのだ。
後はもう2人を守る為に協力をする外ない。
💛「分かった、それなら誘き出す役は目黒とでいこう」
という訳で囮役、もとい、誘き出す役は決まった。
それからの変装についてだが、女装する服は養父母の家から持って来るとの事。
兄達にはそう説明したが実はクローゼットの奥に何着か持って来てある。
数少ない友人と夏祭りに行ったりした時(12ヶ月if7月の物語にて)
彼女から古着を何着か貰ったりしたので種類は豊富だ。
後は決行日と仕掛ける場所等を話し合う。
なるべく人を巻き込まない路地とか、人通りが少ない方が好ましい。
と考えているメンバーが殆どだったが反対する意見も出た。
逆にある程度通行人が行きかってる方が良い、と。
その理由は、自分達当事者以外の目撃者が必要だから。
警察というのは当事者と関係が近いものの意見は参考にしない。
ならば全く関わりの無い第三者の目がある方が後々役に立つ。
それらを言ったのは勿論末っ子の。
しっかし頭が切れるなあ、と皆が羨望の眼差しでを見つめた。
つまりそれだけ真剣に目黒の事を考え、守ろうとしてるんだなあ・・
ちょっと妬いちゃうな兄ちゃんbyふっか
🖤「頼もしいなお前、凄いよ。」
🌕「そんな事ないよ俺がこうしてられるの兄さんと皆が居るからだもん」
♥「可愛い」
💗「国王真顔の『可愛い』頂きましたアアアア」
💜「佐久間は急に叫ぶなようっさい(笑)」
まあ場が和んだ(?)ところで話し合いも大体まとまった。
実行役は目黒とで、サポートが岩本に宮舘。
深澤と佐久間は通行人のフリをし、なべラウは通報役。
阿部はブレーンとして指示出しをこなす。
残りの康二は証拠とになる場面があれば写真に撮る役。
計画はあくまでも机上の空論、肝心なのは実行する方だ。
どんなに綿密な計画を練っても、実践してみなきゃ分からない。
ミスも出るかもしれないから万全の状態で挑まねば。
万事を尽くしたら天命を待つのみ。
恐らく今回のキーマンはだろう。
心配でしかないが信頼はしている。
もしにも危害が及ぶようなら岩本と宮舘がすぐ動くだろう。
その為のサポート役であり、ふかさくの通行人役もである。
🌕「上手く取り押さえられたタイミングで警察に来て貰うのが理想的です」
💛「そうだな、お前のその細腕じゃ10分ともたんかもしんないし」
🌕「ははは・・(まあ関節技入れればもつかもだけど相手女の子だしなあ)」
🧡「やんなあ」
💙「じゃあ通報するタイミングはストーカー女子が仕掛けて来た直後?」
🌕「うん、そうして貰おう、写真とかはその間に撮れそうなら撮って貰う」
🧡「よっしゃやったるでー」
心配でしかないが信頼はしている。
もしにも危害が及ぶようなら岩本と宮舘がすぐ動くだろう。
その為のサポート役であり、ふかさくの通行人役もである。
深刻になりがちな空気の中、明るく声を出す康二。
照からのツッコミを苦笑いで受け流したを見た目黒は
何となくだがは隠してる事がある感じを受けた。
それは何なのかを聞かれるとこれですとは言い切れない。
ただ本能的にそう感じ取った。
やる事が決まり、話し合いは一旦区切ると
未成年のラウールはそろそろ帰さなくては、という流れになる。
マネージャーに電話するには遅いので誰かが送る事になり、
珍しくその役を翔太が引き受け、
ラウールと康二を促し、車回して来ると言って外へ出て行った。
🤍「目黒くん、また明日ね!」
🖤「おう、ラウールも遅くまでありがとな」
🤍「ううん、だって俺達メンバーで仲間でしょ?当たり前じゃん」
🧡「俺かてラウールと同じ気持ちやで!皆ついとるし絶対捕まえたるわ!」
🖤「康二くんもありがとう」
*まだ加入組の呼び方が初々しい頃です。
翔太を待つ間、そんな言葉を交わし合う。
初めてこの2人の存在が頼もしく感じ、支えになった。
そして夜が更ける頃、素能家の夕食の時間が近づく。
一応このシェアハウスには表札が掛かり、
其処に書かれてる名前は『素能』まんまグループ名。
誰が決めた訳でも無いが、照達が住む時からこのままである。
ハウス名は養父の命名、姓も予め決められていた。
特に疑問に思った事はない、養父母が決めたのかと思ってたから。
だから勿論養父母に聞いた事も無いし、
無意識に受け入れていた。
♥「夕食が出来たら呼ぶから、好きに過ごすと良いよ」
ぼんやりとリビングのソファーに座っている俺に掛かる声。
あ、と気づいて見ればエプロン姿の舘さんが居た。
めちゃくちゃオフの姿を見てる気がして、まじまじと見てしまう。
過去にエプロン姿は見た事があったが
仕事以外のプライベートで見るのは今が初。
エプロンもメンカラなんだなあと変な所に感心してしまった。
🖤「はい、ありがとうございます・・」
♥「気が進まない?それとも申し訳ないとか思ってる?」
いつの間にか俺の隣に腰かけた舘さんが口にした言葉に
図星を突かれた気がして分かり易く反応してしまった。
メンバーは俺の事も守るべき仲間だと言ってくれたけど
自分の浅はかな考えのせいでこの事態を招いてしまったのに
の事も危険に晒して・・もっと怒ったっていいのに皆は許してくれた。
🖤「少しだけ、思ってました」
穏やかな眼差しで見て来る舘さんの表情があまりにも優しくて
黙っていようと思ってたのに気づいたら言葉にしてた。
一度言葉にしてしまうとそこからは早くて、
舘さんと俺しかいないこの空間の心地よさから
つらつらと胸の内を吐露していた。
ストーカーに対する考えの甘さと、
の事を勘違いされてると分かりながら
決定打欲しさに急ぎ、何も知らないに引き金を引かせてしまった事。
岩本くんは庇ってくれたけど、ふっかさんは明らかに疑念を向けていた。
でもそれは大事なを利用されたと思っていたからで、
長男でもあるふっかさんからすれば当然の反応だと思う。
🖤「皆の事もの事も信頼してます、
でも・・だからこそ巻き込んでしまった気がして
俺のせいで皆まで危ない目に遭わせる事になっちゃったなあと・・・」
あの頃の俺は、1人で解決出来る気でいた。
ストーカーとは言え1人の人間同士だから、
ちゃんと言葉でダメな事はダメって言ったら分かってくれると思ってた。
実際それ以降姿も見せなくなったし、
メールも手紙も止んだから、分かってくれたんだとばかり・・
🖤「俺バカだから・・言葉で言ったら分かって貰えると思ってたんです」
♥「目黒は真っ直ぐだからね、そういうとこ、俺も含めた皆も尊敬してるし好きだよ」
🖤「・・扱い難いとか、暑苦しいヤツとかはよく言われます(笑)」
♥「良いじゃない、そのくらい真摯に取り組んでるって事でしょ?」
🖤「そう、なんすかね・・・?」
♥「少なくとも皆そう思ってるよ、目黒の1本筋通ってる所凄く良いと思う」
等と、隣で静かに話を聞いてくれてた舘さんは笑った。
そんな風に言って貰えるのが凄く嬉しくて、少しだけ泣きそうになった。
呆れられる事は多くても、肯定される機会は少なかったから。
悪い所も良い所を見つけるだけじゃなくそれで良いんじゃない?と受け入れてくれる9人。
改めて自分は運が良い人間だと感じた。
懐広く自分の事を包み込んでくれた舘さんの事を
この日以降俺は強く慕って行く事になる。
先輩としても、共に歩む仲間としても。
🖤「舘さん、聞いてくれてありがとうございました」
♥「目黒、大丈夫だから」
🖤「え・・?」
♥「俺らが居るよ、間違ったら連れ戻すから目黒は目黒らしく、ね」
🖤「・・・っ、はい」
恥ずかしがる素振りすらなく服の袖で滲んだ涙を拭う目黒。
真っ直ぐで正直な姿はとても好感が持てた。
ポンポン、と優しく目黒の肩を叩き
いつの間にか持って来たコーヒーのカップを出した。
気づいた目黒が礼を言い、
宮舘は上品に微笑み返すとその場を離れつつ声を掛けた。
それ飲んで落ち着いたら客間を見て来ると良いよ、と。
そういやあ俺らが準備したんだった、と気づく4兄弟。
実はリビングに続くガラス戸と壁の陰に隠れて2人の事を見てたんだよね。
誰が見ても気落ちしてるのが分かったし、
同じメンバー同士とはいえ、俺らの方が先輩。
でも仲間を思う気持ちはあるし心配だったから声かけようかなー
なんて考えてるうちに俺以外の面子が背後に揃ってた。
4人とも同じ事考えてるのは顔見て分かってたから全員で行ってみよう
ってなって、康二達を送って帰って来たなべも合流し
リビングに行こうってなったまさにその時、
夕飯の支度するから残ってた舘さんが動いてくれた。
いつも口数が少ない舘さんがだよ?いやあ吃驚したよね、わら。
俺らの出番無かったかな?とこっそり聞き耳立てつつ笑い合った。