守るべきもの3
3.3.4に分かれての撮影から2人ずつに変更になった際、それは起きた。
何処からか投げ込まれた水風船が、目黒に直撃した事件。
この事が起きて初めて目黒は他のメンバーにもストーカー被害に遭っている事を打ち明けた。
撮影は無事終えてからグループLINEでのやり取りで大まかな話をし
が提案した通りに目黒も彼らと同じシェアハウスへ帰る移動車に乗った。
被害を打ち明けた瞬間のメンバーの反応は凄かった。
多分帰ったらこってり絞られるだろう。
何で黙ってたんだ、的な事を言われると思う。
一応移動車に乗る際も素早く目黒を乗せ、座席も補助席に座らせた。
万が一外から覗かれても見え難いようにとの達の配慮。
窓側に照が座り、その反対側の窓側にという目黒サンドな構図だ。
シェアハウスに向かうまでの道中は静かで、雑踏やエンジン音のみが響く。
そんな中1つ気になった事、というか〇〇が言い掛けてた言葉の先を訊ねた。
が何か言おうとしたまさにその直後に水風船投げ込み事件が起きたから聞きそびれていたのだ。
🖤「あの時何か閃いたって言ってなかった?あれ何だったの」
🌕「あの時・・?ああ、目黒が俺を庇ってくれる直前のやつね、この際だから皆の前で言うよ」
🖤「そっか、ごめんな俺遮っちゃって」
🌕「謝るような事じゃないよ、遮ってくれなきゃ俺に当たってただろうし」
🖤「・・・・うん」
ていう会話を右横で聞いてた照はふと気づいた。
の言い方だとつまりは、水風船は元々を目掛けて投げられた事になる。
それに気づいた目黒がを庇った。
けど何でストーカー女子は目黒じゃなくを狙ったのか。
今回の行動に至った理由、それは間違いなく目黒の彼女が居る発言にある。
その事とを狙った水風船・・・そういや駆けつけた時目黒はカツラ持ってたな?
彼女が居る+カツラ+=を狙った理由。
この図式が頭の中で完成した瞬間、照は口を開いていた。
💛「目黒お前、ストーカー女子が勘違いしてるの気づいてた?」
グイッと右側からには見えない死角側の襟首を掴み
自分の方に引くようにして目黒の耳元近く、低い声で照は問い掛けた。
瞬間ドキッと心臓が跳ねる目黒。
完全に違うとは否定し切れない所を突かれた感じだ。
目だけ動かして隣に座る照を見やる。
合わさった視線、まるでカチリと音がしそうなくらい
ブレずに真っ直ぐ目黒へと注がれていた。
ここで頷けば間違いなく殴り飛ばされる――
そう思わせるくらいの迫力と覇気めいたものを照から感じ取る目黒。
違うよと答える事も出来たが、メンバーである以上嘘はつきたくない。
数分の葛藤の後、意を決し正直に答えを出した。
🖤「――・・タイミングとのヘアスタイル諸々を見て、勘違いしただろなってのは・・・」
💛「うん」
🖤「だったらストーカー行為を残せれば解決の糸口になるかもって・・・」
💛「なるほどな、けどは何も分からずに引き金を引かされた訳か」
正直に話す傍ら照に襟首の服を掴まれたままだった。
話し方は穏やかだが、声音は少し冷たく厳しい。
彼ら6人が何よりも大事にしている末っ子を利用されたのだ・・恐らく怒りを感じているはず。
目黒自身も利用した感が否めず、後日お詫びをしようかなとは考えていたが
淡々と話す照の言葉がじわじわと追い込んで来るようにも感じられた。
そうこうしてる間に移動車はシェアハウスへ到着。
目黒にとっては2度目のシェアハウスだ。
1度目は滝沢に見舞い用の荷物を届けに阿部と訪ねた時。
あの時はワクワクしていたが今は別の緊張感に満ちている。
多分厳しく問い詰められたりする気がする・・・
は暫く居れば良いよと言ってくれたが他のメンバーはどう思ってるんだろう。
車が停車した時には襟首を掴んでいた照の手は離れていた。
💜「それじゃあ中入ったら詳しい話とからの提案聞こう」
🌕「うん!」
💚「目黒は此処2回目だね、久しぶりに来た感想はどう?」
🖤「あっえっとそうっすね・・ちょっと緊張してる」
💙「目黒が緊張とか意外だな」
💗「確かにー」
🖤「俺だって緊張くらいしますよ(笑)」
💛「取り敢えず中行くぞ」
🖤「うす」
と言う訳で移動車を降り、ドライバーへ挨拶してから玄関へ向かう10人。
今日だけ訪ねる中には初めて訪問する康二とラウールも居る。
が考えた提案を説明する為には全員居た方が都合がいいのだ。
何よりメンバーは家族のようなものだから聞く権利がある。
時刻はまだ夕方、メンバーには未成年のラウールとが居る為
どんなに長引いても22時にはお開きにするつもりだ。
無邪気なラウールが興奮気味にシェアハウスを眺めて何か言っている。
生憎と目黒だけはそんな気分に浸れそうになかった。
今こんな風な事態になってるのは、自分の発言が招いた結果。
を巻き込み、危険な目に遭わせ
結果メンバー全員を巻き込んでの話し合いにまで発展。
中学の頃も色々とあったが、今回はそれ以上のものだと感じる。
玄関の鍵を開けメンバーが中へと入って行く。
申し訳なさを感じながら目黒も中へ入り、扉を閉めた。
💜「お前らはリビングに集合な、俺はちょっと目黒の部屋作って来る」
🌕「ふっかさん俺も手伝おうか??」
💜「あー、そうだな手伝ってくれる?」
🌕「勿論!」
💛「そしたら康二とラウールに目黒とかは阿部とリビングで待っててな」
❤「俺らは荷物だけ置いて来るよ」
🧡🤍「はーい!」
家に上がるなり目黒の為の個室準備に向かう深澤に気づき
手伝いを申し出たを連れ、1階左奥へ行く2人を見送り
残った加入組をリビングに招くと照は阿部に監督を任した。
元気な返事を聞いてから阿部の荷物を代わりに預かると
照も個室へ荷物を置きにリビングを離れた。
残った阿部は加入組3人に座るよう勧めてからキッチンへ。
飲み物でも用意しようかなと思い、冷蔵庫を開けたりなんだりを開始する。
その頃目黒の個室を作る組は・・
💜「そういや昼間の撮影、大丈夫だったん?」
🌕「昼間?あー、投げ付けられた時の事ですね?」
結局目黒が泊まる部屋は1Fの水回り部屋の左隣。
そこは兄弟らが自分達の気に入ってる物や趣味の物を持ち寄り
1つの空間として造られた部屋になっている。
佐久間の嫁も何体か飾られており
その辺に疎い兄弟かすると移動させる対象にし易い(
現に深澤が迷わず手に持ったのが佐久間の嫁フィギュア。
これらは8畳から6畳半の趣味の部屋へ移す。
そう、ここには趣味の部屋と題された部屋が2つあるのだ。
いざとなれば物置部屋に全て片付け、個室を2つ用意する事も出来る。
なんたって1つ1つの部屋がアホみたいに広い。
ふっかの顔みたいに、とか言ったら怒られそう(笑)
それはさて置き、も片づけを手伝いつつ深澤の問いに答えた。
恐らく口伝に聞いただけだったから詳しい状況込みで気になったのだろう。
💜「うん、水風船とはいえ吃驚しただろ?」
🌕「そうですねぇ・・でもホント、蓮くんが気づいてくれたから無傷です!」
💜「確かにそれは大感謝だわ、でも何でお前を狙ったんだろな」
🌕「俺がウイッグ被ってたからじゃないかなー・・・」
💜「ああなるほど、けどそれだけで水風船投げ込むか?」
いやまあ確かに深澤の疑問は最もだ。
ただウイッグ被ってるだけじゃ服装は男の子だったし・・投げ込まない、よね?
でもさ?そうなると思い当たる節があるのよ。
ストーカー女子の怒りに油を注いだトリガーが何だったのかが。
🌕「・・・・うん」
💜「思い当たることあるな?その顔は、言ってみ?」
深澤に鋭く指摘され促されるが、すぐには言えなかった。
これ言ったら蓮くんが非難されてしまう。
ストーカー女子が行動した理由・・・それはまさに直前の蓮くんの行動にあった。
トリガーを与えたのは蓮くんだと、思う。
私の肩を引き寄せ密着する事でストーカー女子に私を彼女だと思い込ませた。
そうする事できっかけを与え、ストーカー女子は行動に出たんだろう。
私自身利用されたなんて感じないけど・・
兄達は違うふうに捉えてしまうかもしれない。
どう話したら蓮くんが非難されずに済むのか・・・
🌕「多分・・ストーカー行為を残そうと考えたんだと思う」
💜「・・・うん?」
🌕「丁度撮影してたし、カメラマンさんが残してくれるって信じてそうしたんだと思う」
💜「?え?ちょっと俺にも分かるように説明して」
そんな思いから焦ってしまい、気持ちが先走った。
端的なの言葉に理解が追いつかず戸惑う深澤。
🌕「ストーカー行為を証拠として残す為に蓮くんは俺に密着したんだよ」
💜「・・証拠を残そうとしたからお前のウイッグ姿を利用したって事だよな?」
🌕「違う!利用されたなんて思ってない」
💜「だってお前がウイッグ付けたら女子にしか見えないの利用してストーカー行為を立証したようなモンじゃん」
🌕「違うよ、利用したとかそういうんじゃなくて・・・っ」
女子にしか見えないのは当たり前だ私は女子😶
それは横に置いといて(ぇ
の思惑とは異なり、深澤には不信感を抱かせてしまったようだった。
そういう事じゃない、目黒は利用しようなんて思ってないと説明したいのに
言葉が上手く見つからずその間にも誤解されてしまってどうしたらいいのかパニックになった。
同じメンバーに対して不信感を抱いて欲しくない、ただそれだけなのだ。
もっと大人だったら上手く説明出来たのかな、と悔しさと情けなさで視界が歪む。
深澤も様子の変わったに気づいた。
あ、ヤバい(・∀・)
泣きそう、と感じた時には既に遅し・・?
がは深澤の予想の斜め上を行った。
上手く説明出来ない腹立つ!!
と泣くのではなく自分自身に腹を立てた。
🌕「兎に角蓮くんは何も悪いとこないから!ふっかさん意地悪嫌い!」
💜「えっ、えーーーーっ!!ごめん、兄ちゃんが悪かったから嫌っちゃダメー」
🌕「懐疑的なふっかさん嫌いーーー!!」
💜「あ~怒らしちゃったわ( ;∀;)」
プンスコして部屋に深澤1人残して立ち去る。
そんなと入れ違うようにして現れたのは阿部だ。
恐らくやり取りが聞こえたんだろう、まあ1階だし・・・
💚「ふっか、くんに何言ったの?」
取り敢えず同期の阿部に今のやり取り全部を説明。
今回の件の事で目黒に対し、否定的な意見というか・・
俺らの末っ子を利用されたみたいな印象を受けてしまい
つい意見を口にしてしまったら当の本人から強く反論を受け
💚「なるほどね、返り討ちに遭ったって訳か」
💜「まあそんなとこ」
💚「くんからすれば恩人を疑われた訳だからね、怒るのも分かるよ」
💜「やっぱそうだよねぇ・・」
💚「でもふっかの気持ちも分かる、多分皆一瞬は考えたと思うから」
ウイッグ被ったは本来の女の子にしか見えないだろうし
目黒は男の子に対するからかいの意味合いで肩を引き寄せた。
それが偶々ストーカー女子に見られ、が攻撃されたとかならまだ同情の余地はある。
が、幾らストーカー行為を収める為とは言え
刺激させるべく、敢えてを引き寄せたとなると話は別になる。
ふっかの言わんとした事はそういう事だ。
例え本人が利用されたと思ってないとしても彼らはそうではない。
目黒の行動により、が攻撃されたのは事実なのだ・・
他ならぬ阿部自身も深澤と同じ気持ちを感じてしまった。
知らない間に矛先を自分へ向けられていたなんては露にも思っていないだろう。
何となくだが去年大学院で起きた事件を彷彿とされてしまい、心が重くなる阿部。
あの事件も今回と似ている・・メンバーと居る事が果たしてにとって良い事なのか
少しばかり疑問に思えてしまい、阿部は憂い顔になった。
がこの世界に飛び込んだ経緯は滝沢とジャニーさんにある。
恐らく時期的に見てジャニーさん最後のスカウトだったの入所。
アイドル一筋で来た自分達とは違い、彼女は突然この世界に飛び込む事になった。
過去の経緯から恐れる気持ちはあれど、他人を疑う事を得意としない。
目黒の事も全く疑いもしないし、寧ろ信じている。
勿論自分達8人もと同じように目黒に信頼を寄せているし尊敬もしている。
負けず嫌いで男くさくてストイックな目黒、唯一の弱点は世間慣れてしてない所だ。
年若いのも相俟って、今回の件は見通しが甘かったのも要因だろう。
なら年上組の自分達がフォローするのが相応しい。
💚「だから先ずは目黒の話とくんの提案、ちゃんと聞こう?」
💜「阿部ちゃんの言う通りだな、話はそれからだわ」
💚「うんうん、ほら早く客間作っちゃおう」
💜「はいよ」
同期からの手厳しくも温かい叱咤激励を受けながら深澤は客間に仕上げた。
何とか時間もかからず客間を完成させ、阿部と共にリビングへ戻ると
ほぼ全員が揃っていたが、だけ少し頬を膨らませていた。
それを見た深澤、こりゃ暫く許して貰えないなあとしみじみ感じた。
全員が揃った中改めて目黒の口から事の次第の詳細が語られ
深澤の感じていた疑問は薄まる反面、疑念を抱いた自分を反省。
先ず目黒自身も利用してしまったみたいで申し訳ないと感じてた事が知れてホッとした。
もし何の感じず、ただただストーカー行為を立証させる為だけにを利用していたのだとしたら
多分・・加入組以外の自分を含めた6人は目黒を許せなかっただろう。
それから本題、勿論目黒の説明も本題の1つだが
全員が気になっていたであろうの提案。
それも満を持して全員の前で説明された。
〇〇の話す提案はそりゃあ驚くもので
居合わせた9人全員が意味を理解するのに数分を要するものだった。
🌕「蓮くんの彼女役、俺が女装してやるから捕まえよう?」
――はい??( 'ㅂ')