守るべきもの2
side🖤
そして日にちは経過し、梅雨の時期に入った。
レモンを持った撮影の日、目黒がiPhoneを見て顔を顰めた理由。
それはが察した通りの事態が起きていたから。
きっかけはどれだろ・・・分からない。
宇宙sixのファンなのか、それともSnow Manに来てからのファンなのか
ある日家のポストに送り主不明の手紙が入れられていた。
いつも見てます、応援してるよ 蓮
てな感じの。
最初は家を知ってるファンが直接渡せないから入れてったんだと思ってた。
でもそれすら今考えると怖くね?
家知ってるってのかまず・・・いつ後をつけられたのかって事に・・
でもあの手紙っきりで何も無かったなら、偶々俺が帰るとこ見たのかな
って事にもできた。
でも違ったんだよね・・・手紙は何通かこれ以降も届いた。
🙍『お帰りなさい、今日の仕事もお疲れ様』
🙍『昨日は遅くまで起きてたんだね、おはよう蓮、仕事頑張ってねいつも見てるよ』
これ届いた時は背筋に冷たいものが流れたね。
ここまでくれば俺にだって分かる。
ああ、俺ストーカーされてるわって。
次第にストーカーのアプローチは激しくなり手紙だけでは収まらなくなった。
それがまさに先月の撮影中のメール。
どうやって調べたのか知らないが俺のiPhoneに知らない人から届いたメール。
🙍『大きなスタジオでの撮影だね、頑張って蓮』
あーーーこれ完全にストーカーだ。
んで思わずため息が漏れた。
それに気づいたのが岩本くん達の末っ子、。
蓮くんどうかした?
って真っ直ぐに見つめられ、一瞬話しそうになったから間を設けたあの日の俺。
いつの間にか俺の癖みたいな仕草を見つけ、釘を刺して来た。
初めて会った日はあんなに俺に怯えて驚いてたのに、すっかり頼もしいメンバーの顔をしてた。
一応言わないでとは頼んだけど・・メンバー思いなアイツが黙ってるのは難しいだろう。
まさかストーカーが直接俺の前に現れるなんて思いもしなかったからマジビビった。
嫌な予感もしたから・・と別れた後、思い切って届いたメールに返信しといた。
🖤『応援ありがとう、でも家に来るのはやめて下さい』
🙍『嬉しい、蓮から返事が来た。どうして家に行っちゃだめなんですか?』
返信に対する返信はあっという間に来た。
常にケータイの画面を見てたのかってくらいに迅速な返信。
俺はどう返すか理由を探し、これで諦めるかなと思い
🖤『貴女に来られると、彼女に迷惑が掛かるので』
こう返信した。
怒りだすか泣くかどっちかかなと返信を構えて待ったけど
この日からストーカーのメールは鳴りを潜めた。
彼女いますメールで諦めてくれたなら一番良い。
でもあの日の俺の返信が、ストーカーの火に油を注ぐものになってたなんて思いもしなかった。
+++
今日の撮影はアイドル雑誌。
テーマは梅雨の時期の過ごし方的な奴。
スタジオには色んな小道具があり、好きなものを使っての撮影になる。
幸い梅雨の晴れ間となり、天気は快晴だ。
10人は3.3.4に分かれての撮影に臨んでいる。
今回目黒は岩本とと3人で撮影して貰う事に。
メイクと衣装等を整え、近くの公園でのロケ撮影。
この時の目黒は、ストーカーからのメール攻撃も止み
家に来られる・手紙が届くってのが止んだ為活き活きと撮影に臨んでいた。
そんな時目黒はに呼ばれる。
🌕「蓮くん」
🖤「うん?」
🌕「ちょっと来れる?」
目が合うと衣装とメイクを終えたが手招き。
何だろうと思いながら近くに行くと、の横には照も居た。
この組み合わせを見た瞬間、呼ばれた理由を悟る目黒。
そして此方に来た目黒を見たから予想通りの事を聞かれるのだった。
🌕「蓮くん、先月見た女の人の事・・・あれから大丈夫なのか?」
🖤「あー・・うん、実はあの日お前と別れてからメールに返信したんだ」
💛「メール??目黒、それどういう事」
🌕「ちょっと何がどうなってるの??ちゃんと説明しよう蓮くん」
🖤「2人とも落ち着いて('_')」
すっかり解決した気になっていたからついメールのやり取りをした事を明かした。
勿論そんな事になってるとは思いもよらないと照。
は?!と訝しみ、身を乗り出して目黒へ詰め寄った。
これに苦笑しつつも目黒は事の始まりを漸く2人へ明かすのだった。
先月の多分始め頃、下手したらそれより前からかもしれないが
不審な手紙が家に届き、自分の行動を何処からか見てる内容だった事。
それからは入手経路は不明なままだが直接iPhoneにメールが届くようになり
先月のレモンを持った撮影の後、と出掛けた際ストーカー本人が急に現れた事。
💛「ああ、その話はが教えてくれた」
🌕「ごめんね蓮くん約束したのに、せめてリーダーの照兄には話しておくべきだと思ったんだ」
💛「も約束守る気でいたけどお前の事が心配で俺にだけ相談してくれたって事は分かるよな?」
🖤「うん、多分お前の事だから黙ってられないだろうなって思ってたし」
話が先月の女の人の事に触れた時は照にだけ相談した理由を明かし謝罪。
照もフォローするように言葉を添える。
が話してしまうだろう事は予想済みだったから気にしてないし責める気もない。
目黒のこの落ち着いた様子が逆にを不安にさせた。
話を聞く限りこのまま大人しく行為を止めるとは思えないのだ。
人は欲求を抑える事が一番難しい生き物だと思う・・・
しかも目黒の家まで突き留めてるしメールアドレスも知っている。
このまま何もなく終わるとは思えない。
意外と近くで虎視眈々と目黒の隙を窺っている可能性もある。
確実に止めさせる、または手を引かせる・・最悪警察に逮捕されるまで安心は出来ない。
が感じる焦燥感と違和感に決定打を与える言葉を目黒は口にした。
🖤「でももう大丈夫すよ、俺ハッキリと伝えたんで」
💛「・・・伝えたってのは何を?」
🖤「家に来られると彼女に迷惑が掛かるからやめて欲しいって」
💛「――は・・?」
🖤「そしたらストーカー行為も減りましたし、もう大丈夫だと思います」
いやそれアカン、ストーカーにそれ言ったら一番マズい。
妙な緊張がを包んだ。
当の本人はケロッとしているが、逆に知らぬが仏というやつなのかもしれん。
にしても無頓着すぎないか?中学時代のモテモテエピソードラジオで聴いたけど・・
ああいう経験してるならそれなりに警戒してると思うんだけども・・・
照兄も蓮くんのあっけらかんとした様子に口をあんぐり開けていた。
しかもこのタイミングで撮影が開始する為、スタンバイするよう声がかかる。
最悪だ、とも照も危機感を覚えた。
そう思った照が動き、の肩を引き寄せ
目黒に聞こえないよう小声で囁いた。
💛「目黒はああ言ってっけど心配だからなるべくヤツと居るようにするか」
🌕「そうだね、少なくとも安心するのはまだ早いと思う」
💛「だな・・ちょっと俺他のメンバーにも伝えて来るわ」
🌕「うん分かった」
💛「俺離れるけど、その間目黒の傍離れんなよ?」
🌕「任せて照兄」
いや俺が心配してるのは目黒もだけどお前もだからな?と耳打ちし終え
えっ?ていう顔をした私に笑いながら照兄は控室へ向かって行った。
何ですか今のちょっと照れるけど嬉しいじゃん!
心配してくれるのは凄く嬉しい・・それは去年からずっと変わらない。
私があのシェアハウスに住めるのも残すとこ9ヶ月くらいだ。
シェアハウスに住む仮の設定が臨時管理人だからね・・・
皆と一緒の家に住める間にもっと仲良くなりたいし皆を守れるようになりたい。
歳は若いしまだ子供だけど、私にはその術がある。
どのくらい役に立つか分からない、帯持ちなめんなよ?
は密かに決意を固め、公園の撮影位置へと向かう目黒を追いかけた。
最初の予定では3.3.4ずつ撮る流れだったのを急遽2人ずつに変更され
目黒とで撮るツーショト撮影になっている。
一先ずは撮影に集中だ、小道具は使用自由。
梅雨の時期の過ごし方がテーマだから、天気は晴れでも雨が降ってるテイで傘を用意。
カメラマンに指示された場所は砂場、そこで傘を差しながら雑談してる様子を撮る。
しかも何故かおふざけに走ったメンバーにより
は女性もののカツラを被され、セミロング女子風に仕上がっている。
📷「雑談しながらで良いよ、自然体な2人を撮りたいからね」
という指示も来たのでいよいよ私は蓮くんにもう一度確認した。
後、彼女が居る的な発言はストーカーには火に油を注ぐ事になりかねないと。
砂場の砂をスコップで掘り返したりしながらの話。
私がそう話すと、あからさまに驚いた様子で蓮くんは顔を向けた。
🖤「マジ?」
🌕「マジ、だから蓮くん暫く1人で居るの禁止ね?」
🖤「おお・・けど帰りとかどうすんの?」
🌕「それはアレだ、暫くは俺達の家においでよ」
🖤「えっ、あのシェアハウスに?」
避難先に提案したのは自分達の住むシェアハウス。
あそこはある意味守られているし、セキュリティーも厳重だ。
何より門の前には良識なファンの人達も居てくれる。
シェアハウスもまだまだ部屋は余ってるから、予め片付けておけば余裕だろう。
後はどうやってストーカー本人をおびき寄せ捕まえるかだ。
相手は彼女が居ると信じ込んでいるだろうし・・・
そう話した蓮くん本人に憎しみをぶつける可能性もあれば
架空の彼女に憎しみを向ける事もあり得る。
待てよ?
だったら私が身代わりになればいいんじゃない?
女装するまでもなく女だから手間も省ける。
雑談を装ってこのアイディアを話しておこうと思った。
🌕「ねえ蓮くん、俺良い事思いついたんだけど」
🖤「え、なに?てか、お前そのカツラマジ似合ってんだけど(笑)」
🌕「そんな事より聞けww」
砂場の淵に腰を下ろし、本格的に砂遊びをし始めていた目黒の横に座り
砂の城作ろ~と言いながら砂山を作りつつ私が耳打ちした時だった。
不意に目黒は気づいてしまう、砂場の正面に当たるフェンス越しに立つ人影に。
本能的にヤバいと目黒も感じた。
今のこのカツラ姿のは、遠くから見たら女の子に見えてしまうのでは?と
そして不運にもこの予感は的中してしまう。
久し振りに現れたそのストーカー女子は、鬼の形相で此方を、を睨みつけていた。
場所をさり気なく変えるにしろ今は撮影中だ・・
どうすべきかと慌てる目黒の前で、ストーカー女子は鞄に手を突っ込んでいる。
まさか、何かする気なんじゃ?
ドクンと心臓が跳ね、一気に緊張が体を走った。
此処には、の近くには俺しかいない。
それに今は撮影中、公園には誰も足を踏み入れないようにスタッフが配置されている。
だがそのスタッフの誰一人としてまだストーカー女子には気づいていない。
声を出して知らせる事は出来るが、ストーカー行為を決定づけるものが欲しいとも思う。
ストーカー女子は鞄から手を出すと、少しフェイスへ体を寄せた。
何をする気なのかはまだ分からない・・少し危険だが、少しだけ火に油を注いでみる事にした。
砂山を作りながら何やら思いついた事を話し始める。
その彼の肩に手を乗せ、グイッと引き寄せてみた。
🌕「俺がさ――・・えっ?なに?」
🖤「ごめんちょっとこのままで居て」
🌕「良いけどなになに??」
🖤「の言った通りだったかも、俺バカだったわ」
🌕「蓮くん?」
思った通り、ストーカー女子は強く反応した。
ギュッと握り締めた拳を震わせた後、振り被ったのだ。
そしてストーカー女子の細腕が投げたソレは風を切ってに放たれる。
真っ直ぐ向かって来る物体から、咄嗟にの肩に乗せてない方の左腕を
引き寄せて近くにあるの顔の前に出したのと同時に、白い物体が直撃するのを見た。
🖤「――っ!!」
🌕「っあ・・!」
バシィッ!と響く鈍い音。
余りに吃驚して口から出そうになった悲鳴を無理矢理噛み殺した。
抱き締められるみたいにされた直後、何かが投げ込まれ目黒へ直撃した。
正確にはを庇った目黒の左腕に直撃して破裂した何か。
これにはカメラマンもビックリしてレンズから顔を離し、フェンス方面を見た後声を張った。
庇われていたも何が起きたのか分からないが薄目を開け
無意識に目黒の胸元に顔を寄せていたのを上げ、同じく驚いた。
🌕「――蓮くん!?」
叫んで間近にある目黒を振り向く。
飛んできた何かからを庇った目黒の左腕はびっしょり濡れていた。
冷てぇと言いながら頭を振るようにして水滴を飛ばす。
大型犬かな?
いやその前に私に飛んで来たよ水滴が。
じゃなくて、一体どこからこんなものが??
一気に公園はどよめきが走り、撮影どころではなくなった。
カメラマンもストップをかけは目黒を間近から見上げつつ自分のハンカチで髪を拭いてやる。
因みに何処からか飛んで来たものの正体は水風船。
祭りの屋台とかでよく見かけるアレだ。
しかし今は6月だ、まだ祭りが行われる時期ではない。
🖤「ダイジョブ、それより平気だった?」
🌕「俺は全然・・蓮くんが庇ってくれたから・・・」
思考を巡らせるを見やり、安否を確認した後
ゆっくりと公園を見渡すフリをしてストーカー女子の居る方を見る。
するとまだストーカー女子はその場に居た。
肩掛けの鞄には片手が入れられている事から、まだまだ入ってるんだろう・・
多分完全にストーカー女子はが俺の彼女だと思い込んでる。
普通に考えれば撮影現場なんだし、女の子が入れるはずないのに
そんな当たり前の違いにすらストーカー女子は気づかない。
なら仕方ないと、目黒は水滴が飛んだわーとぼやくに手を伸ばし
ごめんな、俺が拭いてやると言いながら両手での頭を挟み
頭頂部から撫でるようにしてグッと髪を掴み、下に向かって引いた。
🖤「邪魔だからこのヅラ外すよ」
🌕「ヅラとか言い方(笑)・・・おわっ」
古めかしい表現でカツラを示し、言葉通り剥ぎ取られた(笑)
ずるりと引き抜かれるみたいに外されたカツラ。
そこから現れる色素の薄い明るい茶髪、短く切り揃えられた髪型だ。
陽の光を弾くその明るさは、フェンス越しに睨みつけているストーカー女子からも見えた。
セミロングはカツラ、しかも立ち上がった事で目黒との服装も明らかに・・
白シャツのの下半身はスカートなんかではなく、スキニー。
シャツはオーバーサイズなので体の線は目立たない。
これを見た限り、女性じゃなく若い男の子と居る目黒という構図に気づいたストーカー女子。
悔しそうに歯がみした後、足早に公園のフェイス裏から立ち去るのが確認出来た。
その直後、バタバタと駆けつける足音が聞こえ
💛「おい、目黒!大丈夫か??」
🌕「俺は大丈夫、蓮くんが庇ってくれたから・・・」
💛「・・そっかありがとな目黒、てかお前も大丈夫か?」
🖤「えっ?」
💛「え?じゃなくてケガとかないだろな?」
🖤「あ・・・はい、投げられたのも水風船?だったみたいで大丈夫です」
💛「はー良かったあんま心配させんな」
駆けつけてくれた照に感謝され、若干面食らいつつも自分の事も気に掛けてくれる言葉に驚いた。
撮影は数十分だけストップする事になり、この事は他の撮影班にも伝達され
メンバー全員が知る事となり、再開されるまでの間急遽メンバー間での話し合いが設けられる。