守るべきもの



今日はSnow Man全員揃っての雑誌の撮影だ。
10人になって初めての大人数、第一号はテレビ雑誌。

全員でワイワイと賑やかにスタジオ入りをし
ヘアメイクに取り掛かる。
衣装に着替えるのは一斉だが、ヘアメイクは着替えを済ませた順だ。

一番に着替えを済ませたのはシェアハウスでの最年少、
次いで合流したのは10人での最年少、ラウールだ。

今回の撮影ではSnow Man初の連載を任される為
その連載名を考えるのと、3.3.4に分かれた撮影も行われる。

お泊り会風に撮るのは、阿部と深澤と康二。
クッキング系の撮影が、ゆり組とラウール。
残り4人はユニフォームを手作り体験する、照とと目黒と佐久間。

🖤「これ押しつけるだけだから赤ちゃんでも出来る」
ス「はははっ」

スタジオ入りしてからは早々に写真とインタビューを済ませ
5月生まれな深澤と照の誕生日祝いのケーキを交えての撮影も終えた。
今の目黒の発言は連載のタイトルを決める話し合いを終えてからのもの。

334に分かれて撮る撮影が今回のラストになる。
4人で横並びに立ち、アイロンとワッペンを使ったオリジナルのユニフォーム作りだ。
自分達から見て右から佐久間、目黒、、照という並び。

各々が貼り付けたいワッペンを選びアイロンで押し付ける。
も皆の間でその作業を開始した。

💛「普通に良い感じ」
🌕「照兄のカッコイイ!俺もそんな感じにしよっかな」
💛「雰囲気は俺と同じで貼り付けるやつは好きなの選びな?」
🌕「はーい」
💛「アイロンで火傷しないように気を付けろよ?」
🌕「うん!」

カメラマンさんに向けて話す照のユニフォームを横から覗き込む
貼り付け方にセンスがあるなあと感心し、絶賛。
すると満更でもなさそうな照が照れ笑いを浮かべ、色んなワッペンを見せてくれる。

見せて貰ったワッペンを選びながら兄や目黒の作業を眺めた。
取り敢えず和柄系が好きなのでそれっぽいものを探して出し、作業を終わらせる。

試行錯誤を重ねながらのユニフォーム作りは無事完成した。
どんな仕上がりになったのかは是非実際手に取って貰い、読んで貰えたら良いなー。
まだ偶にに対するアンチコメが書かれたり、追加メンバーに対する風当たりも強い。

それでも私より後に加わった3人の方が今は大変なんじゃないかな・・?
それぞれがそれぞれの場所で確立して来たものをリセットして、Snow Manに入ってくれたのだ。
けど6人時代のメンバーを応援して来た人達からすれば、感じ方はそれぞれ違う。
私が加入した時も凄い反発を受けた・・未だにアンチが減らないのも知っている。

それにまだ私は兄達の末っ子だと言う事は伏せたままだった。
まだまだ認められた訳じゃない、だから公表するのは考えてない。

🖤「はあ・・」

色々考えながらお泊り会がテーマの3人の撮影を見学。
突如横から聞こえた溜息に、つい其方を見る。
気になってみた先に居たのは荷物から出したiPhoneを険しい眼差しで見ている目黒。

彼も追加メンバーの1人、現在は2つのグループを兼任している。
Snow Manとしての仕事をこなす傍ら、もう1つのグループ¨宇宙six¨の仕事もこなしているのだ。
ストイッカーな目黒がため息を吐くなんて珍しい・・・。
純粋に気になったので近くに行ってみた。

🌕「蓮くんどうかした?」
🖤「おお、か・・何でもないよちょっと疲れたのかな」
🌕「・・・頑張るのは良いけど、程々にね?眉間に皴寄ってる時の蓮くんは無理してる事多い」
🖤「へえー?俺の事よく見てくれてるんだね」
🌕「うん、まあ俺の方が少し早いとはいえ同じ加入組だしさ?」

何となく聞いてみたがまあ、簡単には話してくれないようだ。
もしかすると兼任の負担が体に表れてるのかな。

加入組になった時も驚いたが、去年の春に初めて知り合った時も驚かされたなあ
『男』を体現したような性格や仕草に。

としてジャニー入りしてからも、この人の存在にはかなり助けられた。
スカウトされて数週間後からは先輩のバックに付いたりし始め
やっかみは受けたりした、けど、さり気なく助けに来てくれたり兄達の方に連れてってくれたりと

兎に角目黒蓮には助けられて来た。
兄達と兄弟だと伏せているから兄達も表立って助ける事が出来ない。
そんな事を知ってか知らずか、兄達の代わりに目黒から助けて貰う事が多かった。
勿論助けられっぱなしではない、ある程度の事は対抗して来た。

それでも精神的な部分では彼の存在が有り難く、実の兄みたいに可愛がってくれてる。
照達とも血の繋がりはないが兄弟のように暮らしてるし・・
10人になった事で私には兄が2人増え、弟が1人増えた感じだ。

末っ子組とはいえ私も兄達の助けになりたい。
同じ養父母に引き取られた訳ではないから兄ではないけども
だからこそ目黒蓮の様子が気になっていた。


+++


レモンを持った雑誌の撮影日から数週間後のある日。
偶々私と蓮くんの仕事が同じものだった時だ。

ス「2人ともお疲れ様、撮影は以上になります!」
🌕「ありがとうございました!」
🖤「有難うございました」

とある女性誌に掲載される写真を全て撮り終え
オールアップをカメラマンから伝えられた。

時間は夕方、此処からはタクシーを拾ってそれぞれの住処へ帰る。
控室へと戻りメイクを落として衣装から私服へ着替えに戻った。
当然着替える場所は別々、黙々と着替えを済まし控室へ行く。

メイク室は無く、控室で済ます場合が多い。
ガチャッとドアを開けて見て吃驚した。

🌕「わお、ごめん」
🖤「ああ着替えて来たんだ?お帰り」
🌕「蓮くんは此処で着替えてたんだね」
🖤「だってわざわざ着替える為の部屋行くの面倒でさ」
🌕「まあ確かに」

ドアを開けた先では丁度目黒が私服を素肌に羽織り
シャツのボタンを留めてる所だった。
宇宙sixの頃からの目黒を知ってはいるが、Snow Manに入った事で大分変ったなあ・・・

あっちに居る頃とは雰囲気がガラリと変わったと思う。
まあまだ兼任してるから宇宙sixとしての目黒蓮らしさも保ってる。
切り替えが上手いのかもしれない、兎に角色気が凄いですね。

🖤「はこのままシェアハウス?」

はしたないかもしれないが着替える目黒をジッと見ていたら
着替えを終え、顔を上げた目黒と目が合い質問を投げられた。

🌕「最終的にはそこに帰るけどまだ余裕はあるよ?」

特に門限がある訳ではないし、遅くなる時は連絡するくらいだ。
去年とは私を取り巻く環境もかなり変わって、何より私も変わった。
異性に構えるのは変わらないし2人きりみたいな空間で過ごすのも無理だが

そういう仕事は来ないし万が一来たとしても今回みたいに誰かしらメンバーと一緒。
もう私はただの一般人ではない、基本は真っ直ぐシェアハウスに帰宅している。

🖤「ふーん、ならちょっと俺に付き合えない?」
🌕「蓮くんに?良いよ?」
🖤「2人で打ち上げな」

私の返答に少し考えた後、お誘いしてくれた蓮くん。
要するに何処か寄って行かない?というものだ。

何か話したい事とかがあるのかな、くらいの感じで誘いを受けた。
もう少しこの辺から気づいてれば良かったのかなと
全てが終わった今、はそう感じた。

帰り支度を終えてスタジオから退室。
擦れ違うスタッフさんやメイクさんやらカメラマンさんに挨拶をし
また関わる際は宜しくお願いします、と締め括り外へ出た。

5月の空はまだ明るく、若干蒸し暑い。
夏とは縁遠いはずなのに温暖化の影響だろう、夏並みに暑い。

手団扇みたくパタパタ扇ぎながら横に居る目黒を見上げる。
165しかないから184の目黒と並ぶと完全に小人と巨人。
まあ取り敢えず誘いをかけてきた目黒が、行先を言うのかなと言葉を待った。

しかし外に出た目黒は先ず辺りを念入りに見渡し、視線を漂わせている。
出待ちの子がいる訳でも無いし・・どうしたんだろうか。
ひとしきり確認した後漸く小さな息を吐き、私へ視線を合わせた。

🖤「よし、行くか」
🌕「何処に行こうか、行きたいトコとかあるの?」
🖤「そーだなあ、特に決めてないんだよね」
🌕「決めてないのに打ち上げとか言ったの?(笑)」
🖤「お前生意気」

行くかと言う目黒に続き、歩き出すや行先はあるのか聞くと
特に決めてない事が判明(・∀・)誘っといてなんやそれ
突っ込んだら突っ込んだらで荒々しく肩を組まれる。

いや違うな、身長差があるから肩を組むと言うより
腕が私の前に回されて内側から引き寄せられた感じか。
なんやこれカップルか?(笑)

とか思いながら前に回された目黒の腕を私からも掴み返し
その腕を掻い潜ろうとしたりと何やかんや騒いでしまった。
そうしながら歩いていると、不意に目の前に影が飛び出して来た。

🌕「――ひぇっ?」

咄嗟にぶつからないようたたらを踏む
すると横に居た目黒の腕も〇〇が影とぶつからないよう引っ張ってくれた。

🌕「ごめんなさい」
🙍‍「・・・・」
🌕「あの?」

突然現れた影の正体は20代くらいの女の人。
一応ぶつかりそうになった事を謝罪してみたが反応がない。
女性の表情を窺がってみれば目は虚ろで、を一瞬だけ見てから逸らし

チラチラと目黒を見ては少し微笑む・・
何となく雰囲気がおかしいなと感じた
用件はあるのかなと聞いてみるべく声を発した瞬間

グッと肩を目黒に引き戻され、そのまま女性を避けるようにして腕を引かれた。
突然の事に頭が付いて行かない

引っ張られながら歩く傍ら無理矢理動かした顔を後ろへ向けて見ると
追ってこそ来ないが、女性はその場に立ったままニコニコと此方を見ていた。
その笑みに背筋が粟立つ、次いで少し前を歩く目黒の背中を眺めた。

何かがおかしい。

そんな予感に胸がざわつく。
もしあの女性がファンの子とかなら、こういう態度はとらないだろう。

🌕「蓮くん、今の人・・様子がおかしくなかった?」
🖤「・・・そうだな」
🌕「もしかして蓮くんさっきの人の事知って――」
🖤「
🌕「?」

どうにも気になったから歩きながら目黒へ訊ねてみたが
長い沈黙の後漸く同意の言葉を発した目黒。
これでは何か知ってますと言ってるようなものだ。

問う為の言葉を重ねようと思ったが、それは遮られた。
低い目黒の声に名を呼ばれ、すっと近づく気配も感じ
意図もたやすく問う事を封じられてしまった。

背の低い私に合わせるように上体を傾け、耳元近くにある蓮くんの顔。
イケメンの顔が超至近距離に在るだけで謎の動悸。

🖤「――頼むから今の事、誰にも言わないで」

が謎の動悸を感じてるとは露ほどにも思っていない目黒の漏らした言葉。
めっちゃドキドキと響く鼓動を感じつつ今の事について思考を巡らす。
要するについ先程自分達の前に飛び出して来たあの女性の事を指しているんだろう。

しかし誰にも言うなとは?この言葉から察するにやはり目黒はあの人を知っているという事になる。
でも何故・・・どこで知ったのだろうか・・?

🌕「でも見るからにちょっと様子がおかしかったよ?大丈夫なん?」
🖤「うん、俺からまた話しておくから大丈夫」
🌕「話とくって、話は通じてるの?」
🖤「多分・・取り敢えず一旦俺に預けといて、何とかしてみる」
🌕「蓮くんがそう言うなら預けるけど、難しそうなら言ってね?俺達グループなんだからさ」
🖤「おう、ありがとね

目黒はそう言ったが、はかなり心配していた。
だってさ・・見るからに普通じゃなかったもん。
目線は蓮くんしか見てなかったし、ちょっと血走ってたし?

何も起こらない事を祈るしかないな・・・
でも心配だからリーダーの照兄にだけは話しておこう。
声には出さず密かには決意した。

その後は取り敢えず目黒お勧めの焼き肉屋へ行き
入所順だと俺のが先輩だから奢るよ、と目黒が言ってくれた為は喜びつつ奢られた。

だがこの時既に、危惧していた事態へ運命は向かい始めていた。


+++


🌕「って言う事があったんだ」
💛「・・なるほどな、んー・・・・取り敢えずその女の人にお前は何もされなかったんだな?」
🌕「うん、と言うよりアウトオブ眼中だったというか・・蓮くんしか見てない感じだった」

目黒と別れ、シェアハウスに帰宅した
早速個別LINEで照だけに連絡し、人の居ないシアタールームで相談開始。

個別にLINEで呼び出された照はに何かあったのかと慌てたが
呼び出されて来たシアタールームで事の真相を聞き
内心¨目黒の方か¨と思った事は内緒だ。

だがだろうが目黒だろうが大事なメンバーの1人。
しかも目黒もも追加メンバーという不安定な立ち位置。
まだまだ気に掛けてやらねばならないから身構えたのは事実だ。

そして聞かされた話の内容。
も危惧していたように間違いなくアレだろう・・

ストーカーってやつだ。

俺らにすら気づかせない目黒のポーカーフェイス具合にはしてやられたな。
いつ頃から被害を受けていたのか、その始まりがいつなのか次第で深刻度も分かる。
だがこればかりは本人に直接聞くしかない。

💛「目黒に聞くのが一番良いんだろうけど、アイツが素直に話してくれるかどうか」
🌕「だね・・多分俺に話すより兄さん達のが頼りやすいと思うから、促してみようか?」

座席に座り真剣な顔で思案する照へ自らそう口にした
ストーカー被害に遭ってるんじゃないかと感じたのは私だし
誰にも話すなと言われたにも関わらず照兄に話してしまったからにはそれなりに責を負うべきだ。

それに・・・もしもの事態になった時、私なら・・いや、私が役に立てると思う。
中々話す機会もないし話す気もなかった特技を役に立たせられる予感はした。