黒猫
あれ。明るい?
まさかあれから俺ら、ファミレスで寝た!?
ハッと目が覚める。
明るいのは窓から差し込む光。
やっぱり夜が明けてたか・・・・・
打ち合わせも深夜まで続いてたしな。
皆疲れてたのかも?
一番最初に目が覚めたのは亀梨。
夕さんの話をしてて、指輪とネックレスを見せたのは覚えてる。
聖が騒いで大変だったけどな。思い出して笑みが零れた。
にしてもよく寝ちゃったなあ・・
・・・つーか・・店員さん達、俺ら残して店から帰ったの?
だとしたらかなりアバウトっつーか・・・まあよく寝れたからいっか。
ふわふわした店内の席に横になったまま寝てたらしい。
それから寝ぼけてる目を擦って・・・・・・
・・・・・・・・・擦って?
ちょっと待て。
何だこのふさふさした奴。
これって肉球?は?え?
此処のファミレスに猫なんていた?
あれ?この景色って・・・・
「ニャアーーッ!!」(ファミレスじゃねぇ!!)
何これ今の俺?
完全に猫じゃん!!
目覚めて目を擦ったのは猫の手で
声も完全に猫の声だった。
しかも、ファミレスじゃねぇ。
身を起こしたって表現も、ただ上体を少し持ち上げただけ。
亀梨がいるのは質のいいソファーの上だった。
そして視界に入る五人・・じゃなくて、五匹・・・・・
俺の隣りには白いフワフワした猫、あのチンチラみたいな。
それから向かいのソファーにいるのは、漆黒の猫。
黒猫の隣りに三毛猫がいて・・・・高そうなラグの上にロシアンブルーとチャトラ。
誰が誰だかわからねぇ!!!!
取り敢えず確認して早く状況を確認しないとだな・・
んーっ、と背伸びをして起き上がる様は完全に猫。
先ずは隣に居たチンチラに近寄る。
揺さぶろうにも今の自分は猫・・・・どう起こすか・・・・
考えた末、普通に猫の手でチンチラの胴体をペチペチ叩く。
暫く叩きながら眺めていると、チンチラの顔が歪んだ。
つまり不快に感じ始めたと言う事で、そろそろ起きそう。
『何だよもー・・・』
『あれ?』
『何だ亀梨か〜・・あれ、もしかして朝?』
『その声、もしかして上田?』
『はぁ?何、もしかして寝惚けて・・・・・・つか何で亀梨・・猫になってんの?』
『安心しろ。寝惚けてないしお前の目も正常だし、皆同じだから』
『―――はっ!?』
チンチラが発した声は間違いなく上田だった。
一人の時は猫語だったけど、ちゃんと日本語で会話出来たのが不思議だな・・
状況を理解して叫んだ上田。釣り目の猫目が大きく見開かれる。
にしてもチンチラが上田か・・ぽいよな・・・・
となると、この黒猫ってもしかして。
『まだ眠いんだから起こすなよ』
『そのツラ見てからもっかい言ってみ』
『あ?・・・何コレ!!!!』
慣れた仕草で黒猫を起こせば、やっぱり聞こえた声は赤西。
俺的には黒猫は上田のイメージだったけどやっぱ黒猫はこっちだったか(
寝起きの悪さは猫になっても同じな赤西に、テーブルの上の鏡を見るように言い
上田と同じく絶叫してる声を聞きつつ、次は相向かいのソファーに寝てる三毛猫に近づく。
これ誰だろう。
イメージで言うなら田口っぽくね?
予想しながら前足で三毛猫を叩くと、反応良く飛び起きた三毛猫が一言。
『朝から朝喝!』
『あー・・ハイハイ、やっぱ田口だったか』
予想通り素朴な柄をした猫は田口。
残りは聖か中丸か・・・・
先に選んだのはロシアンブルー。
肉球でツンツンすると、寝返りをうってからロシアンブルーが目をあけた。
ちょっとボケーッとしてる様子。
目の前で前足を振ってやると、意識がはっきりしたらしい。
起こした側の姿を見たらしく実にいい動きで驚いた。
『ナニソレ仮装大賞!??』
『お前も仮装大賞狙えるから安心しろ』
『いや安心出来ねぇって』
『あ、中丸こっちか』
『おお・・ってかすげー眺め・・・・・』
ロシアンが聖で、チャトラが中丸だった。
上田が言うには俺の姿はアメショーらしい。
さて全員起きた所で、状況把握だ。
各々寝ていた場所に座り、亀梨を見やる。
普段からメンバーをまとめていた亀梨、猫になってもそれは変わらないらしい。
『取り敢えず、猫になってるのはおいといて』
『おいとくんかい』
『今は此処が何処なのか知るのが先だろ?』
『まあそうだけどさ・・・・つか、金持ちっぽい家だよな・・』
『内装もいいし、デザイナーズマンションって感じ』
『なんつーか・・俺達ファミレスにいたんだよな?』
そう。其処が一番の謎だ。
深夜のファミレスで打ち上げしてて、ネックレスと指輪の話をしてた。
そしたら・・・・確か、石が歪んで見えたような・・
それから意識がなくなって、目が覚めたら猫になってた。
しかも見知らぬ家に移動してるし。
はー・・訳わかんねぇ・・・
思わず匙を投げたくなった亀梨。
原因を考えるとするなら、この蒼玉の石だろうな。
ってか今何処にある?今猫になってるし
しかも無くしたら夕さんに顔向け出来ねぇ〜
『ネックレスなら首にあるよ』
『へ?ああ、ホントだ。』
『そうだ俺のはどうなっただろ』
『赤西のは尻尾にある』
キョロキョロと探してたら冷静な口調で上田が教えてくれた。
そのやり取りで自身のはどうしたかと気付いた赤西にも、上田が教えている。
年長者の貫禄か?
赤西の指輪は黒猫の尻尾の根元に嵌ってた。
・・・・てかその近さだとトイレの時やばいような?
取り敢えず解決案らしい案は出ないまま、一時間経過。
その時だ、外を走ってくる気配が近づいて来て
勢い良く玄関のドアが開いたのは。
全員一斉に尻尾がピィーンと立った。
ヤバイ、家主が帰ってきたみたいだな・・・・・
『兎に角隠れろ隠れろ』
全員を促して隠れる場所を探す。
しかしリビングって隠れられる所が限られるような・・
それでも探して各々隠れる。
細身の赤西と上田はソファーの下に、テーブルの下には中丸。
カーテンの裏に田口、聖はテレビの裏へ。
その際テレビ台にあった写真立てを蹴り落とした。
ガタン!と言う落下音が不気味に響く。
その音に焦りながら亀梨は雑誌入れの中に隠れた。
息を殺して現れる家主を待つ・・・・・
ゆっくり警戒するように開かれたドアの向こうから現れたのは、一人の女性だった。