後悔と反省
2人して、を泣かせて苦しめていた。
その事に気づかされた、隼人と竜。
言われて初めて気づいた。
自分達は、一方的に気持ちを伝えて満足していただけ。
知らない所で、気持ちを無視されたを傷つけていた。
「サイテーじゃん・・俺等。」
「・・・・・」
ボソッと呟いて、重い溜息を付いたのは隼人。
無言だが、傷心してるらしい竜も隼人の言葉を聞いている。
あの日から明けた次の日、教室で呟いた2人。
何となく聞き合ってみて分かった。
確かにお互い、勘違いしていた事に。
そして、を傷つけていた事に気づかされた。
学校には来たが、2人と目を合わす事なく
さっさと席に着いた。
そんな中、教室へヤンクミが入って来た。
出席名簿と、筆記用具・他には封筒を持っている。
眼鏡の奥の目は、とても真剣。
一通り出席を取ると、騒ぎ始める生徒達。
その騒がしい生徒達へ、封筒から取り出した白い2枚の紙を見た後
ヤンクミは顔を上げるとこう言った。
「おまえ等・・・卒業は目の前だぞ」
「は?」←ほぼ全員。
「は?じゃないだろ・・・」
と此処から長いヤンクミの熱い指導が始まる。
その言葉も、や隼人・竜の耳には入っていない。
ヤンクミに突っ込んだりしてるタケ達のやり取りにも
便乗しない隼人、その視線は隣りに座るに向けられている。
その隣りの竜の視線も、左隣のへ向けられていた。
視線は感じてる、けれど応えるつもりもなかった。
俺は怒ってんだ!そんなすぐに赦せる訳がない!
生徒達に就職活動について、説くヤンクミも
後ろの席の、3人が振りまく気まずさには気づいていた。
それはともかく、ヤンクミの提案で進路の面談が決定付けられた。
ΨΨΨΨΨΨ
全員廊下に出された後、順番にヤンクミに呼ばれ教室へ入って行く。
ザワザワと騒がしく待つ間も、は誰とも話をしなかった。
そんな様子に、つっちーや浩介にタケも不自然さを感じる。
さっきからずっと、は口を閉ざし
だんまりを決め込んでいて、目すら合わせてくれない。
タケ達は悪くないのは分かってるんだけど、2人とも目が合いそうで向くに向けない。
「・・」
「嘩柳院!次入れ。」
上手いタイミングで、隼人が話し掛けた声を遮り
はヤンクミに呼ばれて中へと入ってってしまった。
出鼻を挫かれた隼人の、ガクッと肩が落ちる。
このままじゃ耐えられない。
ずっと話せないままなんて、無理だ。
アイツを知りたい、守りたい・・・
この気持ちが、重かったのか?・・・
隼人の声を無視し、教室へと入った。
ヤンクミと向き合うように設置された2つの机。
その椅子に座ると、早速ヤンクミは質問をして来た。
「さて嘩柳院、進路について聞く前に違う質問をする。」
「隼人達の事か?」
コホンと咳払いしてから、そう話し始めたヤンクミだが
今度はに先手を打たれた。
どうやら、気づいていたらしい。
隠す事なく、自ら問い返してきた。
だからヤンクミも、誤魔化す事なくそうだと頷く。
頷いたヤンクミを見て、自嘲気味に笑うとは言った。
「俺の気持ちを無視しやがる、勝手で強引な奴等は嫌いだ。」
「嘩柳院の気持ちを?」
ははぁーん、アイツ等告白したんだな?
嘩柳院が怒ってるのは、アイツ等が節操なしにアタックしまくったからだろ。
若さ故の暴走って奴だな。
そして、嘩柳院はまだその気持ちに答える用意が出来てないと。
アイツ等待つ事苦手ッポイしなぁ・・・。
「そうか、それはアイツ等が悪いな。」
「って事だから、もう本題に入ろうぜ。」
「あ、ああ・・じゃあ嘩柳院はどんな道に進みたいんだ?」
「俺は・・・取り敢えず独り立ち、それからは旅に出たい。」
「・・・・旅!?就職とか進学はしないのか?」
自ら話を終わらせ、ついて行き損ねたヤンクミに本題を持ちかける。
急かされるようにして、本来の話を始めたヤンクミ。
だがは、そんなヤンクミを更に驚かす発言をした。
旅!?・・一体何の為にだ?何処へ行くつもりなんだ?
吃驚してるヤンクミを他所に、妙に落ち着いてる。
その落ち着きが気になって、ヤンクミは問いかけた。
「何の為に行くんだ?まさか、国外じゃないだろうな」
「自分探し、色々な事を吸収してみたいんだよ。だから海外にだって行くさ。」
晴々した笑顔で話すを見て、ヤンクミも否は言えない。
納得出来てしまいそうだから、色々な事が起きて心休まる暇もなかっただろうし
羽を伸ばすのもいいかもしれん、それが嘩柳院の望なら止める権利はないしな。
可能性は無限だ、開けた世界を見るのもいいかもれない。
「分かった、いっぱい吸収して戻って来い。」
「ああ、有り難うヤンクミ。じゃあ俺もう行くから。」
そう言って立ち上がった、ただ見送りそうになって慌てて呼び止める。
足を止めたに、次の奴を呼ぶように言ってから見送った。
次に呼ばれたのは浩介、アイツは居眠りしてたから逃げ損ねてた。
廊下に置かれた椅子で寝入ってる浩介を、は揺り起こす。
それ以前に、廊下には浩介しか残ってなかった。
またヤンクミ、怒るだろうな・・・・
「浩介、浩介!」
「んーー後5分・・・」
肩を揺らしても、そんな事を言ってちっとも起きない。
しばらく揺り起こしても起きない浩介を見て、イラッと来た。
ケータイの液晶に映る時計は、午後15時。
今日は、バイトが詰まって入ってる日。
詰まってるって程じゃねぇけど、16時からホストのバイトなんだよ。
初日だし、遅刻は出来ないってのーに(怒)。
「・・・・・」
頭に来たは、浩介に体を寄せると
肩に片手を置いて、耳元に顔を寄せた。
目を瞑りながらも、肩に置かれた手の感触と
誰かが近寄る気配は感じ取った浩介。
何だかドキドキして、何をされるのかを待つ。
僅かな浩介の変化に気づいたは、ニィッと笑うと息を吸い込み。
「てめぇいい加減に起きねぇとボコすぞ!」
この怒声は、中のヤンクミにも筒抜けで聞こえた。
もっと違った起こし方を期待した浩介は、思い切りビビッて飛び起きる。
この喝(脅し)で、眠気もスッキリした浩介は
目を何回も瞬かせながら、正面にいる人影に焦点を合わせて吃驚。
其処には、黒い笑みを浮かべて自分を見ているがいた。
「あのさ〜、もっとソフトに起こしてくれてもいいじゃん」
「期待外れで悪かったな、俺これからバイトだから忙しいんだよ。」
怒鳴られた方の耳を押さえ、抗議の目を向けて言えば
しれっとした答えが返される。
浩介は、喫茶店以外にもバイト探してたのか?と頭で思う。
聞き返そうにも、はもう歩き始めてて無理だった。
は歩きながら面談の事を説明し、中入れよとだけ言い残すと外の方へと消えてしまった。