相変わらず意地悪で笑顔を見せてくれない。
でも少しだけ優しさを感じた。
笑顔を見せて欲しいな・・・と
だって、笑顔が似合わない人なんていません。
いつか見られる日を愉しみにしましょう。
虹色の旋律 十五章
写真を眺めていたらしんみりしてしまった。
落ち込んでも継信さんの写真見ると元気になれます。
遠い空から私を見守っていて下さると思うから。
何より継信さんは、私に笑っていて欲しいと言っていました。
人の笑顔が好きな人だったんです・・きっと。
だから私も人の笑顔が好きです。
「折角赤西さんに取って頂いたんですし、これも読んでみましょう」
は図書館のシステムを知らない。
なので閉館する前に読んでしまおうとしていた。
「、もうそろそろ時間迫ってるけど・・本見つかった?」
「亀梨さん・・・あ、一応読んでしまおうかと思いまして・・」
「え?借りねぇの?次の仕事、結構車で走るからもう出ないと遅刻になるから借りた方がいいよ」
「借りる・・とは、館長さんとお話してからですか?」
「バカかちげーし。カードってのがあってそれ出しゃあ借りられんの」
「かーど?えっといくらかかるんですか?私手持ちが・・・・」
「・・・・・本当に知らないみたいだな、図書館ってのは市民の為の場所で図書カードってのを作れば無償で借りられるんだよ」
「な・・何て素晴らしい制度・・・・・」
椅子に座って慣れない縦読みを試みた。
因みに漢字が習っていない物とかもあるせいで、ペースが遅いのだ。
其処へ来たのはパソコンで検索していた亀梨。
手には一冊の本が収まっている。
借りるのかと聞いたら思いも寄らない返答が返って来た。
思わず赤西も突っ込みを入れてる。
しかし館長と話して貸して下さいとかその発想、普通はしない。
話していて思ったけど、は・・・・天然?
それに発想も豊かだよな。
こう・・捉われた見方をしないって言うか?
今もカードについて感激してるし。
でも図書カード知らない田舎ってどんなだ(笑)
「じゃあカード作る?身分証明書とかあれば作れるけど」
「身分・・・証明書・・・・は・・ない、ですね」
「うーん・・じゃあ俺のカードで借りとくか」
「有り難うございます!」
ポン、との頭に手を乗せて撫でると
亀梨はから本を預かり、受付へと向かって行った。
それを見送るをこっそり眺める赤西。
そう、事務所でも眺めてた写真が何なのかが少し気になっていた。
写真を眺めるその眼差しが気になる感じ。
近しい奴の写真かも・・?
って・・・俺が気にする必要とかないっつーの。
どうせ家族とかの写真だろ?
覗き込むとか言語道断、仕方なく覗くのは諦めた。
いつもなら苛々するのに今だけは苛々しなかった不思議。
偶々だろ←
するとふとのケータイが鳴った。
「えっ!?こ、これは警報ですか??」
「はあ?お前とことんアホだな・・それ電話だろ、早く出ろよ」
「電話・・・あ、電話ですか!ど、どうやって出たら・・!」
「て言うかうるせぇから少し黙れ。バレるだろーがっ」
「うう・・すみません・・・」
「仁も早く教えてやれっつの、この電話の受話器が持ち上がってる方押したら話せる」
「わわわっ、はいっ、もしもし?」
『あーもしもし??上田だけど』
初めての電話で受けた事のないはこれまで以上にパニックに。
トンチンカンな返答をするに毒気を抜かれた赤西はごく当たり前な返答を返した。
だが赤西はが過去から来た人間だと知らない。
なのでどうしてが電話に出ないのか不思議でならなかった。
静かなはずの図書館に響くコール音。
他の来館者も此方をチラチラと振り返る。
益々焦るを余所に、出方を教えない赤西。
しかし二人に気付いた亀梨が戻ると、に分かり易いようボタンを教えた。
漸く出てみると、電話の相手は上田だった。
何で番号を知ってるのかと言う疑問よりも、耳に当てた側からちゃんと声が聞こえて来る事に感激している。
慣れない様子だが会話は出来てるを微笑ましそうに眺める亀梨。
ちゃんと借りた本を亀梨が抱え、出口に誘導しながら図書館を出る。
時刻は夜の19時前、今から向かえば10分前には着けるだろう。
電話の相手は上田のようだった。
「あ、上田さんでしたか!耳元で上田さんのお声が聞こえるなんて不思議ですけど凄いですっ」
『何かこそばゆいですよーさん(笑)まだ図書館?』
「こそばゆい?いえ、もう出ました」
『なら丁度良かった。今悟さん向かってるからもう着くと思うよ』
「悟さん?」
「マネージャーの事」
「そうでしたか、はい分かりました。有り難うございます!」
『いい子で待っててね』
「はい(笑)」
何の会話ですか←
クサイ台詞をさらりと無意識に感激しながら言っちゃった。
流れからして上田が照れたのか(
まあ・・俺だとしてもちょっと恥ずかしかったかも(笑)
はナチュラルに言うから不覚にもドキリとしちゃったりするんだよね
っては男なんだけどさ、ドキッとしちゃったりして俺変だな。
亀梨が疑問に駆られてる間にと上田の会話は終わっていた。
亀梨に代わってぶっきら棒に問い質す赤西にも答える。
「マネージャーさんが既に此方に向かってるそうです」
「成る程ね、いいタイミングじゃん。」
「じゃあ来るまでちょっと目立たない所にいようか」
「はいっ」
上田の電話は迎えが向かってると言う内容。
ならばと亀梨らはを伴い、図書館から進むと建物の影へ。
彼らは芸能人、此処で見つかればパニックは間違いないだろう。
もその一員になるのだ、それを気にしなくて済むのは今夜限りかもしれない。
そう言えば・・・・今夜は何処で寝るんだろう。
聞くのを忘れていたけど、この後のお仕事が終わったら聞いてみよう。
春の夜はまだ暖かいとは言えない。
あちらではもう秋でしたから、また此処で桜を見れるんですね・・
継信さんと歩いた道にも桜の並木道があった。
ヒラヒラと花弁が舞い踊る様はとても綺麗で・・・・
言葉などいらないくらいの、ゆったりとした空間。
私はその道をただ、継信さんと歩いていた。
出兵されるその前日も・・・・・
―さん、私は明日戦地へ飛び立ちます。
どんなに時が経っても、必ず貴女の元へ帰還してみせます。
だからどうか、私の帰りを待っていて下さい。
しかし、戦地とは何があるか分からない激戦地です・・
私も兵として出兵する限り、誇らしく戦い、潔く死ぬ日が来るかもしれません。
ですからその時は、私の笑顔を思い出して下さい・・・この桜の下で共に過ごした事を・・――
笑顔で・・?
思い出せるの・・・・?
―継信さんが戦死・・?嘘、嘘よ・・・っ―
―!何処に行くのです!―
―約束したんです!また、必ず・・私の所に戻って来ると・・・!―
信じ続けた日々。
私は確たる何かが知れるまで信じたくなかった。
―いい加減にしなさい、継信さんは立派に戦地で―
―そんなの信じません!あの方は約束を違えません・・っ・・・―
―彼は死んだんだ!―
―亡くなってなど・・いませ・・・うっ、嫌・・嫌です・・・ああぁぁああ!!―
あの日、私の心は一度死んだのかもしれない。