心の変化
何かにつけて暴力で解決しようとする彼らと相容れるつもりはない。
今は女の子が男子校にいるって状況に興味があるだけ。
飽いたら話し掛けられる事もなくなるだろう、それまでの辛抱だ。
クラス中がに興味津々な中、頭を名乗る緒方と風間だけは興味を示さなかった。
ただ冷ややかな視線を向けるだけ・・何というか、という人間その物に関心がないのかもしれない。
としてはそれはそれで有り難かった、可能な限り異性と関わりを持ちたくないから。
その辺は徹底して距離を保つつもりでいる。
今は先ず・・風間に感じる既視感をハッキリさせたいと感じていた。
そして辿り着いた赤銅学院、外観はとても私立っぽい綺麗な建物。
校舎に入って左に逸れ、一歩奥へ進めば白い壁は落書きだらけの壁に変わり
近づくにつれて生徒達の騒ぐ喧騒が聞こえて来る。
改めてとんでもない所に転入した物だと実感。
短く嘆息していると、軽く肩を叩かれた。
気軽な感じから久美子が追いついて来たのだろうと振り向いて・・・・
「おはよちゃん!」
「こんな所に突っ立ってどしたん?教室入らねぇの?」
「!!(えっと、もう入ります・・)」
「戸惑っちゃって可愛い〜」
「まだ山口いねぇし まあいても関係ねーけど授業なんかかったるいし」
「俺らと遊ぼうぜ」
「(え いや その)」
心臓が口から飛び出るかと思ったくらい、は驚きと恐怖でカチコチに固まった。
驚きと恐怖で固まってしまったに寄って来たのは数人のクラスメイト。
彼らはどうやら教室前のスペースで、手作りのボウリングをしていたらしい。
これじゃあ振り切っても中に入れない・・・・・
好意的な彼らだが、あまり近寄られると嫌悪感と緊張感とか恐怖感から吐き気がしてしまう・・・
逃げたりしたら折角好意的に接してくれる彼らを傷つけてしまうかもしれない。
そう思うとただジッとして耐えるしか選択肢が見当たらなかった・・が、意外な助け舟が出される事になった。
第三者の人物達は囲まれてないの後方から現れた。
ぐいっと乱暴に肩を引かれ、そのまま後方に引き寄せられる。
緊張と恐怖で元々力の入らなくなっていた足がよろめいたが
引っ張った主がその体を支えるように腕に手を添えてくれた。
見上げてみて再び心臓が口から飛び出そうになった。
トンと寄りかかる様になって止まった自分の体を受け止めていたのは、3Dの頭の一人
「あ、か・・風間さん!」
「(うそ・・・・)」
「俺達別に何もしてないっすから!」
「ちゃんダイジョブだった?」
「(は・・はいっ)」
しかも昨日冷たい言葉をへ吐き捨てて行った風間本人だった。
と接していたほかの生徒達も、現れたのが風間と市村に倉木だと分かるや
途端に慌てだし、それぞれに弁論すると蜘蛛の子を散らすように立ち去って行った。
「・・・アンタ・・よくこんなトコ来る気になったな」
「(・・・・)」
「ま、ある意味度胸があるって事か」
「――っ」
そそくさと立ち去ったクラスメイト達の姿が見えなくなると
聞こえるか聞こえないかくらいの呟きで風間はポツリと言葉を発した。
呆れてるだろう事は想像がつく、自分ですら何で此処に来たんだろうって思っていたし。
しかし風間が呟くように言った言葉に、また既視感のような物を感じた。
前にも似たような言葉をくれた人がいたような・・・・
黒髪にメッシュのある子と似たこの人・・極めつけは今の言葉。
もしかして・・・あの時の?
でも記憶の中の人は声だけしか思い出せない、声以外に思い出せるのは襟足にあった白いメッシュのみ。
何度か会いたいなと思っていた人が、運良く転入先にいたなんていう奇蹟は簡単には起こらないだろう。
一人落ち込んでそれから顔を上げて何度目になるか分からない驚きを受ける羽目に。
もう3人は立ち去ったとばかり思っていたが、顔を上げて見たの付近に3人の姿がまだあったのである。
これには流石のも吃驚して失くした声が出るんじゃないかというくらい驚いた。
「早く教室入れ、ついでだから席まで行ってやるよ」
「お供するよちゃん!」
「廉の気ィ変わらんうちにはよ行こうや」
何と青褪めてるを見兼ねてか、ドアの前で風間達3人が待ってくれていたのである。
これは予想外の出来事だった、嫌悪しかなかった彼ら異性の思わぬ行為にキョトンとしてしまう。
全く以って予想外、こんな時どんな態度をとったらいいのか分からない。
ただ分かるのは思いの外彼らの行動が嬉しいと感じてる自分の心の変化だ。
ずず・・っと引き摺るような一歩を踏み出すと、後は思い切れたのかスムーズに彼らの傍へ近寄れた。
ちゃんと近くまで来たに、市村と倉木は素直に嬉しそうな笑みを見せ
仏頂面だった風間も口許に微かな笑みを一瞬だけ浮かべ、行くぞ?と小さく確認してから教室への戸を開けた。
ガラッと開かれたドアから中へ入る、先ず前の席に座る生徒達からの驚きの視線が向けられた。
赤銅を仕切る頭の一人、風間廉達と共に話題の転入生が登場したのだ・・驚かない者はいないだろう。
途中風間らに睨まれて退散した面々の姿も見つける。
自分の席に着くまではやはり生きた心地のしない状況に変わりはなかった。
右端を陣取る緒方達の驚きの目も向けられたのを風間は気配と殺気めいた空気で感じ取るも
構わず自分達の席に着き、更に後ろに席のあるがきちんと席に着けたのを確認してから前を向き直る。
顔色の悪さは変わらないが、怯えていてもしっかり逃げずに学校へ来る姿勢は
口にも顔にも出さないだけで緒方らも風間らも認めていた。
授業開始のチャイムが鳴るとやたらと気合の入った久美子が登場。
連帯感が必要だと前置きしてから、何故かNAKAMAと書かれた年季の入った缶を取り出し
缶蹴り大会を開催します!と高らかに宣言。
当然の如く生徒達からは一斉に野次が飛び、仕舞には缶蹴りって何だよとの疑問も。
それを聞いた久美子、缶蹴りがどんな物かを教えてやる!と豪語し 校庭に集合だ!と呼びかけた。
ブーイングが湧き起こったが、恐らく彼らは行かないだろうな・・とは予想。
意気揚々と教室を出て行った久美子に続く者は誰一人として居らず。
せめて自分だけでも行くとしよう、そう決めて・・・みたものの・・・・・彼らの間を縫って出口に向かわなきゃ ですよね(あたぼう
どっ・・どうしよう?
今間を通ったら一人くらいは話しかけてくるかもしれない。
行かないにしても久美子もいないしどうしたら?そうだ勉強に集中するとかしたらやり過ごせるかな!
何て言うか久美子さんも自由すぎじゃ??
守るって言ってくれた割りに個人行動が多いよぉ・・・!
座る机にしがみ付くような心境で、一人プチパニック状態の。
缶蹴りなんて面倒だと騒ぐクラスの面々も、その話題に飽きたら自分の方へ来る可能性もある。
かと言って思い切って出口に向かったとしても話し掛けられる可能性も0じゃない・・
これぞまさに『前門の虎 後門の狼』である。
どちらを選んでも災難が降りかかる事を避ける事は出来ない。
退路も活路も絶たれたは絶望感に打ちひしがれ、仕方なく机から教科書を取り出し自習する事にした。
彼らは勉強する風もないが、自分は勉強しに必死の思いで男子校なんかに来ているのだ。
無心になれ、心を無にして乗り切るんだ!
とは言え・・耳栓でもしない限り周囲の喧騒を防げそうになく
勉強にも身は入らないし教科書の内容も頭に入って来ない。
これは・・・・最悪の環境だ・・だが 心頭を滅却すれば火もまた涼し・・・
・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・
・・・何てなるかあああ!!!!!!
駄目だ、長く居られそうにない。
こうなったらやっぱ思い切って外に出るしかないな。
ちょいと素になりかけてしまったよ・・
「――ぶっ!ちゃんおもろいな、今の百面相みたいやったで!」
「ホンマやな、て言うかそないな顔もするんやね!」
み 見られてた!?
一瞬だけだけど此処が男子校で、自分は男性恐怖症だという事も忘れてたかも。
ハッと我に返ったのは市村と倉木の笑い声を聞いたから。
何と言うか関西人特有の人懐っこさを二人からは感じる・・
でも簡単に相容れる訳にはいかないって決めたばかりだ。
しかし好意的に接してくれる人を無視するなんて事、人としてやってはいけない気もするなあ・・・
一見恐そうだし(まあ実際恐いけど)暴力的な時もある彼らだけど・・実際接してみると意外にも他人を思いやれる人達なんだよね・・・
ちょっと調子が狂う。
避けよう関わらないようにしようって思っていただけに、すんなりと受け入れそうになった自分に驚かされる。
ちゃんと見たら彼らが優しい面も持ってる事、気付いてしまったせいだ。
「(あり・・がとう)」
そう声に出して伝えたいと、心に生まれた気持ち。
だから唇だけ動かして形にしてみた。
そしたら二人は驚いた顔を一瞬したけれど、その後すぐ嬉しそうに笑顔を返してくれた。
素直な反応が直に伝わったは、自分の心がじんわりと温かくなるのを感じた。
まさか自分が異性とこんな風に接しられる事が出来るなんてと驚いたけど、これも立派な一歩じゃないか?と思え 嬉しくなる。
「お前、笑えんじゃん」
ポツリと聞こえた風間の低い声に、市村と倉木も嬉しそうに同意。
今 私・・笑えてるんだ?
竜兄さんでも煉でもない、関わる事を避けていたはずの彼らのお陰で。
ほんの少し、彼らの見方を変えなきゃ駄目なのでは?と芽生えた意識。
此処から少しずつ何かが変わって行く事になる。
結局も久美子の待つ校庭に行く事はないまま下校時間を迎えた。
クラスメイト達も帰宅時間を向かえ、各々に教室を立ち去る。
下校時間と言っても、前期試験の近い今は午後14時くらいには終わってしまう。
何とか無事一日を乗り切れた達成感をは味わっていた。
何となくだが、風間達のグループとは接せられるようになったのが理由かもしれない。
兎に角後は帰るだけだ・・そう言えば久美子はまだ校庭にいるんだろうか?
そうだとしたら可哀相な気持ちになってきた・・・帰りながら校庭に寄ってみよう。
頭の中でそれを決め、他の生徒達が教室からある程度出るのを待つ事にした。
出来る限り絡まれないようにして帰宅したいからね・・・・
そう思って座ったまま教室を眺めていると、から見て左側にいるもう一人の頭 緒方が此方側へ来るのを見つける。
何だろう?と視線で追うと、の右側に座る風間も立ち上がり歩いて来る緒方と向き合ったのだ。
やはり久美子が言っていた通り・・緒方と風間はどちらが赤銅を仕切るかで対立している。
トップはクラスに二人もいらない、と言う考え方なのだろう。
緒方側の二人と風間側の市村や倉木も立ち上がって互いに睨み合っている。
「決着 着けようぜ」
「望む所だ」
え?決着?
・・・・どんな着け方をするんだろうと考えるまでもなく
不良の勝負とくれば喧嘩、トップを決めるとしたら一対一・・とくればイコール タイマン。
果たしてそれが最良なのだろうか。
喧嘩してトップになってその先に何があるのだろう。
相手を殴って打ちのめす事に何の意味が?
殴った側の心が痛む事はないのかな。
相手を傷つけてトップになっても、それはただの自己満足でしかない。
そんな事をして得た地位は酷く脆い物だ・・心は空疎なままだと思う。
そうした事で、寧ろ自分自身を傷つけてしまわないだろうか?
少なくとも父親から暴力を受けていたとしては、賛成出来る決め方ではない。
暴力でないにしろ、全く意味のない暴力という行為に虐げられて来た側の心の傷は深いのだ。
出来ればタイマンとか以外の事で決めたらいいのに・・・別にクラスで上も下もないと思うけどな・・
それを伝えようにも今のには術がない。
知らずに見つめていたの視線に気付いた市村と倉木が此方を向いた。
「ちゃんが心配そうな顔する必要ないんやで?」
「俺らの問題やしな」
「・・とっとと家に帰っとけ」
「(・・・・)」
明るく言う二人だが、何となく来るなと言われてる気がする。
男同士の問題に女は首を突っ込むなと言う事だろう。
二人を見つめ、それから風間に視線を向けたタイミングで
此方を向かなかった風間の口からも帰るよう言われてしまった。
確かに女の自分には関わり合う必要もない。
しかも嫌悪してる異性の喧嘩になど・・・・
でも今朝方気付いてしまった彼らの人間性を思うと、放っとけない気持ちが芽生える。
考え込むに市村や倉木、神谷らが手を振りつつ教室を出て行く。
その列に緒方と風間が合流するようにして教室を出て行った。
どうする? 否、何となく気持ちは決まっていた。
またも連続更新(。+・`ω・´)シャキーン☆
ヒロインの気持ちの変化が早いのは仕様でs)`ν°)・;'.、早いうちから絡むようにしないと
展開がスローになってしまうと思ったんですよ・・・とりま、相容れ易いのは関西組のいる風間君達からかなーとね。
何処までノリノリで進められるか分かりませんが、頑張りたいと思います(*`д´)b しかし本命の高木君が喋ってねぇええああああ
高木君演ずる大和とはもうちょっと理解し合うのに何かが必要だなと思いましてね、ええ。彼のが根っこは深そうですからなあ。